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ICC FUKUOKA 2025 クラフテッド・カタパルトに登壇いただき、見事優勝に輝いた、鶴野酒造店 鶴野 晋太郎さんのプレゼンテーション動画【震災で全壊「鶴野酒造店」が挑む、全国の酒蔵との新たな酒造りと能登の復興】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット KYOTO 2025は、2025年9月1日〜9月4日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。
本セッションのオフィシャルサポーターはJ.フロント リテイリングです。
▶【速報】能登の酒を止めるな!全国の酒蔵との絆で能登の復活を誓う「鶴野酒造店」がクラフテッド・カタパルト優勝(ICC FUKUOKA 2025)
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【登壇者情報】
2025年2月17〜20日開催
ICC FUKUOKA 2025
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Sponsored by J.フロント リテイリング
鶴野 晋太郎
鶴野酒造店
14代目蔵元
公式HP
1989年生まれ。石川県能登町出身。株式会社鶴野酒造店14代目。大学卒業後の2012年にIT企業の富士通グループに新卒で入社。プログラマーとして、認証・認可のセキュリティシステム開発やiOS/Android/Windowsなど様々なOSのモバイルアプリ・Webアプリ開発を担務。設計や開発だけでなく、導入や運用という泥臭い領域まですべてを経験。「能登の風土と祭りという伝統文化、日本酒文化を残していきたい。日本酒造りがしたい。」という想いが強くなり、2019年に稼業の酒蔵にUターンし、すぐに日本酒造りに参画。2024年に令和6年能登半島地震で酒蔵が全壊。現在は、共同醸造という形で全国の酒蔵様からご支援をいただきながら酒造りに励んでいる。能登での再建を目指し、日々奮闘中。
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鶴野 晋太郎さん 私がこれからお話しするのは、令和6年能登半島地震で壊滅的な被害にあった能登の酒文化を復活させるための活動と挑戦についての話です。

1789年創業、能登町の酒蔵
私たち鶴野酒造店は、1789年に創業した、230年以上続く日本酒の酒蔵です。
代表銘柄は「谷泉」で、石川県能登町で事業を行っています。


北陸地方の中央付近から日本海へ北向きで突き出した半島、能登半島にある酒蔵です。
能登のあらゆるものにつながる日本酒
能登は、2011年に「能登の里山里海」として、世界農業遺産に認定されました。

▶世界農業遺産 能登の里山里海(「能登の里山里海」世界農業遺産活用実行委員会)
美しい雄大な自然があり、漁業によりもたらされる多くのめぐみ、豊かな生き物のつながりがあります。

昔から新鮮な魚とともに、日本酒が親しまれてきました。
観光には、地酒やとれたての魚や野菜が買い物できる、年間80万人以上の観光客が訪れる輪島朝市があります。

また、守り伝えられてきた伝統を大切にする祭礼が盛んな地区です。

祭りで神様にお供えするために、日本酒は欠かせないものです。
このように、能登のあらゆるものに、日本酒が密に関わっています。

だからこそ、江戸時代から続く能登杜氏という酒造りのプロフェッショナル集団がいます。
▶︎能登杜氏の酒(能登町)
その中でも、全国でその名を轟かせた四天王と呼ばれる名杜氏がいるほどです。

▶︎四大杜氏と能登の四天王(奥能登国際芸術祭2023)
地震による甚大な被害
しかし、こんな能登を、令和6年能登半島地震が襲いました。

震災から1年間で、人口は7,100人以上減少し、減少ペースは前年の2倍以上に拡大しました。

海では海底地盤が隆起し、漁船を動かすことができず、漁業ができなくなりました。

69の漁港のうち、60港が被災しました。
田畑も地盤隆起し、田植えができなくなりました。

農業だけでも、被害額は1,794億円とも言われています。
1300年の歴史がある輪島朝市は、地震に伴う大規模火災で焼失し、全てがなくなってしまいました。

▶︎令和6年能登半島地震による被害状況等について(内閣府 防災情報のページ)
もう酒造りはできない
酒蔵は11蔵中9蔵が大規模半壊以上。私の酒蔵も店舗、事務所、住居、全てが潰れ、全てがなくなってしまいました。


もう酒造りはできない。
愕然とし、絶望しました。
そんな中、一本の電話が入ります。

「俺たちが酒造りができる仕組みを作るから」
震災前に参加させていただいた東京大手町開催の日本酒大イベントである「若手の夜明け」でつながり出会えた、camo株式会社のカワナ アキさん、「手取川」という銘柄を醸す吉田酒造店の吉田 泰之さんからの電話でした。
能登の酒蔵復興支援プロジェクトが始動
合言葉は、「能登の酒を止めるな」。

能登の酒造りが、ここで止まらないためのプロジェクトを立ち上げていただきました。

酒造りの継続が困難になってしまった能登の酒蔵の復興を支援する共同醸造支援プロジェクト、その名も「能登の酒を止めるな」プロジェクトです。
被災した酒蔵と全国の酒蔵のマッチングを行い、能登の酒蔵のこれまでのオリジナルレシピに基づいた再現酒とコラボレーションによるお酒を造ります。

自然災害大国の、ここ日本のどこで自然災害が起こっても酒造りが止まらない、銘柄の流通を止めない仕組みです。
現在は第3弾進行中で、マクアケのクラウドファンディングサービスを通して、第1弾では4,000万円を超えるご支援をいただきました。
▶能登の酒を止めるな!被災日本酒蔵共同醸造支援プロジェクト【第三弾・2024冬】(Makuake)

全国の24蔵が、協力蔵として名乗りを上げてくれました。

全国の志を共にする造り手たちと出会えたおかげで、私たちは酒造りを続けられています。
ピンチはチャンス、技術交流で進化を実感
ピンチはチャンス、このプロジェクトの酒は、能登の未来を明るくする一滴です。

「能登の酒を止めるな」での技術交流を活用し、ピンチを乗り越えるだけでなく、チャンスに変えていく。前向きな強い気持ちを持って、新たな酒造りに挑戦しています。

長崎県では、「福田酒造」「森酒造場」で日本酒ブランディングや洗練した酒造り、生酛(きもと)造りを学ばせていただきました。


石川県では、「吉田酒造店」でモダン山廃と貴醸酒の製法を学ばせていただいております。
▶︎モダンクラシックな「山廃仕込み」の日本酒とは?製法や名称の由来、味わいについて解説(SYLUP)
▶︎リッチな甘みのデザート酒!「貴醸酒」の製法と特徴を学ぼう(SAKE Street)

秋田県の稲とアガベからは、発酵の面白さや奥深さ、新たな文化であるクラフトサケやまちづくりについて、学ばせていただいております。
▶男鹿の未来を拓く挑戦! サケ造りとまちづくりで、地域の希望の星になる「稲とアガベ」(ICC KYOTO 2024)

これまでは外に出ることがなく、自分の蔵にこもってクローズな酒造りをしていました。

震災を機に「能登の酒を止めるな」プロジェクトで得た、外の世界との交流によって、様々な技術や知見を習得しました。
これまでと変わらない地元向けの酒造りから、世界を見据えたブランディングへ、自分自身が進化できました。
酒文化の復活は能登の復活
酒蔵に生まれ、能登の歴史を背負っているからこそ、やらなければいけないことがあります。
能登の日本酒文化を残していかないといけない。
能登で再建したい。
改めて強く思えるようになりました。
私は、能登のあらゆるものに関わってきた日本酒だからこそ、酒文化の復活は能登の復活であると信じています。

苦しみを乗り越えるには希望が必要ですが、全てを乗り越えていくには自分の勇気が必要です。
勇気をもって新しいものを生み出し、能登のまちづくりをしていきます。
能登の復興につながる酒文化復活に力を
しかしながら、現状、能登はまだまだ壊滅的な状況です。

私の酒蔵は、まだ解体も終わっておりません。
住む場所もありません。
街は何もなくなってしまいました。
人はいません。
このままでは能登が終わってしまいます。
能登の復興には、酒業界のネットワークだけでは足りないのです。
皆様の知恵とネットワークを貸してください。

経営者の皆様、能登の酒文化拡大に、力を貸してください。
クリエイティブの皆様、能登のブランディングに、力を貸してください。
小売事業の皆様、能登のお酒を置いてください。
フーディーの皆様、私のお酒を置いてくれる料理人を紹介してください。
能登の酒復活のために、力を貸してください。
ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成/小林 弘美