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ICC KYOTO 2022 CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けてに登壇いただいた、前田農産食品 前田 茂雄さんのプレゼンテーション動画【「十勝ポップコーン」で、農閑期の雇用とはじける笑顔を作る「前田農産食品」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回300名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはMakuakeです。
▶【速報】うにの再生養殖で水産資源の未来を創る「北三陸ファクトリー」がクラフテッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2022)
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【登壇者情報】
2022年9月5〜8日開催
ICC KYOTO 2022
Session 8A
CRAFTED CATAPULT 豊かなライフスタイルの実現に向けて
Supported by Makuake
前田 茂雄
前田農産食品株式会社
代表取締役
1974年生まれ、北海道十勝出身。地元本別高校、東京農業大学卒業後、テキサスA&M、アイオワ州立大留学中に多くの現地農家に出逢い、現場経験のなさを痛感し帰国。2000年~実家の前田農産食品に就農、現在140haの畑で小麦5品種、ポップコーン、ビートなどを栽培する。2009~顔のみえる小麦粉を販売開始し、小麦農家とパン屋の情報共有の必要性感じ“北海道小麦キャンプ”を育種、農家、製粉会社、流通、パン屋など地元小麦関係者と継続開催。2014年、当年収穫小麦をパン屋や麺屋と組んで消費者還元する“新麦コレクション”を発足し全国60社のベーカリーに小麦粉を提供。2013年~北海道農業の最大課題の農閑期(冬季間)の雇用維持と付加価値増加を目指し、ポップコーン栽培開始。4年の歳月を経て2016年国産初の電子レンジ専用“北海道十勝ポップコーン(うま塩味)”販売開始。北海道知事賞など受賞、累計250万袋突破。現在、絶品キャラメル味の開発中。“食と農の笑顔の関係人口を世界につくり、地域農業を持続可能にする”をモットーに営農中。また、世界最大の農業者ネットワークを持つ国際農業奨学金制度「Nuffield」の日本代表理事を務める。
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前田 北海道十勝本別町で農業をしております、前田農産食品の前田です。
「温故創新」を胸に、経営をしております。
弊社は、約140ヘクタールの畑で穀物を生産している、農業生産法人です。
面積の7割で、ベーカリー向けパン用小麦5品種を生産しています。
小麦を製粉委託し、全国60軒のパン屋さんとコラボレーションしています。
また、本日お話しする、ポップコーンの生産加工販売をしており、ほかにビートなども生産しています。
農場の歴史を振り返りますと、1899年の開拓当初から同じ大地で土づくりをし、学校用地寄贈や、戦時中には澱粉工場を操業しました。
父や私は、GPS技術を用いて、畑に迷路を作ったり、小麦畑にアンパンマンを形作ったりするなど、消費者も楽しめる畑として、畑を出会いの場にするイベントをしてきました。
冬が労働の大損失になる北海道の農業
北海道農業には、約150年続く現実的な課題があります。
冬です。
大規模で原料供給型の露地野菜や穀物を生産する一方で、寒い冬は、労働の大損失になります。
しかし、私は、冬の農閑期を付加価値創造期間である、という位置づけをしました。
「そうだ、忙しい時期をずらした、ほかの作物は生産できないだろうか」と考え、「ならば、収穫・乾燥機械を使えるポップコーンがいいのでは。楽しそうだ」と思い、栽培を始めたのが、2013年でした。
初年度は、14トンのポップコーンを全量廃棄
しかし、初年度は、世界一不味いポップコーンを、14トンも作ってしまいました。
忘れもしない、2013年11月29日の収穫日、すでに外気温はマイナスです。
凍結して細胞が壊死したポップコーンは、最高に不味かったのです。
「1年間、栽培して、どうしてこれほどに不味いのができたのですか?」と、社員から言われるスタートでした。
本場アメリカで品種と栽培方法を学ぶ
しかしながら、私は、大失敗は逆にチャンスとして捉え、ならば本場ではどうしているのかと思い、ググって、アメリカ最北端の農家へ行ってきました。
栽培温度がそもそも足りていないという、シンプルな現実に向き合うこととなりました。
さらに重要なのは、品種選択です。
「小麦栽培も5品種あり、特徴はある。ならば、ポップコーンに合う品種はどれだろうか」と、とあるアメリカ育種畑を訪れました。
600もの品種が試験栽培されていました。
十勝の気候条件でも栽培できる、はじけの良い品種はどれだろうかと、育種家と話しました。
同年10月に再度渡米し、ポップコーン農家で収穫研修をさせていただきました。
機械の調整・ロス率・栽培でのスケール化のポイントも実感しました。
ネットでは決してわからない、色・艶・水分・硬さや匂いなどもです。
しかし翌年も、アメリカと日本の異なる乾燥方法で大失敗、≈世界で2番目に不味いポップコーンを再度、社員たちと味わいました。
2年間で約28トンもの損失、困り果てて、地元の食品加工センターを訪れたり、再度渡米したりして、関係者に原因を探りました。
アメリカの栽培方式をただ真似るだけでは、十勝の環境がそれを許しませんでした。
十勝の気候に合った栽培と乾燥技術、加工施設を開発
そこで、前田農産では、世界でも実例がほぼない栽培方法を開発し、改善してきました。
温度不足の問題は、生分解フィルムを導入して土の中の温度環境を均一化し、一斉に発芽することに成功しました。
次に、乾燥問題は、世界初の小麦を利用した穀物混合乾燥方法により、ゆっくりじっくりとポップコーンの水分を小麦に吸湿させ、乾燥後に小麦を完全除去、ポップコーン一粒ごとの水分の均一化を図っています。
お客様のクレームになり得る、「はじけない」という問題を、極力、現場解決しなければならないのです。
そうして、はじけるポップコーン生産に目処が立ちましたが、今度は商品化に悩みました。
日本で食習慣のないポップコーンを消費者に手軽に食べてもらうにはと考えたところ、大学時代に留学先で食べた電子レンジで作るポップコーンが思い浮かびました。
さらに1年半をかけて、DIYで加工施設や機械ラインも導入しました。
この頃は、ポップコーンがはじける前に経営がはじけてしまうのではないかという、変な汗ばかりかいていました。
国産初、レンチンできるポップコーンの誕生
しかし、ここで逃げたら、最大課題である冬の安定的な雇用を作るという目標を未達成のまま振り出しに戻ってしまうと思い、4年の歳月をかけ、2016年4月に発売に漕ぎ着けました。
国産初、電子レンジ専用「北海道十勝ポップコーン」の誕生です。
翌2017年には、第24回北海道加工食品コンクールで最高位の北海道知事賞を、2021年は第11回コープさっぽろ農業賞を受賞しました。
▶十勝ポップコーン知事賞 本別の前田農産食品製造(十勝毎日新聞)
▶【第11回】コープさっぽろ農業賞(2021年)(コープさっぽろ)
プレゼン中にポップコーン作りを実演
では、こちらで(電子レンジで)チンしますね。
北海道を元気にしたいということで、北海道のマークを入れてあります。
北海道は日本地図で上のほうにありますので、電子レンジにかける際も上にしていただけますと幸いです。
こちらの電子レンジでは、700ワットで1分40秒ほどチンするだけで、できたてホカホカのポップコーンが完成すると思います。
子どもたちのおやつに最高、絶妙な塩味と、ご好評を頂いております。
累計販売300万個を突破
土産店や生協などにも展開し、累計販売は300万個を突破しました
年間製造も可能になり、雇用の安定に繋がっております。
年間100万個の笑顔をはじけさせるプロジェクト
また、2023年には、年間100万個の笑顔をはじけさせようと計画しております。
プロジェクト達成方法は、大きく3つあります。
1つ目は、本日、皆様にお配りした「北海道十勝キャラメルポップコーン」です。
新作です。
国産初のレンチン式キャラメルポップコーンで、酪農学園大学と産学連携で味の開発をし、さらに、地元の北海道本別高等学校の生徒たちの意見を反映したパッケージとなっています。
▶本別町の前田農産食品 新風味ポップコーン開発 酪農学園大と連携(十勝毎日新聞)
2022年12月に販売予定です。
2つ目は、味変を楽しむ「ポップ♪&ご当地シャカシャカ!」です。
現在発売中のうま塩味も、トウモロコシの風味をさらに引き立てる沖縄県産ミネラル塩との地域コラボ商品です。
同様に、各地のご当地フレーバーをふりかけてシャカシャカ振って楽しみながら食べる商品、例えば、信州わさび味や紀州うめかつお味などを想定しています。
3つ目は、最大市場である北米への輸出です。
アメリカ人の1人当たりのポップコーン年間消費量は、なんと40リットル、体の半分以上はポップコーンでできているのですね。
ここに、日本らしいヘルシーさや和テイストのわさび味の商品をインターネットで販売し、小売りへと広げます。
でも、1番はじけさせたいのは、未来ある子どもたちの笑顔です。
毎年、収穫体験を始め、楽しい“農交接触”を継続中です。
ポップコーンを作り、人と地域を残し続ける
私たちのゴールです。
社員一同、皆様の笑顔をはじけさせるポップコーンを作り、人と地域を残し続けます。
先ほどのポップコーンもできあがりました。
ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成/大塚 幸