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「クラフトサケ」を通して、福島や日本酒文化に軽やかな視点をもたらす「haccoba」(ICC KYOTO 2022)

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ICC KYOTO 2022 ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 -に登壇いただいた、haccoba -Craft Sake Brewery- 佐藤 太亮さんのプレゼンテーション動画【「クラフトサケ」を通して、福島や日本酒文化に軽やかな視点をもたらす「haccoba」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2023は、2023年2月13日〜2月16日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。

【速報】避難指示が解除された南相馬市で、自己実現のフィールドとしてゼロから街おこし「小高ワーカーズベース」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC KYOTO 2022)


【登壇者情報】
2022年9月5〜8日開催
ICC KYOTO 2022
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ

佐藤 太亮
haccoba -Craft Sake Brewery-
代表

「酒づくりをもっと自由に」という思いのもと、ジャンルの垣根を超えた自由な酒づくりを行う酒蔵「haccoba -Craft Sake Brewery-」を福島県の小高というまちで営む。かつて東北でつくられていた自家醸造酒のレシピを受け継ぎ、日本酒にクラフトビールの製法をかけ合わせたお酒をメインで展開。福島浜通りで酒蔵を営みはじめたら、気候変動というグローバルな課題がいつしか自分ごととなり、電力事業も始めている。慶應経済学部卒。楽天やWantedlyを経て独立。酒づくりの修行先は、世界一美味しいと思っている新潟県の酒蔵「阿部酒造」。


佐藤 太亮さん 皆さんこんにちは、福島県でhaccobaという酒蔵を営んでいる、佐藤太亮です。

小高ワーカーズベースの和田さんからのバトンパスで、鳥肌が立っています。(編集注:佐藤さんのプレゼンは、和田さんのプレゼンに続いて行われました)

原発事故でゼロになった町を、100の事業を創出する開拓者の町に変える「小高ワーカーズベース」(ICC KYOTO 2022)

なぜ酒蔵がソーシャルグッドなのかと、最初に疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。

実際に僕は、このカタパルトに登壇される方々のように、強烈な原体験を持っていたり、社会課題の当事者であったりしたことはありません。

ただ、本当にひょんなことがきっかけで、無視できない、なかったことにはしたくないことと出会い、自分のしたいことを通して、少しずつ社会に前向きな変化を起こしていく、等身大の話ができたらと思っています。

自分の日本酒をつくるため、ゼロから挑戦

遡ると、僕は学生の頃、日本酒の美しさに惚れ、自分の酒をつくりたいと心から思うようになりました。

実質、新規参入がほぼ不可能な伝統産業で、まさにゼロからの挑戦でした。

酒蔵を造る上で最初に大事になるのが、どこでやるかということです。

誕生日に震災が起き、福島への使命感を抱く

そんな時に出会ったのが、先ほど登壇した、小高ワーカーズベースの和田さんです。

和田さんは、福島県南相馬市の小高という町で、数年前から町づくりに携わっています。

11年前の東日本大震災に伴う原発事故からの避難で、約5年間、人が住めなかった町です。

和田さんと出会った時、自分の中にブワーッと蘇ってきた感情がありました。

それは、いち日本人として、「福島を、無視するなよ」「この出来事を、なかったことにするなよ」という、震災当時まだ10代だった自分の心に向けた叫びです。

震災が起きたその日は、たまたま僕の誕生日でもありました。

そんな小さなつながりから、もともと全く縁のなかった福島という土地に、勝手に使命感を抱くようになりました。

この土地で酒蔵を営むにあたり、自分が惚れた酒というものを通して、こんな景色をつくれるのではないかとワクワクしました。

それは、人口が激減してしまった街で、酒蔵が一つのコミュニティとなり、失われたつながりを少しずつ取り戻していく景色。

そして、どうしても当事者意識を持ちにくい地域外の方々にとって、お酒が福島の課題に思いを馳せるツールになっているという景色です。

そういう景色を夢見て、去年の2月に無事、酒蔵をオープンすることができました。

ただ、最初は本当に不安だらけのスタートでした。

色々な方に壁打ち、事業の相談をしても、「なぜ、あえてその土地で食の事業をやるのか」という声をたくさん頂きました。

発売して1~2時間で完売するヒット商品が誕生

でも蓋を開けてみると、感じていた不安は全て打ち消されました。

haccobaの看板商品である「はなうたホップス」は、発売すると、1~2時間で完売するまでになり、多くのメディアでも取り上げて頂き、飲んべえにとっては神様である吉田類(※)さんからも、「旨い」という声を頂いています。

吉田類の福島浜通り酒旅【全編公開】(YouTube)…映像14:30あたりからhaccoba訪問

酒蔵に併設している飲食スペースでは、地域の方や旅行者が集い、少しずつ、新しいコミュニティの一つになっています

そして、震災後の風評被害にめげず、お米を作り続けている地元農家の思いをお酒に乗せて、国内外に発信することもできています。

新ジャンルの日本酒「クラフトサケ」

そうした挑戦の中で鍵になるのが、僕たちが取り組んでいる、「クラフトサケ」という新しいジャンルの酒づくりです。

クラフトサケという言葉を聞いたことがない方も、多いと思います。

それもそのはず、ここ数年で誕生した、本当に新しい酒のカテゴリーだからです。

クラフトサケとは、かつて日本各地で自由に作られていた、どぶろくという酒の文化に立ち返り、自由な発想で作る日本酒の新ジャンルです。

お米だけではなく、フルーツやハーブなども一緒に発酵させてつくっています。

まさにアメリカから始まり、世界中で定着しているクラフトビールと同様のカルチャーです。

例えば、haccobaでつくっている定番のお酒、はなうたホップスでは、お米と一緒に、ビールに使うホップというハーブも発酵させることで、まるでグレープフルーツのような爽やかな香りと苦味をまとった、新感覚のお酒です。

審査員の皆さんのお手元に、来週発売予定の新酒をこっそりお配りしていますので、お酒が飲める方はぜひ、お試しください。

この製法も実は、私たちが拠点を置く東北地方のどぶろく製法にヒントを得て、つくったものです。

こうして、かつての文化に立ち返る、自由な日本酒、クラフトサケ。

そのつくり手が世界各地に増殖していくことで、様々な土地の文化に新しい視点をもたらしてくれます。

クラフトサケの造り手を増やし、発酵文化をつなぐ団体を設立

国内では、3年ほどで、7社のクラフトサケブリュワリーができています。

クラフトサケの酒蔵を増やし、かつての発酵文化をつないでいくため、国内全社で連帯して、クラフトサケブリュワリー協会を、今年6月に立ち上げました。

日本酒とクラフトサケの未来をつくる「クラフトサケブリュワリー協会」6月27日に6醸造所共同で設立(PR TIMES)

新しいプレイヤーの立ち上げ支援や、様々な企画を通した文化づくりを行っていく予定です。

また、haccobaとしても、少しずつクラフトサケのつくり手を増殖させていくため、酒蔵を増やしていこうと思っています。

2022年は、より原発事故の影響が深刻な、福島県浪江町で2軒目の酒蔵を造っています。

2024年には、ベルギーに造る計画も立てています。

クラフトサケという多様で楽しいお酒を通して、もしかしたらほんの少し、まだ暗いイメージがあるかもしれない福島や、日本酒の文化への視点・眼差しを軽やかに変えていけたらと思っています。

ある意味、文化を切り拓く、100年単位の挑戦に歩み始めたhaccobaを、ぜひ応援いただけると嬉しいです。

実際に現地に来て体感してほしい

最後に、告知をさせてください。

福島の小高という町は、フロンティアスピリッツにあふれた最高の街です。

先ほど登壇された和田さんと、「ICC福島・小高ツアー」を企画できたらと思っています。

実は半年前のICCサミットの後、Nstockの宮田(昇始)さんやヘラルボニーの松田(文登)さんに来てもらい、プレツアーを実施済です。

宮田さんからは、「最高! 絶対にリピートする」というコメントを頂いています。

審査員席にいる松田さん、どうでしたか?(松田さんが「最高!」と返答)

ありがとうございます。

ぜひ、実際に現地に来て、エクストリームな町づくりと酒づくりに挑戦している現場を体感していただけると嬉しいです。

興味のある方は、僕か和田さんに、ぜひお声がけください。

ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/正能 由佳/戸田 秀成/大塚 幸

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