▶カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Twitterをぜひご覧ください!
▶新着記事を公式LINEで配信しています。友だち申請はこちらから!
▶過去のカタパルトライブ中継のアーカイブも見られます! ICCのYouTubeチャンネルはこちらから!
ICC FUKUOKA 2023 カタパルト・グランプリに登壇いただき5位に入賞した、AGRIST秦 裕貴さんのプレゼンテーション動画【ピーマンに特化した自動収穫ロボットで、持続可能な農業を目指す「AGRIST」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターはAGSコンサルティングです。
▶【速報】活用現場拡大!遠隔指示で働き方を変える「SynQ Remote」(クアンド)がカタパルト・グランプリ優勝!(ICC FUKUOKA 2023)
▼
【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 6A
CATAPULT GRAND PRIX (カタパルト・グランプリ)- 強者が勢揃い –
Sponsored by AGSコンサルティング
秦 裕貴
AGRIST株式会社
代表取締役CTO
HP | STARTUP DB
1993年、福岡県福津市生まれ。モノづくりが好きで北九州高専に進学。2016年、高専専攻科卒業と同時に就農を志すも収益の不透明さから断念。高専内で活動していた学発ベンチャー企業合同会社Next Technologyに参画。特殊用途3Dプリンタや産業用ロボットの開発に従事、同社代表を務める。 2019年に宮崎県新富町・こゆ財団との出会いをきっかけにAGRIST株式会社を創業、CTOに就任し宮崎へ移住、2022年からは同社の代表取締役に就任。 自動収穫ロボットを中心に、農業現場に根ざしたテクノロジー活用によって農業の生産性向上と持続可能な農業の実現を目指している。 ロボット大賞2022農林水産大臣省受賞、CES2023 INNOVATION AWARD受賞 等
▲
秦 裕貴さん(以下、秦) 皆さんこんにちは、AGRISTの秦です。
我々は、スライドの背景動画にあるようなピーマン自動収穫ロボット「L」を軸に、農業の未来をデザインする企業です。
今日は、宮崎県からまいりました。
農業における一番の課題は膨大な収穫作業
皆さん、農業に色々な課題があるということはご存知だと思いますが、何が一番の課題だと思いますか?
私は、一番の課題は膨大な収穫の作業量だと思っています。
実は、収穫作業に充てられている時間は、時間ベースで、全体の50%以上という事実があります。
高齢化が進み、人手不足が深刻化する中、まさにこの収穫作業がボトルネックとなり、農業の生産性が上がらないという課題がございます。
そこで我々は、収穫ロボットの開発を進めてきたのですが、農業の現場には、非常に多くの課題があります。
写真にあるようにぬかるみがあったり、剪定した枝葉が落ちていたりといった地面が荒れている状況が当たり前なのです。
さらに、他の農作業との兼ね合いで、地面には、様々な物が置かれています。
写真には、ハウスの中を温める暖房を行き渡らせるためのダクトが写っています。
このような状況なので、工場で走るAGVのような形でロボットが地上を走行することが難しいのです。
我々が開発している収穫ロボットの一番の特徴は、ハウスの中にワイヤーを張って、ロープウェーのように移動しながら収穫をして回るということです。
一番端まで行くとU字のレールがあり、ハウス全体をこのロボット1台が循環することができるようになっています。
このワイヤー吊り下げ式のメリットは、農業資材用のワイヤーを使っているので非常に安価であり、地面にレールを引く場合に比べて低コスト、また、作の入れ替えのタイミングで設置し直す必要がないため、従来型の農法でも導入可能な点です。
人よりも早く検出できるAIを活用
さらに我々は、緑の葉の中から緑のピーマンを検出する、AIを活用した技術を持っています。
ご覧いただくと、人よりもAIの方が早くピーマンを見つけているのが分かると思います。
もう一つ、特徴があります。
先端のハンド部分が、2本のベルトで巻き取るように収穫をしています。
一般的なハサミでの収穫に比べて、吊り下げ式によってロボット全体が多少揺れたとしても、特徴的なハンドの機構により収穫率を維持できるからです。
さらにもう一つ、特徴があります。
我々のロボットは、収穫時、二度切りが出来るような仕組みになっています。
出荷時、ピーマンの茎は短くカットし出荷基準を満たさなければなりません。
他のピーマンを傷つけたり、袋詰めしたときに茎が袋をつき破ったりしないようにするためです。
ロボットの性能を最大限に活かす自社農場を拡大
一番気になるのが、収穫の性能だと思います。
この動画は、1倍速の収穫の様子です。
ピーマンがたくさんある所とない所を平均して、1分間に1個のペースで収穫ができます。1日約10時間の稼働で、1日20kg、年間4トンを収穫できます。
ただしこれは、昼間稼働させた時のみのデータです。
現時点では、夜間も収穫できるようになっています。
ロボットがピーマンに向かってライトを照射するので、農場全体にライトは必要ありません。
自社で農業法人を立ち上げ、このロボットを活用した効率の高い農場を、自社農場として拡大していきます。
自社農場を活用することで、ロボットの性能を最大限に引き出すために、ロボットに合わせた栽培ができるようになります。
具体的には、枝の伸ばし方を工夫して枝葉に隠れてしまうピーマンをできるだけ少なくし、ロボットができる仕事量を増やす、ロボットフレンドリーな環境を整えることが実現できると思っています。
4カ月で標準値の1.6倍の収穫量を達成
さらに、ロボットは毎日農場を巡回しながら、データを取得しています。
デジタル空間に、ピーマンの花の数をカウントすることができます。
これを活用し、栽培管理にフィードバックしたり、出荷量を予測したり、農場全体の見回り作業を効率化できます。
2022年10月に自社農場で栽培を開始してまだ4カ月ですが、ピーマンの主要な生産地である宮崎県の標準値の1.6倍の収穫量を既に達成しています。
我々のロボットとビニールハウスのイニシャルコストは、通常コストの1,2倍かかりますが、収穫量と売上が1.5倍なので、初期投資で増えた分を、約4年で回収できる試算となります。
ありがたいことに、自動収穫ロボットを活用した再現可能な農業のモデルは評価を頂き、農林水産大臣賞を頂いたり、世界でも高く評価を頂いており、今年のCES2023でInnovation Awardを受賞いたしました。
2025年までに国内最大のピーマン農家を目指す
今、我々は3ヘクタールほどの農地を、宮崎と鹿児島で確保しており、ここで農場を拡大予定です。
今後、離農される人が大量に出ることが予想されますが、その空きハウスを活用して事業拡大していきます。
国内のピーマンだけでも、これだけの市場規模があります。
我々は2025年までに、35ヘクタールで栽培し、国内最大のピーマン農家になります。
その後グローバル展開をして、いわゆるピーマン王になろうと思っています。
私がこの事業に取り組んでいるのは、「自分達が食べるものは自分達で作れる状態にしたい」という思いがあるからです。
この事業を通して、100年先も続く持続可能な農業を実現したいと思っています。
応援よろしくお願いいたします。
(終)
▶カタパルトの結果速報、ICCサミットの最新情報は公式Twitterをぜひご覧ください!
▶新着記事を公式LINEで配信しています。友だち申請はこちらから!
▶過去のカタパルトライブ中継のアーカイブも見られます! ICCのYouTubeチャンネルはこちらから!
編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/戸田 秀成