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里山の可能性を拓き、いのちを繋ぐ循環型農業に挑戦する「土遊野」(ICC FUKUOKA 2023)

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ICC FUKUOKA 2023 ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 -に登壇いただいた、土遊野 河上 めぐみさんのプレゼンテーション動画【里山の可能性を拓き、いのちを繋ぐ循環型農業に挑戦する「土遊野」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください

本セッションのオフィシャルサポーターはICCパートナーズです。

【速報】まちなか留学で子どもたちの世界を広げる「HelloWorld」がソーシャルグッド・カタパルト優勝!(ICC FUKUOKA 2023)


【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 11A
ソーシャルグッド・カタパルト – 社会課題の解決への挑戦 –
Sponsored by ICCパートナーズ

河上 めぐみ
有限会社土遊野
代表取締役
HP

1986年4月27日生まれ。富山県富山市土(ど)で育つ。 東京外国語大学東南アジア諸国過程タイ語専攻、女子サッカー部進学。2010年卒業と同時に富山に戻り、両親が開いた有限会社土遊野へ就農 100枚を超える棚田での有機米栽培と平飼い養鶏を主軸に有畜複合循環型農業を実践し、土づくりから収穫、そして届けるところまで一貫して行っている。またいのちの繋がりを伝えるため、里山体験や農業研修なども幅広く受け入れている。 2012年から富山県南砺市利賀村levoの谷口シェフの逸品「レヴォ鶏」の生産農家。 「いのちを繋ぐ農業家」として、農業や食の原点への入り口づくりとして、高校や社会人講座などでの講演活動を行う。


いのちを繋ぐ農業で里山の可能性を拓く

河上 めぐみさん 「種まきから、食べるところまでが農業。だから、食べてくれる人は、私達のパートナーなの。食べる人も、農業の一端をになっているよ。」

これは、40年前、関東から移住して里山で農業を始めた、両親からのメッセージです。

そして、こちらが、私がこれからも大事にしたい、いのちを繋ぐ農業の形だと思っています。

「みなさんと共にいのちを繋ぐ、農業を。」――土遊野の河上です。

現在36歳、農業を始めて13年目です。

土遊野は、富山県富山市の里山にあります。

越中八尾 おわら風の盆」で有名な、越中八尾駅が最寄り駅で、車で15分圏内に春日温泉郷などもあります。

人と自然が共に生きている場所、里山

こちらは、土遊野の棚田の一部です。

里山とは、富士山のような高い山々と、人が暮らす町の間にある、人と自然が共に生きている場所です。

そして、実は、日本の農地の4割が、このような里山にあると言われています。

棚田は条件不利地で、獣害もあり、高齢化も進み、過疎化や耕作放棄が急速に進んでいます。

しかし、日本では人口が減り続けていますが、世界では人口が増えていて、今日も飢えている人々がいます。

「日本には、美味しい食べ物が育つ土質も風土もあるのに、もったいない。里山は、もう本当に日本に必要のない場所なのだろうか。いや違う」――私たちは、この里山の可能性を拓くために、持続可能な循環型農業に挑戦しています。

6次産業化に取り組み、農産品はすべて直売

農場では、2,000羽の平飼い養鶏と100枚を超える棚田での有機米作りを主軸に、6次産業化(※)にも取り組み、農産品はすべて直売しています。

▶編集注:農林漁業者(1次産業)が、農産物などの生産物の元々持っている価値をさらに高め、それにより、農林漁業者の所得(収入)を向上していくこと。

鶏の餌は、自家製飼料100%で育てており、輸入飼料には一切頼っていません。

農場の規模は、耕作面積が35ヘクタール、スタッフが15名、売上は約7,700万円です。

こうした持続可能な営みに共感いただき、酒蔵「桝田酒造店」さんに日本酒(満寿泉 純米大吟醸 「Doyouknow」 土遊野)を作っていただいたり、専門家の方々と一緒に、お米の加工品(「みんなのパンケーキ(ミックス)」や「里山お米の本みりん」など)を作ったりしています。

また、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、富山では有名な、ミシュラン(「ミシュランガイド北陸2021特別版」)で2つ星付きのフレンチオーベルジュ「レヴォ(Cuisine régionale L’évo)」の谷口英司シェフの逸品、“L’évo鶏”を生産させていただいております。

里山農業に触れる体験を提供

私は、この里山生まれです。

大学時代を東京で過ごす中で、「街の人に、里山のことを伝えたい」と、強く思うようになりました。

なぜなら、街では、里山のことを「過疎地」「限界集落」「課題の山積地」というふうに言われていたからです。

「日本社会が限界集落と呼ぶ場所が、本当はどんなところなのかを伝えたい」

そのために、私は、大学卒業後すぐに里山に戻り、農業の道を選びました。

土遊野では、生産だけではなく、里山農業に触れていただく見学会や体験会も行っております。

いらしていただくと、まず、棚田をぐんぐんと登って、アイガモ部隊や森の用水などを紹介します。

そして、山奥の鶏舎では、生まれたてのヒヨコに触れたり、「ニワトリは1日1個、卵を産んでくれるのだよ。鶏舎で作った堆肥は、田んぼに撒いているよ」と、紹介したりします。

皆様、生みたての卵に触れたことはありますか。

とてもあたたかいです。

動物園で飼育されている動物ではない、家畜として生きる動物たちに触れる機会は、今の日本には、あまりありません。

私は、子どもたちに、「ニワトリさんに、いただきますだね」と伝え、あたたかい卵を大事そうに抱える子どもたちの姿を見て、いのちの繋がりが伝わっているのを確かに感じました。

さらに、農場では、「いのちをいただく体験会」というものも始めました。

具体的には、ニワトリを捕まえ、絞めて解体して、焼いて、いただくまでです。

食べるということは、ほかの生き物のいのちをいただく、ということであるという体験ができます。

体験会に参加した親御さんから、「子どもたちに、食べ物の始まりを見せることができてよかったです」というお声をいただき、私は、この声によって大きな気づきがありました。

「そうか、皆、農業にそもそもの関心がないのではなくて、触れる機会がないのか」と。

消費者に生産者の苦労はわからないと自分から壁を作っていた

「99:1」――これは、今の日本では、100人のうち、99人が食べる人で、1人が作る人という、日本の農業人口の割合を示しています。

そして、実は、私は農業を始めた頃、このような見方をしていました。

「消費者:生産者」「都会:里山」――消費者に生産者の苦労はわからないと、自分から壁を作っていました。

なぜ、そのような壁ができていたかと言いますと、農場の現場に入ってすぐに気づいたからです。

私は、「命を奪ってお金に換えて生きている」という罪悪感がずっとあり、孤独を感じていました。

食べる人も、いのちを繋ぐ農業の一端を担っている

しかし、両親からのメッセージが、私の農業という仕事への見方を変えてくれました。

「種まきから、食べるところまでが農業。だから食べてくれる皆さんは、私達のパートナーなの。食べる皆さんも、農業の一端をになっているよ」

「食べてもらうことで、いのちは繋がっているのではないか」――いのちを奪うのではなく、いのちを繋ぐところまでが、農業家としての私の使命だと考えるようになりました。

ニワトリたちには、「ごめんね」ではなくて、「いただきます」「ありがとう」と、また、届ける方には、美味しさや安全、そして、命いのちの繋がりを伝える。

このように思えたときに、「99:1」ではなく、「99 × 1」なのではないかという見方が、ようやくできるようになりました。

1人ではない、99人のパートナーが、農業家にはいるのでないかと思えるようになりました。

“99人”に実際に見てもらう機会作りが変革の鍵

今後は、一方的に伝えるだけではなくて、「自分もこの営みに携わってみよう」と思ってもらえる仕組みを考えたいと思っています。

例えば、オーナー制度やスポンサー募集、教育機関や観光業との連携などです。

そしてまた、里山での持続可能な農業のひとつのベンチマークとなり、後継の後押しをしたいと思っています。

「小さな変化を生み出したいなら、やり方を変えればいい。大きな変化を生み出したいなら、見方を変えなければ。」(『土を育てる:自然をよみがえらせる土壌革命』より抜粋)

私は、99人の方の里山や農業への見方が、これからの農業界の変革を促す大きな鍵になると思っています。

まず私がすべきことは、現場の継続と、現場にいらしていただく機会作りです。

ちょうど6月頃は、棚田でアイガモが泳いでいる、よい季節ですので、ぜひ土遊野の里山に遊びにいらしてください。

ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/正能 由佳/戸田 秀成

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