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コグニティブ・コンピューティングの衝撃は産業革命に匹敵する【K16-6C #2】

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「最先端テクノロジーは社会をどのように変えるのか?」【K16-6C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!6回シリーズ(その2)は、日本IBM福田さんを中心に、コグニティブコンピューティングが社会にもたらすインパクトについて議論しました。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。


登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016
Session 6C
「最先端テクノロジーは社会をどのように変えるのか?」
 
(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者
 
出雲 充
株式会社ユーグレナ
代表取締役社長
 
福田 剛志
日本アイ・ビー・エム株式会社
理事 東京基礎研究所 所長
 
(モデレーター)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役

「最先端テクノロジーは社会をどのように変えるのか?」の配信済み記事一覧

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【本編】

福田 (IBM Watsonは)ウィキペディアや聖書や小説等といったものの内容を読ませ、それを理解させてクイズに答えられるようにしました。

そういうことができるようになってきたので、プログラミングしていた時代から、コグニティブ、つまりデータを使って意味のある処理ができるようなコンピュータが作れるような時代になってきました。

これは全くのパラダイムシフトだと思います。

今まで50年続いたプログラマブルなコンピュータというものから、コグニティブなコンピュータに変わるぞと。

これはもうコンピュータの使い方が全く変わってくるぞというのが、「ようこそ、コグニティブの時代へ。」という言葉の意味です。

たまたまクイズだったのですが、これが、もっと色々なことに使えるぞと。

皆さんのビジネスに応用できるようになってきたとお伝えすることが、今日私がここにいることの意味だと思っています。

Watson×研究開発の可能性

クイズに勝てるようになって面白いけれども、それ以上のものではありません。

2011年に勝ったのですが、それからもう5年くらい経っています。

資料:日本IBM講演資料から転載

その間に、色々な応用を実際に試してみました。

「Watson」にはクイズに勝てて色々な知識が入っているのですが、一番バリュー(価値)が出そうなところ、つまり人に関するところで、病気を治すことに貢献できればと考えました。

2、3か月前だと思いますが、東京大学医科学研究所で、白血病の患者さんに「Watson」を適用したところ、その方の病気の原因が分かり治療法が見つかりました。

▶参考資料:2016年8月4日 日本経済新聞「AI、がん治療法助言 白血病のタイプ見抜く」

そして、AI(Artificial Intelligence、人工知能)が世界で初めて人の命を、少なくとも日本で初めて人の命を救いましたというニュースが出ました。

日々新しい治療法や薬が出てきますが、人間が全ての論文に目を通すことは実質不可能です。

でもコンピュータはものすごく速いのです。

確かCMで「Watson」は1秒間に8億ページ読めるなどと自慢していたと思うのですが、非常に高速で読んでそれを理解してくれ、全ての知識が「Watson」に入っていると言っても過言ではないと思います。

小林 石川さんの仕事はなくなってしまうのですか?

石川 確かに(笑)そういえば、もう1990年代くらいから、医学の世界においては、専門家はあてにならないというのが常識だったんですよ。

(会場笑)

石川 一度きちんと実験したんですよ。

世界でトップの専門家を集めて、その人達の知見が合っているのかどうなのかをチェックしたのです。

ちょうど論文数がものすごく増えてきている時で、専門家といえども追いきれなくなってました。

実際に専門家の意見と、実際に論文から導き出される結論を比べると、専門家がかなり間違っていることが分かりました。

その結果、「Evidence-based Medicine(根拠に基づく医療)」といって、これからは専門家ではなく論文に基づいてしっかり治療していこうという動きが、ちょうど1990年代に起こりました。

なので基本的に、僕らは僕らを信用していないのです。専門家は間違えるから(笑)。

福田 すごいですね。

そのような調査がよくできましたね。

石川 そうですよね。

教育の世界だとまだ専門家が幅をきかせていると思うのですが、教育も医学と同じように、人の言うことは当てにならないから、きちんとデータに基づいてやりましょうという時代になっていくのだろうと思います。

コグニティブで「全く違う」体験が生まれる

小林 出雲さんは、今、研究開発型の企業を経営されていますよね。

やはり、こういったテクノロジーをいかにして研究に活かしていくか、マネジメントに活かしていくかという話があると思うのですが、今のお話をお聞きになられて、ご感想やご質問はありませんか?

出雲 情報工学の分野は専門ではないのですが、コグニティブ・コンピューティング(Cognitive Computing)というのは、多分、今までと全く違うものだと思いますね。

僕らの分野で「全く違う」という時には、ミドリムシの増殖が5パーセント速くなりましたとか、コストが1割削減できますというような程度のことではないんですよね。

でも、100倍速く分析できますとか、同じ分析をするのにかかるコストが1,000分の1になりましたというと、直感的にも誰でも、何かすごいことが起こるのではないかと感じさせてくれるじゃないですか。

一番分かり易いのは、生命科学ではやはりゲノムの分野だと思います。今のお話にありました「Evidence-based Medicine」がスタートした1990年代に、「ヒトゲノム計画」もスタートしたんですよね。

当時のJohn Craig Venter(ジョン・クレイグ・ヴェンター)が、National Institutes of Health(アメリカ国立衛生研究所)で、人の遺伝子を最初から最後まで全部読むということに取り組んでいます。

その時はたったの4文字で30億塩基、配列、コーディングされているということが分かっていたのですが、ヒトの遺伝子を一人分読むのに、当時は13年間5億ドル使ったんですね。

今は、その当時とは全く違う、シーケンサー(DNA Sequencer)というかどういう遺伝子かを検査するすごくハイパフォーマンスな機械がありますから、昔5億ドルかかったことに非常に近いことが、あっという間に500ドルでできるようになりました。

これは確かに「全く違う」んですよね。

クイズ番組でコンピュータが優勝するとか、囲碁も将棋も今はもうコンピュータの方が強い訳じゃないですか。

情報科学とバイオの分野では非常によく起こっていることで、これはついていかないことには危機的状況に陥ってしまうと思います。

同じフィールドで競争していて、同じことを100分の1のコストでやっていますとか、100倍速いスピードでやっている人と競争できる訳がないじゃないですか。

ですので、一番のテクノロジーを持っていない企業というのは、これからはあっという間に淘汰されていなくなってしまうと思います。

そういうフィールドがITとバイオだと思うのです。他にもそういう分野があるかもしれませんけれども。

石川 そういう意味では多分、人類最初のブレイクスルーとなったテクノロジーは、「調理」なんですね。

料理をすることによって、すごく消化吸収し易くなるのです。

もし料理がなかったら、今のままで人間の肉体を維持しようとすると、1日8時間くらい噛み続けていないといけないんですよ。

だから動物ってずっと噛んでいますよね。

8時間噛むというところから人類を解放したのが「調理」というテクノロジーで、そういう意味では、調理に匹敵するくらい、劇的に人間を解放したテクノロジーというのはこれまであまり見られていません。

コグニティブがそういうものになり得るのだとしたら面白いなと思い、注目しています。

産業革命に匹敵する大きなことが起こる

福田 調理というのは考えたことがなかったのですが、それこそ発動機ができて、農業の生産性が100倍くらい良くなっているはずで、今までは人力だか馬だとか牛が耕していたのが、エンジンがあって非常に広大な面積が耕作できるようになって、食糧がたくさんできて生産性が上がっていますよね。

それが産業革命ですよね。

それに匹敵する何か大きなことが起きているというのが、IBMが今感じていることですね。

石川 「コグニティブ」を日本語にしにくいと、先ほどおっしゃっていましたが。

福田 「認知」になってしまうんですよ。

「認知」というと色々な意味がありますよね。

日本語的なラベルが付いている「認知」という言葉と、世界で言われている「コグニティブ」という言葉は少し違う気がしますね。

石川 「コグニティブ」にされたのには、何か理由があるのですか?

福田 時代を経て10年後20年後に振り返った時、「コグニティブ」が的を得ていたねということになるかどうかは正直分かりませんね。

今AIには色々な問題、解けていない問題が沢山あるのですが、認知の問題、つまり、パッと見てこれが何だとか、人の顔を見て何だというそういう基本的な、認識するという…認識というのが何でできているかというのは、皆さんも頭の中では理解しにくいですよね。

何か知らないけれど、これが何かというのが分かる訳です。

これは理屈ではなくて、頭の中で直感で分かる。

この部分というのは、ほぼ解けたと言われているのです。

コンピュータのディープ・ニューラル・ネットワークを使うと、人間とほぼ同じ、或いは人間よりも性能よく認知できてしまうのです。

先ほどの「言葉を認識する」というのもそれにかなり近いところで、認識した先に推論したりといった高度な知的なことがあるのだけれども、まだ、それが全部コンピュータでできるとまでは言えません。

作曲したり、クリエイティブで新しいものを作ったりするというところはまだまだですが、認知の部分は解けていて、まさに認知ができるようになったので、解決する問題が沢山あるのです。

クイズではチャンピオンに勝ちました。

碁盤の盤目を認識して、どこに打つべきなのかが直感で分かるようになりました。

そういったようなところは解けてきていて、これから世の中が変わるのではないかという意味合いで「コグニティブ」と言っています。

AIというともっと広い意味があって、それこそ映画の中に出てくるような怖いAI等、正直色々な意味があって広すぎてしまうので、IBMとしては「コグニティブ」と言っているのだと思いますね。

石川 なるほど。

(続)

続きは 「ミドリムシはワカメより圧倒的に凄い」ユーグレナ出雲節が炸裂 をご覧ください。
https://industry-co-creation.com/industry-trend/10593
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子

【編集部コメント】

続編(その3)では、”Chef Watson”でできることの議論を皮切りに、ミドリムシそして人間といった生命の凄さに議論が発展しました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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