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「民間発の月面探査チーム「HAKUTO」の挑戦」【F17-6D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!12回シリーズ(その8)は、A.T. カーニー石田さんに、宇宙ビジネスの全体的な解説と、日本におけるトレンドについてお話頂きました。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
2017年2月21日〜23日開催
Session 6D
宇宙資源開発ビジネスは宝の山! – 民間発の月面探査チーム「HAKUTO」の挑戦
(スピーカー)
石田 真康
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル / 一般社団法人SPACETIDE代表理事
袴田 武史
株式会社ispace
代表取締役
水島 淳
西村あさひ法律事務所
パートナー
(モデレーター)
千葉 功太郎
慶應義塾大学
SFC研究所 上席所員
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【前の記事】
【本編】
石田 石田です、よろしくお願い致します。
先ほど千葉さんがおっしゃっていたかと思うのですが、多くの人が、そもそも宇宙というのは国が中心となってやってきた世界じゃないの?というように考えていると思います。
法律関連のかなりディープな話が続いたので、少し入門編として、そもそもビジネスとしての宇宙というのはどのように成り立っているのかという話をしたいと思います。
スクリーン上に映っているのは、スペースシャトル、キュリオシティや国際宇宙ステーションなど、アポロンの月面探査などですが、宇宙に対する皆さんのイメージは恐らくこのような感じではないでしょうか。
千葉 私の知っている宇宙はまさにこういう感じです。
石田 そうですよね。
宇宙開発=国家プロジェクトなんですよね。
千葉 小学生の時からの憧れです。
石田 そうなんですよ。皆この世界に憧れて、小学校もしくはもっと幼い頃から宇宙に憧れた記憶があると思うのですが、大人になると多くの人がビジネスとしての宇宙にはチャンスはほとんどないんだなと気付いて、大体の場合、他の道へ進んでいくことになります。
千葉 ごめんなさい、すいません。
(会場笑)
石田 袴田さんも一度そういう経緯を経られていますよね。
袴田 そうそう。
石田 私もそうですし、憧れつつも、一回他へ出るというのがこれまで大半のケースでした。
それが変わってきています。
宇宙ビジネス・ビッグバンが起きている
石田 今世界では、民間企業が宇宙をビジネスとして捉えていくという、大きなトレンドが起きつつあると思います。
ちなみに、画面上の「宇宙ビジネス・ビックバン」というキーワードは袴田さんが最初に言った言葉なので、書く度に私はお金を取られるリスクがあります。
袴田 「®」を付けておいてください(笑)。
石田 はい、すいません(笑)。
この「民間」というのがキーワードとなると思っています。
先ほど水島さんがおっしゃったように、アメリカを中心に国が民間の力を活用する方向へ切り替えたという経緯があるのですが、大元を辿ると、そのような働きかけを行う、チャレンジャーな起業家が多くいたことが背景にあると思います。
その典型が、SpaceX社のイーロン・マスクです。
彼らも、先ほどのスライドと同じような、幼い頃に何かしら宇宙に接する原体験があります。
40代くらいはスターウォーズ世代、50代くらいからスタートレック世代、60代はアポロ世代と呼ばれるのですが、皆何かしらの原体験があって、本当は宇宙に関わりたかった人たちが、大きな変化の中で、これは何かビジネスになるかもしれないと考え、参入してきたのが、この20年間でした。
宇宙と一括りに言ってもいろいろな可能性があります。
宇宙旅行ビジネスもあれば、昨日ICCカンファレンス FUKUOKA 2017でもセッションがあったかと思いますが、衛星から得られるデータが非常に増えてきていて、これをビッグデータに利用し、AIを使って解析しようという人も出てきています。
日本でもロケット、そして袴田さんの資源探査のようなビジネスも出てきていますし、とにかく10も20もビジネスのアイデアがたくさん出てきています。
大事なのは、参加者が増えれば増えるほど、アイデアが莫大な量で出てくるということです。
とにかく、参加へのハードルが昔に比べて下がってきて、民間企業でも宇宙ビジネスができるようになってきたというのが、この間の非常に大きな背景の変化ではないかなと思っています。
宇宙ビジネスのエコシステムができてきた
石田 こうなってくると、宇宙に関わるプレイヤーが非常に多く出てきます。
先ほど千葉さんがおっしゃったように、昔は、政府があり、国家宇宙機関があり、大手企業があり、中小企業、ベンダー、以上、「That’s All.」という世界だったんですよね。
千葉 きれいにピラミッドができていたと。
石田 そうなんです。
そのピラミッドのどこかに就職できないと、宇宙関連ビジネスには携われませんでした。
ほとんどの人が、宇宙の仕事には関われなかったのです。
日本では、航空宇宙工学科を出た人のうち、宇宙関連の仕事に就ける人というのは、何パーセントくらいでしたっけ。
袴田 半分を切るのではないでしょうか。
石田 夢を持って大学まで進むものの、仕事がなくて、他の分野へ行くという流れです。
千葉 その観点から言えば、私が今 投資しているドローン・ベンチャーには、航空宇宙工学科出身の人がとても多いです。
そういう感じなんですね。
石田 それも新しい仕事のチャンスですよね。
今後は、これまでの世界とは異なり、袴田さんのような宇宙ベンチャーも出てきて、更に袴田さんのプロジェクトを応援しているのは、千葉さんが先ほどおっしゃった通り、宇宙と関係のない企業です。
そういった企業も、裏では様々な宇宙ビジネスプランを考えているわけです。
千葉 そして原体験もあると。
石田 そう、原体験もある。
なので、宇宙とは本来関係のない会社の中にいても、もしかしたら宇宙関連の仕事ができるかもしれないですし、引き続き、政府機関に行っても仕事ができるかもしれません。
また、宇宙というのはこれまでエンジニアのイメージがとても強く、典型的なモノづくりジャパンの象徴のようなところでした。
しかしこれからは、どちらかというと、経営者、起業家、投資家、更には、袴田さんが先ほどご紹介くださった動画は非常に絵がきれいだったと思うのですが、あのような動画を作るデザイナーとして宇宙ビジネスに関わるという可能性も出てくると思います。
イーロン・マスクもロケットの打ち上げは必ず中継しますよね。
あれは、世界でも恐らく初めての取り組みなんですよね。
ロケットの打ち上げが中継されたことは、過去にはほとんどありませんでした。
千葉 そうなんですか。
石田 マーケティングの一環といったところがあり、中継をすると皆が関心を持って見ますよね。
千葉 爆発したら「うわーーー」と思いますし、垂直で戻ってきて立ったら「立ったーーー」と、もう釘付けです。
あれはエンターテイメントですよね。
石田 エンターテイメントですね。
従来、技術者からは、そういった発想はなかなか出てこなかったですよね。
むしろマーケッターやクリエイターの発想です。
どうすればより多くの人を巻き込んで、このビジネスを盛り上げることができるのだろうかと考える人がいるからこそ、このようなアイデアが出てくるのではないでしょうか。
このように、これからは恐らく、宇宙ビジネスにいろいろな人が関わるようになるだろうと、これが大きな変化なのではないかなと、個人的に思っています。
日本における宇宙ビジネスのトレンド
石田 日本の中でも、いくつかトレンドがあり、やはり袴田さんのようなベンチャー企業や、それを応援している大手企業の、日本語では「異業種企業」と呼ばれるような、宇宙には関わりのなかった企業が参入してきたりしています。
そういった企業は、AIをどう使うか、IoTをどう使おうかと同じように宇宙の技術をどう使おうかという議論を始めています。
衛星から出てくるデータに何か使い道があるのではないか、と研究開発を始めていたりします。
そのように宇宙に関してイネイブルに(利用可能に)捉えている企業が結構出てきています。
他方、私は政府の委員も務めているのですが、袴田さんや水島さんのようなプロフェッショナルの方だけではなくて、政府の中でも宇宙ビジネスをどう盛り上げようかという温度感がここ2、3年間くらい非常に高まっています。
今まさにこの春に向けて、「宇宙産業ビジョン(仮)」、政府の資料なので後ろに「(仮)」がつくのですが、ビジョン(仮)を取りまとめようと、日本の宇宙産業がどうなっていくとよいのか、という議論をしているところです。
▶ 2017年5月12日発表 「宇宙産業ビジョン 2030 – 内閣府」
▶ 1.2兆円産業の倍増図る日本の宇宙ビジョンとは?
そういうものを策定する段階にまで辿り着いたというのが、恐らく、日本の今の現在地なのではないかと思います。
メディア・政治での取り上げ方も変わってきた
千葉 なるほど。
この間、私が親しくしているドローン関連の国会議員の先生たちと話した後、メッセージが来て、「ところで千葉さん、宇宙の分野にも詳しいですか?」と聞かれたんですよね。
ヒアリングをしたいと。
その時は、「投資はちょこちょこしたりしていますが、あまり詳しくはないです」と答えたのですが、今日このセッションが終わったら、改めてすぐメッセージします。
盛り上げが大切ですよね、これ。
議員の先生たちから、こういう言葉が自然に私のような全く関係ない人に来る時点で、既に変化が始まっている兆しというか、それだけ意識が高まっている証拠なのではないかなと思います。
石田 そうですね、メディアの取り上げ方もずいぶん変わってきています。
昔は、皆さん記憶があると思うのですが、宇宙に関してみるものと言えば、小惑星探査機「はやぶさ」のような科学系の宇宙か、日食のような天体イベントがほとんどでした。
ただこの2年くらいは、産業としての宇宙、ビジネスとしての宇宙、ベンチャーとしての宇宙というのが切り口としてあるのだということにメディアも気付き始め、相当トーンが変わってきています。
テレビ、雑誌など、いろいろなメディア媒体が「宇宙ビジネス」という捉え方をし始めています。
これが新しい見方なのではないかと思います。
(続)
続きは 手弁当で始まった宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE」とは? をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/鈴木ファストアーベント 理恵
【編集部コメント】
「宇宙兄弟」などのコンテンツも宇宙産業の盛り上げに大きく貢献していそうです。ちなみに、自分の好きな宇宙漫画はスペースデブリについての漫画「プラネテス」です(榎戸)。
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