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「今、食・農業のビジネスが熱い」【F17-4E】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その4)は、農業・食×Techビジネスが抱える制度面での困難について議論しました。是非御覧ください。
ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 4E
「今、食・農業のビジネスが熱い」
(スピーカー)
栗田 紘
seak株式会社
代表取締役社長
田尾 秀一
株式会社ブレンド
代表取締役
安田 瑞希
株式会社ファームシップ
代表取締役
(ナビゲーター)
井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
プリンシパル
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最初の記事
【新】今、食・農業の新ビジネスが熱い!【F17-4E #1】
1つ前の記事
食・農業ビジネスに必要な「消費者視点」とは?【F17-4E #3】
本編
井上 今までのところを少しまとめてみます。
食や農業のビジネスの魅力は非常に人間の根幹に近いということと、ビジネスチャンスとしてもブルーオーシャンであるというお話があり、その後で皆さんがなぜ農業や食のビジネスに取り組まれるようになったのかを伺いました。
その次のトピックとしては、やはり消費者の視点でしっかり見ていくというお話を展開されてきました。
そして先程お話いただいた農地確保の問題等のボトルネック・難しいところが結構あるんだろうなと思います。
農業や食に対するテクノロジーという切り口はすごく輝かしい話のようにも見えますが、実際にはどんな難しさや現状打破しなければいけないことがあるのか、そこを是非深掘りしたいと思います。
農業・食×Techにおける困難は?
安田 直近で記憶に新しいのは、先程の水田の話です。
▶︎編集注:植物工場の土地を確保する際に、第一候補にあがっていたのは既存の水田だったが、地域の反対にあい、断念したというお話を前のPartでしていただきました。
私たちのモデルは自社工場ではなく、パートナーさんと一緒に工場を建てていくモデルなので、土地も私たちが買うわけではありません。
ただ、トータルサービスの一環として、今回は、私が前面に立って土地の調整をしました。
一応農家の息子で田舎文化を知っているので、何も驚くことはありません。
驚くことはないんだけれども、「予想通りに難しかった」というところです。
井上 そして、賃貸する土地は耕作放棄地にしたのでしたよね。
安田 行政や農業委員会の方々と共に調整するわけです。
土地の問題は政治と地域と歴史と感情と、色んなことが絡まってくるので、あんまりもうやりたくないという感じです(笑)。
この経験を受けて、その次に手掛けている最新の工場は、既存の倉庫をリノベーションして建てました。
土地調整はもうやってられないと思って。土地問題が無いところでやろうと。
これは大変でしたね。
農協は、兼業農家に最適化されている
井上 栗田さんは土地を確保されているんですよね。
栗田 厳密には賃貸で、利用権という設定です。
ご質問にあった農業の課題に関してですが、色々考えていく中で突き詰めていくと「兼業農家が多い」というのが僕の結論です。
「農家さん」というくくりでいくと、専業農家と兼業農家と大きく2つありますが、日本の80%が兼業農家さんです。
ほとんどの兼業農家さんが農協に組合員として入っているので、結局農協さんのバリューチェーンというのは、兼業農家さん向けのサービスとして最適化されています。
兼業農家さんは基本的に農業所得を得る必要がありません。
逆に専業農家さんは日本の農業所得の8割以上を計上しています。
所得を上げていくインセンティブが働かない人たちに最適化されたサービスが農協のバリューチェーンなんですよ。
安田 いいですね、その説明。次から使おう(笑)。
栗田 少数精鋭の専業農家さんがどんどん増えていく、すなわち専業農家の人口という観点でも所得という観点でも増えていく方向に日本農業が向かっていかないと、日本の構造問題は抜本的には解決されません。
安田さんがなさっていることも、植物工場というモデルで一つの少数精鋭経営体を作られているということだと思います。
このように最適化された農業ユニットエコノミクスがどんどん少数精鋭として増えていき、そこで新しいバリューチェーンができていくという形を現象的に起こしていく必要があるのではないかと考えています。
僕等がやっている「Leap」もそのようなことに直接繋がっていこうとしています。僕たちは専業農家集団としてフルタイムでやっています。
井上 農協さんが兼業農家にフォーカスすることによって、専業農家にはどのようなデメリットがあるのですか。
栗田 例えば、兼業農家さんはそんなに売上を上げる必要がないので、市場出荷でちょろっと出荷して、単価が安くても許容できるわけです。
農協さんが扱っている肥料等、様々な資材の販売では、多くのバリエーションがあるわけではなくいくつかパターンがあって「こういうパターンを組み合わせたら、だいたいこれぐらいとれます」というモデルが提示されます。
そこに対して、栽培パフォーマンスを上げていくインセンティブが働いていません。
また、兼業農家さんが持っている細切れの農地はなかなか空きませんので農地を抑えるのに苦労するということも出てきます。
地域として兼業農家さんを支えるという前提になっており、それらの農地を集約していくということにはなっていきませんので。
農業の全てのステップで兼業農家さん向けのカスタマイズされたモデルが働いているがゆえに、垂直統合のバリューチェーンが機能しづらいということです。
生産特化か、垂直統合か
田尾 専業農家さん・少数精鋭のところを強くするということに対して質問ですが、規模の経済を効かせるためには、生産に特化するというのも1つのアプローチで、垂直統合のバリューチェーンを長く持つことも強い価値ですよね。
田尾 お二人ともバリューチェーンが長くて、直販していたり、あるいは明治屋さんに卸していたりしますが、(生産量に特化するのと垂直統合のバリューチェーンを持つこと)どちらにフォーカスしていくのか、若しくはそこを繋ぐことが今後の強みとなると考えていらっしゃるのでしょうか。
生産力を最大化して、あくまでもバリューチェーンは農協さんではない違う中間プレーヤーが存在した方がいいのか、その場合は並行でいくのか。
もしくは1社で(バリューチェーンを)とりにいくのか。最近強い農家さんは直販をやっていますよね。
どのようにやっていくのが業界の今の流れなのでしょうか。
安田 トレンドと言う文脈でお話しますと。
少し前に一次産業×二次産業×三次産業の掛け算で「六次産業」という言葉が流行っていましたが、その時は農家さんがバリューチェーンを取りに行った方が良いのではないかというトレンドでした。
商品開発のコンサル等が流行った時期がありましたが、その時のトレンドというのは恐らく垂直統合型バリューチェーンの方です。
ただ、最近、生産性という文脈においてのトレンドは「規模」を追っているように感じます。
中間管理機構が農地を集約して規模を追っているので、農政のトレンドはぶれているように感じます。
このように、トレンドには波がありますが、総じて思うのは両方重要だということです。
ファームシップがどのようなコンセプトでやっているかというと、表向きには両方です。
(続)
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続きは 変わる食・農業ビジネス-消費者のライフスタイルの変化が生み出す事業機会 をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/城山 ゆかり
【編集部コメント】
「所得を上げていくインセンティブが働かない人たちに最適化されたサービスが農協のバリューチェーンなんですよ。」という栗田さんの1文だけでも、この記事を読んだ価値があると思います。(横井)
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