4.量子コンピューターの宝の山はどこにあるのか? 量子アルゴリズムの発見と、それで解ける問題の発見だ – 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

4.量子コンピューターの宝の山はどこにあるのか? 量子アルゴリズムの発見と、それで解ける問題の発見だ

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「量子コンピューティングで実現する社会」7回シリーズ(その4)では、量子コンピューター時代で勝つ方法について議論します。データ・計算機資源の他に、「2つのチャンス」をものにした企業が勝つ可能性があるとといいます。その内容、理由とは?ぜひご覧ください。

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ICCサミット FUKUOKA 2018のプラチナ・スポンサーとして、IBM BlueHub(日本アイ・ビー・エム株式会社)様に本セッションをサポート頂きました。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2018年2月20-22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 3E
量子コンピューティングで実現する社会
-Quantum Opportunityで捉えるビジネス-
Supported by IBM BlueHub

(スピーカー)
及川 卓也
株式会社クライス&カンパニー
顧問

小野寺 民也
日本アイ・ビー・エム株式会社
東京基礎研究所 副所長 技術理事

草野 隆史
株式会社ブレインパッド
代表取締役会長

山田 貴士
株式会社LIFULL
取締役執行役員 LIFULL HOME’S事業本部長 兼 LIFULL技術基盤本部長

(モデレーター)
尾原 和啓
IT批評家、藤原投資顧問書生

「量子コンピューティングで実現する社会」の配信済み記事一覧

最初の記事
1.量子コンピューターの「現在」と「未来」をIBMのエキスパートが解説!

1つ前の記事
3.Googleが実証した「データ」と「計算機資源」を持つものが勝つということ

本編


尾原 現状の機械学習による最適化・データの使い方と、量子コンピューターが実用化されたときの最適化・データの使い方との違いについて、草野さんから何かありますか?

草野 小野寺さんにもぜひ質問しながらお話ししたいと思っていました。

尾原 では、ここからはお互いにどんどんしゃべっていきましょう!

データ企業が量子コンピューティングでも勝つのか?

草野 データの存在によって高い精度の予測ができるようになり、アルゴリズムで難しい問題をたくさん解けるようになることで、「予測して最適化することで価値を産む」というプロセスが回っていると思います。

量子コンピュータ時代でも、引き続きデータを大量に持っているところが勝つのでしょうか?

あるいは本当に優れたアルゴリズムを作ることで解決できる問題が何か存在して、そこは非連続なものなのでしょうか?

株式会社ブレインパッド 代表取締役会長 草野 隆史 氏

データを多く有するGoogleや一部の企業などが絶対的なポジションを持ち続けるのか、何か大きな潮目があるのか、変化があるのかどうなのか、興味があります。

断言できることではないと思いますが、見通しとして、今後も大量データを持っているところが強くなるという文脈の上にあるのか、あるいは、非連続的な発展があり、量子コンピューティングに張っておくだけで勝ち目があるのでしょうか。

もちろん現時点での現場での仕事としては、データを集めて強くなっていかないといけないとは思うのですが、ただ将来的に大きな潮目の変化があるのかどうかについて、ぜひ少し感触として教えてもらえればと思っています。

小野寺 そういう意味では、及川さんがおっしゃったように量子アルゴリズムというのは全然考え方が違うので、それを発見した人が絶対に勝つはずであり、今までとは違うアルゴリズムを考えた人が勝つという意味で、潮目が変わることは確実だと思います。

及川さんから先ほど、大学時代に少量のデータで取り組んでいた間は効かなかったけれども、大きなデータで開発したらうまくいった、という話がありましたが、このアルゴリズムは大学時代に既に知られていたわけですよね。

そこへデータが手に入ってために、実際に役に立ったという形です。

(写真左)日本アイ・ビー・エム株式会社 東京基礎研究所 副所長 技術理事 小野寺 民也 氏

しかし量子の場合はこのアルゴリズムがまだ本当に限られたものしか知られていないので、アルゴリズムを考え出すことのできる頭のいい人が勝つ時代だと思いますね。

量子アルゴリズムの発見・応用の2度チャンスがある

尾原 結局AIもなぜここまで普及したかというと、先ほど及川さんがおっしゃったように、データ、計算機資源、そして3番目がアルゴリズムがあったからです。

ただ今日の議論に関して言うと、この会場内にはたぶん、アルゴリズム自体を開発する人というのはいないと思います。

どちらかというと、皆さんは利用する側ですよね。

となると、前提条件として「量子コンピューターを使ったアルゴリズムがある程度できた」という“後”の話をした方がいいと個人的に思っています。

もし間違っていたら訂正していただきたいのですが、僕が思う量子コンピューターにおけるアルゴリズムが開発された後の、限界を突破した時というのは、大量の次元、大量のパラメーターを一度に扱って、最適化や予測ができるという話が1つ目です。

あとは特に量子ゲート形式に関しては、最適化だけではなく、ものすごく多くのインタラクションの計算ができるようになるので、化学反応や地球のシミュレーションができるようになったりするのではないでしょうか。

場合によっては、JPモルガン・チェースが入れられるのは、株のようにいろいろな人の意思が反映されるようなゲーム空間のシミュレーションのようなものかもしれません。

このような複雑なシミュレーションができるような世界だと思っています。

感覚として大体あっていますか?

小野寺 大きな方向はきっとそうだと思います。

先ほどコロンブスのところで、西の方角はこの辺だと言いましたが、まさにその方角です。

JPモルガン・チェースなどもポートフォリオの最適化やリスク計算などに興味があるとのことなので、その方向で具体的なアルゴリズムを考えていくという形です。

尾原 そうですよね。

山田 アルゴリズムを考える時というのは、まず何か決まった問題が存在して、その問題を解くためのアルゴリズムを考えるという順番になるのでしょうか。

小野寺 そうですね。

そして、次のフェーズの量子コンピューターは中規模(Intermediate-Scale)だけれどまだエラーがあるという不思議なコンピューターなので、そのエラーをどう使いこなすか、ないしは共存しながらどう計算を進めていくかという、これまでとは全然違う計算機の使い方になると思います。

山田 そのアルゴリズムを発見した人が最初に勝つというような話と、それをビジネスに繋げようとすると、ビジネスに生かせる問題を設定するというところと2回、コロンブスの卵が必要なのかなと思いました。

小野寺 はい、コロンブスの卵が2つ必要ですね。

量子的な振る舞いを意識し「近似解」を求める

及川 尾原さんが言うように会場の人は恐らくアルゴリズムを考える人ではないと思うのですが、私のような一般のソフトウェア技術者が使うようになる時には、その量子のコンピューターを裸のままではない形で使えると思います。

そうは言っても、その時にどこまで「量子コンピューターだ」ということを意識して使うようになるのかと考えています。

(小野寺さんへの)具体的な質問としては、実際に「IBM Q Experience」で量子コンピューターを使わせていただいたのですが、たとえば普通のコンピューターにおけるゼロイチのビットで考える時であれば、0を反転させると1ですよ、というようなことができますよね。

しかし、量子の場合はそのような単純な計算をしても、状態の重ね合わせなので、0の逆が1の可能性は98.X%あるというような結果しか出てきません。

それは、フォールト・トレランス(エラー耐性)というのがある程度きちんとできた時に、高速化した古典的なコンピューターとして扱っていいのか、それともそういった振る舞いをある程度意識した形で、我々はプログラムを書くようになるのか、どちらなのでしょうか?

(写真左)株式会社クライス&カンパニー 顧問 及川 卓也 氏

小野寺 次に来る「エラーがある時代」では、(量子的な振る舞いを)意識して書くことになります。

及川 そうですよね、やはり。

小野寺 そして「フォールト・トレラントの時代」になれば、意識しなくていいようになります。

及川 ということは、その量子脳的な発想をもって量子コンピューターのプログラミングをするという時代が、しばらくは続くわけですよね。

尾原 ないしは、「少し曖昧な部分があってもいい問題」を選ぶという話でもありますよね。

小野寺 そうですね、それに耐えられるような問題だったり、それで耐えられるようなプログラムを書くということですね。

及川 プログラマーは、普通は数学のように「正解」を求めてしまいます。

正解のためにプログラムをしようと思ってしまうのですが、「近似解」を予測をするものだと発想を転換しないといけません。

今もそのようにやり始めてはいるものの、もっともっとその発想になっていかないといけません。

それができたら勝ちかなと思います。

近似解をビジネス応用できる組織づくりが重要に

尾原 実際、たとえば先ほどのインターネットの広告のビッティングの話のように、ある程度のエラーを許容しながらたくさんの回数を試行していって、最適化に導いていくという領域は結構あります。

その点については、フォールト・トレランスなモデルではなくて、PDCAサイクルの設計の仕方や回し方が重要になるのではないかと個人的には思います。

草野 そう言っていいと思います。

広告の入札がこれで本当に超最適かといえば、もっといい方法はあるかもしれません。

ただ従前の人がやっている作業よりは遥かに性能がよいというか、いい入札ができて、ROIが上がりました、というようなことはできます。

なので、必ずしも本当の正解ではなくても、多少エラーを含みながらも大きく現状を改善できるエリアというのはたくさん見つかっていくのではないかと思います。

本当に特殊なアルゴリズムと、それをどこに応用するかというビジネス側のドメイン知識の両方をある程度理解しながら用途開発をしていくことになります。

それを1人で全部やるとなかなか難しいので、相当うまいチームを作ってやっていく必要があるのではないでしょうか。

そのためのチーム体制作り・組織作りのような側面が本当に大きなテーマになるのではないかなと思います。

実際にアルゴリズムを書くという点については、しばらくは飛びぬけて頭のいい人が1人いればいいのではないかなと思います。

何十人がかりでやるような仕事にすぐになるとは思わないので、そういう人とどの領域で攻めていくかを見定めるとことがむしろ大事なのではないでしょうか。

尾原 もしそういう人がブレインパッドには5、6人いたらという前提で、LIFULLさんの領域に適用していくということになったら、どういうところでやりますか(笑)?

草野 これは量子コンピューターに限らず、「AIをうちで何か使いたいんですけど、いいアイデアはありませんか」といった相談もほぼ同じパターンです。

尾原 たぶんあと2年後くらいには、「量子コンピューターで何かやりたいんですけど」とブレインパッドさんのところに皆来ると思います。

草野 AIと同様に、そのお客様のビジネスを伺いながら、今実現できる技術で付加価値を出せそうな領域をお客さんと一緒にコミュニケーションしながら探っていくというプロセスだと思います。

そして、「量子コンピューターを今すぐ使うのだと量子アニーリング法ですが、もう少しで最適化がより大量に解けるようになります」というようにお伝えすると思います。

尾原 そうですよね。

草野 そこを前提に、最適化で解けるような問題で改善が望めるところはどこでしょう、という話をおそらく積み重ねていきます。

D-Waveが今は2,000量子ビットくらいの性能ですが、2年ごとに倍になっていて1万量子ビットの水準になると、そこそこ使い勝手のある性能が出るという話になります。

そのタイミングで活用できるように、今から何か研究開発を進めましょう、というような流れはあり得るのかなと思います。

(続)

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続きは 5.量子コンピューターが実現する「本当の最適化」とは をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/戸田 秀成/本田 隼輝/浅郷 浩子/尾形 佳靖/鈴木ファストアーベント 理恵

【編集部コメント】

量子的な振る舞いを意識したプログラミングとは、一体どのようなものなのか気になります。次回は、量子コンピューティングが果たして、現在のデータビジネスをどのように変えうるのか、よりリアルな視点から議論します。ぜひご覧ください!(尾形)

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