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7. 宇宙産業を創る人材をどのように教育・育成していくか?

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「今さら聞けない民間発の宇宙ビジネスの魅力」8回シリーズ(その7)は、これからの宇宙産業を支え、創り出す人材育成について。アクセルスペースの中村さんは「宇宙技術者というと特殊な人のように思われるのですが、実はそんなことはありません」と語ります。ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18日〜21日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2018年2月20-22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 4D
今さら聞けない民間発の宇宙ビジネスの魅力

(スピーカー)
石田 真康
一般社団法人SPACETIDE代表理事 / A.T. カーニー株式会社 プリンシパル

小田 健児
株式会社 電通
宇宙ラボ代表/クリエイティブディレクター

中村 友哉
株式会社アクセルスペース
代表取締役

(ナビゲーター)
金田 拓也
株式会社プレイド
Business Accelerator

「今さら聞けない民間発の宇宙ビジネスの魅力」の配信済み記事一覧

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最初の記事
1. 民間発の宇宙ビジネスについてSPACETIDE石田氏が解説!

1つ前の記事
6. 人工衛星データで食糧危機や人口動態を予測できる?

本編


金田 それでは引き続き質疑応答ですが、いらっしゃいますでしょうか。

お願い致します。

質問者4 ありがとうございます。

宇宙産業は、これから日本が産業を作っていくうえでも非常に必要な分野ですが、今ITエンジニアですら不足しているという日本で、若者の技術者の育成をどのように考えていらっしゃるか、現時点でどうされているかということを教えていただきたいと思いました。

宇宙技術者のベースは機械・電気・材料工学

金田 それぞれの観点で話した方が面白いかもしれないですね。

中村 では私から申し上げますと、技術者に関しては、そもそも宇宙というバックグランドを持つ技術者というのは、ほとんどいません。

日本だけでみると、ほんの一握りしかいません。

ただ、宇宙技術者というとすごく特殊な人のように思われるのですが、実はそんなことはありません。

宇宙工学というのは、1つの独立した工学があるわけではなくて、機械や電気、材料といった基本的な工学の上に宇宙に関連して気をつけなければならない知識を加えたものであり、基本的な工学に加えて、そのような知識を習得することによって宇宙技術者になるんです。

ですので、基本的には、宇宙のバックグランドがなければ宇宙技術者にはなれない、そういう人しかなれない、というわけではありません。

なので我々はやはり、さまざまな分野の工学の知識と技術を持つ人をどんどん積極的に採用して、そういった人たちに宇宙に関して気をつけないといけない事柄を、OJTというか、社内の技術者との交流の中で少しずつ覚えていってもらうようにしています。

そのように、社内教育のようなことをやっていかないとなかなか難しいと思っていますし、実際にそうやっています。

加えて、IT技術者についても我々は積極的に採用しています。

弊社は外国人も多いのですが、多くの外国人スタッフは、自分のITスキルが宇宙に活かせると思って、非常に興味を持って入って来てくれています。

そういった人たちと、バリバリの宇宙エンジニアの間のインタラクションも結構面白くて、そういう環境の中で、新しい化学反応が生まれ、同時にエンジニアが鍛えられていく様子を目の当たりにしています。

そのように、技術者が自ら成長していく機会をいかに提供できるかということが重要になっていくかなと思っています。

金田 小田さんはいかがでしょうか?

中高生向け宇宙教育を通して「宇宙人材」の下地を作る

小田 具体的な話をさせていただくと、たまたま、今日も持ってきてよかったなと思ったのですが、これは「スペース・エデュケーションリーダー(宇宙教育リーダー)」の登録カードです。

株式会社 電通 宇宙ラボ代表/クリエイティブディレクター 小田 健児 氏

JAXAが開催する、2日間ぐらい合宿のようなものに通うと、子どもに衛星の利活用の仕方を教えることができるようになるというようなプログラムです。

このプログラムを終了すると何がいいかというと、子どもたち、そして中高生に、宇宙教育のための教材を貸し出してくれることです。

このJAXAのプログラムに限らず、中村さんのところもそうですし、宇宙教育を支える人がいるわけですよね。

それはいいなと思います。

このカードの取得には、別にそんなにお金がかかるわけでもないですし、教える側にもまわれるようになります。

それが1つの取り組みですね。

もう1つが、やはり映像の最後の方のワンカットにもありましたが、日本総宇宙飛行士化計画という、水面下で粛々と進めている取り組みをしています。

何かと言いますと、日本人、もしくは究極的には全人類かもしれませんが、全員が宇宙飛行士になれなくとも、なろうとする過程において、日本ないしは世界の力の底上げになるのではないかと。

先ほども触れましたが、クルー・クライテリアという8個の資質が決まっています。

クルーになるための採用試験ももちろんあるのですが、その資質を習得することが果たして子どもや中高生の教育とか企業のリーダーシップ育成などに役立つのではないか、どのように開発できるか、というようなことを考えています。

その実践として今、福島のある中高一貫の学校で、普段仲良くさせていただいている宇宙飛行士の方々を呼んだりして、子どもの教育や人材育成に取り組んでいます。

結構私の場合はすごく下のところからの宇宙教育ですね。

中村さんはもうガチ現場という感じでやられていると思うのですが、それとサンドイッチして挟むような感じで、下からの教育に取り組んでいます。

官民で継続的にお金を回すことが人材育成につながる

金田 では、石田さんもお願いします。

石田 難しいですよね。2つ思ったことがあります。

なぜ各国の政府がこれまでずっと宇宙予算を頑張って確保してやってきたかというと、1つは当然ながら、国として持っている宇宙インフラを維持しなければいけないからです。

一般社団法人SPACETIDE 代表理事 石田 真康 氏

やはり関係者から話を聞いていても分かるのですが、お金が止まるとプロジェクトが止まっていまいますよね。

そうすると、人材育成にも影響を及ぼします。

やはり人の育成というのは、なんだかんだいってOJTが一番いいわけで、特にエンジニアや技術者というのは絶対に直接携わったプロジェクトの数が最終的にその人のスキルになるのだと思います。

しかし、予算が一気に止まってしまうと、プロジェクト遂行できなくなり、技術者は皆どうするの?となった瞬間に技術の継承が止まってしまったりします。

なので、官でも民でもいいのですが、官と民を合計した宇宙産業全体で動くお金の規模、そしてそれを、継続性を持って回していけるかという点が、やはり技術者の育成という意味では、個人的にはすごく大事なのではないかなと思っています。

宇宙に関わるきっかけを作り、間口を広くする

石田 もう1つは、技術者ではないのですが、SPACETIDEも僕を含めて法人メンバーというのは4人しかいなくて、数百人規模のカンファレンスの運営を手伝ってくれているプロボノが40人くらいいるんですね。

その全員が宇宙のバックグランドを持っているわけではなくて、宇宙に興味があるからだったり、他方で宇宙関連のことをやっている人とかがいたりとかで、もう玉石混合です。

僕自身、宇宙に関わり始めたきっかけが実はHAKUTOのプロボノだったということもあって、このような人材の確保の仕方もあるのではないかなと思います。

中村さんのところもやっているか分かりませんが、昨今のスタートアップではプロボノみたいな人材を結構柔軟に受け入れるところが非常に多いです。

「ハードルを下げる」というと上から目線ですが、やはりいろいろな入口があるべきだと考えています。

これまではやはり、宇宙ビジネスに携わりたいという時には、大手やJAXAに入らない限り、他の可能性はなかなかありませんでしたが、今はたぶんいろいろな間口があります。

宇宙ビジネスのプレイヤーもいろいろな間口を準備してくれています。

そういう入口の数をどんどん増やしていくと、どんどん人材を取り込んでいけるのではないかなと思います。

単に話を聞いているだけではいつまでたっても分からないですけれど、中村さんのところへ行って衛星を生で見て、中村さんと3時間トークすると、ちょっと俺も転職するか、と考える人が出てきたりするのではないでしょうか。

そういうチャンスをたくさん作っていく、ハードルの低いチャンスをたくさん作っていくというのが大事なのではないかなと、今は副業も解禁され、プロボノなど推奨されるような時代なので、そのような間口の開放が結構大事かなという気がします。

やはり手触りがないとだめですよね。

どんなスライドより、どんな動画より、やはり自分でやるのが、人材の獲得にしても教育にしても早いような気がします。

金田 何か、最終的にビジネスに繋がるか、広がるかというようなところも一緒な感じがしますね。

それこそ、どういうデータを取って、どういうビジネスに活かせるかというのも、実際にその場に入って自分の目で見れば、「これは僕のビジネスで展開できるかもしれない」、「支援できるかもしれない」というように新しいアイデアが出てくるのではないでしょうか。

たぶん触れてみないと、なかなか見えてこないのではないかと思います。

僕も今日のセッションを経て、1歩目を踏み出したなという気がしているくらいです。

石田 もう踏み出しました。

金田 踏み出しましたね。

SPACETIDE、いくらでもお手伝いさせていただきます。

運営ぐらいできます。

石田 やった、確保しました。

金田 本当にそういうのが大事かもしれないですね、素地から含めて。

技術者は技術者でゴリゴリやりつつ、手触り感をいかに伝えるかも大事ですね。

ぜひ今日のこのICCサミットの場を、Co-Creationの場にしていただけると嬉しいです。

(続)

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続きは 8.今後の宇宙ビジネスへの熱い想いをトップランナーが語る!【終】 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/戸田 秀成/本田 隼輝/尾形 佳靖/鈴木ファストアーベント 理恵

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