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6. 人工衛星データで食糧危機や人口動態を予測できる?

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「今さら聞けない民間発の宇宙ビジネスの魅力」8回シリーズ(その6)は、会場との質疑応答です。どうしたら宇宙産業に参入できるのか? どのような許認可が必要なのか? 宇宙からのマクロデータで何をどこまで“予測”できるのか? ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18日〜21日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2018年2月20-22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 4D
今さら聞けない民間発の宇宙ビジネスの魅力

(スピーカー)
石田 真康
一般社団法人SPACETIDE代表理事 / A.T. カーニー株式会社 プリンシパル

小田 健児
株式会社 電通
宇宙ラボ代表/クリエイティブディレクター

中村 友哉
株式会社アクセルスペース
代表取締役

(ナビゲーター)
金田 拓也
株式会社プレイド
Business Accelerator

「今さら聞けない民間発の宇宙ビジネスの魅力」の配信済み記事一覧

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最初の記事
1. 民間発の宇宙ビジネスについてSPACETIDE石田氏が解説!

1つ前の記事
5. 今後の宇宙産業の発展に必要な取り組みを徹底議論

本編


金田 残り時間がちょうど30分となり、きりがいい時間なので、真剣に聞いてくださっている会場の皆さんからのご質問等々も受けていきたいと思っています。

ここまでは宇宙ビジネス全般について、そして今は過渡期にあるというようなお話をしてきましたが、今までの話と関係なくても、せっかくの機会なので聞いておきたいという質問があれば挙手していただければと思います。

標準化された小型衛星は簡単に作れる?

質問者1 中村さんにお伺いしたいのですが、衛星を作るというのは、資金調達の難しさを除いて、どの辺が一番難しいですか?

もしくは、例えば僕たちはモノづくりのメーカーを経営しているのですが、「よし衛星を宇宙に打ち上げよう」と決意したとして、どのくらいのステップが必要になってくるものなのかなど、そういったところを少しかみ砕いて教えていただければと思います。

中村 それは、自分の会社で衛星を作ろうと思う場合なのか、どこかに委託する場合なのか、どちらを想定されていますか?

質問者1 自分たちで作るという前提でお願いします。

中村 自分たちで作る場合ですと、例えば今はキューブサットと呼ばれる、「お手軽衛星」があります。

10センチ×10センチ×10センチの、本当に手の平に載るような大きさで、重さ1キロぐらいの衛星です。

これは私自身が大学時代に初めて手掛けた衛星でもあるのですが、今では正確な数は分かりませんが、100ないしは200基ぐらい打ち上げられているように思います。

世界中の大学や企業でそういった衛星開発をやっていまして、そういったところがたくさん出てきたものですから、人工衛星キットのようなものを売り出しているところもたくさんあります。

なので、そういった標準化された衛星であれば、比較的簡単にできるような環境が今は整ってきていますから、そのような小さなテストベッドでもよければ、簡単に参入できますし、お金さえあれば作れる状況になってきています。

ただやはり、それより大きな衛星になってくると途端に難易度が増します。

考えなくてはならないことも多いですし、ロケットの交渉などいろいろと大変になってきます。

その点を鑑みると、人工衛星のファーストステップとしてはキューブサットが1つの可能性として挙げられると思います。

質問者1 先ほどアメリカと日本ないしはヨーロッパの名前が挙がりましたが、日本はよく、物を作るのが得意だと言われると思います。

日本の物作りの強さのようなものが、宇宙ビジネスにおいて、特に衛星を作って打ち上げるような時に、プラスになる要素があれば教えてください。

もしマイナスになる要素もあれば、それも教えていただければと思います。

3Dプリンターの進歩で「日本の技術力の優位性」がなくなる可能性も

中村 たしかに、日本の町工場などは技術力が非常に高いですし、こちらがこういうものを作ってくださいとお願いするような時にも、「ここはこうした方が安くなる」とアドバイスをもらえたりします。

株式会社アクセルスペース 代表取締役 中村 友哉 氏

そのような双方向のコミュニケーションによって、いいものが安いコストで生産できる環境にはあるとは思います。

ただやはり近年では、3Dプリンターの技術などが発展してきていて、衛星も3Dプリンターで作っているようなところがたくさんある中で、この優位性がいつまで保たれるかというのは正直どうだろうと感じています。

これまでの国中心の宇宙開発では、特殊な衛星を1個だけ作るという世界がメインでしたが、恐らくいろいろな民間のプレイヤーが出てくるにつれ、「たくさん作って、コストもできるだけ下げてやっていかないとビジネスにならない」という状況になっていくので、恐らくですが、誰でも作れるような方法になっていくと思います。

そうなった時に、それでもやはり日本でなければできないという要素が残るかといえば、非常に難しいのではないか、今のやり方では難しいかもしれないと思っています。

そういった意味で、我々としてはもちろんそういった技術力が活かせるような部分を使っていくようにしたいと思っていますし、例えばJAXAの衛星であれば毎回違うものですから、使えるとは思っています。

けれども、例えばアクセルスペースのGRUSのようにたくさんの衛星を打ち上げる場合には、将来的にはもしかしたら海外にアウトソースするような可能性もあると思っています。

質問者1 ありがとうございました。

金田 ありがとうございました。

宇宙から石油の備蓄や農作物の状況を確認して金融に活かす

質問者2 野村ホールディングスの前田と申します。

小田さんに少しお伺いしたいのですが、スライドの中で、「金融と宇宙のコラボレーション」というのがあったと思います。

私は大学院の時に、CMB(Cosmic Microwave Background:宇宙マイクロ波背景放射)とインフレーションを研究したのですが、今は金融業界にいるということで、その辺について少しお聞かせ願えたらなと思っています。

よろしくお願いします。

小田 たぶん私より石田さんの方が圧倒的に詳しいと思うのですが。

質問者2 ではぜひお二人にお願いします。

小田 そうですね、金融はやはりマクロで俯瞰してみる、というようなところがまず挙げられます。

金融が何と結び付いているかというと、農業、一次産業で、例えばオーストラリアとか、日本だったら北海道というように、広大な土地、広がりの中で、宇宙データ、リモートセンシングと言われる衛星写真画像を使っていくことが言われています。

株式会社 電通 宇宙ラボ代表/クリエイティブディレクター 小田 健児 氏

その一方で、分解度も、段々過密になっていきますから、また異なる用途が生まれてくると考えています。

「金融×宇宙」の1つの例として今農業の話をしていますけれども、技術が高まってくる中で画像の精度が上がって、画像から得られるデータがインデックスなどにどう連動していくかというところで、ここにきて金融と宇宙が繋がってきています。

農業以外で、よく挙がるのは、石油の備蓄です。

アジアで、中国で、公開されている備蓄情報が、果たして本当に正しいのか問題があります。

衛星で見ると、石油の貯蔵のタンクの蓋の高さが、備蓄量によって上下するのですが、宇宙の衛星データの視点で見て正しい数量を計算するというようなことが行われています。

そういったものも当然、金融に関連してきますよね。

私からはこのぐらいですね。

これから更にどうなっていくかについては、まだマーケット自体が見えていないところもあると思うのですが、どうやら使えるところがあるらしい、ということは既に見えてきているかなという気がします。

金田 そうですね、石田さんの本の中でも触れられていたかと思うのですが。

宇宙からのマクロデータで食糧危機や人口動態を予測できる

石田 小田さんがおっしゃったことが恐らくほとんどだと思うのですが、加えれば、保険などにも使われていますし、先物取引とかにも使えます。

一般社団法人SPACETIDE 代表理事 石田 真康 氏

基本的に、「先読みをしたい」というような分野ですよね。

要するに、投資だったり、ポートフォリオを変えたりというように、何かの価格を見極めたい時です。

その辺がたぶん金融機関の方々が、衛星の技術を使いたくなる一番の理由かなと思います。

たぶん2つあって、1つは衛星から何かの変化量を見ることによって、先が見えるようになると。

でもこれは別に衛星でなくてもできますよね。

例えばIoTは皆それをやろうとしているわけで、別に衛星の技術を使わなくてもIoTを先読みに使えば恐らく一緒なのではないかと思います。

けれども、俯瞰的に見られる、グローバルに均一に見ることができるというのは、世界規模でオペレーションを回している人からすると、意味があることなんです。

金融ではないですが、例えばアメリカの国防総省がとある衛星データ解析ベンチャーにお願いしたサービスは、アフリカなどの穀物の生産量がどうなるかというのを、衛星データなどから類推をするというものでした。

それによって食料飢饉が起きるか起きないかが予測できるようになります。

食糧の過不足というのは民族の移動に結構影響するらしく、そのような人の移動が起こり、それによって何らかの対立が生じると、仲裁に入る、介入する、というような政治的判断が行われるわけですが、事前に予測することができるようになります。

そのような衛星画像の分析を衛星解析ベンチャーにグラントをつけて研究させたと。

そういったマクロな大きな動き、先ほど言及した石油もそうですし、今のような人口動態の予測精度を上げるうえで、地上のデータだけで判断を下すよりも、マクロで得られる画像データに優位性があるというのが1つの理由ではないかなと思います。

金田 ありがとうございました。

宇宙ビジネスへの規制はここ2年で出来てきた

質問者3 いちご株式会社の森作と言います。

お分かりになる方どなたでも結構なのですが、超初心者的な質問で恐縮なのですが、宇宙ビジネスに参入するために求められる許認可のようなものはあるのでしょうか。

例えばロケットを上げるためには、誰かの承認を取らないといけなかったり、国ごとに打ち上げの回数などが決まっていたり、衛星の軌道についても誰かの巨かをもらわないといけなかったり、人が宇宙へ行く時はどうなるのかなど、もし簡単に教えていただけたら幸いです。

お願いします。

中村 実はこれまで許認可というのは必要なかったんですね。

宇宙というのはガチガチの規制に守られた世界だと思っている人が結構いると思うのですが。

金田 完全に思っています。

中村 全く逆で、これまで国しかやっていなかったので、規制が必要ありませんでした。

まさか民間が宇宙開発をやるなんて、ということです。

ここへきて、宇宙ベンチャーが盛り上がってきて民間で衛星を上げたり、ロケットを上げたりしようという動きが出てきたため、2年前に法律ができたというのが実情です。

宇宙活動法と衛星リモートセンシング法という2つの法律ができたのですが、これによって初めて規制を受けることになりました。

我々のように衛星を作る時には、上げる時には一応審査があり、例えばむやみに宇宙ゴミを増やさないだとか、打ち上げている最中にバラバラになったりしないだとか、そういった要件をきちんと満たしているかという点がチェックされます。

金田 結構当たり前のことですね。

中村 当たり前なんですけどね。

そういったことがきちんと担保されているよね、ということが確認されるようになりました。

ロケットも同じで、例えば打ち上げたらどこかの家にぶつかって被害が出たとか、そういうことがあった時にどうするかとか、誰がどのような責任を取るか、細かく決めた法律ができました。

なので、我々の活動の根拠法ができたばかりというような状況ですね。制定の際には我々の意見を参考にしてもらったので、ビジネスに大きな制約ができたわけではありません。

質問者3 写真を撮るに際しても、ここは撮影禁止、というような規制があると思うのですが、その辺はいかがでしょうか。

中村 写真、リモートセンシングに関しては、基本的には細かく見るような写真に関しては規制がかけられます。

具体的に言うと、生写真に関しては2メートルより細かいものを撮る場合には、どういった用途か、誰に売るのか、というようなところをきちんと管理しないといけないとか、25センチだと国の許可がいちいちいるとか、細かいところは忘れましたが、そういう規制ができています。

我々の場合は2.5メートルなので、一切その規制は受けないことにはなっているのですが、そうですね、高分解度衛星ですと、どうしても安全保障とかそういったところについても留意しないといけない状況です。

質問者3 ありがとうございます。

金田 ありがとうございました。

(続)

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編集チーム:小林 雅/戸田 秀成/本田 隼輝/尾形 佳靖/鈴木ファストアーベント 理恵

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