4. ベンチャー必読 知財戦略②「どの段階で知財弁護士と相談すべきか?」 – 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

4. ベンチャー必読 知財戦略②「どの段階で知財弁護士と相談すべきか?」

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「新しいアイデアの実現と法務・知財戦略」7回シリーズ(その4)は、事業開発の過程で「さぁ、知財弁護士に相談しよう」とするべきタイミングについて。西村あさひ法律事務所の水島さんが目撃した「悲劇」とは? ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18-21日 福岡市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2017年9月5-7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 3D
新しいアイデアの実現と法務・知財戦略

(スピーカー)

鮫島 正洋
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
代表パートナー弁護士・弁理士

田川 欣哉
Takram
代表取締役

丸 幸弘
株式会社 リバネス
代表取締役CEO

水島 淳
西村あさひ法律事務所
パートナー

(モデレーター)

尾原 和啓

「新しいアイデアの実現と法務・知財戦略」の配信済み記事一覧

尾原 特にここ3、4年でベンチャーマーケットが変わってきていて、ようやく日本もアメリカのように、IPO(新規上場)だけがEXITではなくて、バイアウト(買収)されるという選択肢が出てきました。

特に大企業や伝統的な企業にバイアウトされていくというトレンドが見られます。

たぶん、FinTechやHRTechなど、リアルとの掛け算になればなるほど、伝統的な会社への売却というのが増えていくはずですよね。

そうなってくると実は知財というのは、言い方は悪いですが、「売却金額を上げるための非常に明確なアセット(資産)」になるというところがあります。

その観点についても言及いただけますか?

大企業との提携やバイアウト、特許はどう生きるか?

鮫島 ベンチャー企業のEXITにIPOとバイアウトがあるとしたら、IPOの場合は別にいい特許を持っていようがいまいが、あまり市場は反応しません。

しかしバイアウトについては、バイアウトを受ける側はその道のプロであることも結構多いですから、いい特許を持っていれば、それは相当値段が上がる可能性があります。

逆にいい特許を持っていなかったら、買い叩かれたり、交渉ができなくなったりする可能性が高いですよね。

そういう意味では、バイアウトの時代になることで、特許の比重が高まる方向にあるだろうなとは思います。

西村あさひ法律事務所 パートナー 水島 淳氏

水島 そうですね、バイアウトというのはすごく先の話に見えてしまうのですが、今の話の流れの中で付け加えると、ベンチャー企業が大企業と組んでビジネスを行うケースがどんどん増えていると思うんですね。

その時に、大企業にピッチをかけていくにあたって、これはもう特許を取得しています、パテントペンディングまで行っていますという話なのか、単に作っただけなんですという話なのかでは、やはり交渉力がだいぶ違ってくるはずです。

資金調達についても同じですね。

ですので、バイアウトまで行かない段階から、特許を持っていることを売り出した方がいいということも多いです。

後は冒頭も少し話にあがりましたが、契約書で、自分が出すプロダクトやサービスが他人の権利を侵害していないよ、という契約条項が付くことがよくあります。

これはサービスの買い手側からすると当然の要求なのですが、特許を取っていれば、それは公に自社の権利として認められた権利なのだということが言いやすくなるという意味で、結構早い段階から効用があるということもできると思います。

それをビジネスに、ピッチにきちんと使っていくということです。

どの段階で知財弁護士・弁理士と相談すべき?

写真左から、Takram 田川氏、リバネス 丸氏、西村あさひ法律事務所 水島氏、尾原氏

田川 タイミングについてお伺いしたいのですが、たぶんラウンドのタイミングごとに知財戦略のステージも上がっていくよというのが理解としては分かりやすいなと思うのですが、先生たちのところにベンチャー企業から相談が来るのはどのタイミングが多いですか?

いろいろあると思うのですが……逆に、いつ来て欲しいですか?

尾原 いつ行くのが一番いいか?どこで来るべきか?

 その前に僕の話を少しさせていただくと、僕は大学発ベンチャーを結構見ていることもあり、その経験から、特許の戦略上、やはり大学の特許を買ってきたり、もしくはライセンスを付与したりというところもとても重要だと考えています。

その大元の特許を先に手に入れることができれば、実は資金調達も少しだけ容易になってくるので、大学発ベンチャー等の技術系のところはまずその辺を特に注意すべきだと思います。

自分たちのところに持ってこられる特許があるなら、買ってしまうんですよ。

そしてその時点で、相談できる弁護士、弁理士のところにできるだけ早く行くべきだというのが僕の持論です。

なぜかというと、ビジョンを共有していかないとなりませんから。

僕は別に出願書類などは書けないので、知財のことを知っている人と相談して、「この内容だったら、この人がいいのではないか」というように、そのベンチャーの相談相手になってくれそうな弁護士・弁理士を提案します。

できるだけ早く知財のアドバイザーは付けた方がいいというのが、僕の考え方ですね。

尾原 たぶん皆さんが一番疑問に思っているのは、「流れは分かった、でもヘソって何よ」という話だと思うんですよね。

たぶん専門家のお二方からすると、「もっと早く来ればヘソを押さえられたのに!」だし、僕らからすると、「いや、だからヘソって何かよく分からないのですが、いつ相談に行けばいいんですか?」ということだと思います。

そこの見極めをどういう風にしていけばいいのでしょうか?

悲劇になる前に「なる早」で!

写真左から、リバネス 丸氏、西村あさひ法律事務所 水島氏

水島 僕は知財だけやっているわけではなくて、新しいビジネスを創る時にいろいろなサポートをさせていただいていて、物によってはレギュレーションを通していくとか、ロビーイングをしていくとか、あるいはサプライチェーンの権利関係をデザインしていくとかいうこともやっています。

これら全部に共通して言えますが、「なる早で」という感じですよね。

何事も前捌き、というのがありますよね。

うちの技術はこの点がすごいんですとか、あるいは今後のこの業界はここが肝になります、ここが勝負になってきますということを、もし技術的なエリアに少しでも被るのであれば、ブレインストーミングベースで特許性などについて話すということはいつでもできるんですよね。

その上で、やらねばいかんとなったら、やる。

やらなくていいとなれば、もう少し待とうかという話になります。

たまにあるのは、相談に来られた時には既にYouTubeで情報を流してしまって、もう結構技術の中味が見えてしまっていた、というようなケースです。

後は、連携している大学の先生が論文で発表してしまいましたとか。

こういうのはやはり悲劇なんですよね。

別に高いお金を払ってコンサルを受けるとか、弁護士に相談するとかではなくて、今僕がやったようなエクササイズ、壁打ちのようなことをやれば見えてくるところもあるはずです。

また、当然のことながら弁護士、弁理士とも特許を出すだけでお金を儲けているわけではないので、価値あるアドバイスをしてくれる人はたくさんいると思うんですね。

ですから早めに、ということをまずは強調したいと思います。

とはいえ、遅れてしまった場合でも、やり様がなくはないので、それはそれで別途相談しましょう、という話です。

やり方はその時により様々ですね。

尾原 まず初歩の話として、なるべく早めに相談に行っておけば、さきほどのような「公知の事実にしてしまいました」というような事態をまず防げますよという話と、ヘソになりそうなプロセスがどこなのかを、事業のモデルを考えていく工程の中で、ある程度一緒に浮き彫りにしていただけるということですかね。

田川 確かに、そのヘソの話で言うと、たぶんモノを作っている人たちが考えるヘソと……

尾原 そうそう。

田川 特許のプロが考えるヘソが全然違うんですよね。

鮫島 若干違いますね。

特許のプロと技術屋で考える「ヘソ」は違う

写真左から、鮫島氏、Takram 田川氏

田川 違いますよね。

僕も先ほど検索したら今までに20件くらい出願しているのですが、知財の専門家の方々と話して、「え?そこなの?」と思った経験があります。

そこが微妙なズレだとしても、やはり分からないことが結構あります。

だから、何か新しいものを作っていく人たちが、これは特許になりそうだなとか、こんな切り口で特許になりそうだなと判断できるようになるには、素振りというか、場数も必要かなと思うんですよね。

鮫島 技術に詳しい人は、「技術的に重要なところ」で押さえたがるんですよね。

だけどそれは必ずしも「誰もが通る道」ではないことが時々あります。

我々のような知財屋はもう少し違う視点、つまり「絶対踏むだろうね」という点で見ているから、少し食い違うと。

尾原 Google時代の経験から述べると、やはり同社が優れていると感じるのは、契約の文書も交渉の一部だからといって一緒にスパーリング・パートナーとして検討してくれますし、特許もリーガルチームが攻撃のため、または防御のためという観点から一緒に見てくれるところです。

リーガルチームのメンバーともよく話すのですが、彼らから来る質問はまさに今のような話です。

技術特異性は分かったから、皆が通るマネタイズポイントはどこなのか?

誰もが避けて通れないユーザーインターフェースは?

そこから上がってくるデータというのをどういう風に蓄積するの?

というような質問を受けました。

技術屋は発生ポイントを見がちですが、そうではなくて後ろの方の、お金にするためには絶対にここを通らざるを得ないよねとか、ユーザーの購買行動を促すために、結局最後は収斂してここを通るよね、というようなところを見たりするケースが多いですよね。

人間の根源的欲求に関わる特許は寿命が長い?

Takram 代表取締役 田川 欣哉氏

田川 なるほど、少し僕の仕事柄、つまりアイデアを作る側の話で考えると、先ほど時間軸がたぶん1つキーワードになりますよねと言いましたが、それはなぜかというと技術革新のワンサイクルがどんどん短くなっているからです。

技術革新のサイクルが短くなっていくというトレンドの中で、息の長い特許をどのように作ることができるのか。

なぜ息が長くなければならないかというと、特許の申請から登録までのリードタイムがとても長いので、少なくとも2年以上の寿命がある技術でないと登録をしても意味がありません。

それこそジェフ・ベソスが新事業を作るための1つのキーワードを著書で語っていました。

「自分は新しい事業を作る時は新しさに着目する、新しいテクノロジーとか、新しい何とかということに着目するのはする。しかしその一方で、神話の書かれたような時代から今まで全く変わらない人間の何かしら根源的なものに応えていく」というようなことでした。

例えば先ほどのワンクリック特許というのは、1秒でも短くしたいという人間の欲求は、今も100年後もあまり変わらないだろうという考えに基づいていて、そういうところこそを自分たちのサービスの主軸に据えるのだ、というような話をしていました。

そういう部分を知財などでしっかり守れれば、表面的な常に刷新されるところについてはあまり知財化しなくてもいいのかもしれませんし、表面的なものは知財化したところでどんどん塗り替えられてしまうかもしれません。

先ほど「ヘソ」と言われた、競合でも必ず通らなくていけない交差点という話とまた別レイヤーなのですが、人間がどうしてもそれをしてしまうというような、テクノロジーとは関係ない身体性、人間のそもそもの生き物としての構造性と密着しているところであれば、結構寿命の長い特許になるのかなと、今思いました。

「技術的な美しさ」は「特許の価値」とは無関係

西村あさひ法律事務所 パートナー 水島 淳氏

水島 これは「特許の価値とは何か」という問いですよね。

いわゆる技術的な美しさと、特許のバリューは、やはり違うと。

特許のバリューというのは、1つには自分がエクスクルーシブ(独占)を取れますよと。

2つ目は、他の人が同じようなことをしている時に止められる。

3つ目は抑止力。

先ほどの話のようにある分野で多くの特許を浮かべているとやはり強いので、他の人に入りにくいと思わせるパワーです。

それと4つ目はライセンスですよね。

これは攻撃のところと一緒ですが、ワンクリックするならライセンス料、ロイヤリティを払ってくださいねという、というところです。

これらをなるべく数値化して特許のバリューを測ると。

今の話には、「技術的な美しさ」というのは1つも入っていないですよね。

だから、先ほど丸さんがおっしゃっていたモノづくり、発明家タイプの人と、どうしても違った視点で見ないといけません。

特許というのは個人でも出願できるので、技術的な美しさを求める場合には、個人で好きなように出願すればよいです。

でもビジネスとして、経営者としてやるのであれば、その視点は一度横に置いて考えていかなくてはなりません。

そこでたぶん息が長い話というのが出てくるわけです。

でもこれは、言うは易し行うは難しの世界で、とても大変ですよね。

誰にも真似できない技術なら、特許は不要?

水島 一般論のついでに話すと、いわゆる誰にも真似できない技術というのは、特許にはしないという考え方があります。

真似できないのですから。

特許というのは先ほど申し上げたバリューなので、そのバリューから逆算すると、真似されそうだよねとか、競合が入ってきそうだよね、という懸念があって初めて、先にお上に認めてもらおう、という考え方なんですよね。

時間軸で言うと、1、2年くらいですぐにワークアラウンドできたりするような技術というのは、そこに撒菱(まきびし)を置いても、簡単に回避できてしまいます。

時間軸としては数年くらいかかる、その数年の猶予の中でビジネスにできるというのであれば特許化する意義が出てきます。

そうでないのであれば、その1、2年の間に、別の差別化要因、例えば商流とかネットワーク外部性とか、認知度とか、顧客基盤とかで死ぬほど稼ぐ、というように戦略を変える方がよいということもあります。

だからつながっているんですよね。

尾原 今の話で大事なことは、結局特許というのは、何らかの抑止力だったり交渉力だったりという競合戦略の中にあるということですね。

その競合戦略の根幹は、例えばLINEの場合、ネットワークの外部経済性があるから、あるコミュニティを押さえてしまえば絶対に負けなくなる、だから半年、ないしは2ヵ月足踏みさせるだけで十分というようなものです。

また、結局範囲の経済だからこの範囲で勝ててもあちらの範囲では勝てないというようなものなどもあります。

このように、競合に対してどのようにして持続的に勝ち続けるかという戦略の型があります。

そのためにどこに撒菱を置くのか、どこで時間を稼いでデータを取るのかというようなところの見極めが大事だということですよね。

(続)

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続きは 5. ベンチャー必読 知財戦略③「PCT国際出願とは何か?国内移行期限は?」をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/横井 一隆/尾形 佳靖/浅郷 浩子/戸田 秀成/鈴木ファストアーベント 理恵

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