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8.「データの中の“化け物”が見えるかどうか」AI時代のサイエンティストに求められる能力とは

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「AIやデータの活用が企業経営を変える(シーズン2)」9回シリーズ(その8)は、AI時代のサイエンティストやリサーチャーに求められる素質・能力について。スマートニュースの鈴木さんは、戦前の物理学者・寺田寅彦のエッセイを紹介しながら、「“化け物”が見えるかどうかが大切」と語ります。一体どういうことなのでしょうか? ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うためのエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2020は、2020年2月17日〜20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2018 プレミアム・スポンサーの日本アイ・ビー・エム様にサポート頂きました。


【登壇者情報】
2018年9月4〜6日開催
ICCサミット KYOTO 2018
Session 4D
AIやデータの活用が企業経営を変える(シーズン2)
Sponsored by 日本アイ・ビー・エム

(スピーカー)
荒川 朋美
日本アイ・ビー・エム株式会社
取締役 執行役員 カスタマーサクセス事業担当

北川 拓也
楽天株式会社
執行役員 CDO グローバルデータ統括部ディレクター

佐藤 光紀
株式会社セプテーニ・ホールディングス
代表取締役 グループ社長執行役員

鈴木 健
スマートニュース株式会社
代表取締役会長兼社長 CEO

(モデレーター)

山内 宏隆
株式会社HAiK
代表取締役社長

『AIやデータの活用が企業経営を変える(シーズン2)』の配信済み記事一覧


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最初の記事
1.「身体を持たずして『知能』は生まれえない」“ルンバの父” R.ブルックス博士が語る人工知能論とは

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7.「実現できたらノーベル賞級」すでに膨大なデータを持つ楽天が“データ生成”のAIを研究する理由

本編

北川 (会場へ向かって) 上原さん、もし何かあれば。

上原 仁 さん 佐藤さんのお話に関連して、AI・データの時代となっていき、たとえば経営者がニュータイプ型の意思決定者、独裁型の意思決定者の時代になったときに生まれてくる職業にはどのようなものがあるか、どのようなものになってくるのか、いろいろなタイプを論じてみたいなと思いました。


上原 仁
株式会社マイネット
代表取締役社長

1974年生。1998年神戸大学経営学部卒。NTTに入社してインターネット事業開発に従事。2006年7月㈱マイネット・ジャパン(現マイネット)を創業し同社代表に就任。自社のモバイルCRM事業を国内3万店舗まで育成した後にヤフーへ事業売却。現在はゲームタイトルの買取・再設計を手がけるゲームサービス事業のリーディングカンパニーとして業界を牽引。2015年東証マザーズ上場後も大型の資金調達やM&Aを駆使し、急成長を実現。2017年には東証一部に市場変更。また、2015-2017年での収益(売上高)成長率は303.42%となり、IT企業成長ランキングの国内15位となった。

先ほども言及があったAI調教師の話もそうですし、今本当に現場実装を進めていってたらそれこそRPA (Robotic Process Automation:ロボティクス・プロセス・オートメーション) の「ボット作る君」みたいなものも職業としてできてくるのではないでしょうか。

そのような感じで、小さいのから大きいものまで、これから先のAIの時代にどんな職業が生まれてくのだろう、というような話が聞けると嬉しいです。

AI・データ時代には、どんな職業が生まれる?

株式会社セプテーニ・ホールディングス 代表取締役 グループ社長執行役員 佐藤 光紀さん

佐藤 実装を進めていく中で、たとえば人事部門などにも変化が現れていて、弊社でも研究者の比率が上がってきています。

さっきのセッションでも、サイエンティストが中心の人事部になってきているという話をしたのですが、たまたま人事というファンクションにおいての話ですけれど、同じパターンをいろいろな組織の中の役割に当てはめていくと、共通しているのはやはり設計のような仕事です。

デザインする仕事というのがやはりすごく大事で、結局、データの活用においては設計思想を持って、かつ倫理感をもって、どのようなデータをプログラムに食べさせるのかを設計しないといけません。

そうでないと、間違った方向にぐんぐん進んでいってしまう、逆に指数関数的に悪くなっていく、そういうリスクも一方であると思います。

山内 先ほどのセッションで佐藤さんから、「うちの人事部にはデータサイエンティストが非常に多い」という話を聞いて、これまた金融の話なんですが、ゴールドマンサックス社では株式トレーダーがほとんどいなくなり、ほとんどシステムの人間や、プログラマーばかりになったというのですが、その話にそっくりだなと思いました。

たぶん、僕の考えでは、マーケティングから研究開発まで、いろいろな部署で順番にそうなっていくと思うんですよね。

佐藤 おっしゃる通りですね。

設計というのは、サイエンスの専門性を持っていることももちろん必要ですが、やはり前提としての「何を作るの?」ということを思想する役割も担います。

そもそも何を作るのかを設計し、さらに倫理観をもってデザインしなければなりませんから、その部分でフェアネスとか、リーダーシップといった能力も必要になります。

そう考えると、やはりサイエンスの上に、アートだとか人間性みたいなものが乗っかってくる状態での機能拡張が必要です。

でも土台としてのサイエンスがないとそれは機能しないので、あくまでその前提として、各部署にサイエンティストがいる状態を作っていきたいと考えています。

将来的には、それぞれの部署にサイエンティストが一定割合いるような状態に移行していくだろうなと思っています。

競争力を左右する「化け物が見えるかどうか」

鈴木 結局、サイエンティストやリサーチャーも、最終的に直観のところに残るわけです。

スマートニュース株式会社 代表取締役会長兼社長 CEO 鈴木 健さん

昔、寺田寅彦という物理学者がいて、その人が『化け物の進化』というエッセイを書いたんですけど、「化け物が見えるかどうか」が科学者にとって極めて重要であるという内容なんですね。

“化け物”が見えるかどうか。

これは本当に真実で、この世界には謎があるというふうに見えてはじめて、科学者はそれを探究するんですよね。

謎というのはそう簡単には分からないんですよ。謎として見えないわけです。

だから、モヤモヤッとしたものが見えるかどうかなんですよね。

最適化というのは、機械がまさに得意とすることです。

最適化する対象の、何らかの軸、たとえばこのパラメーターを上げていきましょうというふうに計算するのだけれども、でもたとえばそのパラメーターを上げていくことが本当に良いことなのか、もしかしたら何かおかしいことが起きているかもしれないわけですね。

究極はすべてハイブリッドシステム。基本的にハイブリッドシステムより強いシステムというのはありません。

山内 そうですね。

鈴木 要は、人間が持っている身体的な能力と、機械が持っている能力の両方のシステムが合体している状態が一番強いわけですね。

究極的にはそれが一番強いんですよ、どちらかではなくて。

そうすると、この軸がそもそも間違っているのではないか、スコアは正しいのだけれども何か変なことが起きていないかな、それはどうしてなのだろうか、こういう謎を見つけられるか、そこに化け物が見えるかどうかが大事になってきます。

その能力をサイエンティストが持っていないと、間違えた方向へ最適化してしまうわけです。

結果として何か間違ったことが起きているのだけれども、皆はそれが正しいと信じていると。

皆が正しいと信じているのだけれども変なことが起きている、でも“化け物”が見えないから、本当のディザスターが起きるまで気付かない、というようなことが起きてしまう可能性があるわけですよ。

なので、人間の持っている、そういう「何かおかしいな、どうしてかな、なぜだろう」と考える能力というのは、常に鍛えないといけません。

ディープラーニングが怖いのは、ブラックボックス化です。

このブラックボックス信仰はすごく怖くて、僕はもともと物理屋なのでブラックボックスではない方程式で書ける世界が好きなのだけれども、あれは裏側で何が起きているか分からないけれどとにかく学習ができています、という世界なんだよね。

なので、すごく怖いんですよね。

けれども、裏側でこういうことが起きているに違いない、だったら検証しよう、というように常に起きていることに対して疑いを持ち続けるのが、たぶんサイエンティストの仕事なんです。

それができるかどうか、そういう人を集められるかどうかが、たぶん競争力に繋がっていくのかなというふうに思いますね。

A/Bテストはヘビーユーザーに最適化されるだけ

楽天株式会社 執行役員 CDO グローバルデータ統括部ディレクター 北川 拓也さん

北川 もう1つ、A/Bテストへの信仰というのがありますよね。

先ほどのブラックボックスの話で、A/Bテストを繰り返せば良くなるのではないか、とにかくコンバージョンが上がるのではないか、というふうにやっていた結果がどうなるのかというと、結局A/Bテストというのは、ヘビーカスタマーの方に最適化されるようになっているんですね。

2:8の法則(パレートの法則)が成り立つようなサイズだと、2割のヘビーユーザーに最適化されるようになっているのです。

それで新しいユーザーを獲得しようとすると、実は現存のデータの延長線上には、新しいユーザー獲得の可能性はあまりないんですよね。

A/Bテストをする時も、実は既存の全体のA/Bテストでコンバージョンを上げてしまうと実はよくなくて、新規カスタマーのコンバージョンのA/Bテストをやるべきだ、というところに思いを巡らせることができるかどうかが問われます。

それがまさにおっしゃっていた、考えなくなった瞬間にローカル最適化に陥る1つの例です。

やはりAIを使っていると、こういったことが山のように起きていて、それを見つけてストーリーテリングできる人材というのがまさに職業として成り立ってくると僕は思っています。

山内 なるほど、ありがとうございます。

議論も盛り上がってきたところですが、終了時間がかなり迫ってきていますので、最後にお一人ずつ、AIやビッグデータに関し、どういったところが今後の企業経営において焦点になってきそうか、一言ずつお願いしてもよろしいでしょうか。

(続)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/尾形 佳靖/戸田 秀成/鈴木ファストアーベント 理恵

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