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注目のベンチャー特集「ウミトロン」 – 宇宙データの活用で狙うICT×水産養殖

注目の宇宙×水産ICTベンチャー「ウミトロン」 – 水産業におけるICT活用の挑戦 をぜひご覧ください。2016月9月6日に開催したICCカンファレンス KYOTO 2016 スタートアップ・コンテスト「カタパルト」プレゼンテーションの書き起こし記事です。今回は、準優勝だったウミトロン社です。ぜひ動画も併せてご覧ください。

スターアップ・コンテンスト「カタパルト」の当日の模様は詳細記事をご覧ください。

スタートアップビジネスの「エコシステム」を構築し、日本の起業家を支援するプログラム「IBM BlueHub」は「カタパルト(CATAPULT)」のオフィシャル・サポーターです。

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2017年2月21-23日開催予定の ICCカンファレンス FUKUOKA 2017 の「カタパルト」登壇企業を募集しております。詳細や募集スケジュールなどはぜひ募集ページをご覧ください。

登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016「ICC SUMMIT」
Session 1B スタートアップ・コンテンスト「カタパルト」

(プレゼンター)
藤原 謙
ウミトロン株式会社
代表取締役

プレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

藤原謙氏(以下、藤原氏) それではウミトロンの会社紹介を始めさせていただきます、よろしくお願いします。

ウミトロンは水産養殖向け宇宙データサービスの会社です。

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藤原 謙
ウミトロン株式会社
代表取締役

1982年大分県生まれ。東京工業大学機械宇宙システム専攻修了。学生時代に小型衛星開発プロジェクトに従事し、2008年より宇宙航空研究開発機構(JAXA)の誘導制御系研究開発員として、天文衛星プロジェクトや海外宇宙機関との共同実験等を担当。2011年、カリフォルニア大バークレー校ハースビジネススクールに留学しMBA取得。在学中、シリコンバレーにてベンチャーの創業支援を行い、2013年から三井物産株式会社にて新事業開発を担当。小型衛星、農業ITベンチャーへの投資を行い、衛星データを用いた精密農業サービスの海外展開に従事した後、2016年に水産養殖向けデータ・サービス会社、UMITRON(ウミトロン)を創業。衛星による地球観測データを活用し水産養殖の生産効率化を行うサービスを開発中。

私はもともとJAXAで衛星開発のエンジニアをしていました。小型衛星の開発に従事しておりましたが、その時にずっと疑問思っていたこと、それは「宇宙開発は世の中の何の役に立つのか?」です。

この疑問に答えきれず、自分で宇宙技術を使って事業を始めることにしました。

水産養殖向け宇宙データサービス

対象領域は水産養殖です。何故水産養殖かというと、宇宙から地球を眺めると、その4分の3は海です。

衛星から地球を眺めることにより、海表面温度や植物プランクトン分布等のデータを採る事ができるからです。

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さて実際こういったデータが何の役に立つのか、愛媛県愛南町の養殖事業者にご協力いただいて、3ヶ月間実証試験を行いました。

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愛南町に伺いますと、湾内にこういった養殖生簀(いけす)が浮かんでおりまして、養殖生簀の上で魚の動きを見たり、養殖事業者とデータの使い方について意見交換を行い、プロトタイプの開発を行いました。


pa250092写真:現場で作業するウミトロン藤原さん(左)と大西水産の大西さん(右)

この実証実験で分かったことは、養殖事業者には3つの悩みがあります。

1つは売上に関しまして、魚の価格変動が非常に起きやすいということ。

そして事業コストに関しましては、餌代が非常に高いということ。

最後に事業リスクに関しましては、赤潮の発生が非常に脅威だということです。

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ウミトロンはこの3つの悩みのうち、餌代と赤潮、これをデータによって解決します。

餌代は生産コストの大半を占める

さて、餌代が実際にどれくらい高いのかご紹介します。養殖事業においては、現在生産コストの6割から7割が餌代に消えております。

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ウミトロン(UMITRON)のアプローチ

この問題を解決するために、ウミトロンは2つのデータアプローチを取ります。

1つは宇宙からです。人工衛星を使って、海面温度やプラクトン分布を取得いたします。

もう1つは海からです。生簀内にセンサーを設置し、海洋環境や魚群行動の直接データを取得します。

この2つのデータを組み合わせることにより、餌の量とタイミングを最適化する、これがウミトロンのアプローチです。

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赤潮被害のインパクト

次に赤潮です。赤潮は植物プランクトンの大量発生により生じます。

一度発生すると魚の大量死を招き、養殖事業者にとっては倒産リスクを招く危険性をはらんでいます。赤潮被害は愛媛県では2012年に12億円、2016年に入ってチリでは800億円の損害を出す等、大規模な赤潮が起きています。

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大量死のメカニズムは、プランクトンが大量発生することにより海中の酸素量が減少し、魚が酸欠するのです。

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これの対処をするためには、魚の酸欠を防止するために魚の酸素消費量を抑えることが重要です。その為には餌を止めます。餌やりを続けると魚が行動を続けますので、酸欠で死んでしまいます。

ウミトロンは、宇宙から人工衛星のデータとして海面温度とプランクトン分布のデータを取得し、海において餌やりの緊急停止を行うことで、赤潮の早期発見、早期対処を行います。

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市場環境

餌の価格の高騰は、愛媛県だけの問題ではありません。原料となるイワシやニシンの漁獲量は世界でここ10年ほど減少の一途をたどっています。

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一方で事業者側となる水産養殖の生産量は人口増と世界的なプロテイン需要の増加を受けて、ここ10年で急増を遂げています。

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この事業の逼迫により餌代の価格は実に3倍に跳ね上がっています。

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実に世界で13兆円と言われている水産養殖の市場の中で、生産コストの半分が餌代に消えていきます。

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また赤潮の発生も愛媛県だけの問題ではなく、温暖化、都市化、海の富栄養化により世界中で発生しています。

中国ではアワビ、韓国ではタイ、スコットランドやフィリピンではムール貝、チリではサーモンに被害が出ています。

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ウミトロンはこの養殖市場の環境変化を参入機会として捉え、世界で餌の1割削減のサービスと付随する事業リスクの提言を行うことで2,000億円の売上を目指しています。

メンバーは私 藤原と、魚の栄養学の専門家であるIchsan、それから今回割愛しましたがDNA解析で新規サービスを開発中のTan’Yaの3名で進めています。

ウミトロンの目指す姿

現在衛星データとしては、公開データに基づくデータを活用しておりますが、これと海からとれる魚群行動や海洋環境の直接データを比べると、直接データの方が重要度が高いと言わざるを得ません。

しかしながら3年後の事業環境を考えてみますと、現在世界中で人工衛星の打ち上げ計画が進んでおり、衛星は250基を超えると言われています。

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この時ほぼリアルタイムでの海洋データが手に入るようになり、ウミトロンは世界にて取得したローカルデータと宇宙のデータを組み合わせることにより宇宙のデータで魚を育てる、これがウミトロンの目指す姿です。

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ご静聴ありがとうございました、ご支援のほどお願いいたします。

(完)

2017年2月21-23日開催予定の ICCカンファレンス FUKUOKA 2017 の「カタパルト」登壇企業を募集しております。詳細や募集スケジュールなどはぜひ募集ページをご覧ください。
スターアップ・コンテンスト「カタパルト」の模様は詳細記事をご覧ください。

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/城山ゆかり/戸田 秀成


【編集部コメント】

注目ベンチャー「ウミトロン」-  宇宙データの活用で狙うICT×水産養殖 で紹介しました、ウミトロン社の水産業向けICTソリューションを試験導入されている愛南町に伺いました。下記の記事もぜひ御覧ください。

ウミトロンの挑戦(1)元JAXA研究開発員 藤原氏が挑む水産業のICT活用

ウミトロンの挑戦(2)水産業の救世主となるか? – 養殖業におけるICT活用の可能性
をご覧ください。

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