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4.イノベーション人材を逃さない! データ活用が個性へのリスペクトを促す

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ICCサミット FUKUOKA 2020 先進企業のデータ活用経営を徹底解剖(事例研究:セプテーニHD / DeNA)の全文書き起こし記事を全7回シリーズでお届けします。(その4)は、AIが見抜く、人材の特性やポテンシャルについてセプテーニ佐藤さんが解説します。一見組織に向いていないように見える、イノベーション人材を留保するには? ぜひご覧ください!

▶ICCパートナーズではコンテンツ編集チームメンバー(インターン)を募集しています。もし興味がございましたら採用ページをご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2020 プレミアム・スポンサーのビズリーチ様にサポートいただきました。


【登壇者情報】
2020年2月18〜20日開催
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 4A
先進企業のデータ活用経営を徹底解剖(事例研究:セプテーニHD / DeNA)
Sponsored by HRMOS(ビズリーチ)

(スピーカー)

佐藤 光紀
株式会社セプテーニ・ホールディングス
代表取締役 グループ社長執行役員

丹下 大
株式会社SHIFT
代表取締役社長

崔 大宇
株式会社ディー・エヌ・エー
執行役員 ヒューマンリソース本部 本部長 兼 コンプライアンス・リスク管理本部 本部長

(モデレーター)

多田 洋祐
株式会社ビズリーチ
代表取締役社長

「先進企業のデータ活用経営を徹底解剖」の配信済み記事一覧

※この議論は前・後編2つのSessionで行われました。SHIFT + お悩み相談会編をお読みになりたい方はこちらへ
【一挙公開】先進企業のデータ活用経営を徹底解剖(事例研究:SHIFT + お悩み相談会)(全6回)


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最初の記事
1. データを活用して「従業員体験」を向上を図るのは、経営の仕事である

1つ前の記事
3.最適な組織編成、利益予測…セプテーニのツールは、どこまでできる?

本編

丹下 働く人のデータを取ってきて、統計値として何か気付きというものはありましたか?

佐藤 データをベースにしていけばいくほど、組織が均質化して同じような人の固まりになっていくのではないかという懸念があったのですが、どうもそうではないということが分かりました。

事業責任者に向いているタイプとは?

佐藤 同質化が進むというわけではなくて、その人が向いているポジションというものが、そもそも大体定義できるということが分かってきたのです。

途中でそれが変わることはあまりなくて、例えば事業責任者に向いているタイプの人というのは、最初から結構わかります。

そのような人は、大体若手の時に問題を起こします。

つまり組織の中で調和してうまくやっていく能力が極めて低くて、けれどもイノベーションを起こす力は非常に強いのです。

イノベーション人材が大企業で埋もれたり、いなくなるのは、とがっている時期に「とがりは駄目です」と同質化を求められて、その結果オミットされることが多いからだと分かってきました。そのような人は辞めてしまうことが多いのです。

もう少し長くいてもらって、現場で実績を積んでからしかるべきポストに就けば良いのにと思うのですが、実際はそうならないのです。

それならば、イノベーション人材や事業責任者タイプなどは最初からわかっているのだから、その人にはそのための経験を積んでもらった方が良いというのが、個性に寄り添った配属ということです。

今我々のグループは30数社になっていますが、事業責任者のデータを見てみるとほぼ一致しています。

多田 若い時には少し「はじかれ者」だったということですか?

佐藤 例えばそのようなことですね。ですから今は、なるべく個性が殺されないようにしています。言い方は難しいですが、最初から「変な人」なので、「変な人」は「変な人」として認めようということです。

ちなみに僕も、データ上は相当「変な人」としてプロットされていて、驚くくらい「変な人」だと言われて(※)、若干ショックではあります(笑)

▶編集注:セプテーニは「AI人事」で組織のパフォーマンスを最大化する 記事中で「1万人に1人ぐらいの登場確率の個性」であったと組織の話で紹介しています。

でもそう言われているので、それは自分の個性だということで受け入れた上で、自分に向いている仕事をしていこうと考えています。

そうすると、異なる個性の人たちに対する尊敬の念が生まれますし、摩擦が減ります。

少し広い話になってしまいますが、AIやデータの活用というのは、究極的に人間社会や組織の摩擦を減らして、幸福度を上げるものではないかと感じています。

データにない個性が開花する可能性も考慮

 今の件で少し意見があります。個性は最初から決まっているという前提に立脚していると思うのですが、一方で、長年会社で働いていく中で、個性がある意味開花されるという考え方もあるのではないかと思います。

その辺りはどのようにお考えでしょうか?

佐藤 我々の持っているデータは、キャンディデイトが就職する時からのものです。

当然おっしゃるように、個性が固定化するまでの「ビフォー」の部分もあると思っていて、そこは非常に重要な研究テーマだと思います。

より完成度を上げたり再現性を高めていくために、個性がどのようにして形作られるかというところまで、研究の範囲は広げていきたいと思います。

最近では、学校のマネジメントの方から、この仕組みの活用についてお問い合わせをいただくことが増えています。我々としても研究対象として非常に面白いと感じています。

教育機関にいらっしゃる方々の話では、中学生あるいは小学校高学年くらいの時期に、個性が固まるような感覚がどうやらあるらしいので、それは何らかのデータで検証できるのだろうと思います。

お答えとしては、入社時点の入口からは、ほとんど変わりません。ほぼ変わらないということが統計的に分かっているので、変わらないことを前提にして問題ないということです。

ただし、その先にはまだ探求する範囲が大いに残されているという理解をしています。

人事は、半分がサイエンティスト

多田 最初に戻ってしまいますが、17年前にはまだデータ云々ということは本当に一部でしか言われていなかった気がします。そのタイミングで『マネー・ボール』の本を渡して「作って」と言ったということは、まさにこの本を経営に生かしたらどうかという観点で、データを取りはじめたということですか?

佐藤 その通りですね。

『マネー・ボール』は、端的に言うと、ヤンキースのようなお金のある強いチームに対し、お金のない弱小チームがどのようにして勝つかを考えて、セイバーメトリクスを使おうとなった話ですが、我々もまさにそのような状況だったのです。

Introduction 02. 「セイバーメトリクスの意義」(1.02 ESSENCE OF BASEBALL)

お金もない、人もいない、さしたる事業もないという状態で、どのように成長していこうかと思った時に、依って立つものはやはり「人」であるということで、その「人」と「データ」にフォーカスしようと決めて、ずっと経営してきています。

事業自体は今いろいろと広がってきていますが、根底にある、人に対する理念というものが、我々の強みなのだろうと思います。

多田 データを常にアップデートしたり、施策を打ったりすると思いますが、今の時点で、何人くらいの方々をここに張っていらっしゃるのですか?

佐藤 うちの人事は、半分がサイエンティストで、半分がいわゆる従来型の人事という状態です。

人事部門の中に「人的資産研究所」という研究所があって、ここはもう完全にサイエンス人材とエンジニアだけという感じです。

サイエンティストとエンジニアだけのチームと、従来型の労務管理や採用などのコーポレートのHR業務をする人たちが、半々という感じです。全体で20人余り、24〜25人くらいでしょうか。

多田 その「人的資産研究所」の方々がやっているものを、このように外部に出してきているということですか?

佐藤 そうですね。あとは、外部のいろいろな大学や企業と共同研究などもしているので、そこまで入れるともう少し外部パートナーさんの人数が加わるという感じです。

https://www.septeni-holdings.co.jp/dhrp/

ハイパフォーマーを見抜くAI

丹下 少し戻って細かいことですが、これがあると給与が読めたりするのですか?

狙っていらっしゃると思いますが、「君がこのチームにいて、このくらいやると、給与はこれくらいになるよ」ということも分かるのですか?

入社する人に対しても、「君の性格だったら、うちの会社ではこのくらいの活躍ができるよ」というような感じになるのでしょうか?

佐藤 それも予測できます。リクルーティングがオンラインで完結するというのも、結局そのようなところにも関係しています。

少し細かいですが、これは、実際に当社の選考を受けた際に面接官が得られるAIからのフィードバックの内容です。

入社するかどうかとは関係なく、選考を受けていただいた学生さんにも、当社のアセスメントの結果を随時フィードバックしたり、数十ページのフィードバック資料をご提供するなど、積極的な情報共有に努めています。

「我々の会社に入ると、3年後にこのような業績を上げて、3年後にこのような評価を得ています」という予測が出ていて、これは人間よりも予測精度が高いことがわかっています。

中央付近にマップのようなものがありますが、これによって「あなたは社内でこのようなグループに位置していて、個性の近い人たちがこのような部署にこのくらいの人数いて、このような仕事をしています」ということが分かります。

さらに選考中のダイナミックデータが下の方にあるのですが、そこではチームの中での相対的な位置が示されていて、「このようなチームでこのような役割をすると成果が出やすいですよ」というように、当社にいなくても役立つであろうことが、アセスメントとして出てきます。

こういった情報が学生にもフィードバックされます。

多田 学生にこれを渡すのですか?

佐藤 はい、渡します。

丹下 それはすごく良いですね。

佐藤 データは個人のものであり、個人の成長と幸せを追求するためにある、という基本理念に則り、このアセスメントも運用しています。

最終的な判断は人が行っていますが、AIの方が良い人を見抜けるということで、人間の場合よりも明らかにAIの方がハイパフォーマーを見抜いているという結果が出ています。

これによって選考時間が大きく削減され、ほぼオンラインで代替できています。

内定者には、個々人に最適なキャリアプランをシミュレーションし、ご提案するというものです。

丹下 ファイナンシャルプランナーのようですね。

佐藤 「このような仕事に就いて何年後にはこのようになる」ということを示していて、給与もパラメータの一つになっています。

多田 このままこの職種にいると給与はこの程度にしかならないということも分かるのですね?

佐藤 給与だけで言えば、ある程度分かると思います。

社会平均の職種ごとの給与というものは決まっていますから、それにある程度のプラス・マイナスがあると考えれば分かると思います。

でも給与だけで幸せが決まるわけではないので、究極的にそれも個人にデータがあって、給与を求めた方がいい人と、求めない方がいい人というのも結構分かってきます。

お金は一つの物差しであって、それ以外の物差しも含めて、総合的にその人にとって良いものを提示していくという感じです。

高いエンゲージメントがデータの大前提

丹下 これは鉄板なのですか?

高確率で当たるのであれば、達成できていない場合は、上司が悪いか自分がサボったかのどちらかなので、もっとお互いがコミュニケーションを取るためのツールとしても使えるということですか?

佐藤 おっしゃる通りです。上司と部下がお互いに利活用するべきで、上司が使いこなせていないケースも存在します。

そうすると、これを上司のトレーニング用にも使って、部下を無能化してしまうマネージャーに対して、なぜそれが起きているのかをアセスメントして、復活させていくということができます。

最近は、マネージャーの復活ケースが結構出てきています。データ活用によって、アナログマネージャーが科学的マネージャーになっていくということで、「ヒラメ筋」のCM に近いような話です。

従来型のマネジメントからデータを活用した近代型のマネジメントに人が変わっていくとしたら、それは部下だけではなく上司の成長にもつながるのだろうと思います。そのような事例が、結構出てきています。

多田 御社で働いている方々は、自分たちのデータが利活用されることに理解があって、変に隠し持ったりせずに、きちんとオープンにしていらっしゃるのですね?

佐藤 そうですね。先ほど申し上げたように、データの活用が個人の成長と幸せにつながるということが、基本理念なのです。だからこそ、質の高いデータが集まるのです。

つまり重要なのは信頼関係で、先ほど会社に対する信頼度のような話がありましたが、やはりそれが高くないと、つまり前提としてエンゲージメントが高い状態が作れていないと、信用に足るデータが集まりません。

データベース、ビッグデータ、AIなども大事なのですが、結局前提となるのは、企業理念の浸透と、人と人の相互信頼や尊敬というバリューの浸透ですね。

理念やバリューの浸透があって初めてできることなので、前提条件は結構複雑だと感じています。

体験版を無料提供する理由

丹下 ここまで作り上げると、もう完璧に完成されている感じですが、先ほど多田さんがおっしゃっていたEmployee Experienceなども含めて、今後やりたい事はあるのですか?

多田 これが商材として売られてしまうと、HRMOSはどうしようかなという感じです(笑)。

丹下 HaKaSe miniを広げられてしまうかもしれません(笑)。

佐藤 いや、全然完成されていなくて、まだ我々の制約化にあるわけです。我々の事業ステージ、我々の人員規模、我々の企業沿革に限られるということです。

まだそのような偏ったデータになっているので、このデータの偏りをなくしていき、規模を最大化していくことで、仕組みとしてもっと良いものになっていくでしょう。

HaKaSeの体験版としてminiを提供しているのは、「AIの活用によって人は幸せになれる」ということ、特に人事周りにおいてはそうであることに、科学的な共通見解を得たいからなのです。

我々単体の状態では偏っていたものが、そのようにして社会的コンセンサスが得られれば、企業でも公的機関でも学校でも、究極的には家族でも、人と人との相性や摩擦を滑らかにすることができるのだと思います。

少し大きな話になりますが、人と社会を滑らかにすることで、人類にとって最大多数の幸福に近づくのではないかという思想でやっています。

ですから、データの偏りはまだたくさんあるので、自社でももっと規模を大きくしていきますし、この思想を共有できるパートナーの方々とも協力しながら、より良いものにしていきたいと思います。

ビズリーチさんともぜひ連携して、発展に努めたいと思っています!(笑)

多田 ありがとうございます。後ほどHRMOSの事業も紹介させていただきます(笑)。

佐藤 本当に、いろいろなプラットフォーマーの方々と連携したいという思いがあります。

最近僕は早朝の時間を使って、いろいろな会社の社長さんにこのアセスメントを受けていただき、「こんな感じですよ」と啓蒙しています。

全く足元のビジネスにはならないのですが、この場もそうですが、啓蒙活動としてやっています。

多田 ビズリーチも新しい体制になったので、我々の経営チームにも一度お願いできればと思います(笑)。

佐藤 喜んで。

多田 ありがとうございます。続きまして、崔さんのお時間にさせていただきたいと思います。

(続)

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続きは 5.組織開発には、大局を捉えるサイエンス+「匂い」を捉える施策が必要(DeNA崔さん) をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/フローゼ 祥子/戸田 秀成

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