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「IoTやAIによって人間社会はどう変わるのか?」【K16-1A】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その9)は、会場からの質問を受け付け、IoTやAIによって人間社会はどう変わるのか?というセッションテーマにそって、インタラクティブに議論いたしました。技術が起こす社会変化の本質に迫ります。是非御覧ください。
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ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2016年9月7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016
Session 1A
「IoTやAIによって人間社会はどう変わるのか?」
(スピーカー)
落合 陽一
筑波大学助教 ・ メディアアーティスト
河瀬 航大
株式会社フォトシンス
代表取締役社長
矢野 和男
株式会社 日立製作所
理事 研究開発グループ技師長 兼 人工知能ラボラトリ長
(モデレーター & スピーカー)
中村 洋基
PARTY
Creative Director / Founder
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最初の記事
【新】IoTとビックデータの活用で3分間の歯磨きが劇的に変わる(PARTY中村)【K16-1A #1】
1つ前の記事
人工知能が生む出す新たな職業「AIer」とは何か?【K16-1A #8】
本編
中村 では、次の質問まいりましょう。
質問者2 レノボ・ジャパンの留目です。よろしくお願いします。
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留目 真伸
レノボ・ジャパン株式会社
代表取締役社長
NECパーソナルコンピュータ株式会社
代表取締役 執行役員社長
1971年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。総合商社、コンサルティング、外資系IT等を経て2006年レノボ・ジャパンに入社。常務執行役員として戦略・オペレーション・製品事業・営業部門統括を歴任。2011年からNECパーソナルコンピュータの取締役を兼任し、責任者としてNECとのPC事業統合を成功に導く。2012年、Lenovo Group米国本社戦略部門に全世界の企業統合の統括責任者として赴任。2013年4月よりレノボ、NEC両ブランドのコンシューマ事業を統括。2015年4月より現職。レノボ・グループVice President。
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先ほどの落合さんのコメントと似ていますが、個人の生活がどうなるのかというのを知りたいです。
特に、僕のように普通に会社に勤めて、1つの会社から給料をもらって、生活している場合に、大学を出てから、社会との関わり方や会社との関係性といったものがどのように変わって、自分の人生にどう影響が出て来るのかが気になります。
今の当たり前のような生き方が変わっていくと思うのですが、そこを皆さんがどうお考えなのか知りたいです。
中村 そうですよね。IoTやAIで便利になることが増えると思うので、その向こうに何が起こるのか、便利になった結果、僕らの生活がどう変わっていくのか、という話はぜひ今日出来たらいいと思います。
もうお一方に聞いてみましょうか。
質問者3 慶應義塾大学の琴坂と申します。
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琴坂将広(コトサカマサヒロ)
慶応義塾大学
准教授(SFC・総合政策)
慶応義塾大学准教授(SFC・総合政策)。数社の起業を経験の後、マッキンゼー・アンド・カンパニーの日本およびドイツを拠点に主に海外企業の経営支援に従事。その後、オックスフォード大学に移籍し、経営学の優等修士号と博士号を取得。立命館大学経営学部を経て、2016年より現職。フランス国立社会科学高等研究院アソシエイト・フェロー、(株)アピリッツ社外取締役、(株)ユーザベース社外監査役を兼務。専門は、国際経営における経営戦略、および、制度と組織の関係。フランス国立社会科学高等研究院アソシエイト・フェロー、(株)アピリッツ社外取締役、(株)ユーザベース社外監査役を兼務。著書に『領域を超える経営学-グローバル経営の本質を知の系譜で読み解く』(ダイヤモンド社)、共編著に『マッキンゼーITの本質 情報システムを活かした「業務改革」で利益を創出する』(ダイヤモンド社)、分担著に『East Asian Capitalism: Diversity, Continuity, and Change』(オックスフォード大学出版局)などがある。
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技術は2000年、3000年と人間社会を変えてきたのですが、これまでの技術とIoTやAIの違いは何なのか、IoTやAIがバズワードとして注目を集める所以、特性について聞いてみたいです。
また、IoT・AI・ビッグデータは関連しているように見えるのですが、その関連性がクリアに理解出来ていないので、そのつながりを教えて頂けると嬉しいです。
IoTやAIによって人間の生活はどう変わるのか?
中村 IoTやAIによって、個人の生活がどうなるのか、またどう代替されていくのかといった質問について意見交換出来ればと思います。
私は、エスカレーターの手すりを拭く仕事の方を見るとシンギュラリティーという言葉を思い出していますね。
それから、どういったワクワクすることがあるのか、ハピネスについて話してみたいです。また、ビッグデータとの連携やビジネスとして上手くいくコツといった点が論点になるかと思います。
その中でも僕がまず聞いてみたいのは、ハピネスですね。
先程のお話で言うと、人間がアクティブに動き回ると、仕事も上手くいくし、その結果幸福度も上がるといいことづくめですよね。そうすると、社会としてはどうなっていけば、もっとワクワクするかなということに興味が湧きます。
人工知能とデータによってコストをかけずに個別解を導き出せる
矢野 最初に誤解を解いておきますと、先程人間の動きを加速度センサーで測定していると言ったのですが、よく質問されるのは、「たくさん動いたらハッピーになれるのでしょうか?」ということです。
そういうことでは一切ありません。
よく歩き回っている営業さんの方が、机の前に座って仕事しているプログラマーさんより幸せであるということはありません。
統一的に測定は出来ても、非常に無意識的な動きをコントロールすることは出来ないです。
この1年で15社ぐらいに導入頂いているのですが、ハッピーな状態を統一的に測定出来ても、どうやってハッピーになるかは千差万別ということです。会社によっても異なるし、1人1人全く異なります。
ある会社では、課長さんが早く帰った場合に、みんながハッピーになりましたし、他の会社では、課長さんがこまめに声掛けした場合にみんながハッピーになりました。
あるいは、違う部署では、契約社員の方がみんなとよくコミュニケーションをとっていると、みんながハッピーになりました。
または、ある製造業の会社で、コミュニケーションが大事であるという活動を積極的に行っていて、元から平均値よりもコミュニケーションが多い会社でした。
そちらに対して人工知能とデータが出した答えは、30歳以下の若手が1時間以上の会議に出ていると、みんながアンハッピーになっているということでした。
コミュニケーションが大事であるという活動が行き過ぎていて、若い人たちは、自分の仕事をしたいのに不要な会議に出されてしまっているということですね。
なので、何が言いたいかといいますと、コミュニケーションを増やせばいいとか、動けばいいとかそういった単純なことではなく、1人1人ハッピーになる方法は千差万別であるということです。
これは当然のことで、バックグラウンドも経験も役割もみんな違うので、こうなったら必ずハッピーになるという安直な解があるわけではありません。
だからこそ、逆にしっかり測定して人工知能とデータによって個別の解を出すということですね。
従来であればコンサルティング会社に何千万円も支払ったとしても解に行き着くことが出来なかったのが、人工知能とデータによってコストをかけずに個別解を導き出せるということです。
これがAIやIoTの最大の特徴なので、何が変わるかというと、今までの一律のベストプラクティスを勉強するという世界から、もっと個別的になってくるということですね。
落合 昔は事例を頭にインプットしてノウハウとして出すのが専門家の仕事でしたが、これからはGitHub(ギットハブ:ソフトウェア開発プロジェクトのための共有ウェブサービス)で管理してソースコードを渡すことで、人間の頭に入る程度の知識でモノを判断することがなくなるのだと思います。
アメリカに行くと、Yellow Cab(イエローキャブ)のタクシーとUberに1回ずつ乗って、毎回サンプリングするようにしているのですが、Uberの運転手の方がYellow Cabの運転手より、とても楽しそうなんですよね。
勝手に理由を推論すると、Uberの運転手の操作するインターフェースは、責任と業務内容をUberのサーバーに委託しているので、何か責任を運転手がとる必要がないし、仕事が不定期に上から落ちてくることもありません。
要するに、走っていて誰かを見つけて乗せないといけないという業務はなくて、乗せると自分で決めた客を乗せて送るだけのスポット仕事が永遠に繰り返されていくので、ストレス負荷が低いのかなと思いました。
中村 Airbnbもそうかもしれないですね。
個人の生活がどうなるかという話について、河瀬さんは何か考えていることはありますか?
河瀬 若い会社で働いていると、秘書が専属でいるわけでもないので、煩わしいと思う仕事がたくさんあります。
例えば、社長が最初にやっていく仕事は、経理とか法務とか面倒くさい仕事ばかりなんですね。
もう少しクリエイティブなことを考えたいのに、事務仕事ばかりやっていることが多くあったので、AIが入ることによって、そういった面倒くさい仕事がなくなっていくのかなと想像していますね。
それは社長業だけではなくて、一般サラリーマン全員が秘書機能を持つような時代が来る気がしています。そういったコンシェルジュ的な機能が創られていくといいですね。
中村 そうですね。河瀬さんには上手くいくビジネスの話も聞いてみたいです。
Akerunのビジネスで現在に至るまで、これはやらない方が良かった、あるいはこれをやって良かったということはありますか?
河瀬 クライアントに原資となるものがあるかどうかというのを私は重視しています。
それはどういうことかと言いますと、例えば、プロダクトがホテルのフロントマンを減らすことが出来るか、その人件費を代替出来るか、あるいは、不動産の仲介会社さんの人件費を減らすことが出来るかを考えるか、もともとクライアントが何かしら支払っていたお金を、自社のプロダクトでリプレイス出来るかを考えています。
上手くリプレイス出来るプロダクトが出せれば、ビジネスとして上手く回るのですが、ネタのようなプロダクトを出すと買ってくれないですね。
AIも費用対効果をどう出していくかが肝ではないかと思っています。
中村 なるほどです。
わざと違うような質問を振ってみたのですが、皆さん同じような領域の話をしているなと感じています。
先日、珈琲屋を始めたのですが、会社を登記するにあたって、クラウド会計ソフトのfreee(フリー)を使用しました。そうすると、驚くほど簡単に迅速に会社の登記を、6万円で作ることが出来て、このサービスは本当に税理士や司法書士キラーだと感じました。
(参考資料:5分でできる最も簡単な会社設立「会社設立freee」)
同時に、そのようにテクノロジーによって代替された時間をどう使うべきなのかについても考えていて、大雑把に言えばクリエイティブなことに使うということかもしれないですが、もう少しこの点について話してみたいと思います。
落合くんはそういうことを考えたことありますか?
落合 人間を歌わせたり、人間に楽器を演奏させたりというのをコンピューター制御でやるのが好きですね。
中村 それは面白いですね。例えば、お芝居は、YouTubeやテレビ越しに見るよりも、生で見る方が面白いですよね。
落合 はい、更に言えば生で演じた方が面白いですよね。
そういったことをやらされれば、マリオネットのようでストレスを感じるかというとそうではなくて、やれないことがやれたことに楽しさを感じます。
例えると、自転車に乗れないよりも、補助輪がついていても自転車に乗れた方が楽しいわけです。
そのようなエンターテイメントが、全てAIの適度な機械学習によってサポートされることで、スマホゲームでレベルアップをするかのように、初心者でも身体機能が補填されて出来るようになっていくというのは可能性があると思います。
矢野 それは仕事には使えないのでしょうか?
落合 運転や調理が上手くなるというのはあるかもしれないですね。
例えば、筋電を制御する研究をしていると、右手3拍子、左手4拍子、足5拍子をすぐ出来るようになります。
認知を使って筋肉にアウトプットするものは、脳と腕の両方のトレーニングが必要なので、少し時間がかかるのですが、ただ単に腕を使っているモノは割と学習が速いです。
中村 機械学習を使うことによって、学習コストが下がるので、本人も楽しいということでしょうか?
落合 そうですね。そのように制御プロセスに組み込んで、カメラ認識して、どうファブリケーションして、腕に装着するのかというのを考えるのが、私の研究室では面白いと思っていますね。
中村 とても明るい結論になってしまって、落ち着かないのですが、結局AIのおかげで、人間は能動的になって、人間ももっと楽しくなるということなのでしょうか?
矢野 そういうことではないでしょうか(笑)。
中村 きれいにまとまりすぎたと感じています(笑)。
落合 洗濯板で洗濯していた時代の方が人間は幸せだったかと言えば、それはそれで幸せにやっていたのかもしれないですが、洗濯機が出来てからの方がテレビを見るような時間が生まれましたよね。
テレビを見ている時間は、井戸端でおしゃべりしている時間よりもきれいですよね。人同士が殴り合うことは起こらないし、唾も飛んできません。
これからの30年の変化は、そういった隔世感を覚えるような変化になると思います。
新技術が生み出す社会的コンフリクト
矢野 昔、洗濯機が生まれたときは、大変な社会的コンフリクトが生まれました。
使わなかった世代の姑たちの世代が「機械で楽をするなんて良くない」と感じて、新しく洗濯機を使いたいお嫁さんの世代とものすごく対立したんですね。
使わなかった世代と、新しい技術が生まれたときに使おうとする世代のコンフリクトは、極めて人間的な現象なので、AIのような新しいモノは必ずそういったコンフリクトを起こすのだろうと思いますね。
ただ洗濯機が生まれた時代は、10数年というものすごく短い時間で高度経済成長したので、洗濯機が受け入れられるのが早かったのですが、今それほどの必然性がIoTやAIになく、より多様な需要に応えようとしているものなので、更にコンフリクトが生まれるのかもしれないですね。
結局、社会に受け入れられていくのに、80年くらいかかるのではないかと思っています。
コンピューターも、デジタルコンピューターの原型を創ったアラン・チューリング氏から、今のように成熟するまでに80年くらいかかっています。
河瀬 洗濯機は、機能が分かりやすくもあり、物質として存在しているので、人間が抵抗感を覚えやすいのかもしれないですが、AIは裏側で密かに動くすごい仕組みとして、意外に抵抗感なく受け入れられていく気がしていますね。
中村 AIが世の中のニーズを解決することへの期待を感じる部分と、先程の事例のようにブランコで1番効率の良い漕ぎ方をしていった結果、人間を超えたように、従来のレベルへ逸脱していくことに対して面白さを感じる部分の両方がある気がしています。
最後に1つだけ聞かせて下さい。
データからユースケースを探す時間と、「あっ!」とひらめくタイミングについてです。
仮説に基づいてデータを採っていくのではなく、多くのデータが目の前にして、そこから抽出出来ることを悩んで発見されることもあると思うのですが、そのユースケースを見つけるコツがあれば教えて頂きたいです。特に、矢野さんや落合さんに聞いてみたいです。
落合 先ほど最大公約数という言葉を使ったのですが、僕の分野はコンピューテーショナルにモデルを解析するので、コンピューテーションのように何が解けるかというのを常に考えます。
計算機で解けるものを並べていくと、共通のアルゴリズムで解いている事例がたまに発生します。
それを抽出して、「この部品は全部プリンターで作る設計法があるはずだ」とか、「このタイプのディスプレイは加工することで作れる」というように、シミュレーションをしておくと、お得そうな物理現象から手をつけるようにしています。
それは、肌感覚としてみんなが持っているのではないかと思っています。
人間が思った「こういうものだ」感があるものは、大体ひとまとまりのグループで解けることがあります。
ひとまとまりのグループの最大公約数を超えてしまうと、急にコストがかかるので、ちょうどいいラインを探していきます。
アウトカムが何か?が重要
矢野 ビジネスの世界でいくと、データを集めて、データから分析して、分析してアクションを決めて、アクションからインプリケーションや実装、デプロイするかを決めるという4段階で展開していくようなやり方をやってはダメですね。
出所:Hitachi AI Technology/業務改革サービスの紹介ページ
ビッグデータやデータ解析、データサイエンスといった言葉は、データを元に分析していく4ステップの流れであると人をミスリードしてしまうのですが、逆に、4から1の順番でやらないとダメだと思っています。
そもそもアウトカムが何か、ビジネスでコントロール出来ることは何かを見定めた上で、必要なデータを決め、そのアウトカムと入力に対して作るモデルを決めるという順番である必要があります。
出所:Hitachi AI Technology/業務改革サービスの紹介ページ
最初に言った1から4にやっていくやり方では採算に合いません。それが、10年以上やってきた我々の経験知です。
中村 分かりました。まさにそういうような回答をお聞きしたかったのかもしれません。有難うございます。
あっという間に時間が過ぎてしまい、個人的にはまだまだ話したいと思っていますが、時間なので一旦ここで終わりにしたいと思います。改めまして、お三方に拍手をお願いします。有難うございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子
【編集部コメント】
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