太宰府天満宮が実践する「地域を支え、支えてもらう」街づくり | 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

4. 太宰府天満宮が実践する「地域を支え、支えてもらう」街づくり

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「地域の魅力を最大化する街づくりの取り組みとは?」全7回シリーズの(その4)は、ICCサミットでもおなじみ、太宰府天満宮 宮司の西高辻󠄀 信宏さんが、1,100年の歴史から語り始めます。菅原道真公の霊廟を祀る太宰府天満宮が、街の発展のために考えた、約50年前の施策とは? ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 ダイヤモンド・スポンサーのノバセル にサポート頂きました。


【登壇者情報】
2021年2月15〜18日開催
ICCサミット FUKUOKA 2021
Session 4B
地域の魅力を最大化する街づくりの取り組みとは?
Supported by ノバセル

(スピーカー)

小池 洋輝
九州旅客鉄道株式会社
事業開発本部 まち創造担当部長

髙島 宗一郎
福岡市
市長

他力野 淳
バリューマネジメント株式会社
代表取締役

寺田 航平
寺田倉庫株式会社
代表取締役社長

西高辻 信宏
太宰府天満宮
宮司

(モデレーター)

各務 亮
THE KYOTO
Editor in Chief & Creative Director

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1. 福岡市 髙島市長も参戦!地域の魅力を最大化する街づくりを徹底議論!

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3.「世界一のアートシティをめざして」寺田倉庫が取り組む天王洲の街づくり

本編

1,100年超の歴史を誇る「太宰府天満宮」宮司・西高辻󠄀さん

西高辻 信宏さん(以下、西高辻󠄀) 初めまして、太宰府天満宮の宮司を務めている西高辻󠄀と申します。


西高辻󠄀 信宏
太宰府天満宮
宮司

太宰府天満宮の御祭神 菅原道真公の末裔。昭和五十五年太宰府市に生まれる。東京大学文学部卒。國學院大學大学院にて修士号(神道学)並びに神職資格を取得。太宰府天満宮に奉職後、ハーバード大学ライシャワー研究所客員研究員として留学。神職としての祭祀奉仕に加え、積極的に美術展企画やまちづくりに携わる。平成三十一年四月一日付にて太宰府天満宮第四十代宮司を拝命。

大宰府は、福岡が発展する前は九州を治める役所があった場所で、7世紀からの古い歴史を持っています。

御祭神である菅原道真公が京都から流されて亡くなって、御遺言により埋葬された場所が太宰府天満宮です。

お墓の上に神社が創建された、日本では非常に珍しい神社であり、全国天満宮の総本宮であります。

お墓であるため代々子孫が継いでおり、私は40代目で、1,100年を超える歴史があります。

▶編集注:ICC FUKUOKA 2021の特別プログラムとして開催された「太宰府 歴史探訪ツアー」のレポートもぜひご覧ください
「半端だと追いつかれるから、抜けていく」1100年続く太宰府天満宮の歴史と革新を学ぶ、特別プログラム同行記【ICC FUKUOKA 2021レポート】

明治期の日誌を参考に、コロナ禍に対応

西高辻󠄀 1,000年前の古文書など資料もたくさん残っていますが、昨年新型コロナウイルス感染症が広がった中で過去の感染症の歴史はどうだったのかを調べたところ、和紙に墨で書かれた明治期の日誌の中に見つかりました。

明治12(1879)年の日誌に「コレラ病蔓延の勢に付、神仏祭礼の儀、当分延期」という内容が書かれていました。

コレラが日本中に蔓延し、行政から色々な祭礼を延期するように通達があったため、祭礼を延期しながらも、出来る形で実施していったことが分かりました。

この1年間、コロナの中で祭礼の実施について非常に悩みましたが、これを参考にどうやって実施できるか考えながら、しっかりと対応してきました。

つまり、歴史を紐解くと様々なヒントがあるということです。

今はデジタルが強いですが、和紙に墨で書くと1,000年以上残ることが証明されているので、太宰府天満宮でも毎日の日誌はデジタルと和紙の両方を残しています。

駅や駐車場を、あえて少し離れた場所に設置する理由

西高辻󠄀 街づくりにおいて大事にしているのは、神社だけではなく「地域で考える」ということです。

明治期に鉄道ができましたが、駅で降りた方が参道を通ることで街が発展するようにと、少し離れた場所に駅を誘致しました。

Maps Data:Google©2021 Maxer Technologies.planet.com

写真の黄色い線が参道です。

また、私の祖父は昭和34(1959)年にハーバード大学に留学しており、車社会の激的な進展を経験していました。

野球が好きだった祖父は、人々がボールパークに車を停めて野球を観に行く姿を見て、「これだ!」と思ったらしく、帰国後に大きな借金をして、1,000台収容可能な駐車場用地を手に入れました。

Maps Data:Google©2021 Maxer Technologies.planet.com

写真の青く囲った部分です。

これも参道の手前に造ったので、ここに車を停めて参道で消費をし、街を楽しんでからお参りしてもらう仕組みになっています。

最近は神社やお寺の横に駐車場を造ることが多いですが、お参りして帰るだけだと街が衰退してしまいます。

私たちはこのように、街づくりの観点で「地域とともにどうあるか」を考えることで、地域を支え、また支えてもらう循環構造を推進してきました。

季節感を大切にし、地域の人が誇れる場所に

西高辻󠄀 また神社としては「季節感」を大切に考え、伝統的要素に加え四季折々の自然を守り、増やすのはもちろん、季節を五感で感じていただく取り組みを行っています。

例えばおみくじは年間10種類あり、季節ごとに色を変えています。

参拝する方に季節を感じてもらい、おみくじを結んでもらうことで、境内の景色を作っていただいています。

七夕には近隣の幼稚園や保育園から飾りをいただいたり、地元の方が参加できる夏祭りを開催したりと、彼らが誇りに感じる場所・立ち寄れる場所にしたいと思っています。

現代アートを境内に展示

西高辻󠄀 私自身が非常にアートに興味があるため、15年前から現代アートを中心にアーティストを招聘し、天満宮や神道、自然をテーマにした作品を制作してもらい展示しています。

太宰府天満宮×現代アート?権宮司・西高辻氏が語る「伝統と革新」(ICC FUKUOKA 2017)

これはライアン・ガンダーさんというイギリス人アーティストの作品で、境内にパーマネントコレクションとして展示しています。

彼はリサーチの中で「日本人は目に見えないものを大切にしている」という点に注目し、磁力という目に見えないものをテーマにこの作品を制作しました。

境内にある作品は、このようにマップで回れるようにし、境内美術館というHPも別に設けています。

フィンランドのテキスタイルアートの展覧会を企画した際は、マリメッコ社からテキスタイルの提供を受け、街も含めて境内に全く違う要素を配置する取り組みを行いました。

フラワーアーティストのニコライ・バーグマンさんとも、これまでに3回ほどご一緒させていただいています。

こうした取り組みを、神社側から主体的に企画し行っています。

隈研吾氏デザインの「スタバ太宰府天満宮表参道店」

西高辻󠄀 そうしたところ、様々な方が太宰府に興味を持ってくださったり「いいね」と言ってくださる中で、地域の方の意識も変わってきました。

平成23年に参道にスターバックス(太宰府天満宮表参道店)を誘致した際、「普通のスターバックスではダメですよね」ということで、オーナーさんとお話しして建築家の隈研吾さんにお声がけしました。

この店舗は世界のスターバックスのベスト10にも選ばれ、これがきっかけで隈さんは「スターバックス リザーブ®︎ ロースタリー 東京」のデザインも担当することになりました。

このように、神社が積極的に色々な取り組みを行い街を変えていく、人を変えていくということをしています。

幼稚園の和菓子・日本茶体験で文化を伝える

西高辻󠄀 また街づくりに加え人づくりということで、我々は幼稚園(太宰府天満宮幼稚園)も運営しております。そこでは、和菓子学習や日本茶学習というプログラムを取り入れています。

昨今は文化と生活が離れてしまい、中々文化が生活に根付いて残っていきません。文化を生活の中で自然と息づかせるために、誕生祭の日に食べていたケーキを、博多を代表する和菓子店である「鈴懸」の季節の和菓子に変更しました。

和菓子を通じて、普段目にしている自然や歳時行事を五感で感じてもらうのが狙いです。

和菓子はアレルギーを引き起こしやすい原料を含むことが少ないので、みんなで同じものを食べられます。

また近年は家庭での茶葉の消費が落ち、子どもたちにとってのお茶はペットボトルのお茶や麦茶になってしまっています。

急須を持つご家庭はほとんどありません。

そこで私たちは、八女茶(※)を通じて子どもたちにお茶の魅力や淹れ方を教え、急須も各家庭にプレゼントしています。

▶編集注:主に福岡県八女市・筑後市および八女郡広川町で生産される日本茶のブランド。

子どもが学ぶと親も同時に学ぶことができるため、このようにして生活の中に文化を取り入れようと取り組んでいます。

各務 ありがとうございます。

1,100年の歴史の中に、コレラに関する知恵があったというのは心強い話ですね。

(続)

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続きは 5. コロナ禍における「交流」や「観光」をどうアップデートするのか? をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/尾形 佳靖/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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