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7. 人間を理解するとは何か? その探究の価値は「理解しようとしている」ことにある【終】

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「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?」7回シリーズの最終回。果たして、私たちは人間をどこまで理解できるのか?そして「人間の理解」の先に、どのような社会を築くべきなのか? 最後までぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

ICCサミット FUKUOKA 2019のプレミアム・スポンサーとして、Lexus International Co.様に本セッションをサポート頂きました。


【登壇者情報】
2019年2月19〜21日開催
ICCサミット FUKUOKA 2019
Session 2F
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?
Supported by Lexus International Co.

(スピーカー)

石川 善樹
Campus for H
共同創業者

井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO

岡島 悦子
株式会社プロノバ
代表取締役社長

北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員 テクノロジーディビジョン CDO (Chief Data Officer)

(モデレーター)

村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表

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最初の記事
1. 諸科学は万物をどのように「理解」しているか? 自然科学・社会科学・人文科学で異なる“理解の作法”

1つ前の記事
6. 個人データの蓄積が拓く新学問「ヒューマノーム」は、人間の未来を予測する

本編

石川 それにしても村上さん、「人間の理解」が深まってますね~!

早くもシーズン2の香りがしてきましたよ(笑)!

村上 深まりましたねえ。

シリーズ化されるかどうかは皆さんのアンケートの結果にかかっていますので、ぜひよろしくお願いします(笑)。

小林 雅 ありですよ!

北川 でもまず、お客様の意見を聞かないと(笑)。

▶編集注:アンケートの結果、本セッションを聴講した方の82.1%が「最高だった」と回答し、ICCサミット FUKUOKA 2019の全70セッション中、堂々の2位に輝きました!詳細はこちらのレポートをご覧ください。

「自分」という人間は、自分以外にいない

村上 井上さんに1つ質問です。

例えばクローン人間を造ったとします。遺伝子の配列が全く同じ2つの個体が出来ましたと。

そうした場合でも、環境が違えば、というか環境を全く同じものにしたとしても「違う人間」になると聞いたのですが本当でしょうか?

井上 双子がその典型ですよね。

全く遺伝子が同じでも、環境の違うところに住むと、容姿が変わります。

例えば、紫外線を受けて皮膚のDNAがダメージを受けると、シミやシワもできやすくなりますし、がんになることもあります。

一方、本当に同じ環境で全く同じように育てばどうなるかというと、「多分、限りなく似た人間になるだろう」としか言えないですね。

石川 アメリカですごい実験が昔、行われました。

Campus for H 共同創業者 石川 善樹 氏

ある時、「私たち、すごく似てない?」というふうに瓜二つの他人どうしが出会うケースが続出したのです。

村上 「ドッペルゲンガー」のようなものですか?

石川 そうではなく、自分に双子がいると知らずに育った人たちが、双子の一方に20数年ぶりに出会ったという報告が全米で相次いだのです。

実はこれは研究者の壮大な実験(※)で、映画にもなっています。

▶︎編集注:米国の児童心理学者ピーター・ニューバウアーによって1960年代頃に行われた実験。その記録はドキュメンタリー映画『3人の一卵性の他人(Three Identical Strangers)』として公開されている。

「色々な事情があって育てられない」と言われた双子や三つ子を引き取り、お金持ち、中流、経済的に厳しい家庭に無理やり振り分けて育てるとどういうことが起こるのか?を見る実験だったのです。

井上 彼らをずっと追っていたということですね。

岡島 残酷な研究ですね…。

石川 もちろん、被験者は何も知らされていなかったので、激怒しました。

岡島 そうでしょうね。

村上 当然、そうなりますよね。

石川 実はこの研究に関する論文は1報も発表されていません。

研究をした先生は2008年に亡くなっていますが、残された膨大なデータは、2065年まで公開してはいけないことになっています(※)。

▶︎編集注:米国イエール大学に保管されている研究データは、2065年10月25日以降に公開される予定とのことです。

実はその双子や三つ子の母親には精神疾患を抱えた方が多く、それが遺伝するものなのか、環依存的なものなのかを調べたかったようなのです。

ですから、研究対象になった人全てが亡くなるまでは公開を控えるという決定がなされたわけです。

結果はそのときになってみないと分からないのです。

井上 知りたい~!絶対それまで生きてやる!!

岡島 生きてるよ、大丈夫だよ(笑)。

石川 生きてる、生きてる!いなくなったとしても、ヒューマノームの中で生きてるから(笑)。

井上 いやいや(笑)、ヒューマノームは「人間とは何か?」を知りたくて立ち上げたんですよ!

株式会社リバネス 代表取締役副社長 CTO 井上 浄 氏

もし全員がデータを提供してくれれば、そのデータを積み上げることで、一人ひとりに関する予測ができるようになります。

みんなのベクトルが見られれば、人類の進化のベクトルをも予測できるかもしれません。

テクノロジーによって分解と蓄積ができる時代になってきましたから、ぜひ、今から始めましょうということです。

石川 やはりこういう壮大な構想は良いですね。

北川 遺伝子の話となると、遺伝子をどう良くしていくかという「優生学」の話になりがちです。

しかし、遺伝子に本来、良い・悪いはありません。

ある環境があったとして、その環境において適した遺伝子があるかどうかというだけです。

村上 適者生存ということですよね。

経営者が「各個人が最も活きる環境」を創るには……

写真左から、村上氏、石川氏、井上氏、岡島氏、北川氏

北川 例えば現代社会においては、昔ほど肉体を駆使する仕事をする必要がなくなってきているので、筋肉に関する遺伝子の評価は高くありません。

一方、近代において評価されがちな「IQ(知能指数)」というのも特殊な定義で、IQが高いことが直接経営やビジネスの成功につながるわけではありません。

▶参照:Why Some of the Most Successful People Aren’t That “Smart”(ThingGrowth.org)

こうしたことが理解されてゆくなかで僕らが試されているのは、「各個人を最も活かせる環境を、経営が創ることができるかどうか」ではないでしょうか。

もしくは社会として、そうした場を創ることが問われるのではないかと僕は考えています。

石川 幸福の感じやすさに関わる「5-HTT(※)」という遺伝子があります。

▶︎編集注:5-HTTは、神経伝達物質「セロトニン」の輸送体であるセロトニントランスポーターをコードする遺伝子。セロトニンは脳内で働く神経伝達物質の1つで、感情や気分のコントロール、精神の安定に深く関与するとされている。

つまり、先天的に幸福を感じやすい人と、感じにくい人がいるのです。

しかし先天的に幸福を感じにくい人でも、小さい頃にたくさん愛情をかけて育てられると、ものすごく幸福を感じるようになることが知られています。

遺伝で決まるのではなく、環境で結果が変わるということです。

村上 後天的な要素が作用するということですね。

岡島 結局は、掛け算なんですね。

井上 人間を理解するのもまた人間ですよね。

「人間の理解が進んだ時の人間」を理解することは次のステージだと言えます。

本当に、これは僕らが追いかけなければいけないテーマだと思っています。

村上 だから…?

井上 これですよ!

データの蓄積によって新しいことを知った僕は、それまでの僕とは違うわけです。

大事なのは「お互いを理解する」ということ

村上 ではそろそろまとめに入りましょう。

さて、この「大人の教養シリーズ」ですがシーズン2があるということなので、皆さん、アンケートに「面白かった!」と書いて後押しをしてください。

北川 正直に書いてもらって構いませんよ(笑)。

村上 「人間を理解するとは何か?」については、我々の知識はもう古いこと、そして最新の研究結果により判明した事実は、ここ10年ほどで急速に増えているということでした。

そして今後、テクノロジーや研究の進化により、もっと分かることが増えていくのでしょう。

そのためにはデータが必要、やはり『FACTFULLNESS』だなと思いました。

岡島 本当にそうですね。

村上 人間とは何か?を100%理解するのは難しいでしょうが、我々が「理解しようとしている」ことに価値があります。

また、最近の経営学の観点から言っても、近年重要性が説かれる「従業員理解」にもつながっているのではないでしょうか。

つまりお互いを理解し合うことが大事で、東洋思想はそれに関してアドバンテージがあることも分かりましたね。

洛中洛外図のように、大局観で理解するのが得意なのです。

岡島 やっぱり(村上さんが日本代表を務める)リンクトインも日本からの発信が大事なのではないですか?(笑)

村上 頑張ってますよ(笑)。

最近のシリコンバレーはポリティカルコレクトネスの風潮が強いので、僕のような英語を母国語としないシニアマネジメントでも受け入れてもらえます。

つまり「英語を話せないShinのことをサポートしないのは、良くない」という風潮があるのです。

英語が話せないから、逆に話を聞いてもらえるという状況ですね!

ということで皆さんも、まず他人を理解し、そして人間を理解していきましょう。

そして、次回をお楽しみに!

井上 1年かけて、研究してきます!

村上 それでは皆さん、ありがとうございました!!

(終)

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編集チーム:小林 雅/花本 夏貴/上原 伊織/尾形 佳靖/戸田 秀成/大塚 幸

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