帝国の作り方(後半):インセンティブで士気を高め、ルールと秩序で統制する | 【ICC】INDUSTRY CO-CREATION

4. 帝国の作り方(後半):インセンティブで士気を高め、ルールと秩序で統制する

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「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン3)」全11回シリーズの(その4)は引き続き、楽天の北川拓也さんが会場の経営者に向けて解説する「帝国の作り方」です。その後半のステップは、「盛大にお祭り」そして「仕組みで統治」とのこと。経営に例えるなら、ストック・オプションによる報酬制度の導入や、ルール策定によるガバナンス強化に相当します。ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2020 プラチナ・スポンサーのリンクトイン・ジャパン様にサポートいただきました。


【登壇者情報】
2020年2月18〜20日
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 2D
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン3)
Sponsored by リンクトイン・ジャパン

(スピーカー)

石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者

井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO

北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員 CDO (Chief Data Officer)

渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー /
慶應義塾大学SFC特別招聘教授

(モデレーター)

村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表

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最初の記事
1. 人気シリーズ第3弾!教養と科学で「人間の理解」はどこまで深まるのか!?

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3. 帝国の作り方(前半):兵を挙げ、圧倒的な領地拡大で「実力」を証明する

本編

ステップ③:「盛大にお祭り」〜分かりやすく祝い、褒め称える

村上 帝国を作るためのステップ1は「起つ」。名乗りを上げ、旗を立てるということでした。

ステップ2は「領地拡大」。全軍前進、とにかく領地を広げることで自身の実力を証明するのが大事であると。

そしてその次に何が来るかというと、これが来ます。

帝国を作るためのステップ3は「盛大にお祭り」です。

北川さん、どういうことでしょうか?

北川 世襲を受けたトップが領地拡大を達成したときに、王の側近は「2世も、なかなかやるじゃないか」「父親に負けず劣らずすごいな」と感じますが、民衆は今ひとつピンときません。

民衆的には、「何か、すごいらしいよ」ぐらいな感じです。

村上 ローマ帝国の市民は、ずっとローマで生活していますからね。

北川 そうです。都市の大きさからすれば、ローマは言わば握りこぶしぐらいの大きさです。

村上 だから民衆は、実際に広がった領地を見ていないと。

北川 はい。民衆に「ゲルマニアが云々」と遠く離れた土地のことを言っても分かりません。

そこでカエサルは、分かりやすいようにコロシアムに民衆を集めてグラディエーター(剣闘士)をやりました。

グラディエーターは、人気取りのためのイベントでした。

渡邉 「パンとサーカス」ですね(※)。

▶編集注:古代ローマの詩人ユウェナリスが古代ローマの社会を揶揄した表現。ローマ市民は帝国からパン(食糧)やサーカス(娯楽)を無償で与えられることで政治に盲目的になり、それがローマ帝国没落の一因になったとされる。

石川 ナチスドイツの3S政策〔スポーツ、スクリーン(映画)、セックス(性産業)〕も同様ですよね。

この3つで民衆の心はつかめると。1936年のベルリンオリンピックがまさにそうでした。

北川 はい。カエサルも、そういうことをやる必要があったのです。

ですから会場の皆さんも、事業が拡大したら分かりやすく肌で感じられるお祝いをしていただきたいと思います!

村上 なるほど。領地が拡大した暁には祭りを開けということですね。

北川 はい。僕はこういうことを苦手としているので、すごく反省しました

石川 分かります。我々は祭りとは無縁の人生を送って来てますからね。

北川 そうですね。僕らは少し地味に祝いがちかなと思うのです。

「祭り」の語源は「松」という説

渡邉 康太郎さん(以下、渡邉) 祭りと言えば、日本語の「祭り」と「松」は語源を共有しているらしいです。


渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー /
慶應義塾大学SFC 特別招聘教授

東京・ロンドン・ニューヨークを拠点にするデザイン・イノベーション・ファームTakramにて、事業開発から企業ブランディングまで手がける。「ひとつのデザインから多様なコンテクストが花開く」ことを目指し活動。主な仕事にISSEY MIYAKEの花と手紙のギフト「FLORIOGRAPHY」、一冊だけの書店「森岡書店」、FM放送局J-WAVEや日本経済新聞社のブランディングなど。新刊『コンテクストデザイン』は一般には流通させず、トークイベントを行った場所や書店のみで販売している。趣味は茶道と、お酒と香水の蒐集。茶名は仙康宗達。番組ナビゲーターを務めるTakram Radioは木曜日26:30~にJ-WAVEで毎週放送中。

日本人はお正月に門松を飾りますが、年の暮れに山に登って松を取ってくることを「松迎え」といい、それを門松として飾ります。

日本では、神様はまれびと(稀人・客人)と呼ばれるように、常に同じ場所にいるのではなく、ふっと来てふっと通り過ぎていくものです。神様に、正月に家に入ってきていいですよと知らせるために、松を掲げました。

石川 門松は、神様とのパーティーのためのものだったのですね。

渡邉 そう、門松は“Party, here!”のサインとも言えますね。

だから「松」は、「何か偉大なものの到来を“待つ”」の意味なのです。

日本語で「お祭り」と言うときの「祭(まつり)」と政治の「政(まつりごと)」は同じ音です。

これらは同じところから来ていて、中国において、祈ることが政治の重要な役割の一つだった時代を映しています。だから日本語でも、祝祭にも政治にも通じるのが「まつり」だと言われています。

(壇上、感嘆の声)

村上 日本において、松は特別な立ち位置にありますね。

日本で古くから続いているエンタメの一つに「能」がありますが、能舞台の正面には必ず大きな松の絵が描いてあります。

能は基本的に幽霊の話です。

渡邉 そうですね。冥界とつながる話です。

村上 雑な言い方ですが、現実の人は出て来なくて、坊主が出てきて幽霊を呼んで、なんだかんだがあって終わるエンタメです。

石川 雑ですよ(笑)。怒られないですか?

渡邉 エンターテインメントというよりも、それこそ「まつり」ですね。何かを呼び寄せて交信する。

村上 そこで祝って神社に奉納したり、政の一貫として広間でやるんですよね。

北川 みんなが実感できる形でやると、「これでいいんだ」と正義感や納得感が生まれるのでしょう。

ちなみに次の絵は出したかったので出しますが、「信賞必罰」はドンとやることも大切です。


『キングダム 第23巻』(集英社)より

現代で言えば、ストックオプションです。

村上 褒美を与えて分かりやすく祝うのですね。

北川 数年前に上場した某ベンチャー企業に創業当時からいた人は、みんなエンジェル投資をしていると聞きます。

キングダムのこのシーンでは、主人公である信が、活躍の褒美として“飛信隊”という1,000人の部隊が一気にドンと与えられています。

ステップ④:「仕組みで統治」〜民衆に秩序を!

北川 そして最後。4つ目のステップは、「仕組みで統治」です。

みんなで拡大して盛り上がった後は、仕組みで統治する必要があります。

「落ち着きましょう」ということです。

キングダムを読まれている方は当然ご存じだと思いますが、秦朝・漢朝において、法家(ほうか)の李斯(りし)が法治国家を整備したことは、ものすごく大きなことでした。

何せ、紀元前200年頃の話です。

左画像はそれぞれ『キングダム 45巻/46巻』(集英社)より

村上 我々日本人が貝塚をつくっていたころに、中国では法律をつくっていたのですね。

北川 当時、王や君主の存在、帝国の存在は当たり前でした。

秦の始皇帝という絶対的な権力者がいるにもかかわらず、法治国家に移行するのは普通に考えたら異常なことです。

李斯の前には商鞅(しょうおう)という人がいて、極めて強く法治国家の重要性を説いた歴史があります。

これは一代では成らず、数代にわたって法治国家について信じていた墨家(ぼっか)などがつくり上げたのが、秦朝だったといわれています。

石川 1月から12月の暦がつくられたのもこの頃ですよね。

井上 それも仕組み化ですね。

石川 春夏秋冬と、自然の中でなんとなく生きていた民衆に秩序を与えようとして、暦がつくられたのだとキングダムに書いてありました。

(会場笑)

渡邉 ユリウス・カエサルの“ユリウス(ジュリアス)”は「July」の語源ですが、まさに彼も、在位中にユリウス暦を導入しましたね。

井上 こうして見ると、ローマ帝国が一番、つくるのが難しそうですね?

北川 そうですね。ローマ帝国という単位で見ると、実はたくさん失敗をしています。

皆さんご存じのとおり、カエサルは独裁制を敷いて、最終的には「ブルータス、お前もか」という有名な言葉にあるとおり、腹心のブルータスに暗殺されています。

強いリーダーシップは国を統一し民衆を導くにはすごく大事ですが、それだけでは長く持たないということです。

カエサルの死に際の一息は、現代に浮遊している?

渡邉 カエサルがブルータスに刺されて、「ブルータス、お前もか」と言ったときの最期の一息には、だいたい2.36×10の22乗分くらいの分子が含まれていたと言われています。

地球上に存在する大気の分子総数は1.09×10の44乗ぐらいで、カエサルの息も、2000年の間にだいたい均等に混ざります。

そうすると、我々が空気を1回吸うごとにカエサルの最期の一息に含まれた分子を2.7個ぐらい吸っていることになります。

私たちは「シーザーの空気分子」を吸っている(BOOKウォッチ)

「お前もか」というのは、僕たちもカエサルだと。

石川 つまり?

渡邉 俺たちの中にもカエサルが生きている(笑)。

村上 会場の皆さんは「ふん、ふん」と聞いていますけれども、老舗の鰻屋のタレのような話ですよね。

継ぎ足し、継ぎ足しのような。

(会場笑)

井上 小さいボウルに入れて、どこまで伝説のタレが入っているか、テレビなどで検証をよくやっていますね。

(続)

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続きは 5. 帝国の作り方(おまけ):地方有力貴族を生かしたまま、官僚を送り統治する をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/フローゼ 祥子/小林 弘美/戸田 秀成

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