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5. 帝国の作り方(おまけ):地方有力貴族を生かしたまま、官僚を送り統治する

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「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン3)」全11回シリーズの(その5)は、楽天の北川拓也さんが解説する「帝国の作り方」最終回です。数百年にわたって続いた帝国の多くは、優れた官僚制度により辺境の部族を見事に統制していたのだそうです。企業経営においても、異質な人材・事業の共存が必要となる局面があるかと思いますが、その参考になるかもしれません。ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2020 プラチナ・スポンサーのリンクトイン・ジャパン様にサポートいただきました。


【登壇者情報】
2020年2月18〜20日
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 2D
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン3)
Sponsored by リンクトイン・ジャパン

(スピーカー)

石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者

井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO

北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員 CDO (Chief Data Officer)

渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー /
慶應義塾大学SFC特別招聘教授

(モデレーター)

村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表

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最初の記事
1. 人気シリーズ第3弾!教養と科学で「人間の理解」はどこまで深まるのか!?

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4. 帝国の作り方(後半):インセンティブで士気を高め、ルールと秩序で統制する

本編

石川 先日聞いた話ですが、中国では伝統的に、王が家臣に対して次のような問いを投げかけます。

「良い王とは何か」と。

そこで家臣が調べてきては「良い王はこういう王です」というのをずっとやりとりしてきたのですが、多分、このタイミングでその問いに変化があったのだと思います。

左画像はそれぞれ『キングダム 45巻/46巻』(集英社)より

「良い王」かどうかは個人のリーダーシップについてですが、おそらくその視点が「良い統治とは何か」に変わったのではないでしょうか。

中国の歴史を見ると、「良い王」「良い統治」に関して、色々なティップスがあります。

例えば「領地拡大のときに成果を挙げた者を、その後重要な地位につけてはならない」です。

拡大期と安定期では、求められているキャラクターが違うからですね。

村上 会社でも、フェーズが違えばマネージャーに求められる資質は違いますよね。

おまけ:「異民族の統治」〜辺境の地を治める

井上 僕は、問いが変わる「ステップ3」から「ステップ4」にいく過程は、すごく人間らしいと思いました。

▶編集注:楽天の北川さんはここまで、“帝国の作り方”として「①起つ」「②領地拡大」「③盛大にお祭り」「④仕組みで統治」の4つのステップがあると解説しました。

僕が思ったのはステップ3までは菌の増殖と全く同じだということです。

菌がある場所に①生着して、②増殖して、③胞子をばらまいて、でも菌は自分たちを統治できないから、駆逐されるわけです。

だから、「問いを変えられる」ことがすごく重要だなと思いました。

逆に菌が自分たちを統治できるようになったら、やばいですね。

(会場笑)

北川 まさにそのとおりで、なぜ秦がわずか20年で一度滅びたかというと、統治の方法を移行できなかったからです。

ずっと拡大期でいたので、統治の仕方を誤ったのです。

先ほどの善樹さんの話に通じますが、異民族の統治を間違えていたと言われています。

異民族を過酷な支配下においてしまい、いわゆる地方のトップをうまく活用できなかったことが、秦が滅びた理由の一つです。

石川 やはり、辺境から滅びるのですね。

北川 そうです。

地方有力貴族を生かしたまま、官僚を送り統治する

北川 それを漢朝は見ていて、反乱で1回秦朝を滅ぼしていますが、その後やり方を変えました。

過酷なやり方をする代わりに、羈縻政策(きびせいさく)と呼ばれる地方の有力者を活かす政策で税収を得て、非常に豊かな国をつくりました。

面白いことに、どの国も必ず周辺民族の有力貴族を残したまま、官僚を送りつけています。

「好きにやってよい」と言いながら、ガバナンスを利かせるためにある程度の官僚を送り込んだのです。

村上 現代においては、株を持って取締役を送り込むような話ですかね?

北川 そうですね!

渡邉 社外取締役は、人類の知恵なのですね。

北川 現代においても、M&A(企業買収)した会社をどのように統合しマネジメントするかは永遠の課題です。

昔はそれこそが、帝国が滅びる理由になっていたのです。

村上 日本も徳川幕府が参勤交代によって大名にお金を使わせて、地方の国力を削ぎつつも自治を与えることで300年近く続きました。

これも同じような話ですね。

北川 はい。ローマ帝国のカエサルは属州総督として活躍することで旗を上げましたが、視点を変えると、属州にいたカエサルをうまく登用したと見ることができます。

それ以前のローマ帝国は、ローマ市民のみが市民権を持っている「人間」であり、それ以外の属国の人々は全員「奴隷」でした。

しかしある時期から、ローマにいない属州の民も人間としてふるまってよいとするようになりました。

だから、400年間ももったのです。

400年続く帝国には、優れた官僚制が敷かれている

北川 もう一つすごく面白いと思ったのは、どこの国も帝国なので君主制が極めて強いのですが、ガバナンスのために官僚制も敷いていることです。

左画像はそれぞれ『キングダム 45巻/46巻』(集英社)より

ビジョンとミッションを持った強力なリーダーと、それを取り囲むルール作り、文化や国法の指針、スケールする仕組みを持った官僚の人たちが国を存続させているという相反する関係性は、僕はすごく勉強になりました。

石川 これからは役員と呼ばずに、官僚と呼びますか!「執行官僚」と。

村上 新しいガバナンスが生まれました(笑)。

北川 日本だと「官僚」という言葉に色がついてしまっていて、ビューロクラシー(官僚制)は「やっていてはいけないこと」として使われることが多いと思います。

しかし本当に400年国を維持しようとしたら、官僚のあり方をしっかりと考えなければ国はもちません。

井上 400年後に綻(ほころ)びが生じてくるとしたら、何が一番のきっかけになるのですか?

北川 それは、すごくグッド・クエスチョンですね。

(北川さん、無言で石川さんに視線を送る)

村上 そこは人に振るんだ(笑)。

石川 やはり、中心にいる人たちは長くやってると、次の時代のビジョンを失うんでしょうね。

その一方で、薩摩藩や長州藩のように2つの文化圏(徳川と海外)に挟まれた辺境の人たちのほうが、次の時代のビジョンを考えざるを得ない。

ゆえに、帝国は辺境から崩れるんでしょうね。

渡邉 辺境の人たちはいずれ与えられたシステムを回すことに疲れてしまう。フリーライダーになるか反逆者になるかのどちらかですね。

どちらもうまくいかないから、それで辺境が崩れていくのでしょう。

人間は、本能的にサプライズを求める生き物?

石川 人間の本質の一つに「変化を求める」があります。

好奇心旺盛な我々人間が何を嫌うかと言うと、「変化がないこと」です。

さすがに400年も続くと、もういいだろうと飽きてきます。

徳川幕府もそうでしょう。やはり停滞感が出てくると思うのです。

ですから、リーダーの重要な条件に「常にサプライズを起こし続ける」ということがあります。

楽天の三木谷社長も、サプライズを起こし続けているじゃないですか。

北川 そうですね。「よし!英語化だ」とか。

村上 ソフトバンクもそうですね。飽くなき領地拡大、飽くなき好奇心の赴くままに。

石川 仕組みをつくりながらも、サプライズを起こし続けることが大事なのではないでしょうか。

井上 ところで、栄華を極めた帝国が400年を経て滅びるとき、華麗に散ることができればなと思ったのですが、やはり最後は蝕まれて散ってしまうのですか?

北川 いずれの帝国も、最期は決してきれいな終わり方ではありません。

村上 グダグダからの総崩れで、カオスになって、また誰かが現れるを繰り返していますよね。

井上 なるほどねぇ。

(続)

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続きは 6. 未来を創る人間は「3年計画」と「2段階構想」で大志を実現する をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/フローゼ 祥子/小林 弘美/戸田 秀成

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