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「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン3)」全11回シリーズは(最終回 )です。リバネス井上浄さんは、免疫細胞の“境目”に関する研究を人間組織に応用した「リンパ組織論」を提唱します。歴史に学ぶ帝国の作り方、イーロン・マスクに学ぶ未来の作り方、誤読を生み出すコンテクストデザイン、そして人体の理解。すべては「人間の理解」のために…? 最後までぜひご覧ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2020 プラチナ・スポンサーのリンクトイン・ジャパン様にサポートいただきました。
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【登壇者情報】
2020年2月18〜20日
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 2D
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン3)
Sponsored by リンクトイン・ジャパン
(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者
井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO
北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員 CDO (Chief Data Officer)
渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー /
慶應義塾大学SFC特別招聘教授
(モデレーター)
村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表
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▶「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン3)」の配信済み記事一覧
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最初の記事
1. 人気シリーズ第3弾!教養と科学で「人間の理解」はどこまで深まるのか!?
1つ前の記事
10. 人間を理解するためのリンパ組織的考察〜僕らの境目〜
本編
井上 もう一つ、免疫細胞の「境目」を観察した例をお見せします。
僕はこのデータを思い浮かべながら、先ほどの「帝国の作り方」の話を興味深く聞いていました。
これはマウスの脾臓を染色したもので、緑色がT細胞、青くなっているところがB細胞の一部です。
赤で見えるのがB細胞の一種で、上段の写真はきれいな線になっているのに対して、下段は境目を超えてしまっています。
実は、下段はある病気のマウスの脾臓です。
つまり「境目が曖昧だと、不具合が起こる」のです。
歳を取っていくとだんだん不具合が起きてくることは、人間の組織も一緒なのかもしれないと思いました。
そこで、僕は「リンパ組織論」を思いつきました。
人も細胞も、境目から出れば良いというものではない
井上 皆さん、これからは「リンパ組織論」です!
「やたらめったら境目を出れば良いわけじゃない」
もしよろしければ、企業で講演させてもらいますので、声を掛けてください。
(会場笑)
僕は大変危惧しております。
近頃皆さん、イノベーションやコワーキングとか、ただ外に行けばいいと思っているでしょう?
もちろん、そこに意志があればよいと思います。
しかし意志がないにも関わらず外に出てしまっては、先ほど言ったとおりエネルギーをかけて維持していた境目がなくなり、それが原因で不具合が起きます。
石川 なるほど!
井上 だから僕は、それぞれ違う個性を持った免疫細胞たちが、ギュッとリンパ組織に集まって機能している臓器を見ながら「リンパ組織論」に気づいてしまったんです。
石川 Spleenバンザイ!ですね。
井上 バンザイです。
渡邉 やたらめったら出ればいいわけではないけれども、めちゃくちゃ綿密に設計して出ることはできますよね。
例えばマルセル・デュシャンが勝手に泉とか言ってギャラリーに便器を置こうとして止められるとか、アンディ・ウォーホルがキャンベルスープ缶を……
村上 芸術におけるレディメイドの話ですね。
井上 ……すみません、僕の理解を超えています(笑)。
(会場笑)
境目の消失は、世界の老化を意味するのかもしれない
井上 そこで老化の現象を見ていくと、もしかすると「外で自由に働けばいい」という流れは、実は老化に向かっているのではないかと危惧をしています。
北川 つまり、今の日本は「帝国の400年の最後」だということですね?
井上 そうです! だからずっと帝国の話を、興味を持って聞いていたのです。
ギュッとしておくこともすごく大事で、「やたらめったら広がればいい」のではないんじゃないか?と、思い始めています。
B細胞の集団とT細胞の集団を分け隔てて維持するには、それ相応のエネルギーが要ります。
そして、そこに境目があるのはそうしておく意味があるからです。
ですから僕たちがやるべきことは、その「境目」を維持しつつ、そこでしっかりと反応を起こしていくことなのではないでしょうか?
「さぁ研究だ!!」ということで、研究はまだまだ続きます。
(会場拍手)
石川 世界が老化しているなら、今こそ「起つ」ときです。
北川 そのとおり! 今こそ次の400年をつくらなければいけないですね。
過去も未来も、アートも科学も、全ては「人間の理解」に
村上 すごく面白いのが、帝国の作り方、未来の描き方、コンテクストデザイン、人体からのリンパ組織論と色々な側面から話をしてきましたが、やはり「人の動き」に帰結しているのです。
今のデータを浄さんからもらったときに僕が思ったのは、「あれ? だとしたらトランプ大統領はどうなんだ?」ということです。
オバマ前大統領が行った様々な政策に対して、トランプ大統領はそこをギュッと引き締めて、境目をバンと引きました。
コンフリクトが起きているけれども、それによってアメリカの経済や株価はものすごく伸びました。
井上 全てを囲えばいいかというとそうではなく、囲うところと出ていくところの「呼吸」を整えなければいけないと思います。
長い年月でマウスの免疫細胞の一生を見ると、先ほどのように境目が曖昧になって広がっていきますが、実はリンパ組織の中で免疫細胞は寝たり起きたりを繰り返しています。
一日のスケールで免疫細胞を観察すると、リンパ組織の中にいてギュッと集まっているときと、ふわっと広がっているときがあります。
これはホルモンで調節されていて、日内変動と呼ばれています。
そういうものをちゃんと動かしていかないといけなくて、ある一面だけ切って見ればいいというものではありません。
外に行っている人たちがいるのだったら、改めて組織をギュッとまとめてみようとする、そんな取り組みも求められているのではないでしょうか。
石川 面白いじゃないですか!
井上 これが「リンパ組織論」です。一緒にやります?
石川 やりましょう(笑)。
村上 「リンパ組織論」はいける気がします!シーズン2の「動的平衡」(※) ともつながりますよね。
▶3.「平穏無事が最善なり」京都・石清水八幡宮の世にも珍しいおみくじとは
結局「正しい戦略はこれだ!」と言っていても、揺れるのです。
この「揺れ」をどうコントロールするかが大事ということですね。
井上 ずっとギュッとしていても反応は悪くて、それはそれで不具合が起きてしまいます。
村上 ありがとうございました。
というわけで、今回は浄さんのリンパ組織論で締めくくってもらいました。
今日は、帝国の作り方を4ステップに分けて歴史から「組織論」を学びました。
そして未来の構想をどうやって実現するかについて、イーロン・マスクの火星移住計画を例に企業のイノベーションと産業のイノベーションの二段階が必要だという話がありました。
ただ、人間は個々人がやりたい思いで動きます。
組織のトップがいくら「辺境に行くぞ!」「ここを守るぞ!」と言ったとしても、個々人はそのメッセージを自分の読みたいようにしか読みません。
そしてそうした誤読こそが、人間の「知」の本質でもあるということをコンテクストデザインから学びました。
石川 さすがリンクトイン!
(壇上・会場拍手)
ICC KYOTO 2020「シーズン4」でお会いしましょう!
村上 ちょうど終わりの時間が来たようです。
(立ち上がって) 会場の皆さん、いかがでしたか?
シーズン4が続くかどうかは、皆さんのアンケートの回答にかかっています。
石川 途中で、(小林)雅さんからシリーズ継続のOKをもらいましたよ。
村上 とはいえ、モデレーターとして気になります。
ICC小林 シーズン1から見た中で、一番良かった気がします!
(会場拍手)
井上 ここにきて「一番いい」とはすごいですね!
村上 我々はやはり、大会場ではなくてこうしたライブ会場向きなんですよね。
次回もこんな感じで行きたいと思います。
会場の皆さま、登壇者の皆さまどうもありがとうございました!
▶編集注:開催後アンケートでは参加者の92.2%が「最高だった」と回答し、全体7位(聴講型セッションとしては堂々の1位)に輝きました。ICCサミット KYOTO 2020では、シーズン4の開催を予定しております。ぜひご期待ください!
(終)
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/フローゼ 祥子/小林 弘美/戸田 秀成
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