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7. 帝国がもたらす、3つの圧倒的Well-beingとは

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「新シリーズ 歴史から学ぶ「帝国の作り方」全10回シリーズ(その7)は、楽天 北川さんが、なぜ私たちは帝国を作るべきなのか、帝国がもたらす圧倒的Well-beingを3つ挙げて解説します。この主張は、納得できる方も多いのではないでしょうか?ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2021は、2021年2月15日〜2月18日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

ICCサミット KYOTO 2020のプレミアム・スポンサーとして、Lexus International Co.様に本セッションをサポート頂きました。


【登壇者情報】
2020年9月1〜3日開催
ICCサミット KYOTO 2020
Session 5B
新シリーズ 歴史から学ぶ「帝国の作り方」(90分拡大版)
Supported by Lexus International Co.

(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者

宇佐美 進典
株式会社CARTA HOLDINGS 代表取締役会長 / 株式会社VOYAGE GROUP 代表取締役社長兼CEO

北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員 CDO (Chief Data Officer)

深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役

山内 宏隆
株式会社HAiK
代表取締役社長

(モデレーター)

琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策)

新シリーズ 歴史から学ぶ「帝国の作り方」の配信済み記事一覧


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最初の記事
ビジネスカンファレンスでなぜ「帝国の作り方」を議論するのか?

1つ前の記事
6.「なぜ、私は世界統一を目指すのか」北川 拓也の主張

本編

石川 では、世界統一の話に戻りましょう。

北川 世界統一に向かっていっていいですか?

琴坂 向かいましょう!

深井 途中でしたね(笑)。

(会場笑)

国境が閉じていく今こそ、世界統一を

北川 第三次世界大戦みたいものが、実際に現実的な危機としてあります。現在、ブロック経済(※)が起こりつつありますし、国境が閉じていっているので、僕は非常に危機感を感じています。だから世界統一しましょうという話をしています。

▶編集注:1929年の世界恐慌でイギリスやフランスが敷いた経済体制で、自国や連合地域の利益を守るために、排他的な経済対策をとること。

そこから“GAFAM”(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフトの頭文字)ならぬ“SORAM”から学ぼうと。

(会場笑)

石川 Sは秦、Oはオスマン……そういうことでしょう?(笑)

北川 そうそう(笑)。ただ、深井さんから、このうちの2つぐらいをバッサバッサと斬られたので、若干違うのですけれども。秦はそもそも日本語読みですからね(笑)。

(会場笑)

秦・オスマン帝国・ローマ・アレクサンドロス大王……。

石川 ここだけ名前(笑)。最後はAMで揃えたかったのでしょう?

北川 Aがいなかったのです。Mはモンゴルです。SORAMから学ぶということでやっていきましょう。

楽天 北川さんによる「帝国の定義」

北川 既に深井さんが「帝国とは何か?」について定義してくれましたが、僕も似たような感じです。

▶編集注:Part.1で、深井さんは帝国を、①複数の地域や民族に対して広範囲に君臨した国家/王朝、②その君臨が長い期間(数百年)続いた国家/王朝と定義づけしました。

「馬鹿でかい、多様な領域を統一すること」を帝国と呼びたいと思います。

石川 深井さんとほぼほぼ同じです。

北川 ただ僕が注目したのは、「統一」です。

「統一」は確かに“今的”ではありませんが、ここで敢えて「何を統一するのか」を考えることが大事だと思い、この言葉を使いました。

振り返れば、過去の帝国はありとあらゆるものの統一でできています。過去の帝国は土地であり宗教であり、経済を統一することで成し遂げられてきたという側面がかなり大きかったと思います。

なぜ帝国を志すべきなのか?

北川 深井さんが言っていたように、宗教に関しては寛容な帝国も多かったと思いますが、中には「宗教の統一」に主眼を置くことで作られてきた帝国もありました。

一方で、現代のプラットフォームでは、科学や政治思想、もしくはコミュニケーションを統一することで帝国化しようとしているところがあります。

やはり「統一するものを何にするのか」を考えるのはすごく大事だと思います。

私が持ってきたこちらのグラフも、深井さんのとすごく似ていますね。思考がだいぶかぶってきました(笑)。

帝国はなぜ大事なのでしょうか?

なぜなら、世界史はほぼ帝国の歴史でできているからです。帝国なしに何かを語ろうとするのはそもそもおかしな話だということです。

石川 確かにそうですね。

北川 そしてここが大事です。「なぜ帝国を志すべきか?」という話を冒頭でもしましたが、僕は、「帝国を作ったおかげで人類の幸せ、Well-beingが劇的に良くなったのではないか」と考えています。

帝国がもたらす圧倒的Well-being①「死なない」

北川 ここから先は、どのように帝国を作ることによってWell-beingができてきたかをお話ししていきたいと思います。

第一に「死なない」。圧倒的に平和です。

(集英社刊『キングダム』40巻P15より)

身体的なWell-beingは大事です。「死なない」のが大事だということで、コミック『キングダム』でも、始皇帝が「だから戦争をこの世から無くす!」とおっしゃっていました。

帝国がもたらす圧倒的Well-being②「経済拡大効果」

北川 2つ目は、「経済的Well-being」です。交易による経済拡大効果は大きいです。

経済学者のデヴィッド・リカードの言うように「比較優位」 があるので、交易をすればするほど人は豊かになります。

リカードが発見した貿易の大原理「比較優位」(池上彰のやさしい経済学)

あとはインフラによる正の外部性、法整備による負の外部性の抑え込みなどがあり、この外部性というのがすごく大事です。

帝国があるからこそ、正の外部性で国が潤う

北川 深井さんもオスマン帝国のイスラーム法に、法体系があったメリット(※)についてある程度お話しされましたが、例えば漢帝国は車輪の幅を決めました。

▶編集注:Part.2にて、イスラーム法の中に民法、刑法、商法などの法体系があったたため、国作りが容易だったと言及。

大英帝国では、第二次産業革命にスティーブンソンが決めた鉄道の幅でした。鉄道で移動するための幅は決めておかないと、隣りの市に移った瞬間に幅が違って通れないのでは、人が移動できなくなってしまいます。こういったことは非常に大事なスタンダーダイゼーション(標準化)でした。

同様にローマ帝国は、上下水道、街道、公共建築物等々のインフラを整備しました。

これは国が作らないと絶対に作れません。なぜならコストが高すぎる一方、利益を受ける人が無数なので、「どうしてあいつらのために俺が作らなければならないんだ」という話になるからです。インフラは、必ず国家もしくは帝国という存在がなければできません。

ですから正の外部性には、やはり帝国もしくは国家というコンセプトが必要だったのです。

琴坂 これに関しては、どちらがいいかという調整ができないですしね。

北川 その通りです。それで、ここに書いているとおり、文字、言語、計測、貨幣の規格化が進み、ヒト、モノ、カネ、さらに知識の交易化が進みました。

これは非常に大きかったのではないかと思います。深井さん、何かご意見などありますか?

深井 いえ、このとおりです(笑)。

法整備で、負の外部性経済を防ぐ

北川 次はやはり李斯(りし)ですね。法が大事です。「皆、等しく平等とする」

(集英社刊『キングダム』45巻P126、46巻P28より)

琴坂 (北川さんは)好きだなあ、『キングダム』。

(会場笑)

石川 もうこのまま『キングダム』を読んだらいいんじゃない?(笑)

北川 基本的に『キングダム』を読んでいただいたら全て学べるのですが、僕なりに分かりやすく(笑)。

先ほどは正の外部性の話でしたが、やはり、暴力やわいろの取り締まりをして負の外部性経済を防ぐことも非常に大事です。

石川 今だったら環境問題などですよね。

北川 そうです。過去の漢、ローマもしくはオスマン帝国の流れを見ると、先ほどイスラーム法によって法整備がなされたという話がありましたが、やはり長く続いた帝国では必ず法整備がされています。

この辺は、深井さんの「帝国はなぜ長く続いたか」というお話とずいぶん混ざってきています。

帝国がもたらす圧倒的Well-being③「社会的寛容が生まれる」

北川 最後に、「精神的Well-being」です。

僕は、帝国になると社会的寛容が生まれたのではないかという仮説を立てています。

確かに皇帝になった瞬間に(兄弟などの反対勢力を)殺したりもしていますが、それが終われば寛容が生まれたのではないかと思います。

これも深井さんの奴隷の話(Part.4参照)でもそうでしたが、漢、ローマ、オスマンなど全部見てもやはり、例えば漢の時代には羈縻政策(※)という、現地の有力者を登用するという制度がありました。

▶編集注:羈縻政策(きびせいさく)は、異民族への統治策で、現地の異民族の有力者に一定の統治権をもたせて征服した土地を管理する方法。

ローマ帝国も同様で、そもそもカエサル本人が属州のトップだったので、カエサルを中央に連れてきて皇帝にしたという歴史があります。

オスマン帝国はキリスト教にも寛容でした。なぜなら戦争孤児を奴隷にして、キリスト教からムスリムに改宗させ官僚や兵士にしてきたからです。

様々な帝国の共通点として、こういった社会的寛容があったと思います。

皇帝の視座

北川 そして大事なのは「皇帝の視座」です。

つまり、皇帝からすると「みんな家族」なわけです。

現場ではいがみ合っているかもしれませんが、「みんな家族なんだから、仲良くしようよ。手伝ってよ」といったことが大事だったのではないかと思います。

このような寛容性は、現代の会社にもあります。

2つの部署がいがみ合う部署を「分かった、分かった」と言って統合して、1人を上に据えてしまうと、その上に据えられた人間はもともといがみ合っていた相手もうまくマネジメントしなければなりません。

能力のある人であればうまく関係性を保とうとします。ですから、偉くなってみるというのは非常に大事なことなのだなと思いました。

石川 一度“地球皇帝”になってみるということですよね?

北川 そうです。一度その視座から見てみるのです。

石川 地球皇帝になって、1月1日にどういう言葉を発信するかですよね。「地球市民の皆さん」と。

(会場笑)

(続)

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続きは 現代における帝国とは? 我々は何を統一すべきなのか? をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成/フローゼ 祥子

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