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「新シリーズ 歴史から学ぶ「帝国の作り方」全10回シリーズ(その6)は、楽天の北川 拓也さんのプレゼン「世界統一のすすめ」がスタート。今現在の帝国といわれるものを振り返りながら、新しい帝国の必要性について訴えます。これに時代の変わり目を感じているスピーカーたちも反応。その根拠とは? ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2021は、2021年2月15日〜2月18日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
ICCサミット KYOTO 2020のプレミアム・スポンサーとして、Lexus International Co.様に本セッションをサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2020年9月1〜3日開催
ICCサミット KYOTO 2020
Session 5B
新シリーズ 歴史から学ぶ「帝国の作り方」(90分拡大版)
Supported by Lexus International Co.
(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者
宇佐美 進典
株式会社CARTA HOLDINGS 代表取締役会長 / 株式会社VOYAGE GROUP 代表取締役社長兼CEO
北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員 CDO (Chief Data Officer)
深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役
山内 宏隆
株式会社HAiK
代表取締役社長
(モデレーター)
琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策)
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▶新シリーズ 歴史から学ぶ「帝国の作り方」の配信済み記事一覧
連載を最初から読みたい方はこちら
最初の記事
ビジネスカンファレンスでなぜ「帝国の作り方」を議論するのか?
1つ前の記事
優秀な君主は、なぜ10代で途絶えたのか? オスマン帝国からの学び
本編
琴坂 さて時間が半分経過しました。後半は北川さんから発表をお願いします。
楽天 北川さんの「世界統一のすすめ」
北川 完全なる私見ですので、よろしくお願いします(笑)。
実は事前に深井さんと全く打ち合わせをしていません。でも、面白いことに結構内容がかぶっています(笑)。
山内 僕たちも全く内容を知りません。
琴坂 北川さんから共有しないように言われていまして。
北川 見たら面白くないですからね。
僕は最初にも言いましたが(Part1参照)、やはり「世界統一するべきだろう」と思っています。
石川 「みなのもの、なぜ世界統一を諦めているのだ?」ということですね(笑)
北川 そうです。みんな、世界統一できないと思っているでしょう?
この春秋時代に統一しようというのはどう考えてもクレイジーだったはずです。見たところ、これは無理でしょう。
しかし始皇帝となる男が、「中華を統一する最初の王になる」と宣言します。このビジョンに僕は打たれたのです。
石川 確かに、地球を統一した最初の王はまだ誕生していませんからね。
北川 そうです! 多分この宣言は「いや、分かった。俺が統一するから」と、今僕がここで宣言するようなものなのですよ。
そろそろ、それぐらいの覚悟感と気合いを入れたほうがいいのではないかと僕は思っています。
人類をまとめる支柱は何なのか?
北川 ここでいきなり、話を現代に引っ張り戻します(笑)。
(会場笑)
深井さんとも時事の話をしないとねという話をしたので、大きく現代に戻すと、「米中の関係の悪化」という状況があります。
アメリカは国内政治優先で国際協調のリーダーシップをとる気がないと、非難されています。
中国は中国で、公安条例のようなものを出して、一気に統合、中央集権化しようという流れがあります。
このような中で僕が思ったのは、今までの民主主義や資本主義は良かったのですが、今のアメリカの民主主義では倫理観がすごく弱いので、どう見たってつまらないということです。
共産主義は共産主義で、香港の問題に共感できず、可哀そうでしょうということを無視しているわけじゃないですか? 共感のない共産主義も味気ないですよね。
石川 確かに。これは非常にいいことを言っていますね。
北川 それで、「人類をまとめる支柱を提案できるのは誰なんだ?」ということを、今世界のみんながこの瞬間に追い求めているのです。
琴坂 熱い!
石川 熱いですね。イスラーム法ではなく”地球法”ぐらいを作ったほうがいいということですね。
北川 まさにそうです! イスラーム法はその当時のコモンセンスだったと思いますが、それに近しいものを僕たちが見つけてビジョン化する必要があるというのが、この「世界統一のすすめ」です。
琴坂 統一というのは人類の支柱を見つけようというメッセージに近いわけですね。
北川 そうです。
石川 帝国というのは、多くの人を長きにわたって貫く支柱があるということですからね。
北川 そうです。信じられるものがあるということです。
琴坂 実際に、ローマの時代はパックス・ロマーナ(※) ですよね。ローマの平和が続き、人は死ななかったというか。
▶編集注:「ローマの平和」の意味で、紀元前27年から180年まで、ローマ帝国の支配領域(地中海世界)内において大きな戦争がなく、平和だった時代のこと。
COTEN深井さん断言「経済で世界をまとめる時代は終わる」
深井 確かに歴史を見ていると「その時代を何でまとめるか」というのは時代によって違います。
基本的にはずっと軍事力なわけです。今まで出てきた帝国は圧倒的な軍事力をもって他の国に対して主権を発揮している状態を保っていて、それが帝国の条件でした。
でも、産業革命以降はそれが崩れて、軍事力による世界の統治ができなくなっていきました。
なぜかと言うと、強大な軍事力によって国をまとめ上げている軍事ヒエラルキー構造の国よりも、例えば大英帝国のように中間層が自由な経済活動をして経済力を持っている国のほうが、結果的に戦争でも強くなってしまうという時代が来たからです。
その結果、軍事ファーストの国は廃れていき、経済ファーストの国が結果的に覇権を握っていきました。
その時代はたぶん今まで続いているのですが、歴史を勉強していてすごく感じるのが、「その時代が今終わる」ということです。
北川 なるほど、今来ていると! この感覚は合っていたということですね。
深井 そうです。たぶん、経済でまとめる時代は終わります。
北川 その通りです。
石川 宗教、軍事、経済と来て、次が何なのかということですよね。
深井 僕の私見ですが、次は「決めないこと」なのではないかと思います。
石川 曖昧さ? 余白ですか?
深井 「全員がいていいことにする」ということです。
宇佐美 多様性、ダイバーシティですね。
深井 そうしない限り、また敵や外部を作らなければいけません。
宇佐美 そうなるともう帝国ではないですよね。多様性を認めるという時点で、いわゆるそのような“状態”を目指すというところがあるので。
イスラーム法によってオスマン帝国が600年続いた
山内 先ほど3つ挙げた「オスマン帝国繁栄のポイント」の中で、僕が個人的に一番大きいと思ったのは、1つ目のイスラーム法というか、もっと言うとイスラム教自体です。
▶編集注:オスマン帝国の繁栄のポイントとして、① 国家運用のパッケージを持っていた、② 初期の君主が全員優秀、③ 出自を問わない人材活用が深井さんから挙げられました。山内さんが話されているのは①についてです。詳細はPart.2 へ。
遊牧民はめちゃくちゃ戦争が強いですよね? モンゴル帝国とオスマン帝国の違いは何だろうと考えたときに、オスマン帝国は1回ティムールに負けているじゃないですか。
深井 バヤジット1世の時代に滅びかけたときですね。
山内 モンゴル帝国は一瞬で消えました。オスマン帝国にあってモンゴル帝国になかったものは、イスラム教、宗教だと思います。
深井 その通りです。
山内 モンゴル帝国には軍事力しかなくて、良くも悪くも宗教にこだわらなかったので、一気に広がりましたが崩れるのも早かったのです。
一方でオスマン帝国は、ムハンマドがやはり偉くて、あれをもう1回700年、800年ぶりに焼き直したら、彼らの軍事力とあいまってあの地域にめちゃくちゃすごいものができたという認識です。
深井 その通りだと思います。少し話が戻りますが、モンゴル帝国が100数十年で崩壊したのに、オスマン帝国が600年続いたのは、イスラーム法の影響が非常に大きかったと思います。
山内 それを企業経営に置き換えると、企業理念や、みんなが依って立つものだと思います。
軍事力は現代に置き換えるとお金だと思います。キャッシュマシンというか時価総額など。でもそれだけではなかなか厳しくて、思想、哲学、宗教、理念のようなソフトが永続性を決めていくのではないかとよく考えています。
宇佐美 漢帝国には、宗教はあったのですか?
深井 漢帝国にはアニミズム的な宗教はありましたが、いわゆるイスラム教やキリスト教的な宗教は存在しませんでした。
山内 どちらかというと儒教、哲学のようなものですよね。
深井 でも、あれは国家統治システムなのです。
宇佐美 なるほど。そういう意味で言うと、儒教というパッケージを持っていたということでしょうか。
山内 漢帝国は一神教ではないですよね。
深井 儒教は実践的な宗教ですね。
急拡大したモンゴル帝国が、中国に吸収された理由
深井 オスマン帝国とは異なり、モンゴル帝国は最初から(帝国を)まとめようという気はありませんでした。大きい帝国を保とうとも考えていませんでした。
イスラーム法を導入することによって遊牧民でなくなり、帝国の運用が始まりますが、その時点で人々は、あまり深くそれについて考えていなかったはずです。
宇佐美 元々北方から来て、いわゆる都に入って定住して軟弱化して、やはりまた次に北方から来た人たちに滅ぼされて……という歴史ですよね。
深井 そうですね。
山内 騎馬民族の概念は現代で言うと金融資本に近いです。ファンドがバンバン買収していくようになって、わーっとバブルになって次から次へと買っていってという。日本にもそのようなファンドがありますが、行くところまで行くという感じですね。
オスマン帝国はもう少し農耕的というか、統治という概念が入っています。
深井 ちょうど僕のPodcast「歴史を面白く学ぶCOTEN RADIO」で話していますが、すごく簡単に言うと、遊牧民にとって略奪はルーティンワークなのです。
▶#116 驚異のサバイバル力!過酷な草原を生き抜く遊牧民の正体
遊牧民は、日々の生活において略奪をしないと生きていけません。物資を持っていないと鉄を作ることもできないし、工芸品を作ることもできませんが、そもそも遊牧民に技術者がいません。
ですから基本的にそれらを交易によって獲得しました。でも交易がうまくいかない場合は略奪をするしかないので、彼らのルーティンワークの中には略奪が入っているのです。
もしそのような人たち全員を集めたら何が起こると思いますか? 外部への略奪です。それがモンゴル帝国があの速さで拡大した理由の1つです。
農耕民族を戦争に行かせようとすると農地を捨てなければならないので、非常にコスト、心理的コストがかかります。一方で、遊牧民にはそのコストが一切かかりません。だから強いのです。
山内 お話を聞いていると、金融資本と産業資本の差のようなイメージを持ちますが。
琴坂 モンゴル帝国はパッケージとして移動し続けることができたというか、サプライを作る必要がなかったわけですよね。どんどん前に進んでいくことができたので、版図(はんと:一国の領域。領土)は広がるけれどもオペレーションは全く回っていない感じですよね。
深井 その通りです。オペレーションを必要としないので、オペレーションという官僚機構を持つ必要がありませんでした。
琴坂 通常の国家だと統治をして次に進んでいかなければなりませんが、『キングダム』でも内政の描写があるように、きちんとやらなければなりませんね。
深井 そうですね。漢帝国のように農耕民族を治めようとすると絶対に官僚機構が必要です。
ですから、モンゴル帝国は中国に吸収されていってしまうのです。
(続)
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続きは 帝国がもたらす、3つの圧倒的Well-beingとは をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成/フローゼ 祥子
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