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7. 仕事も趣味もひたすら多読、慶應義塾大学 琴坂さんの血肉となる読書

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「大人の教養シリーズ『読書』〜ビジネスパーソンこそ本を読め!(シーズン2 )」全9回シリーズ(その7)は、慶應義塾大学 琴坂 将広さんの紹介。「捕食」「100円コーナーを一気買い」など、尋常ではない伏線を見せてきた琴坂さんの読書スタイルが明らかになります。ジャンルを問わず多読・乱読・積ん読、紙、電子書籍、何でも読む琴坂さんが、研究者になることを決めた1冊とは?ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2021は、2021年2月15日〜2月18日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

ICCサミット KYOTO 2020のプレミアム・スポンサーとして、Lexus International Co.様に本セッションをサポート頂きました。


【登壇者情報】
2020年9月1〜3日開催
ICCサミット KYOTO 2020
大人の教養シリーズ「読書」〜ビジネスパーソンこそ本を読め!(シーズン2 / 90分拡大版)
Supported by Lexus International Co.

(スピーカー)
嶋 浩一郎
株式会社博報堂 執行役員/株式会社博報堂ケトル エグゼクティブクリエイティブディレクター

渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー / 慶應義塾大学SFC特別招聘教授

(ゲスト)

川上(全龍)隆史
宗教法人 春光院
副住職

琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策)

高田 修太
一般社団法人HLAB/株式会社エイチラボ
共同創設者COO / プロマジシャン

丸 幸弘
株式会社リバネス
代表取締役 グループCEO

大人の教養シリーズ「読書」〜ビジネスパーソンこそ本を読め!(シーズン2)の配信済み記事一覧


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最初の記事
ビジネスパーソンにとっての読書とは? シーズン2も本を語り尽くす!

1つ前の記事
「理解できないものに挑む読書こそ、価値がある」リバネス丸さんの主張

本編

 丸さんの読書のポイントは、世界を変えるためには、分からないところに突っ込めということでした。

では、次に琴坂さんお願いします。

慶應義塾大学 琴坂さんの読書のポイントとは?

慶應義塾大学 准教授(SFC・総合政策)琴坂 将広さん

琴坂 私は社会科学の研究者です。自然科学を探求する丸さんの対極のほうにいる研究者で、社会や経済、人の集団といったふわふわしたものを、ふわふわしたまま捉えて、理解するするにはどうすればよいかを、ホームラン狙いで研究しています。

学術論文を読み重ねることは趣味なのですが、あまり研究のための研究をしたくないと考えています。なので、国際学会などで論文も発表していますし、熱心に勉強はしているのですが、ちょっと普通の研究者とは違う角度から、いってしまえば明後日の方向から真実に迫れないかを思考錯誤している研究者です。

なので、学術研究ももちろんしているのですが、かなり実業の方にも手を出していて、本当の社会とは何かを理解して、そこにも貢献できる自分を確立したうえで、地道に静かに研究をしていこうと思っています。

私の読書のポイントは、まず、「他者の対話で言及された書籍はその場で、即買う」ということです。

先ほどもすぐに買いましたからね!

(一同拍手)

今この場だけで、たぶん3万円以上使いました。

本当に重要ですよ? だって、嶋さんや丸さんのような立場の方々が真剣に説明して推薦しているのに、その本を買わないなんておかしくないですか?

パースペクティブな視点を持った方が「これは良かった」とおっしゃるのだから、それを盗むチャンスなんです。これほど自分自身の見解を広げてきた癖はないのではないかなと思っています。

ですからもちろん、このようなときには必ず買うようにしています。

2つ目のポイントは、「積読(つんどく)を恐れない。特に小説は複数並行で読み進めろ」です。

今、本があるから買わないというのではなくて、並行読書するのです。

先ほども仕事の読書と趣味の読書を分けていると言いましたが、特に趣味の読書は人生を複線化するのですごく重要視しています。

今だと、せっかくNHK 大河ドラマ『麒麟がくる』が放映されているので、明智光秀など、あの時代を描いた本を片っ端から買い並べています。

寝る前に読んだりすると、その時だけ戦国時代モードになれます。

それを読み終わると、今度は私が興味を持っている生物学をやっている友人に、入門の本を教えてもらったりします。

皆さんもご多忙でストレスなどおありかもしれませんが、そうすることで、世界の中の客観的な自分を取り戻している感じがするのです。

「世界線」(※)という言葉がありますが、読書によって我々が生きている世界線ではない世界線を同時並行的に生きることができ、色々なものを夢見ている感じなんですよ。

▶編集注:相対性理論などで提唱されている概念で、四次元の時空の中で質点が動く軌跡のこと。SF作品などでは転じてパラレルワールドと同義で使われている。

こんなふうに、人とは違うものの見方ができるというか、少し客体的に自分を見ることができるようになっていくというのはあります。

それが、私の趣味的な読書です。

仕事の読書の話については先ほども少ししましたが、データベースを使っていて論文が中心なので、全部PDFにしてタブレットに1万冊以上を入れています。

さらに今まで読んだものを全部メモして、すぐ参照できるようにしています。

図書館で一番本を借りていた学生だった

琴坂 3つ目のポイントとして、図書館や本屋さんに行く時間を大切にしています。先ほども図書館や本屋さんの話が出てきましたが、本をパラパラとめくる時間ってすごく大事だと思いませんか?

1つ目の話と似ていますが、本というのは自分から出会いを作ろうとした瞬間に、もしくは自分の周りの人から言及された本を読んだ瞬間に、自分の周りの世界からしか来ていないということなのです。

つまり、自分が欲しいと思っている本であるという時点で、自分の周りの人が欲しいと言った時点で、自分の周りの世界からしか来ていないということになります。

でも本屋には、自分の周りとは全く関係ないワールドが広がっているので、あまり見ないで買うのです。

極端なのが先ほどの、100円コーナーでとりあえず何でも手に取るというブックオフの例(Part.4参照)です。

CDショップでジャケットだけ見て中身も良さそうだと買うのと同じで、これも自分の世界線が広がる気がします。

4つ目が、先ほども申し上げました、「書籍から学ぶよりも、書籍を通じて考えろ」ということです。

私は、何を読んだかすらほぼ覚えていません。

私の場合、本を読んでいる自分がディープダイブして、その世界の中で勝手に動いている感じです。

自分の中で考えることによって、それが血肉となるという作業が、非常に重要なのではないかと思っています。

ですから、かなり乱読します。

例えば大学生の時、壁が10メートルくらいある1LDKに住んでいたのですが、本を買いまくって、10メートル×2メートル位のの2列が本で埋まるような状況になっていました。小学生や中学生の時も図書館で一番本を借りていたのは私なのではないかなと思います。

読書が私の人生を広げ続けてきてくれたのかなと思っています。

5つ目は、「趣味の読書は、出来る限り英語にする」です。

これには疑問がないわけではありませんが、やはり日本語だけで読んではダメだなと思います。

例えば、バスケットボールやサッカーなどの本は、英語で探した瞬間に、選択肢がすごく広がります。我々が日本語の書籍だけに縛られているのはすごくもったいないと思います。

英語にした瞬間にさまざまなバラエティがあって、なぜか英語でラーメンの歴史(『Slurp! A Social and Culinary History of Ramen: Japan’s Favorite Noodle Soup』)などがあります。

他にもローマのコロッセウムの作り方など、面白い本がたくさんあるんですよ。

これはやはり翻訳されるのを待つのではなく、自分自身で読んでいく必要があるのではないでしょうか。

6つ目は、「残す本は、紙で買う」です。これは最近の反省ですが、さきほどお話しした本は全部売ってしまいました。

というのも、海外に7年間くらいいたのですが、あちらに持って行けなかったのです。

それで最近タブレットを使って本を読んでいるのですが、息子と娘が勘違いして、「パパ、タブレットで遊ぼう」となってしまいます。

ですから紙に回帰して、本を読んでいるという状況をきちんと子どもに伝えなければならないと考えて、ひたすら紙で買っています。

 最後のお話、良いですね。子どもに勘違いさせないようにと。

渡邉 他者に伝えるために紙で読む。

琴坂 あとはやはり紙で買うと、装丁などに相当こだわっている本が出てくるわけですよ。(と、おもむろに本を取り出す)

例えば『STARTUP 優れた起業家は何を考え、どう行動したか』(※)という本は、表紙にメルカリ、ココン、ラクスルなどのロゴが入っていますが、もちろん全て掲載の許可を頂いているのでこの装丁も実は非常に手間がかかっているわけです。

▶編集注:ICCサミット登壇でもお馴染みのYJキャピタル堀新一郎さんや、琴坂将広研究会の井上大智さんと琴坂さんによる共著。

そういう作り手の心情というか、アートとしての側面が出てくると思うので、紙としての本を残したいというのはあると思います。

琴坂さんが研究者になることを決心した1冊の本

琴坂 そして私の選んだ本は、『自由からの逃走』です。

ほとんど何を読んだのか覚えていないのですが、僕は、これを読み終えた瞬間に研究者になることを決めました。

この本はとても難解で、読み飛ばすとすぐ分からなくなってしまうのですが、非常に構造的で、読めば読むほど理路整然としています。

内容は、ものすごくざっくりいうと、人間の自由への渇望と束縛への欲求のようなことです。

こんな壮大なトピックをきちんと論理的にまとめ上げて、しかもその後に起こる世界の動きを予測できているのです。当時の自分は、この本を読み終えた後に、世界と自分の関係性が少し見えた気がしました。もしかしたら驚きだったのかも知れません。

「何なんだ、この社会心理学というのは?!」というのが、私の社会科学への興味・関心のきっかけなのだと思います。

私は経営学者ですが、私が今研究していることは、

皆さんが想像されるような、利益の上げ方や成長の仕方などではなく、経営という行為を行う組織と個人が、この社会、人間に対してどのような意味を持つのかということです。

それ自体では、全く社会に役に立ちません。でも、そういった自分の探求のスタイル、興味関心の原点になったというのが、私がこの本を紹介する理由です。

もう1つ付け加えると、この本以外にも、古い本、古典的な本は価値の高い本が多いと思います。例えば、この本が出版された1942年頃というのは、出版すること自体がすごく難しかった時代です。

それこそまだ活字で印刷されていたため、今みたいにパパっと簡単に本を出すことはできませんでした。

そういう意味では、著者であるエーリッヒ・フロムの魂が込められているとも言えます。

13世紀、14世紀の本にもなると、魂どころか人生が込もっている本になるはずです。今も名前が残る人間たちの集大成みたいなものができていると思います。

だから、私は古典というものに一番価値を感じていて、そこを読んでいくことは読書の出発点でもあり、人間を知ることの最短経路になるのではないかと思っています。

 僕はイスラエルに留学していたので、ナチズムに対して人々がなぜ絶対服従してしまったのかといったことに関心をもったことがあり、この本を1回買ったのですがまだ読めていません。

琴坂 堂々と語ってください。

渡邉 「未」というタグを付けておいてください。

▶編集注:Part4で、『読んでいない本について堂々と語る方法』著者であるピエール・バイヤールが、自身の読んだ本を脚注に記し、その一つ一つに「未(未読)」「流(流し読み)」「聞(人から聞いただけ)」「忘(読んだけれど忘れた)」というマーキングをしているという話があった。

 積読状態ですが。

渡邉 贅沢に話していたら、意外に時間が少なくなってきたので、バシバシいきましょう。

(続)

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続きは 「見えるものだけが真実ではない」春光院 川上(全龍)隆史 さん、HLAB高田さんが想像する文章の背景 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成/フローゼ 祥子

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