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7.石川 善樹の「概念進化論」③「概念」を変える2つの方向性ーーあなたは「N」?それとも「Q」?

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「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン4 )」全10回シリーズ(その7)は、「概念」の変化・進化の方向性が2つあることを、石川 善樹さんが示唆します。新しい概念を作るのか、概念の質を上げるのかという議論。ビジネスにも通じる、人間の本質についての議論が続きます。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2021は、2021年2月15日〜2月18日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

ICCサミット FUKUOKA 2020のプレミアム・スポンサーとして、Lexus International Co.様に本セッションをサポート頂きました。


【登壇者情報】
2020年9月1〜3日開催
ICCサミット KYOTO 2020
Session 2C
大人の教養シリーズ人間を理解するとは何か?(シーズン4)
Supported by Lexus International Co.

(スピーカー)
石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事

井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO

北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員 CDO (Chief Data Officer)

林 要
GROOVE X株式会社
代表取締役

(モデレーター)

村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表

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最初の記事
人気シリーズ堂々第4弾!過去3シーズン「人間の理解」はいかに深まってきたか

1つ前の記事
石川 善樹の「概念進化論」②「概念」が物事の処理を容易にし、世界の見方を変える

本編

石川 「概念」の変遷、要は概念の進化に、僕は最近すごく興味を持って考えています。

「スタンダード」「反体制」「ダイバーシティ」というのは、先ほど服装の話をしましたが(Part6参照)、実はいろいろな分野で見られます。

「概念」を変える2つの方向性

公益財団法人Well-being for Planet Earth 代表理事 石川 善樹さん

石川 「概念」の変え方をつきつめると、2種類に整理できそうです。

1つは概念の「Nシフト」、「N」はノベルティとか、Newとか、新しくするという方向です。

もう1つは「Qシフト」で、クオリティを変えていくことです。

普通、スタンダードがあるときには、「Qシフト」をしたがります。

なぜかというと、もうお客さんがいるしマーケットがあるからです。あとはクオリティを変えていくだけという「Qシフト」をします。

特に東京など都会で勝負すると競争が激しく、どんどん「Qシフト」が起こります。しかしあるとき勝負を仕掛けて、「Nシフト」をする人が出てきます。

ここで重要なのは、人は新しいものにクオリティを感じにくいということです。

村上 まあ、「Q」の測り方が分からないですからね。

石川 そうなんです。例えば先ほどのLOVOTが出てきたときに、新しいものなのでクオリティが高いかどうかよく分からないのです(笑)。

 比較対象がありませんからね。

村上 何をもってクオリティがいいと言っていいのかが、分からないということですよね。

石川 「反体制」が出ると、そこから「ダイバーシティ」が生まれてきます。

「ダイバーシティ」は「反体制」をベースにいろいろなクオリティのものが出てきます。

世の中の概念の進化は、これの繰り返しに見えます。

「スタンダード」があって、「反体制」をつくる人がいて、そこから「ダイバーシティ」が生まれていきます。

「ダイバーシティ」の中から、また新しい「スタンダード」が生まれると、それをベースに普通は「Qシフト」するのです。

石川 善樹の結論、人間の本質は「概念を作れること」

石川 大事なのは「Nシフト」が素晴らしいのではなくて、フェーズによって「Qシフト」したほうがいいときと、「Nシフト」したほうがいいときがあることです。

例えば、抹茶の世界は千利休がスタンダードをつくったわけですが、そこからずっと「Qシフト」していました。

それを全く新しくしたのが塚田(英次郎)さんで、Cuzen Matcha(空禅抹茶)という抹茶の新しいマシンがあるのですが、抹茶において「Nシフト」する人が利休以来ようやく現れたのです。

(会場笑)

“抹茶のある生活”を世界に広げ、日本の茶文化を守り抜く「World Matcha」(ICC FUKUOKA 2020)【文字起こし版】

井上 とんでもないことが起きているのですね。

石川 それもやはりタイミングが大事で、今自分たちがいる市場、業界がまだまだ「Qシフト」で刈り取れるのか、それとも「Nシフト」したほうが広大な分野があるのか、タイミングを見極める必要があります。

ですから、「Nシフト」でも「Qシフト」でもどちらでもいいのですが、「概念」をシフトさせるということが、究極的にはインダストリーを創っていくときにはすごく大事で、それを後の歴史家が「あれがパラダイムシフト(変局点)だった」と言ってくれるのだと思います。

僕が思う人間の本質は「概念を作れること」です。

以上で終わりです。

千利休から「Nシフト」した、伊藤 若冲の師匠

リンクトイン・ジャパン 日本代表 村上 臣さん

村上 なぜ伊藤 若冲(じゃくちゅう)の絵を出したのですか?

▶編集注:江戸時代中期の画家

石川 分かりました!?

村上 宝蔵寺所蔵の作品ですよね。

石川 若冲が描いた「髑髏図」ですが、2つある頭蓋骨のうち1つは若冲で、もう1つは若冲の師匠の頭蓋骨です。

村上 師匠はお茶を売っていた人ですよね。

石川 そうです。売茶翁(ばいさおう)という茶を売る翁で、抹茶に反旗を翻した人です。

村上 煎茶道ですよね、反体制の。

石川 ええ。「抹茶じゃなくて煎茶だろう」と言って、「Nシフト」をした人です。突然ボロボロの格好をした爺さんが京都に現れて、道端で緑茶を売り始めたんですよ(笑)。

村上 しかも値段はただでもいいし、お金を払ってもいいよと言ったのですよね。

スノッブになってしまった千利休がつくった抹茶はくそくらえで、「値段はお前が決めていい、お茶を楽しむってことはこうなんだ」と、ホームレスのような爺さんが、道端で煎茶を淹れ続けたのが若冲の師匠ですよね。

石川 これに影響を受けたのが若冲で、はまってしまったのがお茶漬けの永谷園の永谷さんです。

江戸時代に趣味で15年間かけて緑茶の美味しい茶葉の作り方を研究して、今の針金のような茶葉の製法を作ったのが永谷園の永谷さんです。

その茶葉を江戸に持っていって売ってくれとお願いした相手が、山本山の山本さんです。だから永谷さんと山本さんで千利休に大きな反旗を翻したのです。

1738 永谷宗七郎が煎茶の製法発明!(永谷園) – 永谷さん山本さんの活動を紹介

北川 だからお茶漬けには海苔が入っている?

石川 そういう蜜月関係があります。今回のICCは京都開催なので、若冲の絵を使ってみました(笑)。

 「Qシフト」するのは大企業などがよくやって、「Qシフト」の体制ができてしまうと反体制分子がいなくなるので「Nシフト」しにくくなるというのが、「イノベーションのジレンマ」(※)という理解でいいでしょうか?

▶編集注:ハーバード・ビジネス・スクールの教授、クレイトン・クリステンセンが著書『イノベーションのジレンマ 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』で提唱した理論。業界トップの企業が既存製品の改良に囚われている間に、新規市場のチャンスを見失うことを指す。

石川 おっしゃる通りです。

 なるほど。反体制の人たちをいかに残すかが「Nシフト」には大事だということですね。

石川 「Qシフト」すればするほど、ビジネスの教科書だと既存顧客に適応しすぎることになるので、「Nシフト」の全くの新規顧客に行きにくくなります。

 半沢直樹みたいな人がいると「Nシフト」できるということですね(笑)。

村上 ありがとうございます。

リンクトイン村上さんによる恒例の中締め

村上 ここでいったん中締めをします。

まず前半は林 要さんと石川 善樹さんから「概念」のお話をしていただきました。

「そもそも人間の意識がどう動くのか」というと、「反射」のようなところから「無意識」を通って「意識」になるということでした。

「意識は何であるか」というと、「未来予測」をできたほうが生存確率は高まるであろうと、生物としての人間は思ったからでした。

ただ、一方で「意思決定とは別のことをしてしまう」という人間の癖(へき)のようなものがあって、これが人間らしさを生み出していることが分かりました。

LOVOTに関しては、センサーをたくさん使って、信頼や不安の部分、表現は悪いですが、今できる、手の付けやすいところからスタートして、人間らしいロボットを作ろうとして、最終的にはドラえもんに至りたいということでした。

善樹さんの「概念」の話は、「意識」とリンクしていると思いますが、コンセプトを小さいデータからパッとまとめあげる(Part5参照)ところが、人間の意識のすごいところだということでした。

これを超高速にパパパッとできるから、人間は今も生き残っています。

そこには「N」と「Q」という軸があって、要さんの言ったようにイノベーションのジレンマにも近いものがあって、往々にして「Qシフト」をしがちです。

いかに軸をずらして「反体制」に行くかというところがイノベーションには大事だけれども、「反体制」をするタイミングは、すごく難しいということでした。

「Q」の部分がすごく大きくなって、王者のような人が世に出て久しいと、「反体制」は生まれてきます。

千利休の「偉い人はみんな、お茶をたしなんでいるのが当たり前です」というような常識ができあがっていたところに、ぽんとパンクな煎茶道を出してきた売茶翁がいて、また若冲のようなパンクな弟子が出てきました。

京都はそういう「反体制」が定期的に生まれる地ですよね。宝蔵寺は若冲のお墓がある菩提寺です。

石川 臣さん、よく知っていますね、そんなことを。

井上 知識の幅が半端ないですね。

村上 いえいえ、ありがとうございます。

ということで、ここからは前半を理解していただいた上で、どう人間を科学的に理解していけばいいのかと、そこから今何が見えているのかを、まずは(北川)拓也さんからお願いします。

(続)

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続きは 北川 拓也の主張①ともに「人間を理解するための研究所」を創ろう! をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/星野 由香里/戸田 秀成/浅郷 浩子

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