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「マーケティング進化論」【K16-9D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!6回シリーズ(その3)は、ブランディングとマーケティングの整理、そして強いブランドを作るための手法と効果について議論しました。密度が濃いです。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016
Session 9D
「マーケティング進化論」
(スピーカー)
奥谷 孝司
オイシックス株式会社
統合マーケティング部 部長
Chief Omni-Channel Officer
清水 俊明
株式会社スタートトゥデイ
取締役 兼 ホスピタリティ・マーケティング本部 本部長
※清水さんの発言は全て非公開となっております
逸見 光次郎
株式会社キタムラ(登壇当時)
執行役員 経営企画室 オムニチャネル(人間力EC)推進担当
※2016年12月31日にて退職
(モデレーター)
彌野 泰弘
株式会社Bloom&Co.
代表取締役
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【前の記事】
【本編】
奥谷 これからのブランドって、ロゴだけではなくてそういう、ICCの旗みたいに、そこに何を思い描くかという。
これは2次元の旗で、オイシックスのも2次元の中の絵なのですけれども、ここへの想いを入れやすくするのが大事かなと思うんですね。
そういう意味でのブランディングが必要かなと思いますね。
ブランディングとマーケティングをいかに整理するか
逸見 その観点で言うと、キタムラは今、いかにブランディングとマーケティングというものをしっかり整理するかというフェーズにきているんですよね。
私がいつも考えているのは、先ほども申し上げた通り、どうやってお客さんに知ってもらって買って頂くかというストーリーの中のマーケティングだと思っているのですが、イオン然りセブン然り、何を売っているかは大体知っている訳ですよね。
だから、イオン、セブン、と伝えたらそれで十分という話はあるのですが、キタムラの場合は、カメラのキタムラって何をやっているの?って、実は大半のお客さんが知らなかったりするんですよね。
カメラはもちろん売っているし、プリントも何か1枚ずつ出すのだろうと。
でもまさかスマートフォンを売っているとは思わないし、iPhoneの修理を正規代理店としてやっているとは思わないし。
彌野 そうですよね、確かに。
逸見 スマートフォンも、一部の店舗では3キャリア扱っているので、一人の人が、お客さんの契約形態に合わせてキャリアごとにちゃんと説明してくれる訳です。
でも、これはキャリアショップでは絶対にやってくれないことなんですよね。
消費者が一番知りたいのだけれどもできないこと、そういったことをきちんと伝える専門店であって、別に(店舗に)入ったからといってモノを買わなくてもよいのだよということを今どうやって伝えるのか、つまりブランディングというところでは、80年続いたカメラのキタムラというものがどう伝わっているのかというところが、もう見えなくなってしまっているんですよ。
奥谷 キタムラさんは、まさに今後、違うフェースでマーケティングやブランディングをされる、いい状態ですよね。
これだけオムニチャネル的な環境もできていて、実は様々なお客さんが来ているということが見えているので、どういうマーケティングやブランディングをされるか楽しみですね。
逸見 うちの場合は、ブランドというものが、別にキタムラのブランドではなくてメーカーさんの商品を扱っている部分が多い訳ですよね。
そうすると、カメラのキタムラ、カメラというものがきちんと伝わらない制約になっているのではないかなという、ブランディング以前のところなのですよね。
お客さんが想起する名前やブランドを持つことが大事
奥谷 オイシックスはそこが上手いというか、野菜なのだけれども、人参なのだけれども「たつやのにんじん」と言ってみたり、白ナスだけれどもそれを「トロなす」と呼んでみたりという、何をやっているかというと、食べるシーンを話していたりするんですよね。
ですから、僕にとってのブランディングというのは、ターゲティングすることではなくて、お客さんが想起する名前やブランドを持つということで、それが大事なのです。
そうはいっても「コレ!」と言えないので、オイシックスというものに対して想起するものの要素を増やすということが、僕にとってのブランディングですかね。
通販系やネット系だと本当にKPIだけ追ってしまうので、敢えてやりたいというか、すぐに売り上げには繋がらないかもしれないけれども、そこの土地を耕すことは結構大事だと思っています。
ずっと耕さなくてもいいけれど。
彌野 そうですね、これまた古い話ですけれども、グッチやルイ・ヴィトンのようなDC((Designer’s & Character’s)ブランドは、昔はブランドと呼ばれていました。
でも、最近のマーケティングで言うところのブランディングというのは、ああいうものを作りましょうということではなくて、宣伝しなくてもお客さんが主体的に来てくれるような吸引力を作りましょうということに近いかなと思っています。
それこそDCブランドが全盛期の時に西武グループがそれに対してのアンチテーゼで作ったのが、無印で、印がない、つまりブランド品ではないということですものね。
強いブランドになることは、広告宣伝費が低くなること
奥谷 そうですね。
僕がそこで言っているのは、B to BやB with Cの「B」は「ビジネス(Business)」でもあり「ブランド(Brand)」でもあって、昔はブランドというのをto C、つまりカスタマーに届けてこういう新しいコンセプト(概念)はいいだろうと言っていたけれど。
今って…ブランディングについても色々と考えるのですが、じゃあ「Google」ってブランディングしてきたのかみたいな。
気が付いたら「ググる」という言葉が出てきたりしていて、それってユーザーとのCo-Cerationじゃないけれども、B with Cということなのですよね。
そうやって(ブランドが)作られる時代なので、意外とお金はかからないという感じはするんですよね。
先ほど言ったアフィリエイトやSEOのコストなどを削って、ソーシャルを活用したデジタルマーケティングをやっていくと、お客さんも、「MUJIも宣伝をするわな」といった感覚で見ながらも、こんなことをやるんだという感覚が、次に何をするのだろうという感覚に必ず繋がっていくのです。
オイシックスでも、今、アンバサダーを求めたりして、ソーシャルできちんとコツコツやっていくと、昨年8月31日の野菜の日には831円でお試しセットが買えるという企画をやったのですが、それだけでも結構お客さんがいらっしゃいます。
結構定性的なもので、ずっとそうやっていることが引きになってくるという事例はありますね。
そう言う意味での耕しが、ローコストですごくやり易くなっているので、そういうことはずっとやっておくのがいいのかなと思っています。
彌野 先ほどのブランドというのは一つポイントになるかなと思います。
客引きがいる店ってブランドないし吸引力が弱いから客引きが必要なんですよね。
客引きって、広告なんですよね。
ということは、広告しているサービスって本当はサービスが良くないから、プッシュしないと人が来ないというケースもある。
本当にいいサービスというのは、例えば交通の便が必ずしも良くない広尾の端っこの狭い路地にあって、ドアに何の看板もついていなくても予約で一杯で、お客さんが入るじゃないですか。
あれが多分本当のブランドなのではないかと思っていて、強いブランドになることって、本質的には広告宣伝費が低くなるってことなんだろうと思います。
逸見 サービスが一貫してお客さんに満足して頂けるもので、初めて認識されてブランディングが上がっていくという話ですよね。
体験自体にブランド価値がある
奥谷 そこって、ネットができることによって、ブランド認知や体験も変わったと思うんですよね。
先ほどのお話にもありましたが、昔はフィジカルに全てを感じなければいけなかった。
でも、僕は顧客時間という話をしましたけれども、グルグル回ってお客さんが検討して使用する感覚が上手く回るということが大事ですよね。
オイシックスでの買い物体験もそうだけれども、来た野菜がとても美味しかったとか、もう一回買いたいと思うという感覚になると、わざわざそこにある野菜を買わないで、1週間後の野菜を、献立をある程度想定して買ってくれるようになるのです。
本当はそこに行けば売っているのだけれども、やはりオイシックスの買い物体験や、体験自体に結構ブランド価値があるのです。
でも、企業のフィジカルがないのでなかなかそこに気づかないんですよ。
実は体験として成立してしまっているので、ちゃんとできているのですが。
逸見 例えばうちのiPhone修理なんか、Twitterの声を個人単位で拾ってみていったりすると、そもそも使っているメインの客層が20・30歳代とかなんですよね。
プリントもしたことないから、キタムラなんか知らない訳ですよね。
でも、正規代理店の半分がキタムラだから、Appleに連絡すると、「キタムラの○○店に行って下さい」と案内されてびっくりする。
皆ショックを受ける訳ですよ。
奥谷 「キタムラって何なんだ?」という感じですよね。
逸見 「そもそもなぜiPhoneの修理をカメラ屋で?」みたいな。
しかも、そもそもどこにあるの、と。
でも、丁寧にTweetを追っていくと、お店に行くとすぐに案内してくれたとあるんですよね。
コンシェルジュを置いているからです。
そしてその後、おまたせしないというルールを決めているので、意外と早く修理してくれたと満足して帰っていかれるんですよね。
こういう、今までだったら見えなかったものが、ITやネットの部分で見えるというのも非常に大きいのかなと思うんですよね。
もはや「カメラの」キタムラではない?
彌野 今のお話を聞いていると、外からこんなことを言うのもなんですけれども、「カメラの」というのは外した方がよいのではないですか? (笑)
(会場笑)
奥谷 キタムラだけだとパン屋みたいな感じもしますけれどもね。
逸見 私は社長でも会長でもないですし、経営企画としてあまりそういうことを言うと怒られるのですけれども…、
うちの事業の核は何かといったときに、写真を残してもらうことなんですよね。
iPhoneの修理をなぜやっているかというと…
奥谷 じゃあ、「スマホのキタムラ」で。
逸見 そうそう。
今度はスマホにすると、スマホだけではなくて、普通のカメラも扱っているし、そっちは市場シェア結構持っていますし、あとはスタジオ撮影もやっている訳ですよね。
奥谷 じゃあ、「なんでもキタムラ」ですかね?
逸見 そう。
それが結局先ほどのサービスを体現して、お客様に理解して頂いて伝わることが、正しいブランディングだと思っているので、それで今、どうしていこうか考えているというのがそこなんですよね。
奥谷 やりがいがありますよね、やはりそれは。
彌野 オイシックスさんは、やはり野菜じゃないですか。
野菜はスーパーに行けばあるというもので、ECの壁というのは、価格と配送の時間とコストですけれども、どういったところで勝っていくのでしょうか。
やはりクオリティなのでしょうか。
最後の体験は商品である
奥谷 (オイシックス代表の)高島さんとは、実はPB(プライベート・ブランド)化についてよく話しています。
やはり、最後の体験は商品だと思うんですよね。
我々は自社便など、そういう意味ではなかなかできていないですし、正直、商品単価も高い訳なので、ある程度の量を買ってもらわなければならくて、マーケティングも大事ですけれども、一方では商品も大切です。
マーケティング的に言うと、オイシックスのユーザー体験というのはすごく良い体験なのですが、一過程一過程で止まっている訳なんですよね。
届いた野菜が美味しかった、それで終わるのですが、僕はそれを、ソーシャルでも何でもいいのだけれども伝えてもらうということも大事だと思っています。
料理をすること自体がもう、ベタベタアナログじゃないですか。
買うという行為は少しデジタルで、食べて美味しかったよとか、こういうものが健康にいいんだよということをいかにお客さんにマーケティングしてもらうかというか、伝えてもらえるかということができてくることで、ソーシャルメディア上でも常にコミュニケーションしてなければならないし、何か変わったことをやろうという感じを、野菜と全く関係なくてもいいのでやらないといけないと思っています。
でも、野菜でも好き嫌いもあるし、野菜を買わないで、うちの牛乳が美味しいとかたまごが美味しいと思ってくれても全くいい訳なのです。
そして食品の面白いところは、結局1個だけ買ったりすることはあまりなく、たまごを買いたいからついでにパンも買うという構造ができるので、そこに繋がるようにマーケティング的にもっていくことが大切なのかなと思っていますけれども。
彌野 ざっくり言うと、競合はどこになるのですか?
成城石井とかそういう高級スーパーなのですか?
奥谷 そういう言い方もありますし、食材宅配の会社さんもいくつもあるので。
そこをすごく意識しているかというと、(代表の)高島さんも僕もあまり意識はしていなくて、唯一無二のオイシックスという、そこは抽象的に何かブランド力があると勝手に思っているので、もっとそこを磨けば普通に伸びていくかなと思っていますけれどもね。
彌野 なるほど、分かりました。
(続)
続きは 複数企業が協働する”アライアンス・マーケティング”とは? をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/Froese 祥子
【編集部コメント】
ICCカンファレンスも、やはり1度来ていただくとその価値をご理解頂けることも多く、議論の中で「体験自体にブランド価値がある」1つの事例かと思っています!続編もご期待下さい!(榎戸)
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