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2.今の日本はカネ余り?ベンチャーファイナンスの最新状況

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「ベンチャーファイナンスについてズバズバ聞きたい」7回シリーズ(その2)は、ベンチャー投資における市場環境について、各登壇者にモデレーターのマイネット嶺井さんがズバズバ切り込みました。業界関係者必見です。ぜひ御覧ください。

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ICCカンファレンス KYOTO 2017のプラチナ・スポンサーとして、ジョブカン(株式会社Donuts)様に本セッションをサポート頂きました。

 

 

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2017年9月5〜7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 9A
ベンチャー・ファイナンスについてズバズバ聞きたい
Supported by ジョブカン

(スピーカー)

今野 穣
株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ
パートナー COO

永見 世央
ラクスル株式会社
取締役CFO

水島 淳
西村あさひ法律事務所
パートナー

渡辺 洋行
B Dash Ventures株式会社
代表取締役社長

(モデレーター)

嶺井 政人
株式会社マイネット
取締役 副社長

「ベンチャー・ファイナンスについてズバズバ聞きたい」の配信済み記事一覧

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最初の記事
1. ベンチャーファイナンスについてズバズバ聞きたい!

本編

嶺井 登壇者の皆さんと事前に相談し、「こういう分野が最近盛り上がっているよね」というのを聞かせていただいて、今日はいくつかトピックを事前に準備しました。

ベンチャーキャピタルや事業会社の立場から、それぞれどのような動きをしているのか伺いたいと思います。

まず、直近のファイナンス環境をどのように捉えていらっしゃって、その中で各社どのように動いているのかを、VCのお二方にお聞きしたいです。

ベンチャーファイナンスはカネ余りの状況?

今野 JVCA(一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会)常務理事の渡辺さんにお話をお聞きしたいです!

嶺井 では、渡辺さんの目には現在のファイナンス環境がどのように映っていらっしゃるのか聞かせていただいてもいいですか?

渡辺 JVCAと言っても誰も分からないと思うのですが、「日本ベンチャーキャピタル協会」というのがありまして、割と大きな、かなりの数のベンチャーキャピタルが加盟しています。

嶺井 ここ最近のトレンド、数年のトレンドをお願いします。

渡辺 マクロの環境としては、ここ数年、日本のベンチャー投資自体の規模はどんどん大きくなっています。

何をもってベンチャー投資とするかによって幅がありますが、約2,000億円~3,000億円です。

ベンチャー投資の統計的な数字というのが、実は日本では正確に取れていないです。

CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)などを入れるかどうかによって異なってきますが、だいたい2,000億円~3,000億円。

一方、アメリカや中国は兆単位です。

嶺井 桁が違いますね。

株式会社マイネット 取締役 副社長 嶺井 政人氏

渡辺 はい、その差はまだまだ大きいですが、それでも日本の投資規模は大きくなって来ました。

もちろん米中と比べると非常に小さいですが、グローバルで考えると実は日本も比較的大きいのです。

全世界的な傾向ですが、LP (リミテッド・パートナー)のファンドの出資者というのがすごく増えていて、カネ余りの状況がここ数年ずっと続いています。

米中や日本で、そういったお金が、ベンチャー投資へも流れ込んできています。

それが、ここ数年の全体としての株価が高くなったり、直近でも資金調達がたくさん行われていたりする傾向の背景となっています。

7、8年前ですと、ベンチャーが1億円調達できたら大騒ぎしていたと思います。

皆さんご存知の方も、ご存知でない方もいらっしゃると思いますが、ほんの数年前までは、そのような状況だったのです。

今は1億円調達したと聞いても、全く驚かれません。

嶺井 ニュースにもならないですよね。

渡辺 ニュースにもなりません。

昔は1億円というとビッグニュースだったので、そういう意味では現在は非常にファイナンス環境は良くなっているというのが実感です。

嶺井 なるほど。

そのような中で、B Dash Venturesを運営する渡辺さんはどのような動きをしていらっしゃいますか?

ビューティーコンテストには乗らない

渡辺 実は全体のバリュエーション(時価総額)がどうだとかいう話には全く乗っていません。

投資ステージと投資分野によって、「このくらいのシェアをとって、このくらいの金額を取る」というのを決めていて、そこから外れると基本的には投資はしません。

バリュエーションが上がろうが下がろうが、世の中の動向はあまり気にしていないですね。

(左)B Dash Ventures株式会社 代表取締役社長 渡辺 洋行氏

嶺井 どんどんお金が流入してくる中で、価格が吊り上がったりということはないですか?

今までだったら30億円で投資できたのに、それが60億円になってしまっている。そのために少し高値でつかまなくてはいけなくなっているという状況はないですか?

渡辺 ものすごく近しい経営者や、信頼している経営者で、「彼/彼女だったら大丈夫」という人に対してはバリュエーション(時価総額)が高くなっても投資をすることはあります。

ただ、高いバリュエーションを意図するもの、いわゆるビューティーコンテスト(高い時価総額を競わせるような行為)などには弊社は一切乗りません。

企業価値評価(時価総額)が世の中で高いか低いかというのはあまり関係ないです。

嶺井 わかりました。ありがとうございます。

では今野さん、お願いします。

今野 基本的には渡辺さんがおっしゃった通りで、グロービス・キャピタル・パートナーズも同様です。

ただ弊社は、今(2017年9月)のところシード・立ち上げのところはやっていないません。

まさに、社内で「もう少しシードに対して積極的に関与していこう」という議論が出ています。

そういうケースにおいては、「社内の意思決定を少しシンプルに、スピーディーにやっていこう」という議論をちょうどし始めています。

2018年1月29日「メガベンチャーへの飛躍を目指す。今GCPがシード投資に踏み込む理由とは?」

我々も高いバリュエーションのところに乗っていくということは基本的にしていません。

一方、ファンドマネジメントの話でいくと、好況期は事業開発やEXITの時、不況期は投資・仕込みの時期と言った鉄則がありますので、好況期の今は、新規投資を規律的・選択的に実行し、じっくり育ててEXIT(株式の売却)のタイミングを見据えています。

株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー COO 今野 穣氏

嶺井 そういうタイミングなんですね。

今野 そうですね。

嶺井 なるほど、ありがとうございます。

企業価値評価トレンドの今後

嶺井 永見さん、どうご覧になっていますか?

永見 自分の話の前に伺いたいのですが、そうは言っても、高いバリュエーション(時価総額)で投資していく方々がいますよね。

嶺井 いますね。

永見 その人たちというのは、いずれどうなっていくのでしょうか。

私の場合、スタートアップ側としての話が多いので、先にVCの人たちはどうなっていくのかなという、当たり前の話をちょっと聞いてみたいです。

お二人とも投資のサイクルを相当経験されていると思うので、基本は「死んでいくのか?」という話を伺いたいのですが、実際のところはどうなんですか?

嶺井 今野さん、どう思われますか?

死んでしまうのでしょうか。

今野 死ぬか生きるかというのは分かりませんが、マクロ経済環境というのは周期的なので、その会社の事業が伸びても、バリュエーションが全然上回らないというケースもあります。

そうするとIPOしても「投資コスト割れ」という状況がたくさん出てくるだろうと思います。外見的には、トラックレコード(投資の成功実績)があるにもかかわらず、なぜ次のファンドレイズはこんなに苦戦しているのだろうというケースが出てくるのだと思います。

▶編集注:「投資コスト割れ」というのは投資金額に対してリターンが1倍未満になるケースを指す。

嶺井 渡辺さんにはどのように映っていますか?

渡辺 全く同じで、恐らく株価が今のような状態になったのは大体3年くらい前です。

ケタが丸1つ変わった

渡辺 3年くらい前から大型の資金調達が増えてきて、バリュエーション(企業価値評価)の桁が丸1個変わったなという感覚を持っています。

その時投資を受けた発行体(スタートアップ)がちょうど今年(2017年)あたりからIPOをし始めたり、M&Aの話が出始めています。

日本の場合は、アメリカと違っていわゆる「IPOラチェット(※)」というのが付かないので、しこりが少し強いです。


ラチェット条項:資金調達時の優先株の株価より、次回のラウンドで資金を調達する際またはIPO時の株価が低いとき、投資家を保護するためあらかじめX%のリターンを保証するように株式発行して持株数を調整する条項。

その辺をどのように扱うかは、かなり人に対して解決しないといけない問題が出て来ます。

発行体、VCを含めて、今後の課題になっていくのだろうなと思っています。

嶺井 なるほど、ありがとうございます。

いかがでしょうか。

水島 アメリカとかでも、IPOしたときの価格が直近ラウンド(資金調達)の価格を下回るというのは、今話題にはなっていますよね。

嶺井 そうですね。

日米で異なる投資家層の厚み

永見 自分が体感している話でいうと、ミドル・ステージからレイター・ステージまで、アメリカとの比較はやはり面白いです。

ラクスル株式会社 取締役CFO 永見 世央氏

アメリカでは、去年(2016年)頃までベンチャーファイナンスをバブルにしたミューチュアルファンドやヘッジファンドは基本的にいなくなってしまったんです。

2017年3月にアメリカで機関投資家と話す機会があったので、「今はミドル・ステージの投資を実施しているのか」と聞いたら、「今はほぼやらない」というところが多かったんですね。

その後、純粋なVC・CVCの人たちが残って、バリュエーションが適正化されたという話だと思います。では日本はどうかというと、バブルが続いている気がしています。

嶺井 そうですね。

永見 日本では、アメリカと違う層のプレイヤーに厚みがあって、例えば政府系金融機関という重要な資金の供給源がいます。

僕たちも2016年のラウンドで、日本政策投資銀行に投資して入ってもらったのですが、このようなニーズが結構あるのかなと思います。

2つ目は、上場株の機関投資家が未上場をやりたいという傾向は、アメリカでは減ったのですが、日本にはまだ残っているような気がしています。

たぶん今日はオープンイノベーションの話などもあるかと思いますが、3つ目はCVCの資金が動いているのをとても感じます。

ラクスルは2017年7月にヤマトホールディングス社と資本提携したのですが、それもその一環です。

資金の供給者がまだ結構いるとミドル・レイターステージのトレンドで感じますね。

渡辺 やはりGPIF (年金積立金管理運用独立行政法人) の存在が大きいです。

VCというのはEXIT(株式売却)のことを当然考えているので、GPIFの買い支えというのはすごく大きいと思います。

株価がある程度維持され、(セクターとして)インターネット業界もかなり買い支えられています。

そのおかげで今のところ高いバリエーションに乗るVCも理由が付くといいいますか、企業価値が吊り上がっても投資が行われるのだろうなと思います。

嶺井 なるほど。出口を支えてくれているところがあるから積極的なベンチャー投資は続くということですね。

ありがとうございます。

(続)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/浅郷 浩子/本田 隼輝/鈴木ファストアーベント 理恵

【編集部コメント】

M&Aの仕事をしておりましたが、「Valuation(企業価値評価)はアートである」とも言われます。理論とその変数はありますが、最終的にはリンゴであれ、株式であれ、それを買いたい人と売りたい人の合意が重要ですね…(榎戸)

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