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「愛だよ、愛。愛されるコンテンツ/サービスを創る」8回シリーズ(その2)のテーマは、ずばり「愛されたい」と思うことの功罪。あるバーガーショップへの明石ガクトさんの溢れんばかりの愛情から、愛されるサービスの本質を紐解きます。ぜひご覧ください。
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ICCサミット FUKUOKA 2018のプラチナム・スポンサーとして、株式会社リクルートマネジメントソリューションズに本セッションをサポート頂きました。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018 は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2018年2月20日・21日・22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 2F
愛だよ、愛。愛されるコンテンツ/サービスを創る
Supported by 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
(スピーカー)
青木 耕平
株式会社クラシコム
代表取締役
青木 優
株式会社MATCHA
代表取締役
明石 ガクト
ワンメディア株式会社
代表取締役
(モデレーター)
浜田 敬子
BUSINESS INSIDER JAPAN
統括編集長
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1.愛されるコンテンツ/サービスの創り方を徹底議論!
本編
明石 僕は日々愛を持って動画コンテンツを出している会社をやっていて、最初に話したいことがあるのですが、敬子さんいいですか?
浜田 良いですよ、どうぞ。
愛されようとする時点で愛されるのは難しい
明石 愛って2種類あって、「愛する」もあるし、「愛される」もある。
今回のテーマは「愛される」ですよね。
そこの定義についてきちんと話しておきたくて、これを言うと炎上しちゃうかもしれないんだけど、今日この中で自分の会社のTシャツとかパーカーを着ている人はいらっしゃいますか?
(会場、1名挙手)
なるほど、1名ですかね。
今から多少ディスが入りますけど許していただきたくて、と言うのも、こういうカンファレンスになると、自分の会社の名前を覚えてもらおうと皆自社のロゴ入りアイテムを着ます。
でもその行動は「愛される」に一番遠いと思っています。
僕は今日あるTシャツを着ていて、Burger Maniaと書かれているのですが、これは僕の好きな恵比寿のハンバーガー屋なんです。
出典:Burger ManiaのWebサイトから引用
僕は別にBurger Maniaで働いたこともないし、特に関係者でもないし、単純にここのハンバーガーが好きなだけです。
このBurger ManiaのTシャツを、僕は本当に普段着で着ていて、今日も結構大事な日なのに着ちゃっています。
本当に、こいつら愛されているんです。
少なくとも僕には愛されているし、このTシャツは実はかなり人気でよく売り切れています。
今ハンバーガーを食べてもいないのになぜこれを着ているのかと言うと、これを着て鏡に映ると、「Burger Maniaまた行きたいな、週末行こうかな」とそのたびにBurger Maniaの美味しさとかお店の雰囲気を思い出して、なんだかいい感じの気持ちになるから。
こういうふうになるのが愛されるブランドとかコンテンツ、メディア、サービスなのかなと思っていて、たとえば(青木)耕平さんが、「北欧、暮らしの道具店」というTシャツを着てたら、俺は少なくともがっかりします。
それは「愛の押し売り」だと思っています。
青木耕 今Burger Maniaを愛しているという言葉がありましたが、実はBurger Maniaって、自分が何を愛しているかどうか、ということだと思います。
「人にコンテンツを与えていることで(明石)ガクトが愛される」、それは愛をどうアプローチするかということで、愛されようとしている時点で愛されることが難しいというのがありますよね。
愛されようと思ったら、その前にいくつか段階があって、アプローチするのは別のところだなと思っています。
今のBurger Maniaの話に通じると思うのですが、まず入口に面白いなと思ってもらう、気付いてもらう、興味を持ってもらうというレベルがあります。
その上に、ずっと面白いことをしている人は、「あいつはいつも面白いことをする」という期待・信頼されるようになり、それを突き抜けると尊敬に変わります。
尊敬してる人と一緒に旅行に行ったとか一緒に飯を食べたという時間の共有があると、最終的に愛に変わります。
でも最初から尊敬されようとする人は結構うざいですよね。
信用されようという人はすごく怪しいです。
面白がられるというアプローチしかできなくて、あとはそれを続けると結果的に愛までたどり着くということでいくと、ファーストアプローチとしては面白いということがとても重要です。
浜田 明石さんのは過剰じゃないから良いですよね。押し付けていないといいますか。
あまり意図的にやっていないからこそで、それはすごく大事だなという気がします。
明石 少しは意図ありますけどね。
浜田 愛されようと思って着てないですよね?
明石 髪型についてはありますけど(笑)、このTシャツは本当に好きで着ています。
浜田 愛されるコンテンツ、愛されるサービスというのはすごく難しいと思っています。
BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長 浜田 敬子 氏
私は「BUSINESS INSIDER」の日本版を立ち上げて1年なのですが、ミレニアルがターゲットの媒体で、私自身が50歳なので、ミレニアルに対する愛は遠いわけです。
弊社は作っている人たちも新聞記者が多くて、報道メディアなので目指しているところが、「正しく」「速く」「信頼性」などがあります。
しかし、読者がそれだけを望んでいるかというとちょっと違うと思っています。
今日は、ほとんど相談モードで来ているのでぜひ皆さんに伺いたいのですが、そもそもご自身が作っているメディアやサービスでは、どういう人たちに見てもらいたいというのが先にあるのか、それともどういうものを作りたいというのが先にあるのですか?
「自分が愛せる人」に喜んでもらいたい
青木耕 結構難しい問題で、自分がどういう者かというのは入口だと思います。
自分を無視して、たとえばここがいけそうだからやるというのはすごく難しくて続かないですよね。
だからまずは自分はどういう者かというのがあって、自分が何ができるかというよりも、誰だったら愛せるかを考えます。
「愛されるより愛したいマジで」というのがあるので、自分が喜ばせたいと割と素直に思えるターゲットを明確に設定したいと思っています。
でもそれって自分が愛せるだから、相手に寄り添っているというよりは自分思考なんですよね。
浜田 それはコンテンツへの愛?読者への愛?
青木耕 もちろん読者です。
先ほどおっしゃっていた、「正しくとか言っているんだけど読者はこうなんだよね」という問題は、「なんで正しくなきゃいけないの?」という質問をすれば良い話だったりします。
「それはこの人たちに向けて、この人たちを喜ばせるために、それって本当に必要なの?」とか、「この局面でそれは要るんだっけ?」と議論すれば解決する問題です。
相手をどういう気持ちにしたいか、どういう行動を取ってほしいかということが定義されていないと、それぞれの行動がばらばらになってしまうと思うので、誰にということを徹底的に見ているかもしれません。
浜田 なるほど。
元々耕平さんは「誰に」というのは、明確にあったのですか?
青木耕 元々というより、僕は妹と2人で創業していて、こんなところに出て来て恐縮なのですが、僕は全くコンテンツとか作っておらず、妹が中心になって作っています。
なので、彼女がまずできることという課題設定が大事です。
浜田 それは自分ができることですよね。
青木耕 はい。彼女ができることだったらということで、彼女と同じような人たちということが課題設定として出てきます。
僕はそれを「過去にマガジンハウスに影響を受けた人」と言っています。
浜田 わかりやすいですね。
元オリーブ少女みたいな人とかですね。
▶参考: 「非モテ」や「自分らしさ」を受け入れてくれた雑誌『オリーブ』をいま振り返る~『オリーブの罠』著者・酒井順子さんインタビュー(現代ビジネス)
青木耕 僕の妹も同じような集団の人なので、僕もカルチャーとしては近い位置にいたという背景があります。
ですので、自分たちの仲間に対してコンテンツを提供するということで、割と素直に喜ばせに行けるという動機が持ちやすいです。
言語ごとに、情報の出し方を変える
浜田 優さんの場合、それがインバウンド・メディアで海外の人だから難しいですよね。
「誰に」を考えたときに。
しかも「誰」も一様ではないですよね。
青木優 今はメディアを作って5年目ですが、最初は全くわかりませんでした。
浜田 そもそもなぜインバウンド・メディアをやろうと思ったんですか?
青木優 僕は明治大学の国際日本学部出身で、日本の文化を学んで世界に発信できる人を増やそうというコンセプトでした。
その軸で学生時代世界一周に行って、そしたらやはり日本のものは海外でウケているのにもかかわらず、日本人はビジネスできていない状況だったので、ここはチャンスだなと思いました。
実際その後日本を回った際に自分自身もその面白さを知らなかったことに気付いたことと、日本に来る海外の友人も皆同じ場所に行って帰ってしまうのがすごくもったいないと思い、来てくれた海外の人に来て良かったと言ってもらえることをしたいなと思ったのが最初のきっかけです。
元々僕はブロガーとして情報発信をしていて、それを事業化していったという流れがありました。
ですが、日本人に対してしかやったことがなくて、最初は翻訳をしようと考え2年くらいは作ったコンテンツを翻訳していました。
自分が「受ける」と思ったものが「受ける」と思っていました。
でも翻訳でも、たとえば「夏と言えば風鈴」という言葉があったとして、それは翻訳できない。
日本人はチリンという音が鳴るけど、海外の人からするとそもそも日本においての夏とはとか、風鈴とはなんぞやというところがあるので伝わりません。
結構ターゲットがはっきりして転換点になったのが、台湾人の編集長が入ってくれたことでした。
良いパートナーがいたからなのですが、正社員の人が入ってから2年で台湾版が7倍ぐらいになったんです。
インバウンド・メディアにおいては、日本人は情報的に「ターゲットはこういう人だよね」というのを言語ごとに認識できるのですが、細かい肌感覚みたいなものは難しいです。
言語ごとの責任者にターゲットやトンマナ(=トーン&マナー デザインの一貫性)、雰囲気は任せています。
浜田 各国違った出し方をしているのですか?
青木優 全然違います。
たとえば台湾だと日本に10回以上来ている人が2割を超えていて、日本と同じ情報でも伝わりやすいです。
一方、タイなどの最近来始めているところだと、メジャーな場所や買い物に文脈を当てたほうが読者の反応が良いので、言語ごとにすべて分けています。
続けるというのは、愛
浜田 (明石)ガクトさんのところはミレニアル世代がターゲットですよね。
ミレニアル世代を対象にしたのはなぜですか?
明石 すごく難しい質問ですね。
僕らみたいなスタートアップは後付けで、「なんでミレニアル世代をターゲットにしたんですか?」に対し、「これからテレビを見なくなる世代が増え、回線が5Gになり、スマートフォンの先に画質は8Kになり、そういう人たちに向けて…」といくらでも言えるのですが、実際は後から考えていることが多いんじゃないかな(笑)
去年(2017年)すごく売れた、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』という本があります。アートとサイエンスとクラフトという3種類の人間が出てきて、アートの人はアカウンタビリティ(説明能力)が低いという話が出てきます。
つまり、サイエンスとクラフトの人は極めて良い感じに聞こえる説明がしやすいということです。
回線が5Gになる話は極めてサイエンスの話で、テレビを見る人口が減る、モバイルが増える、そういうストーリーにすると投資家とかは皆頷いたりするのですが、根本的には事業は続けないといけません。
僕はこの会社を4年続けていて、4年の間に社名を2回変更しているためこれだけ認知率が低いのですが、耕平さんのところは10年やっているのですよね。
青木耕 うちは12期目ですね。
明石 だからユーザー以外の人も知っているほどの認知率になっています。
続けるというのは本当に「愛」です。愛なんですよ!
単純に「動画が流行っている、ミレニアルがキーワードだ、えい!」というふうにやってしまうことができますが、やる気がないのにやれるのは2年が限界だと思います。
そこでうまくいかなくなったら、続けていく気力が無くなってしまいます。
現に僕が2014年に動画メディアを始めてから、たくさんの動画メディアができては消えていきました。
続いているところは商業的にうまくいったか、もっとも僕は商業的に2年でもうまくいかなかったのですが、愛があったから乗り切れました。
なぜミレニアルなのかと言うと、「自分が動画コンテンツを作って中高年に見せて嬉しいか」という問いかけがあったときに、全然嬉しくないからです。
できることなら若い人、大学生とか。「意識高い系」と言うと語弊があるかもしれませんが、それなりに物事に対して好奇心もあって、周りの人間に影響を与えるような人が参考にするメディアを作りたいというモチベーションが強いです。
でも世の中は不思議で、そういう若い人に向けてつくられているものは、中高年も興味を持ち始めます。
中高年が使うプロダクト、例えばらくらくホンですら今iPhoneに駆逐されています。
皆若い人が使っている物を使いたいんです。
僕が当時「ミレニアル世代向けにやろう」と言った時に、難癖付ける人がいました。
彼は「ミレニアル世代をちゃんと定義してよ」と言うのですが、こちらは「いや知らないし、俺に聞かないでくれ、なんとなくああいう感じの若い人たちだよ」という曖昧な説明になります。
こちらはアートを話しているから説明能力がそもそも低いんですよね。
でも、その説明できない情熱みたいな何かを許容して、それを信じてやり続けることが愛されるサービスを作るコツだと思います。
浜田 今すごくわかりました。
元々BUSINESS INSIDERはアメリカのメディアで、ミレニアル世代に読んでもらえる経済メディアとして始まったのですが、そもそもアメリカではミレニアル世代は人口も多い。
だから政治的にも、購買層としても力を持っている。
そういう世代だけど、彼らがウォール・ストリート・ジャーナルを読んでいるかと言えば、なかなか読んでいない。
でも経済ニュースは働いていれば必要だろうと。
今世界17ヵ国で展開していて、ターゲットは全世界でミレニアルと決まっているのですが、取材してみると20代はすごく面白いです。
今の20代のスタートアップの起業家は40代の起業家とは全然違う価値観だなと感じます。
お金を稼ぎたい、有名になりたい、というよりも、世の中のために良いことしたい、自分や自分の周りを本当に豊かに幸せにするにはどうすればいいのか、という価値観が強いと感じてます。。
フラットでオープン、そしてユニセックスだなと。
結果的に彼らを取材することが今は面白いですし、その人たちに支持されるメディアになってほしいと思っています。
(続)
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続きは 3.素人が試行錯誤していく中で、自分たちの「True North」が見つかった(クラシコム 青木) をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/戸田 秀成/浅郷 浩子/本田 隼輝/尾形 佳靖
【編集部コメント】
モテたい、相手に振り向いて欲しいとあれこれと尽くすことがまさに非モテ(モテないこと)の原因であるとする“非モテコミット”という言葉を思い出しました。メッセージを発信することは重要ですが、行き過ぎた、押し付けがましいものではあってはいけないものですね!(尾形)
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