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『PVから総接触者数へ』パブリッシャーモデルへ進化する「北欧、暮らしの道具店」の挑戦

ビジネス・ブレイクスルー大学大学院の「アントレプレナーコース」が2016年4月に開講しました。ICCパートナーズ小林雅が担当した「スタートアップ企業のビジネスプラン研究」全12回の映像講義について、許諾を頂きまして書き起し及び編集を行った内容を掲載致します。今回の講義は、 株式会社クラシコム 代表取締役 青木 耕平 氏にゲストスピーカーとしてお話し頂きました。

60分の講義を2回に分けてお届けします。後半の(その2)は、メディア型ECにおけるコンテンツ戦略を踏まえた上で、「北欧、暮らしの道具店」が目指すパブリッシャーモデルへの進化についてお話し頂きました。ぜひご覧ください。


【登壇者情報】
2016年12月15日収録
ビジネス・ブレイクスルー大学大学院「アントレプレナーコース」
スタートアップ企業のビジネスプラン研究
「クラシコム」

(講師)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社 代表取締役
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 教授

(ゲストスピーカー)
青木 耕平 株式会社クラシコム 代表取締役

1972年 埼玉県生まれ。株式会社クラシコム代表取締役。
2006年、実妹である佐藤と株式会社クラシコム共同創業。単独、共同創業通算で同社で3社目。翌年、賃貸不動産のためのインターネットオークションサイトをリリースするが、一年ほどで撤退。2007年秋より北欧雑貨専門のECサイト「北欧、暮らしの道具店」を開業。現在は、北欧雑貨のEC事業のみならず、オリジナル商品開発販売、広告、出版(リトルプレス発行)事業など多岐にわたるライフスタイル事業を展開中。

(アシスタント)
小泉 陽以

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【本編】

小泉 前半は「北欧、暮らしの道具店」の概要を伺いました。後半は「北欧、暮らしの道具店」の今後の戦略に関して伺います。

スライド12

続きましてこちらです。

 

スライド23

小泉 広告を出稿するサイトから、広告を出稿されるサイトへ、ということですが。

青木 我々のビジネスに一つユニークなポイントがあるとすれば、ECという平たく言えば通信販売のビジネスを、限りなく少ない広告費で成立させているというところだと思います。

ただ、それは最初からそうだったわけではありません。

最初はセオリーどおりに、いわゆる広告で新規のお客様を獲得して、その新規で取ったお客様にたとえば「クーポン差し上げます」「ポイント差し上げます」「セールやります」という販促をかけていって、リピートさせて収益を出してゆくというビジネスをやっておりました。

ただ、なかなかそれですと、我々の商材の特性上、しっかりと利益を確保することがビジネスモデル的に難しいということが、ある程度やる中でわかってきました。

そこで、何とか広告費ということをゼロに近い形で、かつ、急成長は続けるということはできないだろうかということを今から数年前に考えて大きく事業転換したという経緯があります。

その時考えていたのは、我々が大手のメディアに出稿して導線をつけてもらうようにお金を払っていた側から、逆に我々が広告費をもらえるくらいに単独で集客力を上げるにはどうしたら良いか、ということでした。

それを考える時に、では自分が広告を出稿していたメディアというのは、なぜ広告を出稿してもらえるのか……というごくごく当たり前のことを改めて考えてみたのです。

スライド24

青木 同じWEBサイトなのに、方や、広告を出して導線をつけてもらわないと人が来ない。

方や、むしろ広告を取っている。

何が違うのでしょう。

そう考えた時に、ユーザーにとって面白くて、価値のある情報を、源泉掛け流しのように、読み切れないくらい提供しているということが特徴だと考えました。

GOOGLEもそうですし、YAHOOもそうですし、FACEBOOKもそうです。

我々も、そこまでの規模ではないにせよ、我々のお客様に当たるような人たちにとって興味関心があり、「役に立つ」「面白い」と思っていただけるようなコンテンツを、一人のお客様にとっては読み切れないくらいに提供できる体制を持てば、もしかしたら広告に頼らずにお客様に来ていただけるような状況というのを作れるのではないかと考えるようになったのです。

小泉 そういうことを考えるに至ったヒントになったものや、参考になったサイトのようなものはありますか。

青木 よく申し上げているのは、たとえば『ほぼ日刊イトイ新聞』さんです。

あそこはやはり、コンテンツを読みにみなさんが来られていますね。

特にSEOが強いとか、広告を出しているというわけでもなくても、人がたくさん来ています。

そして、ビジネスモデルとしてはECでモノを販売されているわけですから、弊社も同じことができるかもしれないと思いました。

また、SEOというようなことは何もしてなさすぎるくらいしていません。

あれだけ有名な人が出ているので、有名人の名前で検索すればもっとたくさん出てくるような気がしますでしょう。全然出てこないのです。

それでもたくさん人が来ている。

これはやはり「コンテンツが面白い」という期待感をお客様に持っていただいているからでしょう。

毎日アクセスすれば面白いコンテンツがあると思えば、みなさん習慣的に、落とし穴に落ちるようにではなく、自分で能動的に集まってゆくということが起きる。

そのように拝見させていただいて、勉強になっております。

「北欧、暮らしの道具店」のコンテンツ量

小泉 では、毎月どのくらいのコンテンツを作っているのかというお話に移ります。

青木 段階的に増えていったという話になりますが、このスライドでご説明しているくらいのコンテンツを作っております。

スライド25

青木 まずは左側の正方形の中。

読み物、商品ページという部分がWEBサイトです。

商品とは関係なく単に読んで楽しんでいただくための読み物の記事を、だいたい月間で120くらい。

それ以外に商品ページを、だいたい月に30ページくらい作っています。

ですから、だいたい月に150ページくらいの投稿をしているという形になります。

また、それ以外に、各ソーシャルメディアにそれぞれ編集担当のような者が、1人、2人ずつ就いております。

FACEBOOKだとだいたい月間90くらいの投稿をしています。

TWITTERもおなじくらい。

そして、今はインスタグラムに一番力をいれているので、そこに兼任ではありますが2人張り付いていて、だいたい月間150くらい投稿しています。

これは単にサイトの情報を投稿しているというよりは、インスタグラムにはインスタグラムでのオリジナルのコンテンツがあります。

そして、FACEBOOKはFACEBOOKのオリジナルコンテンツがあったり……とする形で、このくらいの量をやっているのです。

小泉 ずいぶん多く感じるのですが、これは戦略的にこのぐらいの量に調整しているのですか。

青木 そうですね。やはり、読み切れない量というのはどれくらいだろうか、ということをずっと考えていました。

そして、今はウィークデイで一日5、6記事くらいを出していますが、一時期8記事くらいまで行ったことがありました。

そこまで行くとちょっと多いかもしれないということで、若干質の方に投資をした方が良いという判断があり、今は5記事くらいになるように調整しているという感じです。

あるいは、FACEBOOKなどでは、半年くらい前は一日9投稿くらいしていて、月間で270投稿くらいしていたのです。

それはFACEBOOKにおけるエッジランクのアルゴリズムの変化の中で、やみくもに投稿するよりは、絞って投稿した方がリーチが伸びるという変化があったので、そのことに対応して少し絞って質を高めるということをやりました。

ですから、その時の事業環境とか、目標によって、量と質のバランスのコントロールは随時して行っている感じです。

「北欧、暮らしの道具店」の組織体制

小泉 これくらいの量をどれだけの人数で作っていらっしゃるのですか。

青木 先ほど最初のところで、グループ全体で30人くらいというお話をさせていただいていたのですが、その中の大半がなんらかのコンテンツ制作には関わっているという形です。

スライド26

青木 これは、赤の色が濃い部分ほど、コンテンツにフォーカスしている度合いが強いという意味になっております。

エディトリアルという、コンテンツの仕事だけに専業している人はだいたい8人くらいです。

続いて、MDというのはだいたい仕入れとか在庫のコントロールをするグループがあります。

また、コミュニケーショングループと言ってカスタマーサービスとか、ソーシャルメディアの運用とか、PRなどをやっているところがある。

このMDやコミュニケーションが、エディトリアルのサブ的な役割を果たしております。

ただ、それ以外の経営陣やデザイナー、あるいはグループ会社で実際に商品を作っている担当の者なども、コンテンツを作ることに関わっています。

ですから、実際にはエンジニア以外のほぼ全員が何らかの記事を、少なくとも1ヵ月に1本くらいは書いているという状況になっております。

小泉 小林さん。この組織をご覧になっていかがでしょう。

小林 北欧へ自分で行って買って始めたサイトからここまで来たのですからすごいですね。

かつ、右肩上がりの業績で、今となっては30万のファン数を持っている。

30万のファンがいるというのはすごいことだと思うのです。

さらにそれを30人くらいで支えるというのも、すごいことですね。

ビジネスとしては、コンテンツを読んでいただくということがメインなので、エディトリアルやデザインと言った見えるところが非常に重要になると思いますが、そういう主にコンテンツに関わる人という意味では10人そこそこでしょう。

それでこれだけの、月間1千万ページ・ビューまで行けるということを、みなさんも数字として頭に入れていただければと思います。

小泉 職場には女性が多いのでしょうか。

青木 はい。7割5分くらいは女性です。

男性は今6人くらいです。

小林 ちなみに、社員100人などいて、月間1千万ページ・ビュー行っていないサイトというのは、普通に結構あります。

非常に経営として効率的とも言えます。

「北欧、暮らしの道具店」のビジネスモデルの進化

小泉 続きまして、売上高の推移を見てみましょう。

青木 実際に、2011年、2010年くらいまでは、だいたい売上高の15%くらいを広告や販促費に使っていました。

こういう状況ですとどういう形になるかと言いますと、いくら売ってもほぼ利益が出ない。

トントンに近い利益にしかならない。

僕らの商材ですと、構造上そのようにしかならないのです。

ただ、この15%以上使っているものを、仮に10%以上削減できれば、つまり数%に抑えることさえできれば、いきなり利益率が10%に乗っかるという話でもあります。

それはすごくやり甲斐のあることでしょう。

そこで大きく事業転換して、2012年くらいから本気でそれをやり始めたのですが、それに伴って売上を伸ばしつつ、広告比率というものはどんどん下げて行きました。

そして、2014年くらいから、だいたい広告比率2%台前半から1%台後半をウロウロしているような形になっています。

その広告も、今はいわゆるリターゲティング広告だけをほぼ使っております。

すでにサイトに来ていただいたお客様に、コンテンツの更新情報をリターゲティング広告でお知らせしているのです。

ですから、僕の中では広告というより、どちらかというと「パーミッションを取らずに流せるタイムラインをもう一つ持っている」というイメージで運用しております。

小林 リターゲティング広告というと、みなさん経験されたことがあると思います。

一回訪問すると追い回してくるような広告がありますでしょう。

しかし、そこで商品を売っているというのではなく、コンテンツの更新情報を出しているというところが、また面白いところだと思います。

小泉 ちなみに、一概には言えないのかもしれませんが、一般的なeコマースサイトの広告費というのは、だいたいどれくらいになるのでしょうか。

青木 急成長をするという前提に立つと、やはり20%くらいかけることになる場合が多いです。

やはり、通販というのは「向いている商材」というのがあります。

たとえば化粧品とか、健康食品とか、アパレルというものがありますでしょう。

これらは特徴としては二つあります。

一つは粗利が大きいこと。

たとえば化粧品などであれば、通販だと原価率はだいたい10%とか15%とかなのです。

アパレルも、粗利は雑貨などと比べればずっと高いです。

そしてもう一つの特徴は、使ったらなくなるということ。

食べたらなくなるとか、陳腐化が早いということです。

すると購買頻度が高く見込めますね。

要は、粗利×想定購買回数でかけられる広告費の上限が決まってきます。

そうなると、たとえば一番多い化粧品や健康食品の通販などですと、売上の30%〜40%マーケティングに突っ込んでも半分くらいの利益が確保できるというようなビジネスモデルなのです。

ですから、通販で急速に大きくしようと思えば、20%でも実はそんなに多くない。

小林 だいたい、eコマースサイトの広告費の考え方で、先ほどの粗利などいろいろな言い方があると思いますが、結局1ユーザー当たりからどれだけ利益が生まれるかというライフタイムバリューという指標を計算するのです。期間を3年をとるか2年をとるかは会社によって違いますが。

そして、たとえばそれが3万円であったとする。

その3万円の利益が見込めるものに対して、顧客獲得コストをどれだけかけるかという話になります。

購入者1人あたり5千円かけても、3万円入るのであれば良いのではないかということになりますね。

それならば1万円かけても良いという考え方にもなります。

では、たとえば広告費を購入者あたり1万円かけて良いことになったとしましょう。

その場合、ならば会員獲得ではどうでしょうか。

たとえば、会員100人あたり10人の購入者がいるのであれば、会員獲得に1人あたり千円かけて良いということになりますね。

そして、会員獲得に千円かけると言った時に何をかけるかと言うと、先ほど出たリターゲティング広告や、SEO、あるいはSEMと言われる検索連動広告などになります。

または極端にテレビ広告のようなもので大きくかけても、1人あたりに均すと実は安くなるなどということにもなります。

このようにビジネスを計算していくというのが一般的です。

ですから、基本的にお金をかけて計算するものなのです。

ですが、青木さんは、基本的に広告費をかけずに集客するための方法論を考えていった。

これは創意工夫が現れていて非常に面白い方法論を編み出したと言えるのではないでしょうか。

メディアからパブリッシャーへ

小泉 続きまして、そのメディアモデルということについてお話いただきたいです。

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青木 はい。2012年頃から、先ほど申し上げた、ECサイト、ネットショップではなくて、「カートボタンのついた雑誌のようなものにしよう」ということで、これを「メディア化する」という言葉で表現してきました。

つまり、ECサイトをメディアにしていこうということをずっとやってきたのです。

では、メディアであるということはどういうことなのでしょうか。

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青木 メディアというのは、雑誌のようなものであるということですから、いかにたくさんの読者をサイトに連れてきて、コンテンツに触れていただくか、ということが重要になってくるわけです。

すると、各導線、クラシコムの場合はソーシャルメディアが多くなりますが、ソーシャルメディアからサイトへ人を連れてこようという形でやることになります。

ですから、各ソーシャルメディアや出先のコンテンツの作り方としては、「おいしいところの続きはWEBサイトでご覧ください」という形でいかにサイトへ集客していくかを考えていくことになります。

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青木 ただ、こういうメディアのモデルでやっていくとWEBサイトのPVをどんどん上げていくということになると思うのですが、2014年くらいから、そのやり方が今の外部環境にフィットしていないのではないかと思うようになってきました。

今は、逆にあくまでWEBサイトもコンテンツのディストリビューションプラットフォームの一つだというふうに捉えるやり方に移行しております。

これを僕らは「パブリッシャーモデル」と呼んでいます。

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青木 真ん中にあるのが、出版社、パブリッシャーで、そこにある編集部が各出先のメディアにおいて一番向いた形で十分楽しめるようにコンテンツを配信していく。

こうなると、PVを追いかけていくというよりは、我々が接触して影響を与えられるユーザーの数を増やしていくということになります。

つまり、プレゼンスを最大化していくことを目的とするような形になったのです。

小林 一般的に、最近ではこれを「分散型メディア」と言います。

たとえば、コバヤシというサイトで動画を配信しても誰も見てくれませんね。

その動画のファイルをFACEBOOKもYouTubeもインスタグラムも色々なところに分散して置いておく。

それは同じ動画のファイルで良いのです。

すると、それぞれがメディアで最適化というか、優先してそれを表示するようになる。

YouTubeであろうが、FACEBOOKであろうが、同じ動画は同じ動画でしょう。

それらの総再生回数が、先ほどの接触頻度というものです。

これを最大化するというのが、最近、メディアの中では注目されている動きです。

小泉 すると、サイト自身には人が増えていかないですよね。

青木 そうですね。おそらくメディア型で運用するよりは、サイトのPVの伸び率は確実に鈍化するでしょう。

その代わり、「総接触者数」と僕らは呼んでいるのですが、いろいろな媒体を通じて我々がタッチポイントを持てるユーザーというものの全体数は増えていくというイメージになります。

これはどういうことかと言いますと、たとえばFACEBOOKで一つの投稿が20万リーチくらいしたとします。

すると20万人の画像に表示されるわけですが、実際にサイトのリンクをクリックしてくる人というのは、だいたいその5%くらいなのです。

すると、先ほどの話のように、20万人のうちの1万人に最適なコンテンツをFACEBOOKに配信するよりは、来ない19万人にとってベストなコンテンツを配信する方が良いのではないかという考えでやっているということです。

コンテンツのパブリッシング戦略

小泉 では、コンテンツのパブリッシング事例をお伺いしたいと思います。

青木 はい。コンテンツを各媒体にただリンクを流していくということではなくて、各媒体の特性に合った形で、リパッケージして、配信をしていくということをやっています。

一つの事例として、ハンドメイドの花飾りというものをお出しいたしましょう。

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青木 これはお花を楽しむノウハウのコンテンツになります。

まずWEBサイト上ではこのような形です。

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青木 このようにWEBサイト上では普通のノウハウの解説記事として掲載しています。

ですが、これは企画段階で最初から「FACEBOOKではこういうふうに流そう」「インスタグラムにはああいうふうに流そう」「TWITTERにはそういうふうに流そう」ということをあらかじめ決めてあって、その上で走っている企画なのです。

たとえばインスタグラムではこのようになっております。

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青木 ここでは2投稿にコンテンツを分けています。

最初に完成イメージと「こういうものを作ってみたくないですか」というところにコンテンツを入れています。

そして、2コマ目に4つに分けた分解写真と実際の作り方をここに書いて、もうサイトに来なくてもこれがすべてわかるというものをインスタグラムのユーザーに提供しています。

あるいはFACEBOOKは今、動画が一番リーチします。ですから、同じようなノウハウを動画でも撮影します。

つまり、FACEBOOKでは同じコンテンツを動画で配信するということをやっている形です。

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青木 これによって、ソーシャルメディア媒体のユーザーにとって、一番喜ばれる情報でコンテンツを配信することができます。

そして、喜ばれていれば、いずれ僕らの聞いて欲しい話は聞いてもらえるだろうというような形でやっているのです。

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小林 だいたいスタートアップの多くでは、自社のサイトへ来てもらおうと考えますね。

ですが、今は青木さんの話でもあったように、考え方を変えないと生き残れなってきている。

その非常に面白い事例だと思いますから、ぜひ参考にしていただければと思います。

同じようなライフスタイル系のコンテンツを考えるのであれば、ほぼ同じような考え方が通用すると思います。

小泉 ページ・ビューではなく総接触者数へ、ということですよね。

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青木 KPIをPVに置きますと、どうやってサイトへ連れてくるかということを工夫することになるわけです。

一方、各コンテンツのパブリッシングのディストリビューションプラットフォームにおいて、できるだけ多くの人に喜んでもらうということを考えていけば、サイトに来る人はそんなに増えないかもしれませんが、各ソーシャルメディア上で接触できる人は確実に増えていきます。

どちらかというと、それを今一番重要視しているということです。

パブリッシャーモデルのマネタイズ戦略

小泉 それぞれのメディアで見て、欲しい時にはサイトに来てくれるだろうということですね。

そして、このパブリッシャーモデルがもたらす多様なマネタイズの可能性ということについてはいかがでしょう。

青木 そのような形で目標を「サイトに来てもらう」ということから、「より多くの人に何らかの影響力を与えられる力を持つ」ということに移行させた以上、物販だけでその価値をマネタイズすることは難しくなってきます。

その中で、少し前にもお話致しました通り、今は広告の事業を立ち上げるということに力を入れています。

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青木 無印良品さんやCanonさん、あるいはキリンさんのビール、などといったものに関連した記事広告を作って販売していくということをやっています。

もともと我々は商品を売るためのコンテンツを作るということをずっとやってきた会社なので、自分で売るか売らないかということは別として、記事広告の専門編集集団というわけです。

たとえば、我々自身ではお酒は売れません。

お酒は免許がなければ売れないからです。

しかし、売れなくてもおすすめできる商品というものはありますから、そういったものを記事広告として楽しみながら触れていただくという商品を販売しています。

これは非常に良い反響をいただいていて、手ごたえが出てきているという段階です。

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小泉 ありがとうございます。それでは最後に小林さんからまとめをお願い致します。

小林 先ほど、分散型メディアという言葉が出てきました。

おそらく分散型メディアで検索すれば、この最新事例がアメリカのものを含めて出てくると思います。

これは、メディアにおいても時代によって考え方、ありようを変えていかなければならないという事例だと思っています。

クラシコムは、こうした変化に合わせて成長し、非常にうまく展開してきた会社だと思います。

一般的に、「PVが下がると成長しないのではないか」など、言われ得るのですが、そこはファミリー企業で、創業者の理念、思いそのもので変化ができる。

逆に言えばそういう企業形態だから新しいものにチャレンジしやすいということがあるのでしょう。

通常、企業をするとここまではなかなかできません。

ですから、まずは「こういうやり方があるのだ。そして、それでうまく行っている会社があるのだ」と、知ることが非常に重要かと思います。

なかなか、「PVが減っても大丈夫なのです」と投資家に説明する人はいません。

「これからは総接触者数です」と言っても、「総接触者数が増えても売上があがるのか」というふうになるでしょう。

しかし、それができてしまって、かつ、結果も伴っています。

こういう事例があるのだということを思い出していただければと思います。

それから、実はそういう「PVが下がると良くない」などという先入観は、もともと誰かが決めたルールであって、新しいルールには適合していないこともあります。

そうした意味で、ゼロベースで考えていく力を身に着けていくというのも、これから創業する方にとっては非常に重要なことだと思います。

集合写真

小泉 最後に青木さん、今後の展開で何か考えていることがあればお願い致します。

青木 やはり、より多くのお客様にコンテンツを通じて楽しんでいただく、暮らしを豊かにしていただくということを考えてやっておりますので、その中で与えられている価値にきちんとフィットした、収益を確保していかなければならないということでは、もっと多様なマネタイズ手段をまだまだ作り出していきたいと思っております。

つまり、きちんと収益をあげていける形を、もっと模索していきたいということです。

小泉 ありがとうございました。

さて、お送りしておりました、ビジネス・ブレイクスルー大学大学院「アントレプレナーコース」スタートアップ企業のビジネスプランは、いかがでしたでしょうか。

今回はゲストに株式会社クラシコム代表取締役の青木耕平をお招き致しました。

青木さん、小林さん、ありがとうございました。

青木 ありがとうございました。

小林 ありがとうございました。

(終)

編集チーム:小林 雅/石川 翔太

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