グロース・マインドセットの人材は世界で活躍する – INDUSTRY CO-CREATION(ICC)

グロース・マインドセットの人材は世界で活躍する

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「海外でうまくいくメンバーとうまくいかないメンバーの違いは何か?」
「どのようなマインドセットを持つ人材が世界で活躍できるのか?」
「フィックスト・マインドセットの人をどグロース・マインドセットに変えることはできるのか?」

第一線で活躍するトップリーダーが真剣に議論したICCカンファレンス TOKYO 2016の「世界で勝負するチーム・マネジメント」のセッションの前篇を公開しました。

登壇者情報
2016年3月24日開催
ICCカンファレンス TOKYO 2016
Session 4C
「世界で勝負するチーム・マネジメント」
(スピーカー)
中竹 竜二 公益財団法人日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター/株式会社TEAMBOX 代表取締役
本蔵 俊彦 クオンタムバイオシステムズ株式会社 代表取締役社長 
山口 文洋 株式会社リクルートマーケティングパートナーズ 代表取締役社長 
(モデレーター)
彌野 泰弘 株式会社Bloom&Co.(株式会社ブルーム・アンド・カンパニー) 代表取締役

彌野泰弘氏(以下、彌野) 彌野と(やの)申します。よろしくお願いします。このICCでは、楽しいということもそうですが、やはり熱く語ってインスピレーションを得ることがとても大切だというご意見を、(主催者のICCパートナーズ)小林雅さんから頂いています。
楽しいというよりは熱くなるくらいが丁度いいと思っていますので、そのくらいの期待値で聴いていただければと思います。では、もう皆さんよくご存知かもしれませんが、まず中竹さんから自己紹介をお願いいたします。

登壇者の自己紹介

中竹竜二氏(以下、中竹) 中竹です。よろしくお願いします。今、彌野さんから熱い話をと言われましたが、僕は結構ドライで冷めているんですよね。この(メンバーの)中では、僕はスポーツ担当で、日本ラグビーフットボール協会で20歳以下の日本代表のヘッドコーチをしています。
もう一つの役職としては、こちらの方がメインなのですが、コーチングディレクターという、コーチをコーチする仕事を6年位しています。

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中竹 竜二
公益財団法人日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター
株式会社TEAMBOX代表取締役
1973年、福岡県生まれ。
早稲田大学人間科学部卒業。レスター大学大学院社会学部修了。三菱総合研究所でコンサルティングに従事した後、早稲田大学ラグビー蹴球部監督、ラグビーU20日本代表監督を務め「監督の指示に従うのでは無く、自ら考え判断できる選手を育む」という自律支援型の指導法で多くの実績を残す。
日本で初めて「フォロワーシップ論」を展開したひとり。現在は日本ラグビー協会コーチングディレクター(初代)として、指導者の育成、一貫指導体制構築に尽力する一方、ラグビー界の枠を超え、民間企業、地方公共団体、教育機関、経営者団体等、各方面から分かりやすく結果を出す講師として講演・研修・セミナーなどへの出演依頼多数。2015年はU20日本代表ヘッドコーチを務め、ワールドラグビーチャンピオンシップにて初のトップ10入りを果たす。2014年に株式会社TEAMBOXを設立。次世代リーダーの育成・教育や組織力強化に貢献し、企業コンサルタントとして活躍中。

今年になって急遽、去年ワールドカップで勝利されたエディ・ジョーンズ監督がイングランドに行かれて、次の監督は決まっているのですが、その新監督ご自身のチーム契約の関係で9月にならないと来られないので、その間を埋める日本代表のヘッドコーチの代行も務めることになりました。

そして実は、この春3月から「日本代表」に加え、「ジュニアジャパン」と「U20」も含め全てのヘッドコーチを勤めることになり、異なるカテゴリーでメンバーも大勢なため、今大変な状況です。昨日フィジー遠征から帰って来たばかりですので、こんなに真っ黒に焼けています。

僕の指導スタイルで言いますと、提唱という程ではないですが、「フォロワーシップ」というのをもう10年以上言っています。

これを言い始めたときには、僕は単なるサラリーマンだったのですが、当然ですが誰も相手にしてくれませんでした。本も出しましたが全然売れないし、こんなものがインパクトがあるのか、世の中を変えるのか、という感じでしたが、やはり結果を出すと世の中は変わりますよね。

(早稲田大学の監督として)優勝した瞬間から、みんな「俺も実はそう思ってた」と(笑)。前日まで、そんなやり方じゃ負けるぞ、監督がもっとリーダーシップを発揮して勝たせろと言っていた人達が、勝った瞬間に「これからの時代はフォロワーシップだ」と言い始め、世の中が「引っ張るリーダー」から「支えるリーダー」の雰囲気になったということを肌で感じました。

僕自身もラグビーをプレーしていたんですが、そもそもラグビーをやろうと思っていたわけではないので大学で一旦やめて、10年間は違うキャリアを歩みました。早稲田大学卒業後は留学し、そこで人類学や社会学など全く関係ない学問を学び、三菱総研でコンサルティングや調査に携わっていました。

そんな時に突然、早稲田大学ラグビー部の監督のお話をいただきました。今、会社を2つ経営しているのですが、ラグビーとは関係のない仕事を兼任しています。

すごく思うのは、分野は変われどもやることは同じだなということです。僕の会社でやっているようなコンサルティングのメソッドを、そのままU20の選手達に応用するんですよ。そうしたら、当たり前ですけれど劇的によくなるんですよね。

ミーティングの仕方が変わり、振り返りが変わり、プランニングが変わるわけです。そうして強くなっていって、世界でも通用するようになっていきます。
日本のU20の選手達は、他の国の20歳のレベルの選手達よりも、自分で考える力や、プレゼンする力や、ディスカッションする力や、人にフィードバックする力が圧倒的についてきているなと感じます。

僕は、早稲田大学の時からずっと「日本一オーラのない監督」と言われてきました。皆さんも、ここに座っているコイツは誰だと思っていらっしゃるかもしれませんが(笑)。

これも世界に通用するなということが分かったんですよ。フィジーに行っていたんですが、フィジーだけではなくて去年の大会でも、移動のバスから降りるとカメラがあるんですよね。

一応ヘッドコーチなのでバスを最初に降りるんですが、「ヘッドコーチはどこだ?」と最初に聞かれるんです(笑)。みんな僕のことをマネージャーだと思っているんですね。

取材の待ち合わせで時間通りにロビーに行っても、取材陣が僕のところに来て「ヘッドコーチはどこだ?」と聞くわけです。このオーラのなさも、世界に出ても一緒なんだなというのを痛感しています。今日はよろしくお願いします。

彌野 よろしくお願いします。では続いて山口さんお願いします。

山口文洋氏(以下、山口) 皆さんはじめまして。リクルートマーケティングパートナーズの山口と申します。

リクルートグループの中で、「ゼクシィ」や、中古車が買える「カーセンサー」や、最近自分で立ち上げたんですが、受験サプリ改め「スタディサプリ」というオンラインラーニングの事業、つまり、人生におけるライフイベントである結婚、車購入、そして教育という3事業を担当しています。
子会社も含めると従業員が約3,000人の会社の社長をしています。実は僕、社会人暦が10年ちょっとしかなくて、大学を卒業してからニートの期間が長かったりして、4年前までは普通の社員でした。この3年で課長になり、翌年執行役員に抜擢され、その3~3年後に社長になりました。

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山口 文洋
株式会社リクルートマーケティング パートナーズ 代表取締役社長
株式会社リクルートホールディングス 執行役員 教育事業担当
Quipper Limited Chairman
1978年生まれ、2006年リクルート入社。2011年度リクルートの新規事業提案制度「New RING」にてグランプリを獲得、教育環境格差の解消を目指し、月額980円で予備校講師の講義動画が見放題の高校生向けオンライン学習サービス『受験サプリ』の立ち上げを手掛ける。2015年には、小中学生向け『勉強サプリ』をリリース、英国法人QuipperをM&Aし、現在9カ国300万人が無料で利用。「世界の果てまで最高の学びを届けよう」というビジョンのもと拡張を続ける。2012年に同社執行役員に就任し、2015年4月から現職。

現在は、執行役として教育事業に一番注力しており、「受験サプリ」というサービスを4年前から手がけています。日本だけでなく世界中で教育格差が存在しているのを目の当たりにして、人生で一回くらい大きなチャレンジをしなければならないなと思いながら、最初にビジョン設定したのを覚えています。
この現実を見過ごしてはいけないなということを感じ、それまで不真面目に生きてきた人生において初めて、今までにない力が湧いてきてアクションをとる原動力になりました。

それから4年、周りの仲間やチームと一緒に、オンライン教育サービスで、学校の現場と放課後の学習環境を進化させてきました。

5年前の立ち上げ時に、日本の教育シーンだけでなはく、世界の果てまで変えていきたいという志を持っていました。

日本ではそういったビジネスへの認知度がまだ低く、一年前に、特に途上国へのオンライン教育の普及を目指していた英国法人のクイッパー社を約50億円で買収しました。

そして今、グローバルオンライン教育プラットフォームとして、どこまで途上国の教育支援ができるかというチャレンジをしています。

クイッパー社のヘッドクウォーター(本社)はイギリスにあります。イギリス以外に、インドネシアとフィリピンとメキシコと日本とに計5拠点構えていまして、10カ国約150人のメンバーがいます。

基本的に、サービスの開発は日本とマニラとロンドンで行いながら、実際のサービスは、フィリピンとインドネシアとメキシコを中心に提供しておりまして、向こうには、セールスフォース含めた現地スタッフがそれぞれ50人ずつ位おります。

現在のところ、フィリピンとインドネシアにおいては、無料のオンラインラーニングマネジメントシステムとしては、まだまだ一桁台の収益ですが、シリコンバレー勢含めてもシェア一位のところまできていて、約一年半で300万人くらいの子供達、一万校くらいの学校で使われるようにまでなりました。

ちょっと面白いのが、「クイッパースクールとは?」というグーグルの検索サーチ数が、去年年間インドネシアで第4位だったということです。日本でいう、「安保理とは?」と同じくらいの検索数を叩いて、全くといっていいほどマーケティングコストをかけていないのに、世界中へとサービスが広がっています。

そこに今年はかなりの投資をして、日本のようなオンライン教育が世界にも広がるかどうかにチャレンジしようと思っているところです。

世界で通用するチーム作りで言えばまだ駆け出しの段階なのですが、そこで自分なりに挑戦していることや葛藤などを、今日皆さんとシェアできたらいいなと思っています。よろしくお願いします。

彌野 よろしくお願いします。では続いて、本蔵さんお願いします。

本蔵俊彦氏(以下、本蔵) クオンタムバイオシステムズの本蔵と申します。私の会社は、DNAへのシーケンサーという、DNAを解読する装置を作っている会社です。3年前に大阪大学の技術を基に立ち上げたという、大学発ベンチャーです。

私自身のバックグラウンドとしては、高校大学はずっとアメフトをやっていまして、(中竹さんが)先程スポーツ代表と仰っていましたが、ハートのところは半分くらいそういったマインドセットでやっています。

グローバルにビジネスをやっていくという意味では、山口さんのようなマインドセットも持ちながらやっています。

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本蔵 俊彦 
クオンタムバイオシステムズ株式会社 代表取締役社長 
東京大学理学系大学院卒業後、同大学特任助手としてヒトゲノム解析研究に従事。その後、研究と事業の橋渡しの役割に惹かれ、ビジネスの世界へ転身。国内証券会社にてバイオ関連セクターのアナリスト、外資系コンサルティング会社マッキンゼー&カンパニーにて製薬・ヘルスケア関連プロジェクトに従事した後、政府系投資ファンドの産業革新機構ではライフサイエンス分野の投資および投資後のハンズオンマネージメントに従事。ライフサイエンスを軸とした経営支援、投資事業分野の経験をもとに、2013年1月に革新的DNAシーケンサーの開発に挑むクオンタムバイオシステムズ株式会社を設立し、現在はシリコンバレーを中心に活動。コロンビア大学MBA。

ここで、なぜ遺伝子で起業したかという立ち上げの経緯についてお話したいと思います。我々が仕事をバリバリできる期間は恐らくあと30年くらいだと思っています。

高校、大学で進路を決める時に、どうせ30年から50年のスパンで何か成し遂げたいと思うのであれば、その時に最もワクワクできる、この時代でしかできないもっともワクワクできるようなことに携わりたいと思いました。
それは一体何なのかと考えていたのですが、その当時ノーベル賞を受賞した利根川さんが書かれた「精神と物質」を読んで、これはすごいと感銘を受けました。

つまり、例えば生きているとは何か、人と動物の違いは何とか、スポーツの才能もそうですけれど、人と人の違いとは何であるかを考えた時に、恐らく数十年前までは宗教や哲学のような世界でないとなかなか考えることができなかったことが、この数十年の間にDNAや遺伝子といったもので解き明かされ、病気の原因が分かるのであれば、恐らく才能の原因も分かるだろうと。

つまり、人より何かがうまくいかないのが病気なのであれば、うまくいっているのも、恐らく遺伝的な要因があると思いました。

例えば、いくら走っても疲れないような人達もいますし、遠くまで見えるのも、全て遺伝ですよね。そういうような才能にまで遺伝子によってメスが入るような、すごく面白い時代に生きているんだと。

ならばそこに飛び込んで、何かインパクトのあることをやりたいと思い、最初は東京大学でゲノムの研究をしていました。

ただ、研究者一人でできることやインパクトは限られます。大きなサービスを皆さんに使って頂くことではじめてインパクトが生まれると思い、事業の勉強をするために、証券会社や、コンサルティング会社や、最後は投資の会社で、バイオと遺伝子に関連するようなことを経験した後に起業したという経緯があります。

今はシリコンバレーを中心に研究開発と装置作りをしていますので、1ヶ月のうち8割はシリコンバレーにいます。そして日本にもオフィスがあり、エンジニアもいますので、1週間くらいは日本に戻ってきています。ですので、日本で何かを作って海外へ持っていって売る、もしくは日本のチームが海外のチームに勝つためにどうするかというよりは、最初から海外に拠点を作り、チームも海外で編成し、自分が成し遂げたい遺伝子の世界でインパクトのある装置の開発をグローバルにチームを作ってやりましょうという、そういういうアプローチをとっています。

今日はみなさん、少しずつ立ち位置が違うと思いますので、その辺の違いをディスカッションさせていただくことを楽しみにしています。

彌野 ありがとうございます。私の自己紹介を簡単にさせて頂きます。彌野と申します。P&Gに9年ほどいまして、「SK-II」という化粧品や、「プリングルズ」というポテトチップスや、髭剃りの「BRAUN」を担当したのですが、その間に2年程シンガポールにいまして、そこでは、ASEANのインド、中国、シンガポール、マレーシア、インドネシアのメンバーと仕事をしました。
その後「BRAUN」で組織変更がありまして、スイスのジュネーブで、ドイツ、フランス、イタリアのメンバーと仕事をしてきました。

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彌野 泰弘 
株式会社Bloom&Co.(株式会社ブルーム・アンド・カンパニー) 代表取締役  
約9年間に渡り、P&G社にて日本、および、海外市場に向けたマーケティング担当。日本、シンガポール、ジュネーブにて、多国籍なチームメンバーとマーケティング戦略の策定・実行の指揮を取る。  2012年1月にDeNAに入社。執行役員 マーケティング本部 本部長として、パフォーマンスフォーカスのテレビCM、デジタルマーケティング、戦略PRなど、クロスメディアでの360°統合マーケティングを推進。手がけたCMの本数はネットサービスだけで100本を超える。  新規サービスのマーケティング視点での開発支援(コンセプト強化、UI/UX強化、集客機能の強化)や、DeNA社のコーポレートブランディングのために、DeNA社のロゴの刷新やグローバル拠点の名称統一、DeNA社のスポーツ事業を活かしたスポーツマーケティングも含め、全社のマーケティング活動を統括。2015年4月に株式会社Bloom & Co.を設立。ナショナルクライアントに加え、スタートアップ企業のマーケティングやブランディングを支援

大学の時には4年半程留学をし、そこではアメリカ系の人達との交流もありました。日本人が海外に行った時に苦労することであったり、その他には、日本人が海外に行った時にうまくいく人といかない人、うまくいくケースやいかないケースをいろいろと見てきていますので、そういったことについて、今日はいろいろとディスカッションできればと思います。よろしくお願いします。

早速なのですが、私も結構色々な会社とお仕事をさせて頂いたり、私自身も色々な会社にいましたが、大体の会社が「グローバル」や「世界」というキーワードを会社のホームページのどこかに記載しているような気がします。
どの会社も海外展開をしようとするんですが、うまくいく会社はかなり少ないと思うんですよね。

海外でうまくいくメンバーとうまくいかないメンバーの違いは何か?

私自身も海外に行きましたが、海外でうまくいくメンバーとうまくいかないメンバーがいると思いました。日本人が海外でうまくいかない場合、その課題や原因について考えられることはありますか?

本蔵 私はまだ成功しているわけではないので、これからうまくいくように努力をしているという立場でしかお話ができないと思うのですが、スポーツでも事業でも、やはり成功するためにはよいチームを作ることが基本原則だと思っています。

優秀な人の気持ちになって考えてみると、優秀な人ほど選択肢がたくさんあるわけで、なぜ自分がその会社に入らなければならないのか、なぜこの日本人の作ったこの会社に入らなければならないのかと考えるわけです。

ですから、リターンというか利益のことだけではなくて、本人が時間を使う価値があって、大きなインパクトのあることができるんだということを現実的に想像できるくらいにまで、経営者のやりたいことや会社の方向性をしっかりと伝えることが、よいチーム作りや人集めでは最も大事なことではないかと思っています。

そういう意味では、言い古された言葉になるかもしれませんが、非常に壮大なビジョンを、しっかり自信を持ってみんなの前で言い続けること、これが、日本人が向こうに行ってよいチームを作り勝つために、非常に大事ではないかと思っています。

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一方で、日本でももちろん人集めはしています。その時に強調しなければならないのは、スタートアップなのでリスクがありません、つまり潰れないので大丈夫ですよとか、そちらの方ですね。

一方で、グローバルにいく時には、こんなすごいことができるんだ、こんなリターンがあってこれができたらすごいと思いませんかと、そこを強調しないと人が集まりません。

日本は逆で、あまり大きなことを言うと、そんなことができるわけがないとか、失敗したらどうするんだと。

リスクがありませんということを強調しないと、なかなか大企業からは人が来てくれないということをすごく感じます。

ですから、日本でそういうマインドセットで活動をしていて、そのままのやり方で海外に行くと、「誰もができそうな安全なことをスタートアップでやらなければならないのか?」とか、「そもそもスタートアップってそうではないでしょう?」という話になってしまうので、日本の企業が向こうで成功確率を上げるためには、壮大なビジョンと、それを言う勇気が必要だと思っています。

彌野 明確に言えるのは、欧米の人が実利的なリターンを明確に求めるということでしょうか。

どうしても日本人は比較的、それがやれたらいいかもしれないといったミッションやビジョンみたいなところとか、会社のスローガンに対して心を揺らしてくれると思いますが、海外に行ったら、実質的に金銭的なリターンや、自分の思っているオプションの中でベストかどうかということがすごく求められると思いますね。

本蔵 そうですね。あくまで僕の意見ですけれども、そういう意味では、結構ビジョンというか、金銭的なリターンの細かいもの以外を大事にする方が多いという感じがしています。

つまり、もちろんストックオプションがどうかとかいう話にもちろんなりますけれども、ただ、それだけでは優秀な人は来ないということです。
自分の時間を使う価値があって、やる価値があるんだという共通した思いみたいなものは、日本人、海外の人に関わらず、優秀な人はすごく持っているのではないかなという気はしています。

彌野 それって、教育やバイオなど、ミッションの度合いが高いカテゴリーだとよくあるのかなと思うのですが、かなりビジネスによってくるものだと効きにくい場合もあるのではないでしょうか。

スポーツ業界はまた全く形が違うと思いますが、日本の選手で一人で行く場合とチームで行く場合があると思うんですが、うまくいく選手といかない選手でその辺の差はあるのでしょうか?

どのような「マインドセット」を持つ人材が世界で活躍できるのか?

中竹 僕自身も、どうセレクションするかということが、今、一番の悩みです。U20のチームは6月に本大会があるのですが、この3月の遠征は、実はスコットが去ってから誰が世界と戦えるかを見るところだったんです。

去年も試みたのですが、去年もやはり見抜けなくて、本大会前に入れ替えをやったわけですよ。僕の経験の中から見えてきたことは、マインドセットが非常に重要だということです。

人間は、そのマインドセットによって大きく二つのタイプに分けることができます。要するに、自分の能力、人の能力、他者も含め、能力はそもそもあまり変わらない、生まれ持った能力がその人を決めるというフィックスト・マインドセット(Fixed Mindset)か、人は努力次第でいつでも変われると考えるグロース・マインドセット(Growth Mindset)か。

そして、面白いことに、ポジティブなんだけれどフィックスト・マインドの人もいるわけですよ。ネガティブなんだけれども、自分も含め人はみな成長するんだと考える人もいます。

これは全く違って、何が変わるかというと、フィックスト・マインドセットの人は、自分の能力を証明したがるんですよ。当たり前ですよね。能力は変わらないから。そして努力を軽視するわけですよ。人が見なかったら努力しないわけですよ。けれども、グロース・マインドセットの人間は、失敗しても絶対にそこから学べるんだと思うから努力するわけです。

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被験者を2つのグループに分けて実施した面白い実験があり、フィックスト・マインドセットの子供達は、何度もパズルをやらせると同じパズルしかやらないんですよ。

要するに、解けるパズルしかやらないんですけれど、グロース・マインドセットの子達は、難しいパズルをどんどん選んでいくんですよ。

一回やったものは面白くないんですよ。実はこれ、親や先生の褒め方も影響していて、結果だけ褒められる子供はフィックスト・マインドセットになりがちですよね。

要するに、うまくいっても、「お前すごいね!」ではなく、「よく頑張ったね。」と言って育てるとグロース・マインドセットになるんです。

僕自身、今回のフィジー遠征でも気づいたのが、フィックスト・マインドセットの人は、失敗しそうなエリアに入り込まないんですよ。

いわゆる「オープンフィールドプレー」において、自分が行っても相手を止められないと思うと、フィックスト・マインドセットの人は行かないんですよ。
抜かれるから。

けれど、グロース・マインドセットの人は、行くけれど、自分なんて役に立たないかもしれないけれど、チームのために行こうと思うわけです。

ここを見抜けるかどうかが重要で、僕は何度も何度もビデオを観て、「こいつはやっぱりこれ、ここで抜かれたふり、行けないふりをしているよね。」とプリテンドしている人間を探し出して、それをみんなの前でビデオを見せ、エースと呼ばれてみんなから評価されていた選手を指摘しました。

僕は絶対怒らないで、「これどう思う?活躍しているところだけみんなは評価しているかもしれないけれど、お前達気づいているでしょう?こいつ大事なところで逃げるんだよね。

このチームはこういうのを許しちゃいけないよね。」というような振り返りを何度もしていって、全員のマインドをフィクストからいかにグロース・マインドに持っていくかというのを相当やりましたね。

ですから、失敗するしないとかよりも、失敗から学んで成長できるかというマインドを持っている人間は、海外で活躍できるのではないかと思います。

国内で活躍する人間というのは、情報を豊富に持っていて、相手が分かり相手も自分のことを知って、実績を上げれば上げるほど優位になっていくんですよね。

要するにずっと有利な状況を作れるわけですが、海外に行ったら、どんなに自分がすごくても相手は自分を知らないわけで、環境も変わり、審判も違い、アウェーだとわざとロッカールームの時間を減らすために、当日にバスが来ないことなんかもあるんですよ。

そんなときにパニックにならずに対応できるかということを考えた時に、自分はここからでもできると思える、このマインドが必要かなということを、2年目にして改めて感じましたね。

彌野 面白いですね。スポーツもそうですし事業もそうだと思いますが、成長し続ける組織というのは、すごく強いじゃないですか。

そのフィックスト・マインドセットの人を変えていくきっかけというのは、みんなの前で見せるというやり方もあると思うんですが、他にどういった工夫をされていますか?

それと、フィックスト型の人が、どのように変化して、成長できる自信や成長する意欲を持てるようになるのかというところに、とても興味があります。

フィックスト・マインドセットの人をどグロース・マインドセットに変えることはできるのか?

中竹 僕はコーチを教えるのが専門なので、コーチに言うんですけれども、コーチが持っているノウハウをいかにオープンにできるかが勝負だと思うんですよ。

何かというと、こういった2種類の人間がいるのを隠しながら「こいつをこうしよう」とするよりは、フレームを作った方が早いので、そのプレゼンを先にするんですよね。

要するに、「人間はフィックスとグロースの2種類いるんですよ」と。

そしてこれを基準に僕はチーム作りをします。全員がグロース・マインドセットになるようなチーム作りをしていくというビジョンを最初に掲げておいて、自分の失敗を隠そうとするフィックスト人は、この組織においてはバツが付きますよというルールを伝えます。

とかくあまりノウハウを出さずに、思いや直接的な指導だけになりがちですが、こちらが考えている作戦や戦略や理想は全部伝えた方がいいですね。

僕自身が、今、日本のコーチを変えようとしているのはこの点なんですよね。「アカウンタビリティー(Accountability)」という言葉がありますよね。

説明責任のこですが、日本で使われている説明責任は、何か事件が起こった後のアカウンタビリティーですけれども、先に我々はこういうことをやりますよと説明することが、本質的なアカウンタビリティーです。

僕自身、それをコーチには導入すべきだと思っていて、作りたいビジョン、もっていく手法、これを最初に示すのが有効的だと思いました。

彌野 海外でうまくいくのは、基本的にはグロース系の人なんでしょうか?

逆にフィックスだと難しいという話なのか、組み合わせで両方いた方がいいとか、その辺はどうなるんでしょうか?

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中竹 短期決戦で成果を出し続けなくていいのだったら、フィックスだけで能力の高い人間の方がいいかもしれないですけれど、勝ち続けたり、何度も失敗を繰り返すと分かっているツアーなどであれば、絶対にグロースの方がいいです。

むしろフィックスはいない方がいいと思います。

彌野 それも、トレーニングの仕方によってはフィックスからグロースへの進化もでき得ると?

中竹 でき得ると思います。

彌野 なるほど。

中竹 これは研究でも言われていることですが、指導側が、フィックスの人間はそもそもグロースにならないんだと言っている時点で矛盾が起こっているんです。

要するに、「グロース・マインドがいい」と言っていながら、フィックスの人間は変わらない、この人の能力はもう変わらないと言っている時点で矛盾が起きているので、僕はそういう組織を目指すのだったら、今はこの状態であっても変われるんだということを伝えて、そういった矛盾を起こさない方がいいと思います。

彌野 なるほど。海外でうまくやっている人間って、結構カオスが嫌ではない人達で、むしろカオスがあるくらいの方が刺激的なんですよね。

やはり、海外に行くのが嫌だというのは、見えないのが怖いということだと思います。

(続)

編集チーム:小林 雅/Froese 祥子

続きはこちらをご覧ください:世界で勝負するには日本人の緻密性・慎重さをどのように活かすべきか?

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