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経営者が実体験を赤裸々に語る「急成長期における組織崩壊と再生について」全6回の⑤は、VOYAGE GROUPとサイバーエージェントを比較して気づいた違いを、CARTA HOLDINGS宇佐美さんが語ります。その学びから、組織カルチャーの違いを踏まえたうえで、カンパニー制に組織を再編したときに留意したこととは? うまくいく方法をそのまま模倣しなかったその手腕が光ります。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2022 プレミアム・スポンサーのあしたのチームにサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2022年2月14〜17日開催
ICCサミット FUKUOKA 2022
Session 9F
急成長期における組織崩壊と再生について
Sponsored by あしたのチーム
(スピーカー)
赤羽 博行
株式会社あしたのチーム
代表取締役社長CEO
宇佐美 進典
株式会社CARTA HOLDINGS
代表取締役会長兼CEO
土屋 尚史
株式会社グッドパッチ
代表取締役 兼 CEO
吉岡 諒
株式会社ウィルゲート
専務取締役 COO 共同創業者
(モデレーター)
田中 允樹
株式会社リンクアンドモチベーション
MCVカンパニー長
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1.急成長期の組織崩壊を経験したスピーカーが赤裸々に語る!
1つ前の記事
4.経営トップのコミットなくして、組織崩壊は解決できない
本編
田中 宇佐美さん、100~150人規模の際、採用に力を入れていたようですが、具体的にどうしていたのかなどお聞かせ頂けますか?
サイバーエージェントの採用面接で気づいたこと
宇佐美 当時感じた、VOYAGE GROUPとサイバーエージェントとの違いについて触れましたが(Part.2参照)、違いはもう2つありました。
1つは、経営理念です。
最近はパーパスも発表していましたが、サイバーエージェントは、「21世紀を代表する会社を創る」というビジョンがあります。
▶21世紀を代表する会社を創る(サイバーエージェント トップメッセージ)
このビジョンは、藤田さんが言っているだけではなく、現場の社員一人一人が、採用面接の場でも言っていました。
なぜサイバーエージェントに入社したのかと聞かれて、「私は、この会社を、21世紀を代表する会社にしたい!」と自分の言葉でビジョンを語れる人がとても多かったのです。
その当時のVOYAGE GROUPでは、僕自身が語れても、現場の社員が語っているわけではなかったので、その違いに気づきました。
もう1つは、会社の成り立ちとして、文化が違うと思いました。
サイバーエージェントは代理店として始まった会社なので、「今日はマンモス獲ってきたー!」「大漁じゃー!」みたいな(笑)、狩猟民族が集まっているのです。
▶3分でわかるサイバーエージェント ~創業ストーリー編(サイバーエージェント)
一方、僕たちはメディアビジネスから始まっているので、農耕民族なわけです(笑)。
▶CARTA HOLDINGSの沿革(CARTA HOLDINGS)
森をコツコツと開拓し、草を取って、種を植えて、水を撒いて…となると、分業制になりますよね。
開発チームがいて、営業チームがいて、ディレクションチームがいて、運用チームがいて…ということです。
つまり、事業に紐づく組織カルチャーの違いがあったのです。
ですから、経営理念やビジョンを作り直そうと思い、また、農耕民族は変化に対応しづらいので、どうやって狩猟民族のカルチャーをミックスするのかが課題でした。
田中 なるほど。
カンパニー制への変更で組織を再生
宇佐美 お話を聞いていると、吉岡さんと土屋さんは経営理念からアプローチしたようですが、逆に僕は、組織カルチャーから変えていこうとしました。
なぜなら、経営理念は、良い言葉が見つかれば確かにパワフルですが、見つからないこともあるからです。
田中 経営理念よりカルチャーが先というのはつまり、何を先にしたということでしょうか?
宇佐美 機能別の組織から、事業部制に変えたのです。
田中 分断されていたビジネスプロセスを統合させる、というテコ入れをしたということですね。
宇佐美 また、僕らの事業はグッドパッチとは違っていて、当時で言えば、懸賞サイトから価格比較サイトに変更したメディアを運営していました。
でも、「価格比較サイトで世の中を変えるぜ!」というメッセージだと、パワフルに伝えきれないこともあったので、事業の面白さや、自分の手で事業を創っていけることをベースに組織を作ったほうがいいと考えました。
ですから、120人ほどの組織を3つの事業部に分け、営業も開発もディレクションも全て入れ込んで…。
土屋 カンパニー制ですね。
宇佐美 はい、1つの会社のような形にしたのです。
田中 なるほど。
土屋 そうしたからこそ、起業家がたくさん生まれるようになったのでしょうか?
宇佐美 そうかもしれません。カンパニー制にしたことで、採用がしやすくなりました。
つまり、事業責任者になりたいという人を採用しやすくなったのです。
採用活動時、「将来起業したい、事業責任者になりたい」という人に向けて、それができるよ、面白いよ、そういうキャリアを作っていこうというメッセージを発信できるようになったからです。
田中 採用強化という目的のもと、組織を魅力的に再編したということですね。
土屋 それは、入社してきた人が変えていくということですよね?
宇佐美 はい。
土屋 それによって、会社のカルチャーを変えていくということですね。
宇佐美 そうですね。
事業部制でも共有できるのは「バリュー」
宇佐美 それである程度固まってきたので、2007~2008年頃に経営理念を一度全てなくして、新たに作ることにしました。
でも複数の違う事業を行っていると、今度はビジョンを作りにくくなるのです(笑)。
土屋 確かに。
宇佐美 社内でビジョンプロジェクトを立ち上げたのですが、やはり「複数の事業があるので作れません」となってしまったので、バリューだけはきちんと作ることになりました。
土屋 あ、バリューからなんですね?
宇佐美 うちはバリューからなのです。
田中 行動指針のようなものですよね。
宇佐美 それぞれ違う事業を行っていても、バリューだけはみんなで共有しようということにしました。
吉岡 経営幹部には、自分で起業していたとしても会社をめちゃくちゃ大きくできるような、めちゃくちゃ優秀な人材が揃っていますよね。
ですから、今聞いた組織の作り方には納得ですね。
宇佐美 そのバリューを、2010年頃からバージョンアップをして、磨いていって、今に至ります。
土屋 なるほど、いや~色々なパターンがありますね。すごい。
宇佐美 経営理念から始めるのが王道だとは思いますが、さまざまな事業を行っている場合もありますから。
田中 最近だと、SaaSモデルのように、ビジネスプロセスが長くて分断されやすいと、掲げたビジョンと現場に距離が生まれてしまうので、作りづらいかもしれませんね。
土屋 事業が複数になると、そうなりますね。
田中 ありがとうございます。
では赤羽さん、先ほどのHARD THINGS(Part.3参照)について、ターンアラウンドをどう乗り越えたかについてお願いできますか?
「全員が第二創業メンバー」と宣言し、改革に着手
赤羽 はい。
王道かもしれませんが、社長交代という大きなタイミングだったので、年が変わった瞬間、「全員が第二創業メンバーだ」としました。
それによって全員の当事者意識をぐっと高め、やるしかないと思わせるようにしたのです。
また、情報の透明化ですね。
田中 それまでは、情報を出していなかったのでしょうか?
赤羽 ほぼ出していませんでしたね、社員には業績の悪さを言えなかったので。
でもそれらも資金繰りもフルで開示し、「今はこんな状況だよ」と何も隠しごとがない状態にして、「全員が第二創業メンバーとして、やるぞ!」と去年(2021年)の正月に伝えたのです。
そして、ミッション、ビジョン、バリューを変え、組織も大きく変えました。
組織の変更点は大きく2つあります。
まず、それまでは支店単位で動いており、支店では支店長が一番偉くて、支店のコンサルタントが納品するスタイルだったので、支店をまたぐのは禁止事項でした。
でもウェブでこれだけ色々なことができるのに、支店を独立させておく必要はないと私はずっと思っていました。
そこで、支店長が一番偉いという仕組みを撤廃し、営業は営業に専念してもらうようにしたのです。
というのも、営業の仕事は、納品後にコンサルタントをする必要があるので、売れてから2カ月後にコンサルタント業務で忙しくなり、新たにものを売れなくなってしまうからです。
ですから、売れた拠点は忙しくなり、売れなかった拠点は暇になるということで、支店によって忙しさも違ったのです。
しかし、売れているということはそこにマーケットがあるということなので、営業は売ることに専念し続け、コンサルタントが支店を超えてウェブ上で納品ができれば、忙しさの凸凹もなくなると思いました。
つまり、自社をDXし、支店という枠組みを撤廃し、営業という役割とコンサルタントという役割を分けたのです。
これを去年の年度スタート時に行った結果、ものすごく機能しました。
営業もコンサルタントもそれぞれの仕事に専念できるようになり、支店ごとの忙しさの差や、支店内の上下関係もなくなったので、組織が一気に変わったと思います。
田中 なるほど。
少し戻りますが、「第二創業期」という言葉について、何を参考にして、どういう意図でとったアプローチなのでしょうか?
バリューに則っていれば全員意思決定が可能
赤羽 我々の5つのバリューの中に、「オーナーシップ(自覚と責任を持ち、自ら動く。)」が入っています。
▶あしたのチーム ビジョン・ミッション・バリュー(あしたのチーム)
そのバリューを見直した時、自分一人では戦えないと思ったのです。
数字は3期連続の危機的状況で、笑いごとではなく、債務超過になっていたわけで、一人で吠え散らかしても、何も変わらないと思いました。
そこで、バリューに則っている限りは、全員が自分で判断や意思決定をしていい、それだけのオーナーシップを持って取り組んでほしいと考えました。
つまり、1人では戦えないので、創業メンバーの意識を持った仲間を増やしたかったのです。
田中 戦場ですね。
待っていると撃たれてしまうので、全員が戦っている意識を持って欲しかったということですね。
赤羽 そうですね。
現在は管理職の半数が女性
土屋 創業者が2021年まで残っていたわけですよね。
赤羽さんも一緒に経営をしてきたので、一応、創業者に同意してきたわけですよね。
赤羽 まあ、そうですね。
土屋 相当アンラーニングしなければいけなかったのではないでしょうか?
田中 以前の考え方がこびりついていただろう、ということですね。
赤羽 1年ちょっと経って、今ようやく血の入れ替えが終わった感覚がありますが、やはり昔の思想は今もなお残っている部分はあります。
土屋 危機だったのは理解できますが、それでも、なぜそれができたのでしょうか?
赤羽 社長が変わった瞬間に、評価者が変わったのです。
ほとんどの人が降格になり、本当にパフォーマンスを出していた現場社員が一気に昇格しました。
女性管理職も少なかったのですが、今は管理職の半数が女性です。
背景として、現場で頑張る女性は、支店では雑務というかお客様対応しかしていない状態でした。
しかし、既存のお客様のサポートやケアが一番大事ということで、営業は100人以上いましたが、そのうちの80人をカスタマーサクセスに異動させて、新規の営業をするのは本当に売ることのできる20人のみにしました。
その当時、新規を追いかけている場合ではなく、既存のお客様を絶対にチャーンさせないよう全力を出してもらうことが最優先だったからです。
その異動させた80人はほとんどが女性だったので、その中からマネージャー登用をした結果、女性管理職が一気に増えました。
それくらい、大きく変えましたね。
土屋 素晴らしい。
(続)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸
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