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「ユニークなゲームコンテンツ企業のマネジメント手法」【K16-4C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!7回シリーズ(その1)は、「カメレオン経営」を掲げるクルーズの小渕さんに、独自の社内制度についてお話し頂きました。「状態異常回復会議」「オタスケマン」等、ユニークなネーミングにも注目です。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016
Session 4C
「ユニークなゲーム/コンテンツ企業のマネジメント手法」
(スピーカー)
小渕 宏二
クルーズ株式会社
代表取締役社長
椎木 隆太
株式会社ディー・エル・イー
代表取締役
塩田 元規
株式会社アカツキ
共同創業者 代表取締役CEO
柳澤 大輔
面白法人カヤック
代表取締役CEO
(モデレーター)
琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授
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▶「ユニークなゲームコンテンツ企業のマネジメント手法」の配信済み記事一覧
【本編】
琴坂将広 氏(以下、琴坂) よろしくお願いします。琴坂です。
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琴坂 将広
慶應義塾大学 准教授
慶応義塾大学准教授(SFC・総合政策)。数社の起業を経験の後、マッキンゼー・アンド・カンパニーの日本およびドイツを拠点に主に海外企業の経営支援に従事。その後、オックスフォード大学に移籍し、経営学の優等修士号と博士号を取得。立命館大学経営学部を経て、2016年より現職。フランス国立社会科学高等研究院アソシエイト・フェロー、(株)アピリッツ社外取締役、(株)ユーザベース社外監査役を兼務。専門は、国際経営における経営戦略、および、制度と組織の関係。著書に『領域を超える経営学-グローバル経営の本質を知の系譜で読み解く』(ダイヤモンド社)、共編著に『マッキンゼーITの本質 情報システムを活かした「業務改革」で利益を創出する』(ダイヤモンド社)、分担著に『East Asian Capitalism: Diversity, Continuity, and Change』(オックスフォード大学出版局)などがある。
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今回は、非常にエキサイティングなセッションになるのではないかと思っています。
ゲームとコンテンツということで、広く、クリエイティブなものを作っている組織という風に理解して頂ければよいのではないかと思っています。
大枠のテーマとしては、ただ単に管理するだけでは良いものは出てこないよねと。
とはいえ、数字を上げていかなければならないという組織の中で、どうやって良いものを作りながら組織を大きくしていき、それを仕組化していけばよいのか、今日はそういったところを議論できればと思います。
これから簡単に自己紹介をして頂き、その後でフリートークをしながら面白いところを深堀していければと思っています。
ではまず、小渕さんからお願いします。
クルーズの「カメレオン経営」
小渕宏二 氏(以下、小渕) 初めまして。クルーズの小渕です。どうぞよろしくお願いします。
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小渕 宏二
クルーズ株式会社
代表取締役社長
1974年生まれ。IBM子会社のセールスマンを経て2001年にCROOZを起業。2007年にJASDAQ上場、上場企業1000社から選出される「JASDAQ-TOP20」入り。これまでインターネットを軸にキャリア公式コンテンツ、検索エンジン、ブログ、ネット広告など様々な事業を展開しながら、創業以来一度の営業利益赤字も出さず15期連続で黒字経営を続ける。現在はネット通販事業、ソーシャルゲームに注力し、ファストファッション通販サイト「SHOPLIST.com by CROOZ」は配信開始から4年で年商150億円規模に成長。オリジナルネイティブゲーム「エレメンタルストーリー」ではプロデューサーも兼務。
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私が26歳の時にこの会社を作り、現在はジャスダックに上場しています。
ゲームやコマースを手掛けており、今の主軸がゲームからコマースに変わっているので、この場にふさわしいのかどうか分からないのですけれども、起業してから色々なことをやってきました。
オフィスの写真が飾ってありますが、割とよくニュース番組などにも取り上げられるんです。あのライオンやキリンは、カトパンさん(フリーアナウンサーの加藤綾子さん)も触ったものです。
琴坂 これは、小渕さんがディレクションされて作られたようなものなのですか?
小渕 そうなんですよ。
ライトの位置から僕が全てを決めて作り、地球をイメージしたオフィスになっています。
こんなところで仕事をしています。
「カメレオン経営」というのが弊社の経営スタイルです。
これまでの15年間で5回以上メイン事業を変え、自分でも何が何だかよく分からないくらい色々とドメインを変えてきた会社です。
出所:2016年11月11日「平成29年3月期第2四半期 決算説明資料」P13
琴坂 ビジネスが上手くいかなかったから変わったのでしょうか、それともこちらの方が収益が上がるから変わったのでしょうか?
小渕 収益が上がるからです。
出所:2016年11月11日「平成29年3月期第2四半期 決算説明資料」P14&P15
琴坂 収益が上がるからといって、いきなり入っていけるものなのですか?
どうやってそれを展開されるのでしょうか?
小渕 元々、モバイルのコンテンツの受託開発から始めて、当時 着メロが急速に伸びていっていたので、それを受けてノウハウを貯めていって、自分達でコンテンツプロバイダーとしてゲームを配信し始めました。
もしかしたらご存じの方もおられるかもしれませんが、「熱血硬派くにおくん」というゲームを配信していました。
琴坂 この下地があったので、どんどん新しい事業を進めていけたのですね。
小渕 そうですね。
そこから、人材の資産だったり、お金という資産だったり、開発の資産だったりを横展開していき、ゲームとコマースに辿りつきました。
クルーズの特徴的な社内制度や取り組み
琴坂 少しここに時間をとっていきたいと思うのですが、柳澤さん、この中でこれ何だろうと気になるものはおありですか?
柳澤大輔 氏(以下、柳澤) ちょっと想像がつかないものがいいですよね。
「状態異常回復会議」というのは何でしょうか?
小渕 「状態異常回復会議」は、よくロールプレイングゲームなんかやっているとパーティの状態異常を回復させる魔法とか出てきますよね。
会社も同じように、事業を行っていると、組織や事業の状態が異常になってくることがあるんですよ。
ですから、3か月に1回くらい、役員で会社の健康診断をするのです。
琴坂 健康診断というのは具体的にはどういうことをされるのでしょうか?
小渕 具体的には、3か月に1回くらいのペースで、「今会社に現金が幾らあるの?」や、「優秀なこの人は、今活躍できているのか?」など、僕が気になっていることを600個の質問状にするのです。
琴坂 いつも絶対に600個なのですか?
小渕 気になったことがあると毎日積み上がってくるので、増えたり減ったりして大体600個前後になります。
それが現場や役員にスライドにして送られ、回答を埋めて返してもらうという取り組みですね。
琴坂 皆さんは同じような取り組みをされていますか?
柳澤 全くやっていないです。
(椎木氏、壇上から会場の写真を撮影。)
琴坂 壇上から写真を撮るというのは結構新しいですね(笑)。
柳澤 ゲームっぽい「ありがとうメダル」というのは何ですか?
小渕 社内のイントラネットで「ありがとうボタン」を押すことができるようになっていて、例えば僕が柳澤さんに「ありがとう」と押すと、「ありがとうメダル」が入って、会社に30台くらいぶら下がっているディスプレイに、誰かから誰かに「ありがとうメダル」が送られたということが表示されます。
本人だけには、誰から「ありがとう」が入ったかが知らされる仕組みです。
琴坂 その他に、これは何だろうというのはありますか?
社員が主役のパネルディスカッション
塩田元規 氏(以下、塩田) そうですね、「パネルディスカッション」というのは普通じゃないですか。
普通だけれど、普通ではないのではないかという期待を込めて。
小渕 これは普通なんですよ。(笑)
皆さん、社員総会や全体会議などされていますよね?
そのような場では、社長があちらに立ってどうしたこうしたと喋ったり、割と一方通行な話が多いのですが、こういう風に社員がこちら側にいて、僕ら役員やディレクターレベルが出てきて、フリーディスカッションをするという感じですね。
琴坂 前に出てきて、もう何でも質問しろと。
小渕 そうです。
琴坂 実際に、それで良い質問が出るのでしょうか?
小渕 出てこないですね。
(会場笑)
小渕 我々にとっては面倒ではあるけれども、社員にとっては聞きたいことなので、経営者にとっては良い質問ではないですけれども、社員にとってはすごく良い質問なので、それを聞いている人は面白いですよね。
塩田 質問は事前に集められますか?
小渕 集めないです。
塩田 その場で?
小渕 その場で、です。
塩田 その場で皆が発言する空気があるということですか?
小渕 ありますし、こう手を挙げて言うじゃないですか。
こちらが、少し舌打ちしてしまうようなものもありますよ(笑)。
塩田 でも、その雰囲気を出した瞬間に、社員の方は、もう質問しづらくなりますよね(笑)。
小渕 そうなんですよね(笑)。
そして、ここに役員が並んでいたら、役員に、「そういえばあの事業は今後どうしようと思っているの?」といった話をします。
僕が日々の中で聞けなかったこと、例えば「そういえば君、あの事業はどうしたの?」や、「あのプログラムに問題があると聞いたけれども、どうなっているの?」や、「今後そういうミスを少なくするためにどうしようと思っているの?」といった話をあの場でするのです。
琴坂 全員が聞いているのですね。
小渕 聞いています。
塩田 頻度はどれくらいですか?
小渕 3か月に1回か、半年に1回です。
塩田 結構コンスタントにされているんですね。
小渕 そうですね。
琴坂 それとこの全体会議との関係というのは?
小渕 全体会議の中に「パネルディスカッション」というコーナーがあります。
そもそも、社長が一方通行に高尚なビジョンを話しても、それを聞いている社員はよく分からないんですよ。
琴坂 なるほど。
小渕 従業員が100人を超えるような規模になると、これからのビジョンを理解できて、「何て素晴らしい会社なんだ!」と共感を示してくる人の方が少なくなってきます。
むしろ、「何を考えているのですか?」、「実際に仕事をどう進めていて、これから何をしようとしているのですか?」といった反応です。総理大臣のぶら下がり取材のような感じですね。
琴坂 思考のプロセスを、「パネルディスカッション」という形で共有するのですね。
小渕 そうです。
回答自体に意味があるというよりは、「なるほど。この人はこんな感じで考える人なんだ」といった雰囲気を伝えられればよいのです。
琴坂 なるほど。
パネルには、毎回、経営陣全員が出られるのですか?
小渕 季節柄というか、その都度、社員はこの時期だとこんな質問を聞きたいのだろうなと考えながら、担当の役員や、或いはディレクターの話が面白そうであればそういう人を抜擢したりします。
琴坂 なるほど。
椎木さん、この中で興味を持たれたものはありますか?
椎木隆太 氏(以下、椎木) 優れた人のモチベーションを上げる制度が多いのか、それとも新入社員や新入りを含めて、一体感を出すための制度が多いのでしょうか?
小渕 制度や取り組みにもよりますが、「状態異常回復会議」は単純に経営者のため、会社のためですよね。
「パネルディスカッション」は、聞いている社員のためであったり、僕らも役員間で質問され合うと、頭の棚卸になりますよね。人から質問されると整理ができます。ですから、これは全体のためですね。
「オタスケマン」は新しく入った人のためかもしれないですね。
例えば、新入社員が入ると、誰がどんな人かよく分からないし、実際にプログラムのスペシャリストが社内のどこにいるかが分からないんですよ。
ですから、これについてもイントラネット上に「オタスケマン」というボタンがあって、そのボタンを押すと、「オタスケマン」が飛んで来る仕組みになっています。
琴坂 人間が飛んでくるということですか?
小渕 人間が飛んできます。
琴坂 ポチッとボタンを押すと、登録されている誰かにきちんとルーティング(転送)されていくのですか?
小渕 はい。全社員に飛びます。
ここに困っている人がいて、「オタスケマン」を呼んでいるという情報が流れます。
塩田 それは、どれくらい機能しているのですか?
小渕 「オタスケマン」は結構使われていますね。
塩田 使われているんですね。
何か、使われやすい仕組みなどがあるのですか?
それとも皆が勝手に、相談のような感じで気楽に利用するのでしょうか?
小渕 可視化することが重要と考えていて、誰かがオタスケマンを呼んだら、30台くらいの社内テレビに「オタスケマン」が呼ばれているという情報が全社共有されて、オタスケマンが来やすいようにしています。そちらで担保しますね。
出戻りができる「CROOZ号乗船往復チケット」
琴坂 「CROOZ号乗船往復チケット」というのは何ですか?
小渕 已む無く会社を辞める人や、ステージが合わないから辞める人など、やはり色々いるんですよね。
8割は、色々な理由があって已む無く辞める人なんですよ。
2割は、単純に会社が合わなかったから辞める人です。
その8割の中には、ものすごく活躍しているのに、泣く泣く辞める人もいる訳ですよ。
そういう人達には、もう一回船に乗りたいのだったら往復チケット出しておくから、片道行ってもう一回戻って来いという意味を込めて、社名のクルーズに因んてネーミングしました。
椎木 俺は絶対嫌だな。
小渕 本当ですか?
椎木 どうしてそんなに寛大になれるのですか?
小渕 僕はゴルフが好きで、週3ゴルフに行きたいんですよ。
優秀な人が沢山いたら、週3ゴルフに行けるじゃないですか。
椎木 まあそうですけれどもね。
小渕 ですから、どちらでもいいなと。
琴坂 年限も決めないで8割方の人にあげてしまっているのですか?
小渕 いえ。
これは制度化されているのですが、僕は基本的に、謝って「もう一回乗せて下さい。ごめんなさい」と言ってくれれば、「いいよ」と言うタイプなんですよ。
琴坂 なるほど。
小渕 いいよ、と。制度は関係なしに。
でもこれは、とても優秀だった人がどこかで修業したいと言った時に渡すものです。
もし挑戦に失敗したら、いつでも戻れるようにしておくから、思い切りチャレンジしてくればよいと思っています。
椎木 帰ってきた人はいるのですか?
小渕 いますよ。
椎木 優秀な人が、同じところに戻って来るのですか?
小渕 弊社の方が優秀な企業なのではないですかね?
椎木 すごいなあ。うちは絶対戻って来ないと思うなあ。
(会場笑)
小渕 それは、元社員の方が、とても優秀で成功されているからではないでしょうか?
弊社では、志半ばで倒れそうになったところを救ったりしたことなどはありますね。
琴坂 ではそろそろ椎木さんの方に移っていってもよろしいでしょうか。
(続)
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子
続きは 社員1人あたり0.5坪!DLE椎木氏が語る衝撃のオフィスマネジメント をご覧ください。
https://industry-co-creation.com/management/8267
【編集部コメント】
続編(その2)では、ディー・エル・イー椎木さんに、衝撃の会社紹介とオフィスマネジメントについてお話し頂きました。是非ご期待ください。感想はぜひNewsPicksでコメントを頂けると大変うれしいです。
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