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ICC FUKUOKA 2023のセッション「愛されるブランドが実践する、ロイヤル顧客を起点とした事業戦略とは?」、全5回の④は、引き続き最大公約数からは見つけられない、ロイヤル顧客は誰かという議論が続きます。また、彼らに対するロイヤリティ・プログラムについて、一休の榊さんが詳説します。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは コーラム です。
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【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 7C
愛されるブランドが実践する、ロイヤル顧客を起点とした事業戦略とは?
Supported by コーラム
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▶「愛されるブランドが実践する、ロイヤル顧客を起点とした事業戦略とは?」の配信済み記事一覧
デザイナー1人がユーザーエクスペリエンスを決める
榊 これは我々の特徴かもしれませんが、10人のヘビーユーザーにインタビューしたとして、10人それぞれがご意見をおっしゃいますが、本当に取り入れたい意見をおっしゃるのは、そのうちの1人です。
「こういう意見があるが、そう思うのはこの人だけかもしれない」と思うのか、「こういう人は、確かにもっとたくさんいそうだ」と思うのかであり、それは第六感で決めています。
インタビューの後にみんなで話し合った際、「ウインドーショッピング」というキーワードに、僕らは一番ビビッと来たのです。
中島 なるほど。
では、写真を大きくすることで解決しようとか、体験が分かる写真に変更しようとかいうソリューションを考えるのは、プロダクトチームということですか?
榊 そうですね。
中島 チーム同士をコネクトするのですね。
榊 もっと言うと、一休というサービスの顧客向けユーザーエクスペリエンスを決められる人は、社内に1人しかいないのです。
中島 えっ、そうなんですか!?
榊 デザイナーも1人しかいないのです。
もちろん、サブの担当者はいますが、決定権を持っているのは1人で、その人に絶対的な権限が与えられています。
中島 アップルの(元最高デザイン責任者の)、ジョナサン・アイブみたいですね。
榊 その人に全ての権限が与えられているので、その人は社長の僕に特に報告せず、サイトのアップデートをします。
小父内 それでいいのですか?
榊 勝手にアップデートします。
それで、彼らがアップデートしたものを見て、お客様がどう反応したかは見ています。
僕は、その人の独創性がすごく大事だと思っています。
このスライドの写真もそうですが、写真は一休が撮影しているものではなく、宿が提供してくれているものです。
宿はものすごくたくさんの写真を共有してくださいますが、どの写真を選ぶか、どの部分を切り取るか、どういう明るさで表示するかは、全てその権限を持つ人の感性に委ねています。
小父内 なるほど。
万人受けするサイトにしてはいけない理由
井手 インタビューで聞いた、旅行気分になるという声は取り上げているけれど、それは10人に1人の声ですよね。
一休は旅行という大きな業界の中のかなり小さいセグメントの中にいて、我々もビール業界のうち、クラフトビールというセグメントの中にいます。
インタビューをしたり、顧客の声を直接たくさん聞いたりしているので、万人には受けない、氷山の一角くらいのニーズを捕まえて、「こういう新商品を作ったり、こういうイベントを行ったり、こういうサービスを提供したりすれば、お客様は喜ぶのではないか」と嗅ぎ取る能力が備わってきていると思いました。
データを取得した結果、最大公約数の意見を取り入れようとすると、先ほどの旅行気分になるという声は少数派の意見なので、残らないと思います。
圧倒的に差別化された、何かに特化したプロダクトやサービスであれば、全部がそうではないかもしれませんが、高いロイヤリティを持つお客様との関係性は似ていると思いました。
榊 本当にそう思います。
この「あさば」は僕が好きな旅館ですが、値段は1泊16万円からです。
(一同笑)
榊 つまり、万人を相手にしているわけがないのです。
小父内 ないですね(笑)。
榊 ドライヤーやパジャマは、あるに決まっています。
他の旅行社は、「あさば」がどこにあるか、東京から何時間かかるか、駅からどのくらいか、という情報を重視しています。
でも皆さん、ここは外国車で行きますから、東京からどれくらいかかるかは大きな問題はないのです。
これが箱根にあろうが、那須にあろうが関係なく、お客様はこの宿に行くことを目的にしているのです。
そういった情報は一切捨てていますね。
井手 選ばれたターゲットに熱狂的に好きになってもらいたいから、トレードオフしているということですよね。
ドライヤーやパジャマは、あるに決まっているじゃないですか。
でも、万人受けを是とする思考の人が考えると、「そうは言っても、必要な情報はきちんと掲載するべきです」という意見になり、万人受けサイトになってしまう。
結果、顧客は、「こんな情報は要らない、デザインがダサい」と思うわけです。
榊 だからこそ、チームで話し合いをしないのです。
みんなで話し合えば話し合うほど、平均的な方向性になるのです。
例えば、「もっとたくさんの写真が見たい」という意見が出れば、「黙れ!」と言うのは難しいですよね。
小父内 そうですね(笑)。
榊 だから、1人に決めてもらうようにしています。
中島 その1人は、社長権限で選んでいるのでしょうか?
榊 そうです。
小父内 そこが肝かもしれないですね。
中島 うちは、状況が全然違いますね。
榊 僕もこの仕事をしているので、年間100万円は使うユーザーです。
マーケティングチームのメンバーも、100万円くらいは使っています。
小父内 自ら使っているのですね。
榊 デザイナーも使っていますね。
「『あさば』良いよね」と思っている人でなければ、この仕事はできないということです。
中島 なるほど。
直感的な「『あさば』良いよね」という、非言語コミュニケーションが成立する人でなければダメということですね。
榊 「あさば」の良いところは、非日常感なのです。
小父内 旅はそういうものだということですよね。
中島 全然違いますね。
一休のサイトは引き算
榊 これは鹿児島の「城山ホテル鹿児島」で、温泉の目の前に桜島がある、素敵なホテルです。
僕たちは、鹿児島に行くなら、このホテルはいかがですかと……。
小父内 僕は来月、このホテルに行きます。
榊 そうですか! こういうホテルに行きたいですよね。
我々はこのように、写真1枚だけで見せているのです。
小父内 この写真は、めちゃくちゃ気分が上がりますね。
中島 この景色を見て、このお風呂に入るために鹿児島に行くのですよね。
小父内 一休は引き算ですよね。
榊 そうですね。
小父内 情報を足し算する考え方ではないのですね。
榊 アクセスなんて気にせず、GOアプリでタクシーを呼んで行ってくださいということです。
これらが、見せ方の特徴だと思います。
小父内 中島さんの例で言えば、平均的なNPS値のユーザーを見ていると絶対に出てこない意見と同じですよね。
中島 そうですね。
小父内 ロイヤルカスタマーの意見が反映されると、結果的に売上につながっていくということですよね。
榊 そうですね。
小父内 ありがとうございます。
三方良しのロイヤリティ・プログラム
榊 先ほど申し上げた、ロイヤリティ・プログラムですが、ユーザーを4つのランクに分けています。
半年間で使う金額をベースにして、5万円、10万円…一番右の、半年で30万円以上使う方をダイヤモンド会員と呼んでいます。
半年で30万円以上なので、平均では、ダイヤモンド会員は年間100万円くらい使っている層ということになります。
当然、ヘビーユーザーになればなるほど値引き率が高くなるのが1つのポイントです。
実はダイヤモンド会員にまでなると、値引きよりも特別サービスがお好みですので、スペシャル特典のようなものがあります。
部屋がアップグレードされるとか、チェックイン時に利き酒セットやウェルカムシャンパーニュが用意されているとか、そういうサービスを選ばれることが多いです。
宿側も、ダイヤモンド会員が欲しいわけです。
中島 特典のコストは一休が負担しているわけではないのですね。
榊 負担していないです。
中島 あくまでも、一休を経由して予約するだけということですね。
ヘビーユーザーは、リピートしてくださる可能性が高いのですか?
榊 いえ、というよりも、例えば飲むお酒が高い、スパや岩盤浴を利用するなど、とにかく1人あたりの利用金額が高いのです。
ですから、ダイヤモンド会員が欲しいというのが、宿側の希望なのです。
中島 なるほど。
榊 なるほどと思ったので、「このお客様はダイヤモンド会員だ」とフラグをつけて教えてあげる、その代わりに特典をつけてもらっているわけです。
小父内 そういうカラクリなのですね。
榊 ですから、自社の顧客基盤の優良性にレバレッジを効かせたプログラムになっています。
このプログラムに関して、我々のコストはゼロなのです。
小父内 教えてあげるからですね。
榊 宿の気持ちを考えれば、理解できます。
ウェルカムシャンパーニュを部屋に置いておくとして、ハーフボトルで5,000円くらいすると思いますが、宿泊料金が16万円なので、宿からしたら誤差のようなものなのです。
中島 我々の場合も、運賃はタクシー会社に入るので、我々が得られるマッチング手数料はすごく少ないのです。
ロイヤリティ・プログラムを考えようにも、割引原資もないので、どうしようかなと思っていたのですが、一休の例はめちゃくちゃ勉強になりますね。
榊 やはり、自社の顧客基盤の優良性にレバレッジを効かせることですね。
宿の間でこれが広がっている理由がもう一つあるとすれば、彼らは、小規模地域分散業態だからです。
ですから、強烈な、独自のロイヤリティ・プログラムは持てないのです。
これが、世界的なホテルブランドとなると、「我が社のロイヤリティ・プログラムがあるので、一休のロイヤリティ・プログラムは結構です」と言われてしまいます。
でも全国各地の旅館などは小さいので、一休のロイヤリティ・プログラムに乗りやすいのです。
小父内 僕も、一休のダイヤモンド会員です。
榊 ありがとうございます。
即時利用できるポイントで実質5%オフ料金に
小父内 ポイント付与率5%は、今、知りました。
榊 ポイント付与率5%は、うちが使っているカラクリでもあるのですが、ポイント付与をされている気がしないですよね?
小父内 しないです、付与しているなら言ってよと思いました。
榊 うちは5%引いているのです。
一休のポイントは、即時利用できるようになっているのです。
小父内 ああ、確かに。
榊 ですから、ポイント即時利用で、5%オフになった価格で利用していらっしゃるのです。
我々の競合プレイヤーは楽天トラベルやじゃらんで、彼らは強いわけです。
僕らから見ると、彼らのポイントプログラムはクロスセルをするためのポイントプログラムなので、ポイントの即時利用ができないものです。
楽天トラベルで貯めたポイントは楽天市場で使ってね、という構造ですよね。
我々の場合、一休ポイントというものを導入していましたが、それだと水が買えないから嫌だと言われました。
Amazonポイントや楽天ポイントに変えて、とすごく言われました。
一休ポイントよりも楽天ポイントやリクルートポイントの方が良いというのは、その通りです。
でも、楽天ポイントやリクルートポイントよりも現金の方が良いでしょう?
ですから、現金にしているのです。
小父内 その恩恵を受けていたわけですね。
榊 一休のお客様の8割が、ポイントは、貯めるのではなく即時利用されています。
中島 即時利用を前提にして原価計算をしているのですね。
榊 そうですね。
ポイントを貯めるのは、出張で利用される人のみです。
会社の経費の範囲の中で…、今、我々はヤフーグループの一部になっているので、PayPayになっています。
楽天ポイントにも負けないかもしれません(笑)。
こういう戦い方をしています。
小父内 ロイヤリティ・プログラムはめちゃくちゃ面白いですね。
宿泊施設側が乗るというのは、稀有なケースだと思います。
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美