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2016年に配信した、AI(人工知能)に関する議論を総特集いたします。今回は、ICCカンファレンス TOKYO 2016から、AI時代を見据えた問いを第一線の研究者たちが議論したセッションを4回に再編集してお届けします。AI特集(その4)は、会場からの質問を受け付け、これからの時代に子どもに何を学ばせるべきか?といった点を議論しました。ぜひご覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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登壇者情報
2016年3月24日開催
ICCカンファレンス TOKYO 2016
Session 3B
最先端研究の動向(人工知能 コグニティブ IoA)
(スピーカー)
武田 浩一
日本アイ・ビー・エム株式会社 技術理事
松尾 豊
東京大学大学院 特任准教授
暦本 純一
東京大学大学院情報学環 教授/ソニーコンピュータサイエンス研究所副所長
(モデレーター)
田川 欣哉
Takram 代表
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【前の記事】
【本編】
本記事は「人工知能時代に磨くべき力とは?」最先端の研究者が語る今後求められるスキル を再編集した記事となっております。
田川 会場からも2、3質問を拾いたいと思います。
挙手で2つくらいとれると思いますが、どうでしょうか。
質問者1 森・濱田松本法律事務所の堀と申します。
ビジネスカンファレンスなのに個人的な興味から聞いてしまいますが、幼少期の息子をもっております。
子どもの教育という意味で、AIが当たり前の世界で、何を子どもに備えさせたらいいだろうかというところを非常に興味深く思っていまして、ご意見を伺えたらと思います。
AI時代に子どもは何を学ぶべきか?
田川 有難うございます。
暦本 そうですね、この前学生と話していて、今後は機械翻訳が進むのだから英語勉強しなくていいですかねと聞かれて、うーん、さすがにいいとは言いえないか、と思ったことがあるんですよね。
で多分、個人的には、今私がやっている研究は、ほとんど子どもの頃の漫画とかSFとかそういうののほぼ延長なので、そういった発想が出てくるプロセスや発想訓練は守りたい感じですね。
ある種のトレーニングして出来る技能は機械学習でも出来ちゃうかもしれないんですけども、発想のところはやはり大事かなと思います。最近CSL(ソニーコンピュータサイエンス研究所)所長の北野が言っているのは、ノーベル賞をとるようなリサーチプロポーザルをその内AIが出すだろうと、そこも分かんないですけど、ただそういうところですかね。
そこは実は非常に難しい問題を抱えると思います。
松尾 英語とかプログラミングは、今の中学生とか小学生ぐらいまではやった方がいいんじゃないかなと思いますね。
その先は分からなくて、英語がいらないならやらなくていいんじゃないですかという気もしますし、いずれにしても、時代が変わっても重要なのは、人間力なのですよ。
(会場笑)
田川 なんか禅の世界ですね。人間を磨く(笑)。
松尾 たくさんの友だちと遊びましょうとかね。
田川 今日すごく思うのは、お三方とお話してて、技術が進めば進むほど、人間を磨いていく必要がありますみたいなことですね。
松尾 僕は思うんですけど、最近ふと気づいたのが、僕が学生を見ると、最近の学生はやる気ないなと思うんですよね。
でも僕も学生だったときに、先生はそう言っていたなとか、先生の先生もそう言っていたらしいなとか聞くとですね。
やっぱりやる気はなくなっていくもんだ、と。で、これってどういうことかって考えるとですね。
経済が発展している訳ですよね、GDPが増えていると。で、GDPが増えるっていうのは一体どういうことかというと、AというサービスとBというサービスがあります、と。で、同じ効果をもたらしてくれるんだけれども、Aの方は楽ができて、Bの方は楽ができませんというときに、どっちにお金を払いますかっていうと、多分Aの方にお金を払うんですね。
ということは、価格が向上しているっていうことは、結局楽をさせて楽しませてくれるように社会がなっていっているということだから、人間としては多分堕落していく一方なんですよ(笑)。
(会場笑)
田川 堕落しても生きていけるということですね。
松尾 そう考えると、今度堕落させないサービスというのが出てきてもいいはずで…
(会場笑)
田川 例えば、どういうことですか(笑)。
松尾 生命性を上げるような危険な目に合わせるサービスとかですね。
(会場笑)
松尾 留学がいいと思うのは、留学とかすると海外に行くと、本当にみんな危険を感じたりするので、「あっ、やばいな」と思って、「頑張んなきゃ、ちゃんとしなきゃ」とか思ってですね、すごく活性化するという面があると思うんですよ。
戦うとか危険な目に合うとか多分すごく大事で、だけど、今の社会で本当に危険な目に合わせて、たまに死んじゃったりしたらダメなんで、死なないように、本当には危なくないんだけども、危ない感じがめちゃくちゃするような体験をさせるという、そういうことが重要なんじゃないかと思います。
(会場笑)
田川 有り難いお話を有難うございます。
武田 多分ですね、ロボット研究とか、脳の測定の技術が上がったことで、色んな意味で知見が増えていると思います。
特に幼児期の教育で言うと、まずは話し言葉ですね。音声情報処理を先にちゃんと育成したあとで、文字教育をした方が逆よりはずっといいと思います。
それは、人のいわゆる発展の過程が、そういう感覚器官のトレーニングに合わされているという生態的なものですね。
またその母国語を話すときに、無理して英語の教育教材を小さいときから教えると、母国語の能力が落ちるという報告もあります。
そういうあまりにも詰め込み過ぎるということは、注意をされた方がいいのかなと一般的には思います。
ただ、これは極めて実験的なので、極端にゲーム脳につくるとか、本当に極端な幼児教育をすることで、今まで全くなかったような人間が出来る可能性がありますので(笑)、それはちょっとオッズは低いですけど、チャレンジかもしれないですね(笑)。
(会場笑)
田川 毎日ね、危機に合わせ続けるとかね(笑)。
武田 ロボットの研究で、触覚と聴覚と同時にやる活性部位が、1+1が2以上になるというのは、大阪大学の石黒先生の研究であるので、複数のモダリティーで何か接せられるというのは意外といいのかもしれないですね。
田川 それはあれですか、叱りながら叩くみたいな、それはあるいは、良かったとかいうことですか(笑)。
(会場笑)
武田 そうかもしれないですね(笑)。
田川 次の質問に移りましょう。
質問者2 立命館大学(編集注:現在は慶應義塾大学准教授)の琴坂と申します。貴重なお話を有難うございました。
最初に隣同士で議論したことでもあるんですけれども、やはり多分経営者の方々も気になっているのは、この先FacebookとかGoogleとか、そういうところが寡占するようなテクノロジーベースの世界なのか、それとも小さい会社が生き残る世界なのかという点です。
前者であれば、そういった前者が支配する世界なので、小さなスタートアップはどうやって生き残っていけるのかということに関して、もしご意見やご見識があれば教えて頂きたいなと思います。
スタートアップが戦うべき領域は?
松尾 例えば、ディープラーニングについて言うと、ほとんどが論文で公開されていますし、それからオープンソースも商用利用可で出ているので、利用するのは全然問題ないと思います。
そこが競争力にはならないだろうと、皆もう思っていて、どこが競争力になるかというと、データとハードウェアだと思いますね。
個別の領域で、データを速くとった方が勝つに決まっていて、精度も上がります。
そのため個別の領域ごとに、いかにゲリラ戦でデータをたくさんとっていくかというのがスタートアップの勝ち方なんじゃないかな、と思いますね。
田川 武田さん、深く頷いていらっしゃいますけど、どうですか。
武田 そうですね。大学の方の就職なんかをみていても、最近の学生の方は大体インターネット系の企業のところに人気が集まっていて、おそらくIBMだけではなくて、富士通・日立・NECという、これまでのIT企業というところは、ほとんどスキップされているような印象ですね。
それはおそらく、データを持たない企業だからということと、そのせいで面白いサービスが作り出せないという悪循環なのだと思います。
それでWatsonのデベロッパー向けクラウドサービスで世界中で400社、500社のパートナーの方からの独創的なアイデアを実現する、そういうところを通して新しい取り組みを始めています。
IBMのグローバルの力と発想力を合わせてCogniToys(コグニトイズ)*というような教育のおもちゃが出来たりしました。
このような発想力のあるスタートアップの方との連携というのがポイントです。
*「Watson」を活用することで、あらゆる質問・疑問にユーモラスに答へ、子どもの心を掴む知育玩具「CogniToys」。動画も是非ご覧ください。
ほかにもスタートアップ企業の方とは、データを集めるような環境がないのであれば、そういうどこかのクラウド(例えば、IBMであれば医療データを3億人分の2次利用可能なデータがあるとか)でデータとサービスの連携という形で大きくするといった手段もあると思います。
当初のデータ規模というのはまだ制限されているので、それを少しずつユーセージが上がるような形のサービスに成長させるといった発想力が重要になると思います。そういう形で、色々試して失敗しながら、最後に1つでも2つでも上手くいくようなものを見つけられるようなモデルがあればいいのかなと思います。
田川 そうすると身の回りを観察して、人が気づいていない、こんなデータの取り方があるんだといったところがまずはミソになっていくということなんですかね。
武田 そうですね。特にエッジデバイスで、色んなユーザーの行動データとかをとれるようになってくると、かなり色んなことが分かると思います。
今のところ、まだそこまではデータが観測出来ていないから、分かっていないですけども。
田川 分かりました。有難うございます。
時間が終わりに近づいてきたので、お三方からですね、締めのメッセージを、会場の皆さまに投げて頂ければと思います。
こんなことに取り組んでいきますとかでもいいですし、ビジネスをやっていらっしゃる方も多いので、こういうことを一緒にやりませんかということでも結構ですので、順に武田さんからよろしくお願いします。
武田 Watsonで日本語のAPIを2016年2月にソフトバンクと恊働で6つ発表したんですけれども、まだまだですね。本当に50個もあるAPIが皆さんのアペタイト(Appetite)に合うようなものになるかは、まだかなり時間がかかるかなと思います。
そんな中でも特にやりたいのは対話ですね。膨大な知識がバックエンドにたまったときに、聞ける手段がSQLだと全然使えないです。
やっぱり何らかのコミュニケーションによって、効果的に引き出すということを対話を通して、人の尺度に合わせた情報インターフェースが必要だと思います。
個人的には特に対話を重視したいなと思っています。もしご興味があれば、色々とご一緒にやらさせて頂きたいなと思います。
田川 有難うございます。では松尾さんお願いします。
松尾 僕はやっぱりディープラーニングで、特に画像認識がすごいと思うので、人間が意識していないんだけども、すごい認識の仕事をしていることとかたくさんあって、そういうところがどんどん自動化されますという世界は、僕は非常に巨大だと思っています。
そこをどんどん狙っていくといいんじゃないかなと思っています。
田川 有難うございます。
暦本 ARにパーセプションみたいなのが入ると、人間の原始的な能力が拡張されるとか機械を意識しない一体感とか、今までのARの定義と全然違うような発展をすることも思っています。
HCIとかARとかVRとか、私の分野ではそういう用語で一応規定して20年ぐらいやっていたんですけど、その定義そのものが壊れるというか壊したいというのが一番やりたいことですね。
田川 有難うございます。それではこれでこのセッションは終わりにしたいと思います。
今日はお三方を囲んで、皆さんとディスカッション出来て、楽しく過ごせたと思います。お三方の皆さま、どうも有難うございました。
(終)
AI特集の続きは 適切な目的を与えられるかがAIの価値を決める をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/藤田 温乃
【編集部コメント】
2016年、ICCのメディアをお読みいただきありがとうございました!2017年は、1月2日より新たな記事の配信を開始いたします。
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