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「人が喜ぶ正しい事業を、大志を抱いてやりぬけ」レジェンド経営者が、若き経営者たちに送る信念のエール【ICC KYOTO 2019レポート#8】

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9月2日~5日の4日間にわたって開催されたICCサミット KYOTO 2019。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。今回は、9月4日のSession9B【特別企画】「レジェンドが語り尽くす! メガベンチャーを創るための経営者の仕事とは?」、過去のICCサミットにはない緊張感と感動に包まれた、会場の模様をレポートします。ぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うためのエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2020は、2020年2月17日〜20日 福岡市での開催を予定しております。

【登壇者情報】
2019年9月3〜5日開催
ICCサミット KYOTO 2020
Session 9B
【特別企画】レジェンドが語り尽くす! メガベンチャーを創るための経営者の仕事とは?
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(スピーカー)
千本 倖生
株式会社レノバ
代表取締役会長

藤森 義明
シーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパン株式会社
最高顧問

(質問者)
麻野 耕司
株式会社リンクアンドモチベーション 取締役 /オープンワーク株式会社 取締役副社長 /モチベーションエンジニア

永田 暁彦
株式会社ユーグレナ 取締役副社長 / リアルテックファンド 代表

平尾 丈
株式会社じげん
代表取締役社長執行役員CEO

(ナビゲーター)
宮宗 孝光
株式会社ドリームインキュベータ
執行役員


75分間のセッションの終わりが告げられると、会場は万雷の拍手に包まれた。

さざなみのように会場全体から湧き上がり、最大音量となった拍手の音はしばらく鳴り止まず、B会場はまるで、最高のオーケストラが演奏を終えたあとのコンサートホールのような雰囲気だった。拍手のなか、登壇していた5人が席を立ってお互い握手を始めると、さらに拍手が重なった。

舞台を降りたレジェンドの二人、レノバの代表取締役会長の千本 倖生さんと、シーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパン(以下CVC)最高顧問の藤森 義明さんの前には、あっという間に長蛇の列ができていた。今の感動を伝えたい、一言でもいいからご挨拶したい、そのどちらもだろう。

会場から1問だけと言われて、最後に質問をした、ベースフード代表取締役社長の橋本 舜さんは、今、一体どんな気持ちなのだろう。レジェンドから、まだ明々と燃えるバトンを渡されたような驚きと、感動と、胸の高鳴りを抑えきれなかったに違いない。

詳細は後日公開予定の書き起こし記事でお読みいただくとして、ここではこのセッションが生まれた経緯と、内容のダイジェストをお伝えする。

セッションが生まれた背景

セッションは、ドリームインキュベータ宮宗 孝光さんのモデレーションによって、質問者として登壇するリンクアンドモチベーション/オープンワーク麻野 耕司さん、ユーグレナ/リアルテックファンド永田 暁彦さん、じげん平尾 丈さんより、レジェンドお二人への質問が集められていた。それに対して二人が答えていくという形でセッションは進行した。

このセッションは、企画ありきでお二人をお呼びしたわけではない。偶然のタイミングで、この伝説的経営者のお二人が参加いただけることになったため、企画が立ち上げられた。さらに深い内容にするために、いつもは話す側のお三方に「質問者として」登壇いただくことになった。

千本さんは、レノバの代表取締役社長 CEO木南陽介さんがICCサミットに登壇されており、(同じく登壇者でもある)CFOの森 暁彦さんに「ICCサミットとは何か?」と、尋ねられたことから、ICC小林 雅が説明に訪問し、その場ですぐに登壇が決まったという。


千本 倖生
株式会社レノバ
代表取締役会長

京都大学工学部電子工学科卒業、フロリダ大学Ph.D。日本電信電話公社(現在のNTT)入社、その後、1984年に第二電電株式会社(現在のKDDI)を稲盛和夫氏らと共同創業し、専務取締役、取締役副社長を歴任。1995年に慶應義塾大学、大学院教授に就任。その後カリフォルニア大学バークレー、カーネギーメロン大学の客員教授を経て、シリコンバレーのエクセレントカンパニーのネットアップや世界最大の通信社のロイターの取締役を務める。1999年にはイー・アクセス株式会社を創業。代表取締役社長、代表取締役会長などを歴任。2005年イー・モバイル株式会社を設立し、代表取締役会長CEOに就任、同社の拡大をリードしてきた。2014年4月に株式会社レノバ社外取締役に就任。2015年8月より代表取締役会長に就任。

藤森さんは、東大OBの外資系金融銀杏会の主催するイベントで小林が以前にお見かけしたことはあったものの、シーヴィーシーの代表取締役社長 パートナー赤池 敦史さんから推薦があり、お声がけをさせていただいた。


藤森 義明
シーヴィーシーアジア・パシフィック・ジャパン株式会社
最高顧問

1951年生まれ。1975年に東京大学工学部 卒業、1981年にカーネギーメロン大学MBA取得。1975年に日商岩井株式会社(現 双日株式会社)入社。1986年に日本ゼネラル・エレクトリック株式会社入社。1997年にゼネラル・エレクトリック・カンパニー カンパニー・オフィサー、2001年にゼネラル・エレクトリック・カンパニー シニア・バイス・プレジデント、2008年に日本ゼネラル・エレクトリック株式会社 取締役会長 兼 社長 兼 CEO(代表取締役)。2011年 株式会社住生活グループ(現 株式会社LIXILグループ)取締役 代表執行役社長 兼 CEO。2012年東京電力ホールディングス株式会社 社外取締役。2016年株式会社LIXILグループ 相談役(現任)。武田薬品工業株式会社社外取締役(現任)。ボストン・サイエンティフィックコーポレーション社外取締役(現任)。CVCキャピタルパートナーズ日本法人最高顧問(現任)2018年日本オラクル株式会社 取締役会長(現任)。2019年株式会社東芝 社外取締役。

お二人にはプロの経営者、創業経営者として高い実績を残しているという共通点があり、当然ながら面識があった。

モデレーターの宮宗さんは、レジェンドのお二人とは面識ややりとりがあった。かくして役者が揃い、この特別企画となった。

CVC藤森さんが明かす「最初の100日の戦略」

1つ目の質問は、永田さんから藤森さんへ、経営を引き継ぐ際の戦略、PMI(※)などのプランの立て方、それぞれの目安の時間軸について。様々な企業の経験から導き出した、藤森さんのノウハウを知りたいという問いだ。

▶編集注:ポスト・マージャー・インテグレーションの略。M&A成立後の統合のプロセスのこと。

藤森さん「僕は今、CVCというプライベートエクイティで、いろいろな会社を買ってエグジットさせるという仕事をしています。

しかしこれまでは、どちらかと言えばGELIXILなどで戦略を担当していました。

経営者として戦略を考えるのと、会社を買収して価値を上げていくのは、同じようで違います。

似ている点としては、会社経営も人材育成も3年くらいの単位で大きな変革を起こさなければなりません。

これはつまり、半年で、お客様、製品、市場について学び、1年で大きな変革を起こし、2~3年で結果を出すということです。これは、社長や組織の長となった場合に重要なことですね。

アメリカでは The first 100 days、つまり最初の100日で何をするかを考えます。

目的地を設定し、戦略を立て、そのためにどういう人材、どういうチームが必要かを最初の100日で考えるのです。

経営者が100日後に出した戦略を、従業員の頭の中に刷り込むのが、経営者の仕事として最も必要なことです。

ビジョンを作るのは10%の力、それを戦略に落としてチームを集めるのも10%の力でできますが、従業員にビジョンを徹底的に刷り込むには80%の力が必要なのです。

刷り込むためには、話をして、共感を得る必要がありますが、共感の後に行動に移らなければ意味がありません。

例えば、GEの(ジャック・)ウェルチ(※)は、同じことを1日10回、さまざまな場で語り、それを10日間、続けます。

▶編集注:21年間に渡り、ゼネラル・エレクトリックの最高経営責任者を務め、同社を世界最強の企業へと変革させた伝説的経営者。「選択と集中」による経営改革を提唱し、20世紀最高の経営者とも呼ばれる。

語って、共感して、行動しようと思った気持ちはすぐに消えてしまうので、語り続ける必要がありますが、自分自身も飽きてきます。

同じことを語り続けるというのは、舞台役者の仕事に似ているかもしれません。

しかし舞台役者の場合、飽きることはなく、毎日レベルが上がっていき、101日目には最高のパフォーマンスができると思うのです。

その結果、従業員が『自分はこういう行動をすればいいのか』と分かるようになれば、それは最高のコミュニケーションになると思います」

ウェルチとイメルト、2人の戦略の違いとは

続いて藤森さんにマーケットの選定について質問をしたのは、じげんの平尾さん。さまざまマーケットが魅力的に見える中、GEでの2人のリーダー(ウェルチとジェフリー・イメルト)のもとでの、知見を尋ねた。

藤森「ウェルチは『選択と集中』に基づく、コアの選定ですね。入るための障壁が高いマーケットに進出し、集中するのです。

例えばエンジンやタービンといった領域は、世界で3社しか扱っておらず、障壁には、技術的、パテント、ブランドのバリアなどがあります。

そういった参入障壁のあるエリアでNo.1になること、収益率を上げることが肝心で、かつ、買収もそのエリアでしかしないのです。

買収で言えば、例えば、コアに関する部品などのみで、水平展開するのではなく、特化領域で垂直に伸ばしていくのです。

イメルト(※)は、全く違う、もっと視野を広げようという方向性でした。

▶編集注:ウェルチ氏の後任最高経営責任者。就任直後の同時多発テロ、2008年の金融危機を克服し、GEを環境に配慮する企業、デジタル化へと舵切りを担い、利益を倍増させた。2017年末には経営から退いている。

例えば、病院に1兆円の市場があるとしても、MRIやCTなどの医療診断機器を扱うのも、世界に3社くらいしかありません。

しかし視野を少し広げてみると、検査機器や病院サービスなど、他にもチャンスがあり、それを獲得できる可能性があるというのがイメルトの戦略でした。

病院というエリアの中で、水平展開をしていったということです。

コアそのものを強化するか水平展開するかは、経営者によって違うだろうと思います」

平尾さんが、競合の追従について加えて質問をすると、藤森さんは「経営者の判断による」と言い添えながらも、真摯に答える。回答はシンプルで、いとも簡単なように聞こえるが、経験に裏打ちされた、その言葉の真実味は重い。

自分ごととしたときに、どれだけそれを客観的に実行できるのか。失うものや他の可能性を捨てて取捨選択できるのか、それは決して簡単なことではない。会場を埋めた人たちの脳みそがフル回転している音が聞こえるようだった。

インフラベンチャー、第二電電の挑戦

続いて、すでに既存の巨大な企業がある通信とエネルギーという領域に入っていった千本さんの経験を尋ねたのは、石油業界という既得権益にバイオ燃料で挑戦しているユーグレナの永田さんだ。

千本さん「もう35年前のことですから、オフレコにしてもしなくても同じな気がしますが……」

まず、千本さんは会場を笑わせた。

千本さん「昔は、電電公社(日本電信電話公社)、国鉄(日本国有鉄道)、日本専売公社という国営企業体がありました。

電電公社には30数万人、国鉄には45万人が勤めており独占状態、特に電電公社は、電機通信について誰も参入させない、国が保護するという姿勢でした。

それが、中曽根政権の時に3つとも民営化をしたのです。

皆さん、小泉政権での郵政民営化を覚えていると思いますが、あれよりもはるかに大きい民営化でした。

当時、私は電電公社の一員で、2、3千人の部下を抱えてそれなりに偉かったので(笑)、エリートサラリーマンだったのです。

1985年の日本というのは、今の中国やベトナムのように、素晴らしく成長していたころでした。

ですから、エネルギーや通信などの基本のインフラはもっと伸びると思っていましたが、独占による高い料金が続くと、成長が続かないだろうと思ったのです。

そこで私は電電公社の中で一人、反旗を翻し、NTTとなった電電公社に対抗する新しいベンチャーを作ろうとしたのです。

電電公社にいる10%ほどのエリートは、世界の流れを知っていたので、何かしなければいけないと思っていましたが、実際に行動する人はいませんでした。

巨大なベンチャーを創るときに大事なことはいくつかありますが、そのうちの一つはどんな人と出会うかです。

私の場合、稲盛和夫(現 京セラ名誉会長)さんに出会ったのです。

京都で当時若手のリーダーだった稲盛さんと一緒に作った会社が、第二電電、後にKDDIになる会社です。

当時は、電電ファミリーといって、当時世界でも優位だったNEC、富士通などを含めた数百万人に影響力を持っていたのが電電公社で、当時の日本の人口の10%くらいでした。

それに挑んでベンチャーを創るというのは、巨大な既得権益に対する反抗でした。反社会的行動でした。ですから、あらゆる政治的、社会的な圧力が、信じられないくらいあったのです。

エネルギーも同じだと思いますが、基本インフラというのは、ベンチャーの中でも難しい位置にありますね。

基本的なインフラ業では、他のベンチャーにはいない3つのステークホルダーと、戦いながらもWin-winの関係を築いていかないといけないからです。

3つのステークホルダーとは、政治と官僚、そして巨額の資金を投資してくれる投資家と銀行、最後に独占的な力を持つ競争相手です」

穏やかな千本さんの口調からは想像できないような、各ステークホルダーとの渡り合いが明かされていく。

著書や記事などですでに語られていることもあるが、その本人が目の前で語るというのは大きな価値がある。この生身の人間が、今の日本のインフラを作ってきたというインパクトを、会場にいた人は耳で、目で、同じ空間で感じている。

質問した永田さんは、一言も聞き漏らさんばかりに集中して、体を千本さんへ傾けて聞き入っている。

経営者が一番力を注ぐ仕事とは

次に、経営指標への思考や議論の方法を尋ねたのが麻野さん。普段はそれを導く立場ながら、自社の具体例を紹介しながら、このときはレジェンドの考え方の一端を知りたいという、逆の姿を見た。

これに対して藤森さんは営業利益率からの考え方を紹介し、千本さんは、巨大なインフラベンチャーを作るときに大切にした社員を中心とした考え方を述べた。それは先に藤森さんが語った、経営者の仕事とまったく符合するものだった。

千本さん「私は日本の経営者ですから、定量指標よりも前に、社員を考えます。

KDDIを創って、2人から数万人規模に大きくした経験から言うと、一番大事なのは社員のまとめ方です。

つまり、社員が、金銭的にも精神的にも幸福になるために、最大の力を注いだのです。

巨大なインフラベンチャーの場合、色々な領域から社員を集めなければいけません。

自分たちの会社の社会的意義やミッションを、朝から晩まで語りかけ、社員の心が一つになるようにしました。

その後に経営指標がくるわけですが、藤森さんと全く同じ意見で、利益が大事です。そして、リスクをとってくれた株主に報いるために、利益を出して株価を上げていくことが最大の関心です」

ときにユーモラスに、稲盛さんとのエピソードをはさみながら、メガベンチャーを作った舞台裏が淡々と語られていく。昔話のように語っているが、いずれも現在進行形で、日本の屋台骨となっている企業の話である。

「決めるときは15分で分かる」

話の流れの中では千本さんがなぜ今回、ICCサミット登壇をすぐに快諾いただいたかが、わかるようなやりとりがあった。

千本さん「オーナーである、木南(陽介さん)と会ったのは5年前ですが、会って15分で『社外取締役になってほしい』と言われました。

その時、お互いに補完できる関係にあるかが非常に大事な要素だと思いました。

そしてもう一つは、相手の人間性と志、ビジョンが共通しているかです。

私が稲盛さんに会ってすぐに決めた時も、15分ほどでした。

決めるときは、1時間話そうが15分話そうが同じです。大体、15分で分かるからです。

当時の木南は40歳ほどでしたが、彼には、学びたい姿勢があると感じました。

そして大学時代からベンチャーを創っており、リスクを取るマインドを持っていると思いました。

また、『20、50億円のベンチャーにしたい』と語っていて、まだ彼は未熟ではありましたが、彼には伸びしろがあり、学ぶ姿勢もあると思ったのです。

私が与えられるのは、『レノバを数千億円、一兆円の会社にし、日本の中で、有力な電力会社にする』ということでした。

しかも、石炭などの化石燃料や原子力ではない、世界有数のクリーンな電力会社です。

お互い尊重できて、ビジョンを共有でき、かつ、人間性が大事なのです」

最初から、越えられる、突破できるという信念を抱け

さまざまな質問や歴史を作ったエピソードが語られ、残り時間があと5分となったため、会場からの質問タイムは1問のみとなった。ベースフード橋本さんからの質問。「まさか質問できるとは思わなかったです」と、緊張した声音である。

橋本さん「我々の会社は時価総額20、30億円のベンチャーです。

2,000億円より大きい企業を目指したいとき、何を大事にすべきでしょうか」

藤森さん「20億円から2,000億円という目標設定はすごく良いと思います。

人間は自分のコンフォートゾーンを出たがらないものですが、2,000億円という目標を掲げると、今までと同じことをしていては達成できません。

そのためには、今までとは違う考え方や心の変革が必要で、それが従業員に生まれると、達成できると思います」

橋本さんを激励する藤森さん。一方、千本さんは考え込むような表情をしている。

千本さん「今後、あなたが予想していないような困難、絶対的な壁にぶつかるだろうと思います。

その時に考えるべきは、自分が正しいことをやっているかという原点に立ち戻ることです。かつ、その壁を乗り越えられるという深い、深い信念を持つことが必要です」

自分の記憶を確かめるように一つ一つ言葉を取り出していた千本さんは、一呼吸おいて観客を見据えた。

千本さん「ひるんでは、いけません!

一度ひるんでしまうと、気持ちを取り戻すのは難しくなるのです。

ですから最初から、越えられる、突破できるという信念を抱きましょう。

(橋本さんへ向き直り)そして目標は、2,000億円と言わず、1兆円と言ってみましょうよ」

一言一言に、乗り越えてきた困難、突破してきた壁の大きさの一端がにじむ。事業に想いがあるのならば、大志を抱き、それを追い求めよ。いつの時代でもそれが唯一の、そして一番の方法であると信じて止まないレジェンドからの、穏やかながら、火の玉のような檄であった。

藤森さん、千本さんからのメッセージ

藤森さん「日本の将来は、今ここにいる人たちによって決まります。

このように集まって勉強し、向上しようとする姿は素晴らしいと思います。

人生とは常に学ぶことですし、同じ学ぶにしても、すごい人から学び、そのすごい人を越え、さらに大きなことや夢を頭の中に描き、それが絶対に叶うという信念があれば夢に近づけます。

ですから、夢への自信とパッションを持って、事業を続けて、強い日本を作ってほしいと思います」

千本さん「富や名誉や財産をベースに事業を行っていても、結局は大きくなれません。

若い経営者の皆さんは、ハンブル(謙虚)に、人間性を磨いてください。

基本的に、世のため、人のためというか、人々が喜んでくれるから大きくなるのです。

世のため、人のためを目指すからこそ大きくなり、私の場合、気がついたら8兆円の企業になっていました。

ですから、経営の原点をいつも心の隅において、事業を行ってほしいですね。

そしてこの貧しい状態にある日本を成長させ、中国に追いつくような国にしていってほしいです。

僕は今回参加して、このような皆さんがいてくれることを知れて、力づけてもらえたので、とても嬉しいです。

ICCサミットに来て本当に良かったと思っています、頑張ってください」

壇上のお二人は、穏やかで温かく、何でも聞けるような佇まいなのにカリスマ性があり、発光しているようにすら見えた。

レジェンド企画は次回も開催予定

そして冒頭のシーンが展開した。誰もが、藤森さん、千本さんの言葉を胸に刻み、熱い気持ちになったことは、ICCサミット終了後のアンケートからも手にとるように伝わってきた。語る視点は異なっていても、お二人の発言には共通点も多く、この二人がそう言うのであればと、心動かされたのではないだろうか。

後日、ICC小林から反響をお伝えすると、レノバCFOの森 暁彦さん経由で、千本さんからこんな回答が返ってきたそうだ。

「呼んでいただいたおかげ。若い皆さんに少しでも役に立てれば幸いです」

それはむしろこちらが伝えたい気持ちである。なんと謙虚なレジェンドなのだろう。

アメリカでもいくつものベンチャーの取締役やアドバイザーを務めており、日本はダメだと思っていたという千本さん。ICCサミットに来て、さまざまな若い経営者を見、議論を聞いているうちに、日本もいけると思い直したということを、壇上でも語っていた。

「ともに学び、ともに産業を創る。」という試みに、希望を感じていただいた。私たちはその期待を裏切らないように、それに応え、予想していないような困難、絶対的な壁にもひるまず進まなければいけない。

事前のアンケートでは、このセッションに対する期待が非常に高く、議論の行方によってはそれに応えられるか未知数だった。しかし千本さん、藤森さんは、すぐにその場に溶け込み、学ぶ意欲の高い質問者やモデレーターの尽力もあって、投げたボールを真剣に打ち返し、エールを送ってくださった。

世代は違っても、今の時代を生き、現役で未来を創ることに関わっていることは皆同じ。ICCサミットに集まる経営者は若手が多く、セッションではその世代の議論が中心となっていたが、素晴らしい議論、反響を得たことから、このレジェンド企画は今後も続いていく予定となった。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成

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