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ICCサミットのプレ企画、OYO LIFE・ライフイズテックに学ぶ、Jカーブ成長の落とし穴はどこにある?【ICCアカデミーレポート】

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2020年12月15日、ICCパートナーズオフィスにて、リブ・コンサルティングによるICCアカデミーが開催されました。これは、ICCサミットFUKUOKA 2021で予定されているセッション「Jカーブ成長の落とし穴 -スタートアップ事業拡大フェーズにぶち当たる課題と対策を徹底議論」の前哨戦にあたる学びの機会。当日さながらに、OYO LIFE菊川 航希さん、ライフイズテック讃井 康智さんをスピーカーに迎えて行われました。その模様をぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2021は、2021年2月15日〜2月18日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


1年前に開催されたICCアカデミー、そしてICC サミットでは、圧倒的スピードをもってアカウント開拓を行った舞台裏を語ったOYO LIFEの菊川さん。その模様は以下の記事でお伝えしましたが、他では聞けないようなオフレコ内容が多く、参加した方は驚かれたのではないでしょうか。

ICCサミットプレ企画、OYO LIFEとリブ・コンサルティングが「圧倒的スピードの『アカウント開拓』」の秘訣を明かす!【ICCアカデミーレポート】

スタートから一時的にキャッシュフローをマイナスにしても、力強く取り戻して成長していく“Jカーブ成長”は、スタートアップが夢見る形。しかし成長の兆しが見えたときに、どのタイミングで決断すべきか、事業を加速するといっても、いかにスピードを上げるのか、その一方、組織はどこまで耐えられるのか。

事業のさらなるスケールを目指す経営者が多く集まった、この日のICCアカデミー。Jカーブ成長の1つの手法の解説として、書籍『ブリッツスケーリング 苦難を乗り越え、圧倒的な成果を出す武器を共有しよう』を、リブ・コンサルティング町田 凌輔さんが解説することから始まりました。リブ・コンサルティングは、スタートアップをさまざまな角度から支援しています。


ペイパルやリンクトインの創業者でもある投資家、リード・ホフマンのスタンフォード大学の講座から生まれた『ブリッツスケーリング 苦難を乗り越え、圧倒的な成果を出す武器を共有しよう』

「ブリッツスケーリング」とは何か

町田さん「『ブリッツスケーリング』は、市場に確実性はなくても、とにかくスピードを重視して事業を推し進める手法で、効率を重視する『ファストスケーリング』とは対照的です。そのネーミングは、ドイツ語で電撃戦という意味がある『ブリッツクリーグ』に由来しています。

『ブリッツスケーリング』は、他社の追随を許さない圧倒的なスピードで市場を築き、圧倒的な競争優位を保持します。

ポイントは3つあります。

①攻めと守り
②規模拡大
③巨大な利点がある一方、リスクもはらんでいる

著者のリード・ホフマンさんは、事業と組織の2つに分けてそれを解説しています。

ベンチャーの関門である『魔の川』『死の谷』『ダーウィンの海』(※)の中でも、最も深いと言われる『死の谷』をいかに早く駆け抜けるかというところで、『ブリッツスケーリング』を活用するというのが、今回のテーマです。

イノベーション経営を阻む三つの関門(日経BizGate)

アメリカでは、コロナ禍にあっても6兆円、10兆円といったユニコーンが続出している一方、日本は昨年比で3割増えているますが、まだまだです。その伸びを『ブリッツスケーリング』を適用して推し進めたいと考えています」

続いて「ブリッツスケーリング」をいつ、どのようなタイミングで導入するか/いつ止めるか、組織、ブリッツとファストの使い分けなどについて、資料とともに解説がありましたが、こちらは当日のセッションで、ぜひ学んでいただきたいと思います。

登壇企業①:圧倒的Jカーブ成長を経験したOYO LIFE

続いて、ここからはリブ・コンサルティングの権田 和士さんを司会に、パネラーも交えたディスカッションです。その一部をご紹介していきましょう。

今回のパネラー1人目は、OYO LIFEで経験した「ブリッツスケーリング」とその後について語ってくださる、前回から続投の菊川 航希さん。


菊川 航希
株式会社Leaner Technologies 共同創業者 / OYO LIFE AVP

1989年生まれ。大学時代に2社の創業に関わった後、外資系戦略コンサルティング会社A.T.カーニーに入社。その後、シリコンバレーを中心にスタートアップの事業支援や投資に携わり、2018年9月よりOYOに、日本人第1号社員として参画し、事業開発責任者として、オンライン賃貸サービス「OYO LIFE」の立ち上げに携わる。

菊川 航希さん(以下、菊川) 「1年前にこの場に座ってお話しましたが、そこから1年で外部環境やステークホルダー含め、様々な変化がありました。

インドでまさにJカーブ成長を成し遂げたホテル予約のサービス、OYOの上陸にあたって、日本で展開するにはホテルの質のばらつきなどの問題が少なかったため、日本では賃貸住宅サービスとして開始しました。

▶編集注:追ってOYOは日本でもホテル事業も開始

リブ・コンサルティングさんのご協力を得て、サービスリリースまでに確保した数百件の物件に対し、リリース当日に1万を超えるユーザーの事前予約があり、想定よりもずっと早く事業拡大向けてアクセルを踏むことを、株主も含め判断をしました。2、3年でどうすれば数百億、数千億の事業を作れるか、死ぬ気で考えようという前提でのスタートでした。

リリースから1年で、派遣さんなど含めメンバー数は数百人規模になり、年間売上ラインは一期目で二桁億を優に越えました。

多くの失敗もしましたが、個人的に非常に大きな学びがあったため、今日はそういったことをお話ししたいと思います」

登壇企業②:現在Jカーブ成長中、ライフイズテック

もうひとりのスピーカーは、2010年からプログラミング教育事業のマーケットをじっくり作りながら、まさに現在、Jカーブ成長のタイミングを迎えたライフイズテックの讃井 康智さん。


讃井 康智
ライフイズテック株式会社
取締役 最高教育戦略責任者

東京大学教育学部卒業後、リンクアンドモチベーションでの勤務を経て、東京大学教育学研究科にて博士課程まで在籍。教育政策・学習科学が専門。学習科学の世界的権威、故三宅なほみ東大名誉教授に師事し、全国の学校・教委での協調的・創造的な学びづくりを支援。
2010年にライフイズテックを創業。中高生向けプログラミング教育を累計約5万人に届け、世界2位の規模まで成長。ディズニーとコラボした「テクノロジア魔法学校」や学校向けの「ライフイズテックレッスン」などオンライン教材も提供。NewsPicksプロピッカー(教育領域)も務める。

讃井 康智さん(以下、讃井)「菊川さんのあとにスケールをお話しするのは恐縮なのですが(笑)、僕らは中学生・高校生向け IT・プログラミング教育サービスを10年やってきて、それまでの流れがあったからこそ、今、『ブリッツスケーリング』できているということをお話したいと思います。

事業のもともとは習い事です。IT/プログラミングキャンプやスクールには、累計5万人以上参加いただいていて、国内のシェアは1位です。それだけだと労働集約型の増え方しかなく、都市部に偏重するので、地域問わず広く学びの機会を届けるために、ディズニーと組んでオンライン型教材の提供もやっています。それをスケールさせた経験があります。

BtoBが得意なメンバーもいるので、省庁・自治体や企業連携で、持っている教材を活用もしています。

『ブリッツスケーリング』的な伸ばし方を目下取り組んでいるのは、学校向けのプログラミング教材です。中学校ではwebデザインコースをすでに広く提供しており、高校では2021年からAI・Pythonコースを授業カリキュラムとして提供します。2020年には100自治体以上、1,000校以上、14万人が新規ユーザーとして入ってきてくれました」

目標は3ヵ月先だけ。スピードに注力する”今カルチャー”

権田 和士さん(以下、権田) 「当時、OYO LIFEさんとご一緒させていただくことになって印象的だったのが、スピードがほしい、プロフィットとスケールは捨てて考えます、とおっしゃったことです」

と、リブ・コンサルティングの権田さんはOYO LIFE菊川さんの「ブリッツスケーリング」当時を振り返ります。


権田 和士
株式会社リブ・コンサルティング
常務取締役COO

早稲田大学卒業後、新卒で大手コンサルティングファームに入社。トップセールス、トップコンサルタントとして実績を残し、住宅不動産領域のコンサルティング事業部の統括責任者の後、執行役員で活躍、MBA取得を機に同社を退職。2014年米国ミシガン大学経営学修士(MBA)を取得後、株式会社リブ・コンサルティングに入社。現在はリブ・コンサルティング常務取締役COOとして、人事部門の統括およびベンチャーコンサルティング部門の統括を務める。国内外の急成長ベンチャー企業の経営コンサルティングを行い、数多く上場まで導いている。また、リブ・コンサルティングのCVCであるインパクトベンチャーキャピタル(IVC)のパートナーも務めている。書籍「アクセル」「隠れたキーマンを探せ」「モンスター組織」等の監修者。

菊川「今回、改めてこの本を読み返したのですが、まさにこんなことをやっていたと思い出しました。まずは入った月に翌月までに採用10人と言われ、その後物件開拓をして、その結果、売上成長はするのですが、同時にコストもかさんできました。規模が大きくなるほどオペレーションも膨れ上がっていきました。

現場からは、このままリスクを取り続けてもよいのだろうかという声が上がっていたのですが、もともと本国インドでの強い成功体験もあり、リスクをとりながら、まさにブリッツスケールをしている感じでした。その状況からも学ぼうとしたり改善する人もいれば、むしろ懐疑的になり組織を離れる人もいました」

権田「菊川さんは前職がA.T. カーニーのコンサルタントで、非常にロジカルな人という印象だったのですが、OYO LIFEに入ったときにめっちゃ感情論になりましたよね(笑)。何かを指摘すると『今はいいんです、とにかく走るんです』と(笑)」

(一同笑)

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菊川「指摘されることはよくわかるんです。社内で必ずそういう話が出て、それでも今はこれだ、という話をしているので。余談ですけれども、本国からきた日本事業責任者が挨拶の次に覚えた日本語が『今』なんです。『みんな今、決めよう』と。今、何ができるのかにこだわって、明日でなく今やれ、と。そのデイリーマネジメントにひたすら追われるという感じでした」

権田「そうして”今カルチャー”を作り出していたんですよね。面接でも優秀な人が入るのですが、そういう人が”今カルチャー”になるようストッパーをはずして、なじませながらスピードに慣れさせる。目標も3ヵ月先までしかなかったですよね」

菊川「3ヵ月の目標をクリアすると次のステージにいける、というような形でした(笑)」

権田「その”今カルチャー”が非常にはじめは効いていたけれど、現在はどうなのでしょうか」

菊川「初期の株主との関係に変化などもあり、OYOのホテルの会社と賃貸の会社が合併した後、私は今、ソフトバンクに出向し、他のビジョン・ファンド案件に携わっております。合併したOYO Japan含め グローバル全体として、より利益を重視する方向に舵を切りました。

当時を振り返ると、スピードに完全に振り切ったことで、ただでさえスピード感のあるスタートアップですが、普通のスタートアップよりもずっと早いスピードで成長していました。

考えながら行動すると時間がかかってしまうので、なるべく考えずとも実行できる、組織が動くように基準を作っていった。さらに、デイリーで朝、昼、晩と振り返りをして、翌日に反映することを徹底していきました。現場が疲弊しますがこれは普通はできないことで、できれば事業スピードは上がります」

菊川さんによるOYO LIFEの「ブリッツスケーリング」とその振り返りは、特殊なケースではあるものの、Jカーブ成長から事業が進行中であることも含めて、非常に貴重なものです。リブ・コンサルティングが並走しているため、多重な視点での意見、学びがあります。ここでは詳細を書けないため、ICCサミット当日、会場でぜひエクストリームな議論にご参加ください!

創業から10年、タイミングが来るのを待っていた

続いて、現在「ブリッツスケーリング」中のライフイズテック讃井さんの事業をご紹介いただきました。

讃井「2010年の7月創業で、当時は学校でも、習い事でも中高生向けのプログラミング教育が全くないなか作りました。東京ですらなくて、学びたい子はいるのに、どこにも学べる場所がないのは嫌だなと思って始めましたが、当時はブルーオーシャンというより砂漠(笑)。マーケットも人もいませんでした。

それから10年間、結局ほとんど中高生向けプログラミング教育では事業者が出てこなかったので、僕らは良くも悪くもずっとお客様とプロダクトを見ていればよくて、競合を見る必要がありませんでした。

2016年に新学習指導要領改訂の方針が発表され、2020年から小学校の教育にプログラミングが入ることになり、潮目が変わってきました。するとわずか4年で、いきなり小学生向けはレッドオーシャンになりました」

権田「ライフイズテックさんは業界では知られた存在ですが、教育界はまた独得なスピード感です。どのようにスピード調整をされたのでしょうか」

讃井「最初にお話した3つの事業をやりながら、学校でのプログラミング教育のニーズはいつ来るかな……とずっと待っていました。普通に考えると絶対に必要なものですが、2019年ですらまったくその兆しが見えず、やっぱりこないかなと思っていました。

でも2020年は、150年に1度と言えるレベルで公立の学校教育に変革が起こりました。1つはGIGAスクール構想(※)。小中学校に、4年をかけて1人1台PCが配られるという予定が、コロナの影響で1年になりました。

GIGAスクール構想について(文部科学省)

それに10年に1度の学習指導要領の改訂が重なり、ドーンときました」

権田「そうして一気にマーケットが来たときに、どう対応したんですか?」

讃井「創業から10年で60人と小さな会社ですが、さまざまな事業で多角化しています。今回のように一気にマーケットが来たときでも、採用ではカルチャーフィットを見極めて、いい人だけを取ることにこだわり続けてきました。全国の学校や自治体に向けて泥臭い営業活動もやってきているので、それが今回活きたかなと思います。

社員に共通しているのは、『教育を変える仕事をしたい』という思いです。大変なことも多いので、その思いが一番大切です。担当している事業が厳しい状況になっても、すぐ変化対応したり、他の事業に移っても活躍できる人材ばかりだと思っています。リンクアンドモチベーションのモチベーションクラウドだと、理念と事業への共感のスコアがとても高いのが特徴です」

外部要因もあって起こった「ブリッツスケーリング」に耐えうる採用、組織作りがJカーブ成長を支えているというライフイズテック。事業の種をまくことにも余念がなく、それは組織作りにつながっていくそうです。

讃井「僕は次来そうなことを考えることが得意で、会社の中での役割でもあるので、、1年・3年・5年先という3つの異なる時間軸で事業になりそうなプロジェクトを会社の中で並行して走らせていました。

1年先はシンプルに短期の営業目標。3年先なら来年から営業に出られるように、まずは事例を作りにいきます。5年先は、今はマーケットはないけれども来そうなものを実験的に張っておく。すると常に新しいことをやっている会社でいられるので、採用にも効くのです。

4年前は事業化はありえなかったことでも、実際に5年後には事業化できているものがありますね」

2月16日のセッション5Eをお楽しみに!

パネルディスカッションが盛り上がったため、質疑応答の時間は少なくなりましたが、その中でも印象的だった登壇者のみなさんの発言をご紹介します。

菊川「私の場合、1人目の日本人として参画した時点で潤沢な資金があるある、という特殊な状況でスタートしました。

経営メンバー含め、日本事業の立ち上げメンバーはほぼ残っていませんが、そういうチームで本当に良い事業・勝てる事業を継続的に作れるかというと、なかなか難しいかもしれません。

最近はOYO LIFE以外にもさまざまな会社を拝見していますが、起業家含めチーム全体が想いをもって、その1円が自分の1円だと思い、中長期的に慎重かつスピーディに事業を作っていく。そうではなく、お金で事業を作るような形での事業作りは難易度が高いのかもしれません」

権田「客観的に見ると『ブリッツスケーリング』とはスピード。プロジェクト単位が適切なのではと思います。普通であれば、どうしても適切なスピードになってしまう。そのストッパーを外さないといけなくて、ちょっと麻痺した状態でないとできませんね」

讃井「お話をうかがっていて、まさにそう思いました。そのストッパーを外すのを誰がやるか? それが菊川さんの場合は孫さんだったと思うのですが、うちは水野(雄介さん、代表取締役CEO)がその役割です。

できなくてもいいから、一旦それで考えてほしいと言われて考え始める。そういう水野がいて、僕が実現方法を探ってバランスをとるという、キャラ分けをした組織作りをしています」

菊川「気が狂ったかと思われるような目標がいいです。誰かがそれを言わないと、普通になってしまいます。もしもそれでオセロの四隅を取れるならば、それでいったほうがいいと思うんです」

※上の写真は撮影時のみマスクを外しています

非常にマイルドにお届けしましたが、ICCサミットFUKUOKA 2021で予定されているセッション「Jカーブ成長の落とし穴 -スタートアップ事業拡大フェーズにぶち当たる課題と対策を徹底議論」では、より赤裸々に、具体的なエピソードや事例をシェアいただけると思います。

これから事業にアクセルを踏み込み、Jカーブ成長を狙う方、それに耐えうる組織を構築したいと考えている方には、必ず学びの多いセッションになるかと思います。どうぞ2月16日セッション5Eをお楽しみに。以上、浅郷がお送りしました!

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/赤石 仁

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