9月4日~7日の4日間にわたって開催されたICC KYOTO 2023。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。このレポートでは、ICCサミットのスポンサー企業が4日間に渡ってさまざまなコンテンツで大活躍するガーディアン・アワードおよび初開催のガーディアン・カタパルトを中心にお伝えします。ぜひご覧ください。
拡大中、ガーディアン系コンテンツとは何か
ICCサミットは、経営者や経営幹部たちが集まって学びや課題を共有し、ディスカッションをする場であったが、ICC KYOTO 2023で3回目となるガーディアン・アワードを機に、その様相は変わってきた。
それ以前のスポンサー企業は、スポンサードのセッション開始前にサービス映像を流したり、会場にブースを設けて資料を配布したりして、サービスを知ってもらう場を作っていた。イベントではよくある形なのだが、人がたくさん訪れているようにも見えず、ブースを構えても効果はあるのか? 本当にそれでスポンサードして良かったと思ってもらえるのか?という疑問があった。
ICCサミットのコンテンツはいずれも学びが深く、皆が一生懸命やっていることが特徴である。スポンサーのブースはそのままでもいいのだけれども、他のコンテンツと別の空気感がある。これをなんとかしたいと考えた結果が、競争原理を持ち込んだアワード形式である。
会場全体を盛り上げ、ブースの訪問者を増やし、サービスについて知ってもらい出会いと交流を促進する。プラチナ・スポンサー以上が参加するガーディアン・アワードは、いつもは審査される側のスタートアップ経営者が主な審査員となって、スポンサー・ブースでサービスのプレゼンやデモを体験して審査するという逆転の発想のアワードだ。
▶スポンサーブースに47人の審査員が詰めかける! 初開催「ガーディアン・アワード」
上のリンクは初回、ICC KYOTO 2022のレポートで、初回ならではの手探り感はあったものの、参加した企業の皆さんとのCo-Creationもあり、大いに盛り上がった。
それと同時に、カタパルトやアワードの参加者、登壇者はICCサミットに初参加のことも多いため、知り合いがいない心細さを軽減するような仕組みとして、参加者向けの事前の説明会や、ICCサミットの開催前日には前夜祭が設けられるようになった。
DAY1・DAY2には審査会とアワードの優勝者を決めるファイナルラウンドがあり、今回はDAY3にブースの代表者が登壇するガーディアン・カタパルトが新しいコンテンツとして追加された。
経営者の想いを理解し、描く未来の実現や課題解決に実際に取り組む現場の人たちは、企業にとって大切な存在である。彼らがICCサミットに能動的に参加することで刺激を受け、カタパルトに登壇するような有望な経営者たちを前に自社のプレゼンをするのは、彼らにとって成長機会ではないかと考えた。
審査員ではない参加者・登壇者の方々には、ICCサミットのガーディアン系コンテンツが何やら増えているという印象があるだろうし、スポンサーなのにこき使われていると思う方もいるかもしれない。
事前準備や当日のプレゼンなど、実際に負担も大きいと思うが、ガーディアン・アワードに参加した経験をnoteで発表したり、アワード参加企業が集まるSlackチャンネルほかオン・オフラインではノウハウの共有が積極的に行われている。
参加する現場メンバーの結束はもとより、社外にも仲間ができて切磋琢磨する様子は、カタパルト登壇者や、運営スタッフのコミュニティに近いものがあり、「視座が上がる」「仕事の魅力や強みを再発見する」「実力を客観的に評価される」という場になっているのではないかと思う。
前夜祭から始まるICC KYOTO 2023のガーディアン関係者の経験を、このレポートでは時系列でたどってご紹介していこう。
9月4日、前夜祭のチャレンジャーズ・ナイト
こちらのレポートでもお伝えしているが、9月4日の「チャレンジャーズ・ナイト」から、ガーディアン関係者の公式ICCプログラムは始まる。公式と言ったのは、この日の午後14時からアワード会場で、自社のブース設営が始まっているからである。
チャレンジャーズ・ナイトでは、ガーディアン・アワードに参加する”同期”とともに、今回カタパルトやフード&ドリンクなど、デザイン&イノベーションなどに登壇、参加する企業とも交流。ガーディアンはSaaSなどのソリューションやコンサルといった事業が多いため、すでに顧客である企業と交流を深める姿も。
ちなみにガーディアンというネーミングは、ICCサミットの守護神としてという意味を込めたもの。参加者もそうだが、スポンサーがいてこそ開催ができるためである。
9月5日~6日、ガーディアン・アワード
ガーディアン・アワードは、DAY1とDAY2を使って行われる。DAY1は、11時45分から審査員、14時半からスポンサー審査員を対象にそれぞれを105分、サービスのプレゼンとデモ体験を提供する。DAY2は11時45分からの回のみで105分、その後集計が行われ、16時15分からはファイナル・ラウンドで結果発表となる。
審査員96名は2〜3名の小グループに分かれているため、DAY1からDAY2の13時半までに、合計36回のプレゼンをすることになる。
5分というわずかな時間でサービスの魅力や強みを伝え、審査員の心を動かすことが求められるため、ブース担当者は事前に役割分担を決め、審査員の事業に合わせたプレゼンをするところも。1分のインターバルの後、隣のブースへ移動という審査は、もはや耐久レースのような雰囲気となる。
ノバセル
ダイヤモンド・スポンサーのノバセルは、商品開発のときのあらゆるリサーチや、仮説検証に使えるセルフ・オンボーディング型のツールを紹介。今まではコストも高く、納品まで時間がかかったものを、自前で早急に解決できるソリューションを紹介した。
リブ・コンサルティング
今回は組織開発にフォーカスしたリブ・コンサルティング。事業特性に合う組織のベストバリュー、組織診断や、どういう組織タイプで壁超えしていくかというヒントも紹介した。100年後の世界一の会社を増やすというミッションをもとに、こんなミッションを持つ会社を増やしていきたいと、ランダムに選んだICC参加企業のミッション、ビジョン、バリューをプリントしたトランプも配布。
エッグフォワード
ゴールデンエッグと金色とテーマカラーの赤をポイントに、芝生や椅子、遊べるパターマットなどでリゾート感あるブースを作ったエッグフォワード。スタートアップを支援するコンサルティングのサービス紹介に加えて、ガチャガチャやゴルフのホールインワンでプレゼントなど、忙しない会場の中で、リラックスできる空間を演出した。
AGSコンサルティング
将来的にIPOを目指す企業が多いことから、IPO支援に特化したプレゼンを展開したAGSコンサルティング。見た目でも上場を演出するために、IPOの「鐘」や、験担ぎのネーミングのお菓子なども合わせて配布した。
マネーフォワードケッサイ
企業の入金を早めるサービスと、企業の出金が出ていくのを遅らせるサービス、スタートアップにはどちらもありがたい資金繰り支援のサービス2つを紹介したマネーフォワードケッサイ。回転するダーツでは、審査員をチームにして優勝を決め、京都限定のスタバカードなどをプレゼントした。
Helpfeel
ブースを訪れた審査員にカスタマイズしたプレゼンを展開した、実は本社が京都のHelpfeel。気になる企業や会場で感じる疑問などを、自慢の「予測検索」「賢いサジェスト」で即座に解決するデモ体験を提供した。ブースのコンセプトを京都とし、ハッピを着たメンバーが、あぶらとり紙やどら焼きをプレゼントした。
M&Aクラウド
資金調達をしたいスタートアップ企業と、出資を考える事業会社をマッチングするプラットフォーム、資金調達クラウドを紹介したM&Aクラウド。スタートアップにとっては特によい仕組みで、手数料がかからず、オフラインで会えるVCと話しながら別の出資先を探す窓口になる。合わせてゴルフボールやステッカーも配布した。
UPSIDER
法人クレジットカードで2軸のサポートができることを紹介したUPSIDER。管理部、経理の効率化やガバナンスの強化という面と、スタートアップ経営者にとっては与信枠が出なくてアクセルを踏めない場合のサポートが得られる。カード経由のやりとりはアプリもあって当然ながらDXで、書類や紙の煩雑さからも開放される。社名にちなんでアップルサイダーも配布した。
ココナラ
前回に引き続き参加のココナラは、toC利用のイメージも強いが、今回はビジネス利用ができる事例を中心に紹介。ココナラ製の企業カルチャーブック、ノベルティTシャツのオリジナルデザイン、3枚目の写真にあるような似顔絵なども気軽に発注できることを紹介した。
リチカ
アワード入賞常連のリチカは、優勝を目指して社内外のクリエイターと力を結集。97社分の審査員の動画は、社外クリエイターが3営業日で制作してくれたものだという。加えてICC参加者の京都滞在が楽しいものになるようにグルメやサウナ情報など特製のマップを制作、配布した。
NewsPicks
アワード初参加のNewsPicksは、スタートアップがメディア媒体を活用できる方法を紹介。広告を1回出して認知施策で終わるのではなく、どう浸透させていくのかといったマーケティングの方法やメディアコンテンツの作り方などをプロの目線から提案した。例としてまだ無名の企業と大企業の経営者の対談などのドアノックツールを制作することもできるという。
Hubble
契約のDX SaaS、Hubbleもアワード初参加。成長スピードの早いスタートアップ経営者のニーズに応える、煩雑で管理も難しい契約書を一元管理できるクラウドサービスを説明と動画を使って紹介した。熱のこもったプレゼンは、日々面倒な契約書業務に悩まされる経営者たちにかなり刺さったのではないだろうか。
プレイド
アワード初参加のプレイドは、三井物産と設立した「.me」のプロダクトであるペットボトルのお茶やゼリー、プロテインバーといった商品や自社出版の『XD MAGAZINE』を並べて、SaaS企業のイメージを裏切った。「プレイドは何でもあり」という印象を与えつつ、「人の力を最大化するというプレイド本来のミッションパーパスに近い」とも。
STREET HOLDINGS
京都の雰囲気いっぱいのブースを設置したのは、アワード初参加のSTREET HOLDINGS。ブースで紹介した新しいサービスmottoは、PCのログ解析から、社員と顧客の間でどの業務に時間がかかっているかなどの生産性、どのプロジェクトにどのくらい人員を割くかなどを可視化して検討するのを支援する。
ログラス
ICC KYOTO 2021 カタパルト・グランプリで優勝を飾ったログラスもアワード初参加。プレゼンでも語られていたとおり、経営管理をデータ化することで一元化し、課題解決力の速度を上げるソリューションを紹介した。訪れた審査員企業のミッションに紐づけたメッセージも合わせて、経営者を助けるSaaSであることをアピールした。
9月6日、Session 9 アワードのファイナル・ラウンド
結果詳細は既報の通りだが、ガーディアン・アワードのファイナル・ラウンドでは各部門賞の発表と、総合優勝が発表された。
▶【速報】スポンサー企業がチームで競う「ガーディアン・アワード」、「Helpfeel」が涙の2連覇(ICC KYOTO 2023)
点数を見ていただいてもわかるように、TOP5位は非常に僅差の戦い。前回に引き続き、Helpfeelの2連覇となった。全力で走りきった5組のスピーチには、このアワードのために通常業務に加えて時間のないなか、どれだけ真剣に取り組んできたかが表れていた。
第1位「Helpfeel」(得点:20.085点)※提案力 部門、イノベーション 部門、オリジナリティ 部門でも1位
尾﨑 大将さん「本当に嬉しいですね。皆さんの話を聞くと、一緒に頑張ってこれたので余計にそう思います。
前回優勝してから、次も優勝しなければというプレッシャーがずっとあったのですが、今回新たに社員全員でブラッシュアップして、結果こうやって二連覇させてもらったのは本当に嬉しいです。ありがとうございました」
第2位「Hubble」(得点:19.174点)
町田 健太さん「私はマーケティングの責任者をしていますが、契約DXは伝わりづらい領域だと思っています。責任者として、素晴らしいプロダクトを伝える言葉が、1年前に入社してからなかなか言語化できずに代表の早川に迷惑をかけてきて。そのなかで、イノベーションと提案力という部門で、高いご評価を、2位という結果が本当にうれしいです。
これは本当に準備してくれたチームのみんなと、初めて会ったのに『こうしたらいいんだよ』とアドバイスをくださったライバル企業の皆様のおかげと思っています」
第3位「UPSIDER」(得点:19.148点) ※ROI 部門で1位
上杉 桃子さん「ココナラさんと参加前にお話をさせていただいて、めちゃくちゃ熱い想いがあって、素敵なブースにしよう、ガーディアンアワード頑張ろうとおっしゃっていたので、ココナラさんの入賞、お話を聞いて私も感激しました。
メンバーのみんながすごく率先して頑張ってくれて、みんなの力がなくてはできなかったなと思います。全体の順位はちょっと下がったのですが、みんなの頑張りにを誇りに思いますし、次回は優勝を目指して頑張りたいなと思います」
第4位「ココナラ」(得点:19.092点) ※「接客・態度」部門で1位
柳澤 芙美さん「社内で3人が招集されてまずやったことは、経営陣に協力をしてほしいというお願いです。でも、経営陣もそんなにプレッシャーをかけることなくやらせていただきました。
昨日南から電話をもらったときに、すごく楽しいですと伝えたら、『それはうまくいっている証拠だね』と言葉をもらいました。
この会場のパワーと、皆さんのエネルギーをもらって、接客態度ということで優勝…優勝じゃなかった、部門賞でした!(会場笑)社内ではこれで優勝かなということに勝手に思っています。それもスタッフや会場の皆さんがいなければなかったことなので、本当にありがとうございます」
第5位「リチカ」(得点:19.053点)
本田 佳佑さん「正直、めちゃくちゃ悔しくて泣きそうです。今回は前回よりも、社内のメンバーの稼働も増えていて、社外の人たちも含めて、ガーディアンアワードに臨んだので、優勝以外は見ていませんでした。
でもそれが僕たちの今の結果で、ガーディアン・アワードにこの気持で臨めたことそのものが誇れることかなと思いますし、一緒に頑張ってくれたメンバーのおかげでここにたてということは感謝したいと思っています」
完走した疲労感と、想いが溢れて、スピーチをしながら涙をこぼす入賞者たち。会場いっぱいの関係者たちや運営スタッフたちも、もらい泣きをする中でガーディアン・アワードは終了した。今までならここで終了だったが、今回から、翌日にもう1つ大きなプログラムが追加されている。
9月7日、ガーディアン・カタパルト
ICCサミット最終日の11時45分からは、初開催のガーディアン・カタパルト。前回ICC FUKUOKA 2023のガーディアン・アワードで好成績を収めた7組が7分間のプレゼンで優勝を競う。
カタパルトの冒頭では、前回優勝・準優勝の企業経営者が登壇者たちにエールを送った。
UPSIDERの宮城 徹さんが「万全を期してエースメンバーが練習。前回の準優勝で事業的にも非常にいい効果があった」と語れば、優勝したHelpfeelの洛西 一周さんは「3年前からスポンサーですが、ガーディアンができてから俄然皆のやる気が出てきて、営業力、提案力が伸びました。エンジニアが強い会社だったのですが、今や営業バリバリの会社だねといわれるように」とコメント。
審査員はアワード同様、経営者や経営幹部を含む48名。アワード審査員同様、自社のプレゼンを見る審査員もいるが、自社への投票は無効票となる。
プレゼンについては中継映像を見ていただければと思うが、”エース社員”というだけあって、7組が連日の疲れも見せないプレゼンを披露。語ること、伝えることに長けた方々が登壇しているが、カタパルトと名がつく限り、ICC小林 雅のプレゼン練習も経てきている。
興味深かったのは、アワードでのサービスに特化した話とは異なり、カタパルトならではの「自分はどんな人間であるか」というマイ・ストーリーが含まれていたこと。どのような経緯で、どんな想いで今の仕事をしているかということ、働くなかでの挫折や学んだことが合わせて語られていた。
普段経営者の決意を聞くことが多いこのカタパルトで、現場社員のリアルな声、事業への想いを聞くことは新鮮で、事業に対して熱いオーナーシップを持つプレゼンばかりだった。審査員の方々も「こういう社員がうちにも欲しい」と思ったのではないだろうか。
既報の通り、こちらもHelpfeelが優勝、準優勝はUPSIDER、第3位はリチカとなり、第一回目のガーディアン・カタパルトは終了した。
▶【速報】初開催のガーディアン・カタパルト「Helpfeel」が優勝し、ICC KYOTO 2023のガーディアンで初の2冠達成(ICC KYOTO 2023)
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現場の人たちが輝く企画として始まったガーディアン・アワードだが、コンテンツが増えた結果、アワード、カタパルトに参加するメンバーは、登壇する経営者たちよりも長くICCサミットに滞在することになったのではないかと思う。
しかし、この濃密なICCの4日間を過ごすのは、他にはない体験になるのではとも思う。本業に支障がないことを祈るばかりだが、カタパルト同様、これだけの経営者たちに向けてプレゼンやデモ体験を一度にできる機会はなく、自社のサービスのみならず、目指すところを改めて捉え直すまたとない機会になる。伝える力も、チームの団結力も全力で取り組めば間違いなく向上する。
彼らは、確実にステップアップするし、企業にも貢献する。産業を創るための人材は経営者だけではない。スポンサーブース活性化の課題解決だけではなく、育成としてもICCサミットの場を活用できるのではないかという意図が、このガーディアン企画には込められているのである。
編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子