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これまでに配信した、石川善樹さんご登壇記事を総特集いたします。今回は、ICCカンファレンス TOKYO 2016 から、異分野対談「予防医学者 X 質問家」
を4回に再編集してお届けします。石川善樹特集3(その1)は、自己紹介とは何か?という異例の会話から始まり、「問い」とは何か?ということを中心に議論しました。ぜひご覧ください。
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登壇者情報
2016年3月24日開催
ICCカンファレンス TOKYO 2016
Session 2E 異分野対談「予防医学者 X 質問家」
(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H 共同創業者
松田 充弘
マツダミヒロ事務所 代表取締役
(聞き手)
井上真吾
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▶「異分野対談『予防医学者 X 質問家』」の配信済み記事一覧
司会者(井上) ICCカンファレンス TOKYO 2016の特別企画は異分野対談「予防医学者 X 質問家」です。予防医学者である石川 善樹さんと「質問家」のマツダミヒロさんがどのような対談になるのかとても楽しみです。
まず最初に自己紹介も含めまして、今取り組まれていることでしたり、最近関心のあることなどについて順番にお話しいただいてもいいでしょうか?それではまず松田さんからお願いします。
自己紹介とは何か?
松田充弘氏(以下、松田) 僕はいつも自己紹介というのは困るのです。
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松田 充弘
マツダミヒロ事務所 代表取締役
東北芸術工科大学デザイン工学部卒。
カウンセリングやコーチングの理論をベースに、自分自身と人に日々問いかけるプロセスを集約し、独自のメソッドを開発。質問するだけで、
魔法にかかったようにやる気と能力が引き出され、行動が起こせるようになることから、「魔法の質問」と呼ばれる。講演や、雑誌、テレビへの出演も多数。ニューヨーク国連本部の学校をはじめ世界各国の学校や企業で講演を行う。『賢人たちからの運命を変える質問』(かんき出版)『しつもん仕事術』(日経BP社)他30冊を超える著書がある。
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石川善樹氏(以下、石川) さっそく問いかけが始まりましたね(笑)そもそも、自己紹介とは何か。
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石川 善樹
株式会社Campus for H 共同創業者
予防医学研究者、博士(医学)
1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。「人がより良く生きるとは何か」をテーマとして、企業や大学と共同研究を行う。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など。講演や、雑誌、テレビへの出演も多数。NHK「NEWS WEB」第3期ネットナビゲーター。著書に『仕事はうかつに始めるな―働く人のための集中力マネジメント講座―』、『疲れない脳をつくる生活習慣』(プレジデント社)、『ノーリバウンドダイエット』(法研社)、『最後のダイエット』、『友だちの数で寿命はきまる』(ともにマガジンハウス社)、『健康学習のすすめ』(日本ヘルスサイエンスセンター)がある。
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松田 石川さんは自己紹介とはどういうものだと思っていますか?
石川 僕はアメリカへ行った時に、こういう自己紹介もあるのだなという経験をしました。日本ですと、所属の歴史を話しますよね。自分はこういうところに所属していましたというものが自己紹介である場合が多い。
ところが、あるユダヤ人の友達は、自己紹介をご先祖様の話から始まるのです。おじいさん・おばあさんはこういう人で、自分の両親はこんな人で、そして僕が生まれたのです、で終わる。自分の話はせずに、そこで終わっちゃうのです(笑)
でも、そこまで聞くと、すごくその人のことがよくわかる。だからあなたがいるのですねというふうに。
そこで初めて自己紹介にもいろいろなパターンがあると学びました。
松田 なるほど。
石川 僕らの脳は楽をしたいから、すぐにパターンで処理しようとします。そのパターンでやっていく典型が自己紹介だと思うのです。
名刺を出すとか。おそらくそういうものを崩そうとして、松田さんは質問家と名乗っていらっしゃるのじゃないでしょうか?。
松田 そうです。ですから、あえて言えば質問をする人です、ということになる。
石川 だから、今日の対談は楽しみにしていました!
松田 こちらこそよろしくお願いします!さっそくですが、石川さんは最近、どんなことを考えていますか?
石川 そうですね・・・例えば昨日考えていたのは、「失敗とは何か?」ということです。失敗について考えていたら、すごい面白いことに気がついたのです。
松田 お、なんでしょうか?!
間違いの本質とは何か?
石川 まずどう考え始めたかというと、「失敗=間違い」ともいえるので、じゃあ間違いについて考えようとなったのですが、漢字を見ると「間違い」というのは間が違うということだなと。
つまり、「間」がわかってないということなのです。要は、間違いの本質というのは、「間」にあるのだろうということを思いました。
松田 なるほど。
石川 そして、「間」についていろいろ調べてみると、面白い発見がありました。「間」が破綻することというのはよくあるのですが、その破綻した間をどう元に戻すかというのが「祭り」なのだそうです。
破綻した間を「吊り上げ」て元に戻すというのが「祭り(間吊り)」なのです。ということは、間違えた後は「祭り」をすればいいのだということになる(笑)
松田 おもしろいですね(笑)ちなみにどうして「間違い」について考えてたのですか?
石川 あー、そうですね。そう言われてみて思い返すと、僕が間違いということを真剣に考え始めたのは、アップル社の「think different」というキャンペーンをみて衝撃を受けたのがきっかけですかね。
「different」というのは日本語で訳すと「違う」という意味なのですが、違うというと日本語ではwrongという意味も含みます。
「think different」もよく考えると、アメリカ人というのは基本的にみんな全然違うのです。人種も全然違う。全然違う中での違うという意味と、日本のようにそもそもみんな一緒の中での違うというのは、全くことなる意味をもつんじゃないのかなと。
そして、違う中で違うというのは、一周するとどういう意味なんだろうか・・・なんてことを果てしなく考えながら毎日生きています。面倒くさい人生です(笑)
「問」とは何か?
松田 学問という字は、「問」で学ぶとなってますね。「問」を立てると学びになると思うのですが、おそらく多くの人は「問」を立てることによって答えが出ると思うから学びになるというふうに思うのでしょうが、僕はそうではないと思うのです。
「問」を立てること自体が学びだと思う。そこはどう思いますか?
石川 それは僕は考えたことはなかったです。
松田 答えを出すことは確認でしかないという感じです。
石川 あー、それはわかります。実は問さえ立ててしまえば、あとはみんなで力を合わせれば解けちゃいますからね。
松田 「問」が間違っていなければ。「問」が正しければ。
石川 研究者というのは、大きく分けると、「問」を立てる側に立つのか、それを解く側に立つのかというので分かれるのです。
僕は自分で解く力は弱いと思った。「問」を立てる方が強いと。
そして実はもう一種類の人たちがいて、ディスカッションが得意な人というのがいる。この人が多分「質問家」という人に近いのかもしれませんが、この人と話すと何故か「問」が深まったり、答えへの道筋が見えたりするのです。
そういう壁の役。研究者というのはだいたいこの3パターンに分かれるのです。
研究者はどれもこなさなければならないのですが、自分がどこに比重を置いて研究者として立っていくのかという時に、僕は自分が「問」を立てるほうが上手いと思ったのです。
松田 定義を把握したりということでしょうか?
石川 そうですね。僕は、みんなが何となくこうだと思っているその定義が、わからないのです。
松田 定義が腑に落ちないとなかなか進みにくい。
石川 今日は良い天気ね、と言われて納得できない。「良い」とはなんだ、雨だと駄目なのか、というように。
そういうのが本当にいちいちわからない。ですから、研究者としてはそれで良いのですが、イチ社会人として見た時には、完全に失格です。本当にわからないのです。
松田 そのわからないことを明確にすることが、多分問いの産み出し方だと思うのです。そこが、わからないでも何となくそれでも良いやと思っていると、なかなか問を立てにくい。何となく生きてしまうでしょう。
石川 そういう意味で、どうしてそういう「質問家」というところへ行き着いたのですか。
松田 僕はそもそも20代と30代で全然違う仕事をしていたのです。
30代から質問家になった。20代はベンチャーの経営をやっていたのですが、それがあまりしっくりこなくて、また社長も首になったということもあって、辞めてしまったのです。
そして、本当に僕は何をしたいのだろうと思った時に、いろいろな人が質問をしてくるわけです。
それに答えていく瞬間が、すごくシフトチェンジが起きるというか、答える瞬間に気づきがあったり、ああそうかと腑に落ちる瞬間があって、質問と言うのはおもしろいと思ったのです。
石川 そう考えると、普通の人はそういう質問はあまりされないですね。
僕はスポーツ選手と話していて、彼らが極めて特殊だと思うのが、常に今年の目標とかを聞かれるということです。普通聞かれませんでしょう。
聞かれるから彼らは答えていて、そして答えていくうちに変っていくのですが、変りながら自分の中で明確になっていく。
松田さんの場合、それが多分、良いタイミングであったのですね。会社を辞めて、次どうしようかということを考えるに際して。
松田 そうですね。その時に、質問とか、あとはコーチングとかに出会って、質問に答えるというのはこんなにも変化が起きるのだなということに興味を持ち始めて、毎日質問を作って(メルマガの)配信してということをずっとやっていたのです。
▶【参考資料】魔法の質問
石川 どのような質問内容でしょうか。
松田 その日の出来事から質問を作るということをやるのですが、例えば今日はたまたま「問の本質」というキーワードが出てきたのです。
そのキーワードが面白いと思ったら、問の本質とは何だろうという質問を作って、そのメルマガを配信するのですが、それで読者がすごく増えていって、反響が大きくなっていったりする経緯です。それで毎日質問を作っていましたね。
石川 修行のような感じですね。
松田 そう。修行です。
石川 そうなると僕とやっていることは一緒ですね。
最近の僕は、もう自分では解かないですね。チームを作って、解く専門の人間を作っている。
僕は問うのです。例えば最近、ミッキーマウスに関する問いを作りました。
ミッキーマウスは100年間でいろいろ進化してきています。簡単に言うと可愛くなっているのです。手足が短くなって、目と頭が大きくなって、可愛くなっている。
その絵をたまたま見ていて、「100年間でこのように進化してきたのだとすると、では次の100年でミッキーはどのように進化するのだろう?」とすごく興味を持って、今その問題を解いています。
松田 その解いた先には興味があるのですか、ないのですか?
石川 あー、そういわれてみるとあまり解いた先には目が行ってないですね。むしろ解く過程で次々にあたらしくて深い問いが生まれるので、それに忙殺されます(笑)
松田 すると、問いを生み出すもっと根本に、もっと気になる問題があるということですね?
石川 そうです。僕が一番気になるのは、人がより良く生きるとは何かという問いです。と言うのは、より良く生きるとは何なのだと考える時に、人類はこれまでどう考えたかというと、苦しみを取り除けば幸せになるに違いないと思っていたのです。
その苦しみとは何かと言うと、貧困と病気です。この貧困と病気の二大苦しみだったのですが、戦後、日本はこれをある意味取り除いたのです。にも関わらず、データを見ると全然幸せになっていない。
と言うことは、苦しみを取り除くというだけでは、何かより良く生きるということとは関係なさそうだから、そうではない豊さの再定義が必要だと思ったのです。
(続)
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/石川 翔太/井上真吾/渡辺 裕介
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続きは 「普通とは何か?」を考えることから新たな知識が生まれる(石川善樹×マツダミヒロ) をご覧ください。
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【編集部コメント】
続編(その2)では、マツダミヒロさんが「石川さんの知識がどこからやってくるのか?」と質問し、知識とは?や、普通とは?といったテーマを主に議論しました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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