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5. 美食家シェフが明かす、フーディーとしてのマイルール

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ICC KYOTO 2024のセッション「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン9)」、全8回の⑤は、引き続きsyn大野さんによるレポート。海外の状況に明るいLURRA°宮下 拓己さんも加わり、観光客と美食のつながりや、都市型レストランの変化など、興味深いトピックが続きます。そんな大野さんがフーディーとしてレストランを訪れるときに決めているルールとは? ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2025は、2025年2月17日〜 2月20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。


【登壇者情報】
2024年9月2〜5日開催
ICC KYOTO 2024
Session 9E 
大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン9)
Supported by EVeM

(スピーカー)

大野 尚斗
Syn
オーナーシェフ

西井 敏恭
株式会社シンクロ
代表取締役

長谷川 誠
株式会社NTTドコモ
サービスマーケティング室 
コンシューママーケティング推進担当部長/シニアプロフェッショナル

宮下 拓己
イラルギア合同会社(LURRA°)
代表社員

山本 典正
平和酒造株式会社
代表取締役社長

(モデレーター)

榊 淳
株式会社一休
代表取締役社長

「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン9)」の配信済み記事一覧


観光客の増加と食の発展

大野 こちらは、どうやって海外が今進んでいるかについてまとめたものです。

やはり観光客と美食はすごくつながっていますね。

それにはいろいろあるので悪いことは言えませんが、ミシュラン、ゴ・エ・ミヨ(Gault & Millau)The World’s 50 Best Restaurants (世界のベスト・レストラン50)など、ガイドブックの参入があります。世界のベスト・レストラン50が一番強いですけれども。

あとは、地産地消が強くなっています。

僕が海外に行っている中ですごいなと思ったのが、食の不毛地帯といわれたイギリスは、今、正直フランスよりレベルが高いです。

イギリスは食材が良くて、拳大のホタテが普通にあります。

イギリス人は料理の仕方を知らなかったのですが、海外で修行して帰ってきてお店を出しています。

それらの流れに乗っかるとビジネスが始まり、日本でももちろんありますけれども、海外でも投資家たちが組んでいます。

有名なものだと、ベスト50に最近入ったTable – Bruno Verjus(テーブル バイ ブルーノ ベルジュ)ですね。

都心型レストランの変化

大野 次に、従来の都心型レストランは、こういう大きいテーブルと100席ぐらいの箱(店の大きさ)でした。

海外は基本的に、バーカウンターがあってからのダイ二ングですね。

あとは、個室とは別にVIP用のプライベートダイニングルームがだいたいあります。

こちらが、昨今の都心型レストランです。

日本と同じで、まず従業員を見つけるのが大変で、土地も家賃も高いです。

お客様がクオリティを求めるので、カウンターにしています。

これを見てもしかしたら気づかれる方もいらっしゃるかもしれませんが、天井が低いんですよ。

心理的に240cmが人間にとってはちょうど良い高さといわれていて、写真は、スウェーデンのFrantzén(フランツェン)とイギリスのKitchen Tableというお店ですけれども、どちらも天井高は240cmしかないですね。料理も美味しいです。

プリミティブな調理、チュイルが流行

大野 次に、クラシカルの定義の移ろいということで、クラシックの定義が変わってきています。

昔の重厚な感じは残しつつ、バターを控える程度だったんですけれども、ただそれがより軽くなっているとはいえ、食事時間はゆったりと、だいたい3時間ぐらいですよね。

日本でもそうですが、最近の流行りは海外でもプリミティブな調理です。

Synも炭だけなんですが、拓己君(宮下さん)のところは薪で、Asador Etxebarri、あとはSaison(セゾン)、どこも薪が流行りです。

あとは「チュイル」が流行っています。

チュイールとは? | オークラだより |(The Okura Tokyo)

皆さん食べに行かれている中で、このチュイルを見たことがあるぞというものがあると思います。

宮下 世の中にモールド(型)みたいなシリコンパッドがいっぱいあるので、何の形でもできてしまいます。

大野 オリジナルでしかも結構安く、MoldBrothersという会社で作れます。

令和の美食とは

大野 こちらはちょっとセンセーショナルな背景で申し訳ないのですが、先ほど言った「美味しい」と「旨い」の違い(前Part参照)により、原点回帰するお店とコンセプチュアルなお店で結構分かれてきています。

写真は、今世界で一番コンセプチュアルなお店、デンマークのAlchemistですね。

このお店は1年に1回コンセプトが変わるのですが、今は社会定義やコンセプトで誰かに見られているという、目玉の料理ですね。

怖い、けど止められない 社会問題を提起する二つ星店(日本経済新聞)

目玉の真ん中にキャビアが乗っています。右上は脳みそですね。

先ほどお話しさせていただいた、美味しさと旨さ、郷土料理と洋食文化の取り入れは、日本だと和食屋さんにカニクリームコロッケが流行っているのと同じで、海外でも屋台の照り焼きみたいな串焼きが、一つ星、二つ星レストランに行っても出てきますね。

そして時間の違いですが、先日東京のMAZ(マス)というCentral(セントラル)の支店のサンティアゴ(・フェルナンデス)シェフと仲が良いのでお話しする機会がありました。

もともとMAZも3時間以上のコースがあったのですが、最近は2時間半で終えないと、やっぱりTikTokと同じで、お客さんも長い時間をかけて情報をたくさん楽しむというよりも、ぱぱっと食べて美味しいね、楽しかったねというほうがいいようです。

僕はちょっとそれが悲しいんですけれども、その二極化が進んでいますね。

宮下 Alchemistは6時間です。

大野 そうそう(笑)。

宮下 ご飯に6時間ってすごいなと思って(笑)。

大野 ちなみにブルーヒル(Blue Hill At Stone Barns)も5時間半かかります(笑)。

うちは4時間かかります。

九州で長い店はうちとkatecuore(カテクオーレ)の2店しかないので。

西井 katecuoreはめちゃくちゃ長かったですよ。

ハセマコ 6時間もかかったら、1日に4軒しかいけませんからね。

西井 君は観点が違う(笑)。

(一同笑)

海外レストラン情報の調べ方

大野 僕が海外のレストランに行くときの調べ方をお話しします。

基本的に僕は郷土料理しか、今は食べに行かないです。

正直ガストロノミーに食べに行くのは興味がなくて、海外に行ったら1軒行くぐらいです。

基本的にはプロのフーディー、ジャーナリストのお名前を何人か載せていますが、僕の師匠の奥様、Kat Odellさんは元VOGUEの編集者です。

Aistė Biržytėさんはスロバキア出身のモデルかな? すごく美人でかなり詳しい方です。

この方はInstagramで調べていただくとルクシーという名前ですが、すごいのが、例えばスペインのサン・セバスティアンのガソリンスタンドの裏にあるエビを焼いたお店が旨いとか、そういう小さい食堂のことも知っていて、DMで僕は教えてもらっています。

仲山 今日子さんは『専門料理』やForbesを読まれる方はご存知の、日本人のフーディーの方です。

現地のシェフはもちろん、あとは郷土料理や屋台で面白いのが、YMark WiensさんのYouTubeです。

めちゃくちゃ面白いので、この方はお勧めです。

西井 全然関係ないですけど、この飛行機はグリーンランドのですね。

大野 わあ嬉しい! さすが、よく分かりましたね。

(一同笑)

ハセマコ (手を打って喜ぶ)

西井 僕しか分からない。

 西井さん、もう1回発言すると退出になります。

(一同笑)

フーディーとしてのマイルール

大野 こちらはフーディーとしての僕のルールです。

お客さんもこれを守ると、お店の方に嫌われないです。

西井 これはめっちゃ大事ですね、嬉しい。

大野 料理人として伝わったら嬉しいですし、食べ手としてこれを守るとお店の方はすごく良くしてくれます。

お手洗いのタイミングは、コース開始前、食べ終わったらすぐにしてください。

魚とメインの前は我慢です。

魚とメインの前に行かれると、正直僕らは結構イラっときます。もう取り戻せないので。

美味しさは一瞬なので、写真はできるだけ早く撮ってください。

皿の向きを変えるのも、ちょっとイラっとくるかな(笑)。

あとは、他の店やシェフの方を褒めるのは僕らも楽しめますので嬉しいですが、やっぱり悪いことを言うのは絶対タブーです。

西井 自分たちも言われているかもしれないと思ってしまいますものね。

山本 これはイノベーティブな店だけでなく、和食店やお鮨屋さんでもよく言われることですよね。

大野 そうですね。あと怖い顔をしないというのは、シェフがほとんどなんですけれども。

(会場笑)

僕はそんなことはないですけれど、料理人の方は結構特徴的な顔の方が多くて、ただでさえ顔が怖いじゃないですか。

宮下 料理人が店に入って来たら、一瞬で分かりますもん。

西井 そうなんだ。

大野 お鮨屋さんもわかりますね。

西井 でもやっぱり分かるのですね、顔とかで。

宮下 一瞬ですね。和食の人のスーツのオーバーサイズ感とかで、なんか分かります。

(一同笑)

大野 僕は料理人だとバレたことがほぼなくて、調子に乗ったIT経営者とたまに言われます(笑)。

西井 へえ。じゃあ正体を明かさない限り言われることはないですか?

大野 最近はバレますが、昔はたまに調査員と思われたりとか。

西井 なるほどね。宮下さんはどうですか? バレますか?

宮下 僕は全然バレません。多分学生ぐらいに思ってくれるのでちょうどいいです。

(一同笑)

僕は基本的にはペコペコしているので。

大野 雰囲気がちょっと似ている方向なんですかね。

西井 いや、同じ方向だからバレないんだなと思って。

ハセマコ 一番下は西井さんが大得意ですよね。

西井 何を言っているんだ。

(一同笑)

君、下から2番目が得意じゃないよね? 常に怖い顔をして食べていますよね。

ハセマコ 怖い顔をさせないのは、店の仕事だと思っています。

(会場笑)

大野 頑張ります(笑)。

長谷川 本気でそう思っています。

年に1度、食文化がある地域へチームで旅行

大野 そして最後に、クラウドファンディングの宣伝を(※ 2024/10/31に募集を終了) 。

第1回目はスリランカ! 世界の国をいただきますプロジェクト(CAMPFIRE)

実は1年に数回、チームで世界を旅しています。

西井 めっちゃいいじゃないですか、めっちゃいい! 応援します。

 お店のチームで旅をするのですね。

大野 そうです。

現地で食材や調味料だけではなく調理器具などを買ってきて、リターンをイベントにして、皆さんに体験でお返ししていけたらいいなと思っています。

僕が行ったことのある国とパリやニューヨーク、ロンドンなどの大都市は除いて、食文化がある地域に行く予定です。

パリに行って楽しいのは僕だけで、皆さんは楽しくないので、リクエストのあったところも入れていこうかなということで、第1回はスリランカでカレー以外にしようかなと思います。

西井 いや、いいですね。僕、じゃあついていきますね。

大野 ぜひぜひ。現地集合、現地解散で行きましょう。

西井 置いていかないでください。行きます、行きます。

大野 すみません、長くなりました。ありがとうございます。

西井 ぴったりじゃないですか、ちょうどいいです。

 けど、このままだと西井さんのトップシェフの名言シリーズに、もしかしたらいかないかもしれないですね。

(会場笑)

西井 いかせるつもりないでしょ、今のところ。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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