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7. 食べ手の技を高めるために、旬を知り、経験を積んで奥行きを感じろ

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ICC KYOTO 2024のセッション「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン9)」、全8回の⑦は、美食道お勉強の時間です。シーズン8までのフレームワークをさらに深掘りした今回のテーマは「店」と「食べ手」の「技」について。これを学ぶと通!の旬の食材リストbyハセマコもお見逃しなく。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2025は、2025年2月17日〜 2月20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。


【登壇者情報】
2024年9月2〜5日開催
ICC KYOTO 2024
Session 9E 
大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン9)
Supported by EVeM

(スピーカー)

大野 尚斗
Syn
オーナーシェフ

西井 敏恭
株式会社シンクロ
代表取締役

長谷川 誠
株式会社NTTドコモ
サービスマーケティング室 
コンシューママーケティング推進担当部長/シニアプロフェッショナル

宮下 拓己
イラルギア合同会社(LURRA°)
代表社員

山本 典正
平和酒造株式会社
代表取締役社長

(モデレーター)

榊 淳
株式会社一休
代表取締役社長

「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン9)」の配信済み記事一覧


いよいよ話題は美食道へ

ハセマコ ここからどんどん深い話、美食道のほうに入っていきたいと思います。

シーズン8まで語ってきた、美食道のフレームワークのまとめになっています。

一つひとつ説明すると全然わけが分からないと思いますが、店と食べ手はこういうふうに分解できますよという話をしています。

その中で店の中の「技」をさらに分解して、「(高さ×幅×奥行)×構成」という話をしています。

食べ手の中にも「技」があって、「知識×経験×味覚」を今日少しお話ししようと思っています。

まず食べ手の「技」のおさらいで、食に関する「知識」と「経験」を付けましょうという話を、今日はしていければと思います。

食べ手に必要な旬の知識

ハセマコ 1番目は「知識」の話で、これは以前榊さんと食事をした際に、旬の食材リストはないですかみたいな話を受けたので、食べ手がどういう感じで1年間を過ごしているかを食材別にまとめてみました。

春から行くと流れがいいので、春からいきますと、やはり筍や花山椒です。

いわゆる山菜系を食べるために全国を回る感じになります。

そこから徐々に夏の食材になっていく中で、貝類、鳥貝が出てきます。

そこから鮎、雲丹、鮑と夏食材に切り替わっていくので、この頃になるとまた別の季節に行かなければならない感じになってきます。

秋になってくると松茸、海のものでは秋刀魚や戻り鰹が出てきて、そこから鰻も天然鰻だとこの辺りが旬かなと思います。

いよいよ冬になっていくと、蟹や鮪、トリュフなどの食材が出てきて、冬の後半になってくるとフグの白子などが出てきます。

この辺りがいわゆる高級なレストランの中で、高級食材、その日の目玉食材として使われがちなものになるかなと思います。

これは当然エリアによって獲れる時期が若干ずれたりはしますが、だいたい年間スケジュールはこんな感じで動いています。

店で食材が出てきた時に、「旬よりもちょっと早いですね」みたいな話をすると、「お客さん、分かってますね」みたいな話になりますので、この辺りを頭に入れて、この時期だと早いのか遅いのかみたいなことを考えながら店と会話をするというか、自分自身が楽しむのがいいのではないかと思います。

榊さんに以前言われて、ようやくできましたが、どうですか、これ?

榊 ありがとうございます。

一休.com レストランでも大いに活用させていただきます。

(一同笑)

大野 ちょっと茶々を入れてもいいですか?

ハセマコ はい。

夏に美味しい筍も。3~4月のなめこは神

大野 実はよく筍は春が旬、白子はだいたい11月だと入ってきますけれども、夏に美味しい筍もあるんですよ。

夏にしか食べられない筍で、筍の周りの部分を食べたりとか、キノコも松茸は、多分今の日本だと9月はどこもブータン産とかなので、国産は今10月末に入るか入らないかぐらいです。

あとキノコを狙っていったら、皆さん、面白いかもしれないです。

例えば、3〜4月のなめこなどは神ですよ。

ハセマコ ありがとうございます。

マニアックな話はもちろんそうですけれども(笑)、メジャーな目玉食材をまとめるとこうですよというものにしました。

大野 失礼しました(笑)。

山本 見ると、やはり日本の食材は日本の風土からできているなという感じがすごくあって、日本料理だと「はしり」「旬」「名残」と言いますが、食材で季節が来たなと感じるのですよね。

9月の今は、秋と夏の食材が今ちょうど交ざっている時期で、これがまた私は楽しいなと思います。

ハセマコ はい。以前も話したのですが、季節ごとに店に行きましょうという話と、今度は季節の中で前のほうと後ろのほうという感じで12カ月全部行った上で、それをさらに上・中・下旬に分けて36回行くといいのです。

それほどの年間単位でスケジューリングして店に通うのがいいのではないかというのが、僕の楽しみ方になっています。

フーディーが挑む終わりなき戦い

ハセマコ 次に「経験」の話でいうと、百名店の6,100軒にはジャンルがあります。

さらに、冒頭(Part.3参照)でも言いましたが、百名店と言えどもラーメンだと400あって、うどんやカレーだと300あってというようになっています。

赤い文字が、2024年になってから増えたもので、うどんはKAGAWAのカテゴリが増えて200から300になり、ステーキ・鉄板焼きがEAST、WESTに分かれて100から200になり、そばも同様に分かれて、つい先日スペイン料理の百名店ができてという感じで、終わりなき戦いをずっとしています。

(一同笑)

宮下 うどんのKAGAWAはしんどそうですね(笑)。

ハセマコ うどんのKAGAWAはしんどくて、EAST、WESTでほぼ200近くまで行っていたのに、KAGAWAができて300分の200に叩き落とされました(笑)。

なので、増えれば増えるほど、分母の6,100のほうがきつくなっていくので、戦いかなと思います。

「経験」のところで伝えたかったのが、これだけ全ジャンルに行こうとしているのは僕だけかもしれませんが、いわゆるフーディーといわれる人たちは、これだけの食事の経験を積んでいます。

これだけジャンルがあって、これだけの専門店に行っている人もいると考えたときに、お店側としてどのようにそのフーディーを喜ばせるのかというところに、この「経験」の話はつながっていくのかなと理解しています。

「深く掘り下げ、磨き抜かれた研鑽」とは

ハセマコ そこで店の話に戻りまして、「奥行」の話をしましょう。

「奥行」とは「深く掘り下げ、磨き抜かれた研鑽」という、一番よく分からないだろうなと思うので、今回そこの詳細な話をしたいと思います。

「深く掘り下げ、磨き抜かれた研鑽」とは何か。

基本的には先ほどの旬の食材リストでめちゃくちゃすごい食材だったら、食材そのものの奥行が半端ないので、例えば、非常に高価なアワビはそれだけで奥行がすごいのですが、仕入れ、食材に頼らない「技」による旨味や深みを「奥行」と定義しています。

その中には「重厚」なものと「軽快」なものがあって、磨き抜かれた研鑽によるものなのか、圧倒的なセンスによるものなのかに分解できるのかなと思っています。

「奥行」の系統を分類

ハセマコ それを図解すると、こんな感じで謎の四象限が出てきました(笑)。

「研鑽」によるものと「センス」によるもの、「軽快」なものと「重厚」なものとで分類していくと、「奥行」で一番イメージしやすいのは、右上のゾーンかなと思います。

「重厚」かつ「研鑽」、要は同じものを作り続けて磨き抜いたもの、例えば老舗のフレンチシェフのソースみたいなものは右上のゾーンだと思います。

左上はものすごく研鑽された結果、軽快な方向にいっているというのは、とにかくスキルが超高い系のものかなと思っていて、和食で出てくる箸休めがめちゃくちゃ美味しいみたいなイメージかなと思います。

右下は重厚だけれどもセンスで作られているもので、伝統的なジャンルのものなんだけれど、その中では革新的な調理技術をしているみたいなお店のイメージかなと思っていて、「革新系」としています。

左下は軽快だけれどもセンスに関してはジャンルそのものがイノベーティブというところかなと思っていまして、ここにセンスのある方が軽快な料理をすると、ものすごく軽いけれど「奥行」がもう無限にあるみたいなイメージになるのかなと思います。

右下に書いていますが、そもそもどれが素晴らしいという話ではなくて、どの領域だったとしても料理に「奥行」が感じられることは素晴らしいことかなと思っています。

ぜひこの四象限をイメージしながら料理に「奥行」を感じたときに、どこに所属するのかをイメージしながら食べていただけると、理解が深まるかと思います。

西井 これは一皿一皿ではなくて、コースを通してだいたいレストランで同じ感じになるのですか?

ハセマコ これが全然違いますね。一皿ずつの話なので。

西井 やっぱりそうですか。

今日一番伝えたかった単品とコースの話

ハセマコ それはまさにこの次の、今日一番伝えたかった話になりますが、単品 or コースの話ですね。

西井さんの質問は「奥行」はどこに効いてくるんですかという質問ですが、要はスキルの「高さ」と「技」の「幅」がどれくらいあるか、そして「奥行」があるかというのが1皿の表現かなというふうに理解しています 。

それを10皿、20皿重ねるものが「構成」というふうに、前回深掘りした「構成」の話になってくるので、これがコース全体というものの1食の総合的な「技」の高さかなと思っています。

5. 変態美食家ハセマコ、シーズン8では「構成」を深掘り(シーズン8より)

まさに下に書いてありますけれど、コース全体の完成度のためには、「幅」と「構成」がめちゃくちゃ重要です。

なぜかというと、さっきの百名店の話とつながってくるのですが、1皿だけで見たときに1皿の「奥行」とか「高さ」とか爆発力みたいなものって、1品だけ作っている単体ジャンルの職人のほうが強いに決まっているのですよね。

例えば、うなぎはどこが美味しいですかとなったら、それはやっぱり和食屋ではなくてうなぎ屋なんですよね。

天ぷらも結局天ぷら屋が美味しくて、先ほどもチラッと言いましたけれど、鮎はどこが美味しいかといったら鮎だけ焼いている人のほうが上手に決まっているのですよね。

1皿で見た時には鮎はやっぱり鮎屋だよねとなるところを、料理人の技でどうやって「幅」と「構成」で引き上げるかが、コース全体の「構成」のところに効いてきます。

ぜひ和食の料理人であるとか全体を作るような料理人は、この「幅」と「構成」を磨いていただくといいのではないかというのが、今日僕から料理人さんに伝えたかったメッセージです。

(一同笑)

宮下 多分会場に料理人さんはいないですよ(笑)。

大野 これは、コース料理を出している人は自ずと意識している場合と、意識してもやらないという方向性があるので、それは店によります。

例えると大谷 翔平ドーンみたいな、そこはシェフの腕がないとかそういう場合は置いておいて、基本的にほとんどの料理人は意識してどちらかに振っていると思います。

宮下 「構成」は、この5年、10年でめちゃくちゃ大事な食のテーマだなと思います。

アラカルトからコースに、これだけ世の中が変わったので。

ハセマコ さらに、それが「おまかせ」になっていますからね。

宮下 そうですね。

山本 例えば焼き鳥でも、焼き鳥は鶏だけなので、やはり「構成」がすごく大事です。

丸鶏を部位ごとに分けて出していくのですが、脂がのってしっかりした味わいの部位を最初に出すのか、それともちょっと軽いものからスタートするのかという意味では、日本料理や和食系は「構成」を大事にしている印象はありますね。

「実践的美食道」とは食べ手と作り手の真剣勝負

ハセマコ いったん美食道をまとめて、山本さんのセッションにいければと思います。

旬を知り、「経験」を積みましょう。

食べログ百名店は実は6,000軒もあって大変だから、全部行くのはやめたほうがいいです。

(一同笑)

「奥行」は「研鑽」と「センス」、「重厚」と「軽快」の四象限に分解できて、単品の爆発力とコースの「幅」と「構成」による完成度ということが、今回のまとめです。

このまとめとしては、「実践的美食道」ということで、食べ手と作り手が真剣勝負をしていくことがまさに美食道につながって、お互いに高め合っていきましょうというICCのコンセプトにつながるのかなと思っています。

西井 めっちゃ無理矢理(笑)。

ハセマコ 食べ手の話を久々にすると、どうしてもこういうまとめ方になるのかなとは思っています。

美食道は以上でございます。

榊 ありがとうございます。

(続)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成

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