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ICC KYOTO 2024のセッション「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン9)」、全8回の最終回は、平和酒造の山本さんが、「美食の民主化」をテーマに問題提起。なかなか予約できないお店を予約するには?お客さんからだけでなく、店側からもレビューする仕組みがあるなど、興味深い議論が続きます。最後までぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2025は、2025年2月17日〜 2月20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。
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【登壇者情報】
2024年9月2〜5日開催
ICC KYOTO 2024
Session 9E
大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン9)
Supported by EVeM
(スピーカー)
大野 尚斗
Syn
オーナーシェフ
西井 敏恭
株式会社シンクロ
代表取締役
長谷川 誠
株式会社NTTドコモ
サービスマーケティング室
コンシューママーケティング推進担当部長/シニアプロフェッショナル
宮下 拓己
イラルギア合同会社(LURRA°)
代表社員
山本 典正
平和酒造株式会社
代表取締役社長
(モデレーター)
榊 淳
株式会社一休
代表取締役社長
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▶「大人の教養シリーズ「美食」について語りつくす(シーズン9)」の配信済み記事一覧
榊 いつもはここで終わる感じですが、時間が余っているので、もしかしたら山本さんの後、西井さんのシェフの名言シリーズにいくかもしれないですね。
では山本さん、お願いします。いっぱい時間を使っていていただいても、大丈夫ですから。
西井 (笑)。
(一同笑)
山本さん、ITによる美食の民主化を語る
山本 私の今回のテーマは、「IT技術による、美食の民主化=大衆化」です。
美食道というか美食の歴史みたいな部分を、自分で棚卸ししてみました。
私は18歳の頃、京都にいたのですが、当時ダイヤルアップやADSLで、誰かは知らないグルメな人が個人的に付けている三つ星、二つ星、一つ星みたいな情報をインターネットで見て、美味しいお店を探していました。
私はフランス料理が当時も今も好きですが、恐る恐るジャケットを羽織って食べにいった記憶があります。
今は、10代は極端だとしても、20歳ぐらいで普通に名店に行ってそれをSNSで上げていたりしていて、それはすごく民主化=大衆化したんだなと思っています。
それをちょっと振り返るというか、できれば私以外の皆さんからも色々なご意見を頂きながら、お話しできるといいかなと思っています。
例えばレストランの情報を掲載し始めたということでは、ぐるなびが一番の金字塔的な企業ではないかなと思います(※1996年6月、株式会社エヌケービーの一事業部として「ぐるなび」を開設)。
ぐるなびはどちらかというと、かつてあったオレンジページと言いますか、そういう店の名前があって、飲食部門だとこうあるよみたいなリスト化をより細かく情報として載せたのが、ぐるなびではないかと思います。
そこからより発展して現代だと食べログであったりGoogleの口コミ、トリップアドバイザーであったりとか、評価をこれまた民主化=大衆化したと思います。
つまり、一般の顧客がレストランを評価する時代に入っています。
これまでは美食道を語れるのはライターや有名な食の権威だけでしたが、一般の方がお店を評価して、それをまた一般の方が見ていくことになったという意味では、IT技術によってそういうような閉じこもった美食からオープンな美食に変わったと言えるのではないかと思います。
「予約の取れない店」の予約サービスが出現
山本 スライドはこれで最後になりますが、最近予約サイトが非常に熱いというとおかしいですけれども非常に重要で、予約の取れないお店の予約をいかに取るか、血まなこになっている方はさまざまな予約サイトを使ってレストランの予約を取っています。
食べログやGoogleなどを参考にしつつ、そのようなサイトで予約を取ることが一般化してきたのかなと思いますが、一方で民主化、大衆化と言ったのですが、例えばOMAKASEはプレミアム会員向けの、超富裕層向けのVIP向けサービスをしています。
そういうVIPに限られたシートを高値で販売したり、予約枠のオークションサイトが最近ちょっと話題になりましたけれども、そういうことが行われていたりします。
これは知られていないのですが、海外客向けの予約代行サイトみたいなものがあって、そこでは日本人が予約を取れないお店でも予約が取れます。
私が3月ぐらいにアメリカに行った時に教えてもらったことですが、私が応援しているお店に2月に訪問した時に、「山本さん、申し訳ない。次の予約が取れるのは秋だよ」と言われたのですが、海外客向けの予約サイトで見ると、1カ月後の予約が取れるようになっているのです。
そういう海外客向けの少ないシートを狙って、こういうようなサービスもできていますね。
美食の民主化で弊害も
山本 「弊害も」と書いたのですが、かつては美食は限られた人のものでしたが、近年SNSで炎上したお鮨屋さんとお客さんのニュースを皆さん覚えていますかね。
かつてであれば、そういうお店に常連さん以外のお客さんが入ってくることはなかったわけですし、あの一件は隣のお客さんとの顧客間のトラブルなんですね。
お客さんが大将にお酒を出した、そのお酒の置き所が気に食わないと言ったというところがスタートだったはずなんですけれども、限られた美食家だけが行く時代で、限られたお客さんを相手にしている時代ですと、そのようなカウンター越しのトラブルは起きません。
でも一見さん同士が集まる、もしくは一見さんと常連さんが集まるところですと、やはりそういう問題が起こりやすいです。
そのほかにも、SNSでこのお料理は出さないでくださいとお店が言っているにもかかわらず上げてしまうケースもあります。
先ほどハセマコさんがおっしゃっていた季節感(前Part参照)で言いますと、1カ月に1コースしか作らないお店ですと、上げられると困るケースもあるんですね。
ある種映画のネタバレみたいな状態で、動画や画像で見てしまうと分かってしまうという問題があって、この辺は民主化、大衆化したことによる弊害かなと思いますが、皆さん、いかがでしょう?
美食の民主化への思い
西井 これは最後に良いディスカッションテーマだなと思います。
僕はもしかしたらインターネットがなかったら、こんなに色々なお店を知らずにいたかもしれないから、そういう意味で恩恵を授かっているなと思いつつも、予約を取れないことで逆に加熱しすぎていて、すごい店みたいになってしまっていることに対して、僕はどう評価していいか分からないです。
宮下 うちの店は、今2カ月先までしか予約を取っていません。
“いつまで取るか問題”は、結構飲食店側にあるんですよね、忙しいふりもできるし。
西井 そうですよね。
宮下 大野君のお店は席数が8だったらそれが絶対起きてきて、バランスが難しいですよね。
暇なのはいやだけれど、忙しく見せたい感じも多分あるだろうし。
大野 そうですね、ただ先ほどおっしゃっていたネタバレに関しては、僕は別にいいんじゃないかなと思っているんですよ。
正直、料理の写真を撮っていただいて広まっても、それは見ただけで、「食べたらこんなに美味しいの!?」という、それを与えられなかったら僕らの力不足だと思います。
お鮨なんてもろそうじゃないですか。イノベーティブ系のお店にしても。
宮下 お客さんをこちらが基本的には選べないという前提の中で、そこのフィルタリングは難しいなというのは、やっていてすごく思います。
うちは今、8〜9割ぐらいが海外のゲストです。
西井 ちなみに海外のゲストに関してはどうですか? 問題は起きないですか?
宮下 全然問題はないですね。
西井 日本人のほうが問題が起きます?
宮下 日本人も全然起きないです。
海外の人にはGoogleがすごい強いんですよ。
レストランに食べに行っても、合う合わないって絶対人にはあるじゃないですか。
こちらに非があることは非があるし、合わなかったという意見は受け入れるしかないなぐらいなんですけどね。
民主化と大衆化、そうですね、民主化って難しいですよね。
榊 Googleが強いというのは、Google予約が多いということですか?
宮下 Googleでのレビューを、海外の人はめちゃくちゃ見ますね。
予約の取れない店の席をおさえるテク
西井 OMAKASEはお店側からお客さんを評価する仕組みになっていますよね。
ハセマコ 食べ手レベルね。
西井 はい。だからそういう意味だと、ある程度お店自体が連携してお客さんを実はレビューしていて、こういう人には来てほしくないみたいなことができると聞いたのですが。
山本 そうですね、OMAKASEの場合は、レストランが予約枠をグレードに合わせて開放できます。
なので、予約の取れないお店はどう予約を取ったらいいですかと聞かれた時によくする話ですけれども、お店に行った時に覚えてもらうことがすごく大事です。
その時にあらかじめOMAKASEの開放枠を出しているお店だとか知っておくと、それをちょっと狙っていくわけではないけれども、いきなり言ってはダメですが、途中途中で仲良くなりつつ、一般の枠ではなくて常連枠などの枠を開放していただけるように話していくというのは、一つのテクとしてあるのかなと思います。
西井 確かにそうですよね。
時々OMAKASEで、本当に何回クリックしても予約できないんですよという話を聞くと、多分この人、悪いことしたなって、僕は途中で思ってしまいます。
山本 (笑)
西井 多分裏側でありますよね。暴れたとか。
山本 ありますね。ブロックじゃないですけれど、多分そういうことはあるでしょうね。
盛り上がったシーズン9、シーズン10も乞うご期待
榊 皆さん、大変盛り上がったところですが、ちょうどですね、西井さんのシェフの名言シリーズの前にお時間が。
(一同笑)
西井 (笑)。絶対狙ってましたよね。
榊 いや、もう本当にお話しいただきたいんですけど、もう、ほら、時間が。
西井 分かりました。じゃあ次回ということで。
榊 最後、せっかくシーズン9まで来たので、美食道について山本さんから一言ずつお願いします。
山本 ありがとうございます。
本当に私にとって美食とはすごく人生の幅を広げてくれたもので、趣味ということもありますけれども、本当にライフワークになっているなと感じています。
ありがとうございます。
宮下 僕はこのセッションはいつも本当に勉強になっている感じですけれど、みんなどんなにお金を持っても、最後に使っているものは食だなという人が多いので、楽しく僕もご飯を食べていきたいなと思います。
次回もうちょっと会場の人が増えているかもしれないし、登壇者側もまた増えているかもしれないので、また次回楽しみましょう。
長谷川 先ほどの大衆化の話でいくと、僕もその辺りのコンテンツは1回まとめようかなと思っていた部分があって、切り口は変わるかもしれませんが、シーズン10で用意しようかなと思っていますので、乞うご期待ということで、本日はお付き合いいただきましてありがとうございました。
西井 僕はバックパッカーっぽい人が増えてきて、嬉しいなと思った回でした。
ありがとうございました。
大野 今日はありがとうございました。
現役の料理人としてやっている中で、ITによる美食の民主化は嬉しいことです。
僕が食べに行ったお店をInstagramに上げ始めたのは自慢ではなく、今は多分皆さんご存知ですけれど、僕が料理を始めた頃は自分の周りで、ジョエル・ロブションやカンテサンスを知っている人がいなかったんですよ。
本当に食べるのが好きな人しか知りませんでした。
それが、ドキュメンタリーなどで、色々な方がこういう世界があるんだなと感じていただけるだけで僕は嬉しいので、そうやって食べるのがお好きな方が増えるのは、個人的に料理をしていて楽しいです。
ありがとうございました。
榊 皆さん、どうもありがとうございました。
では改めまして、5名の美食家の皆様に拍手を頂いて終了とさせていただきます。
ありがとうございました。
(終)
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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成