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「大学の研究から大きなインパクトのある事業を生み出すには?」【F17-5D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!11回シリーズ(その9)は、研究していた立場から、ベンチャー経営者になった後の、役割や時間の使い方などについて登壇者同士、議論しました。是非御覧ください。
ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2017年2月21〜23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 5D
大学の研究から大きなインパクトのある事業を生み出すには?
(スピーカー)
出雲 充
株式会社ユーグレナ
代表取締役社長
大西 啓介
株式会社ナビタイムジャパン
代表取締役社長 兼 CEO
中村 友哉
株式会社アクセルスペース
代表取締役
福田 真嗣
株式会社メタジェン
代表取締役社長CEO
(モデレーター)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役
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最初の記事
【新】大学の研究から事業を創る-研究開発型ベンチャーの経営者たちが徹底議論【F17-5D #1】
1つ前の記事
研究で創りたいものと社会ニーズのマッチングをどう考えるか?【F17-5D #8】
本編
小林 中村さん、何か皆さんに聞きたいことはありませんか?
出雲 その前に、コンステレーション計画、これはニーズがあってなのか、エンジニアとして自分の中から出てきたものなのかを聞きましょう。
▶編集注:コンステレーション計画とは、NASA(米国航空宇宙局)が進めていた宇宙開発計画。2004年にブッシュ大統領が発表。2010年のスペースシャトル計画終了後、旧来のロケット技術によるアレスを使って有人探査機オリオンなどを打ち上げ、月や火星の探査を行うとしていた。2010年2月、開発の遅れやコスト超過によりオバマ大統領が中止を発表した。(デジタル大辞泉)
中村 大学発ベンチャーの人というのは、よく分からないけれど自信がある、という人が多いのではないかと思っているのですが、私も6年間衛星を作って、これは来るなと勝手に思っていたわけです。
なぜ皆、人工衛星ビジネスをやらずにどこか違うところに行くのだろうかと、不思議に感じていました。他の人たちはビジネスにならないと考えていたのだと思いますが、そういう思い込みから始まっているわけです。
実際にやってみたら、「これはヤバい」とあっという間に気付くわけですが(笑)。
最初、ウェザーニューズ社という取引先が見つかって非常にラッキーでした。
しかし、これからこうした取引先が1年で5社、10社増えていくだろうと思っていたところ、そうそう都合よく回るものではないということが分かってきました。
5年くらい経って、これはピボットしないとだめだと、正直思いました。
生きていくだけならば何とかなりそうという感覚はあったのですが、やはりベンチャーとして、その状態ではだめだと思い直しました。
押しつけがましく、自分たちの持っている技術、シーズを「お前ら使えよ」というようなノリでやっていたところも最初はあったと思います。
しかし、最終的にそれがニーズとマッチしないとビジネスにはなりません。自分たちが持っているシーズをどのようにニーズにマッチさせていくのかということを真剣に考え始めるようになりました。
そうした時にようやく気付いたんです。皆は別に衛星が欲しいわけではないのだということに。
小林 そうですよね。
マーケットがあるか?ではなく、創るか創らないか
中村 アラブの王様だったら別かもしれませんが。
「5億か、よし買うか」というような流れを想定していたわけですね。
(会場笑)
しかし実はそうじゃなかった(笑)。
なぜ衛星を使う人がいるのかというと、それはやはり衛星でないとできないことがあるからですよね。
要は、マーケットがあるかないかではなくて、創らなくてはならないということです。
誰もやっていませんからね。
それを一生懸命、地道にいろいろな企業を回って、話を聞いて、ビジネスモデルを作っていって、資金調達をしたわけです。
ですので、最初は何というか、勘違いから始まって会社を創ってしまったのですが、長くやっていくためには、ニーズに近づけていく努力がどうしても必要になってくるのだということは、本当にここ数年強く感じているところです。
小林 ありがとうございます。
大西さん、何か感想などはありますか?
40代になるまで社会の仕組みは分からない
大西 先ほどのセッション(ICC FUKUOKA 2017 Session3D:今、宇宙ビジネスが激アツだ。注目宇宙ベンチャー大集合!)を聞いていても感じましたが、衛星そのものが売れるだろうというニーズ予測から始まって、投資を受けたり、どのようなビジネスモデルが世の中で成り立つのかということを考えながら、常に進化していますよね。
これがやはり本来、本当のベンチャーの成長なのではないかなと思うんですよ。
何だか分からないけれど、これでいけるのかなとか、もし違ったとしても、やっていく間に社会人として成長していきますし、世の中の仕組みが分かってきます。
私の考えでは、40代にならないとなかなか世の中の仕組みは分からないのではないかと思うので、30代までは壁にぶつかりながらがむしゃらに進んでいけばいいのではないかと思います。
出雲さんもまだお若いですけれど、いかがでしょうか。
大西 出雲さんに壁はないでしょうか?
出雲 いやいや壁だらけですよ。
福田 大学発ベンチャーですと、よくPh.D(博士号)を取得して、自分はこれが重要だと思っているものの、社会のニーズとどうマッチさせるかという面で、ある意味少し折れなければならないところ、考え方を変えなくてはならないところが恐らく出てくるのではないかなと思います。
そこを上手に乗り越えるために何をしたらよいのか、どのように乗り越えてきたのかをお伺いしたいなと思います。
小林 いい質問ですね。
エンジニアの仕事から離れると、社会のニーズに目が向いた
中村 乗り越えるといいますか、私はもともとエンジニアで衛星を作っていたわけです。
ですから、5年くらいはずっとエンジニアをやっていたんですね。経営の仕事もしながらエンジニアをやっていました。
人数も増えてきて、ある時、自分はエンジニアをやっていてはだめだなと思うようになりました。
ありたがいことに自分より優秀な人がたくさん入ってきてくれたので、自分のそれまでの仕事は彼らに任せることができるようになりました。それで、経営に100%自分の時間を使うようになって、その時に改めて考えたんです。
なぜこれをやりたかったんだっけ、と。
それまではエンジニアも兼任していたので、目の前の仕事をやるのに精一杯で、なかなかそのようなことを考える余裕がありませんでした。
自分勝手な意見とはいえ、衛星を使ってもらいたいというのがモチベーションのベースにあったんだよなと思いました。
なかなか衛星を買う為の5億円を出してくれる人がいない中で、エンジニアから離れたことで、どのようにしたら使ってもらえるのだろう、衛星をいろいろな企業のニーズにどのように近づけていけばいいかを考え始めるきっかけになりました。
福田 そのためには、実用化という言葉一つをとっても、それは単純に開発者の思いだけでなくて、きちんと社会と開発者の思いの両方が行き来できるような形になって初めて実用化につながるということですよね。
中村 そうですね。
小林 大西さんも昔は研究者だったと思うのですが、今は経営に専念されているのですか?研究もされているのですか?
大西 プログラムを作らずとも、アルゴリズムやサービスの研究はできますよね。
よく、研究者から始めて経営者になって違和感がありませんか、心構えなどが変わったりしましたかと聞かれるのですが、分からないんですよね。
私の感覚でいくと、サービスの研究も開発も、アルゴリズムの開発も、経営も、何が本当に本質的に正しいのかということを考えているだけで、頭の中で今日はこのアルゴリズム、今日は経営というようには分けられません。
何が本質的に正しいのかということを考えていれば、特に「今日は研究」などと考えなくてもいいのではないかと思います。
小林 出雲さんの頭の中はどうなっているのでしょうか。経営者として。
出雲 もう少し…………具体的な質問をしてもらえませんか??
(会場笑)
急にふわっと、そんな、「ミドリムシだからもういいや」みたいな扱いでなくて……もう少しヒントをください!
小林 いやいや(笑)。
ユーグレナという会社の経営者でもあり、ミドリムシのエバンジェリストでもあり、もともと大学では研究をされていた中で、ご自身のリソースの配分はどのようにされていますか?
時間の配分なのか、頭の配分なのか分かりませんが。
今も研究は鈴木さん(株式会社ユーグレナ取締役研究開発担当)と一緒に考えながらやられているとか、いろいろあると思うのですが。
行動の質よりも量が重要
出雲 時間の配分について、これが直接のお答えになっているか分かりませんが、私の場合、まず一つだけルールがあるとしたら、量が重要だということです。
質と量が必ず対立するわけです。
こちらの方がクオリティが高いだとか、こちらの方が量が多い少ないという話になるのですが、とにかく、ノータイムでそのプライオリティを決めておくんです。
量の方が、私にとっては重要なんです。
これはあくまでプライベートな信念ですが、皆同じ人間なわけです。
毎回同じ喩えで恐縮ですが、同じ染色体、23セット46本の染色体に30億の塩基配列が載っていて、99ポイント、その9の7乗まで同じ遺伝子を持っているわけですから、結果として、いくら多様だ、多様だと言ったところで、今日ここには身長が150メートルの人も、150ミリメートルの人も、一人もいません。
人間ができること、人間が行うことのクオリティに関して言えば、私は人間国宝でない限り、クオリティということを口にしてはならないと思っているんです。
そんなに大した差はないと。
ただ、ボリューム、量は明らかに違うんですよね。
10回頑張った人と、100回トライした人と、1回目がなかった人というのは、ノウハウやエクスペリエンスが全く違います。
ですから私は、やる前に、これは効率がいいかなというようにシミュレーションをしたり、例えば時間をどのように配分したらいいのかということを、考えるのが嫌なんです。
なので、例でお答えすると、私のメールアドレスというかメールボックスは受信ボックスしかありません。
受信トレイと、下書きと、ゴミ箱だけです。
人によっては、フォルダーがすごく分かれていて、メーリングリストなどで階層がツリー状になっているなど、とてもお洒落で、かっこいいメーラーを使いこなしている方もいらっしゃいます。
それはそれで、頭の考え方にどのようにフィットしているかどうかの方が重要ですから、優劣をつけられるものではないと思いますが、自分にとっては受信トレーは一つです。
これは重要だから後でしっかり考えてから結論を出そうだとか、これはあまり重要でないとか、そのように優先順位をつけること自体の時間が一番無駄というか、もったいないと思っています。
ですので、どんなに難しい課題であったとしても、どんなに簡単なことであったとしても、順番にその場で真剣に、検討するものは検討します。
絶対に後回しにしません。
その場でパっと決めて、こういう風にやろうと。
それが間違っていたら、例えば、全然上手くいきませんでしたというメールの返事が来たとしたら、「これが正解じゃないということが分かってよかったね、ではもう1回やろう」と。
そんなこと自分でやれよと皆さん思っていると思いますが、私も自分でできる作業は自分でやります。自分で試してみてからそのように言うようにしています。
直接のお答えになっているかどうかは別として、こういうシチュエーションの時には、こういう対応をしたらいいなというようなことは、全く考えていません。
とにかくどのような時でも、インカミングの順番で、とにかく100%、その場で最大限、自分として努力して決めるということを必ず優先するようにしています。
小林 ありがとうございます。
(続)
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続きは 日本の研究者がもっと起業するようになるには? をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/鈴木ファストアーベント 理恵
【編集部コメント】
ICC小林は出雲さんとこれまで何度も一緒に登壇しており、ユーグレナマニアになっているため、遂に質問が凄く高い抽象度になってしまったのかと思われます(榎戸)
続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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