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「企業の『成長痛』と人材育成」【K17-7C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!7回シリーズ(その4)は、FiNC溝口さんを中心に、仕組み・制度の位置づけなどについて議論しました。時代の変化についての言及も示唆深いです。是非御覧ください。
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ICCカンファレンス KYOTO 2017のプラチナ・スポンサーとして、株式会社リクルートマネジメントソリューションズ様に本セッションをサポート頂きました。
ICCサミットは新産業のトップリーダー600名以上が集結する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
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【登壇者情報】
2017年9月5日・6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 7C
企業の「成長痛」と人材育成
Supported by 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
(スピーカー)
伊藤 羊一
ヤフー株式会社
コーポレートエバンジェリスト
Yahoo!アカデミア 学長
溝口 勇児
株式会社FiNC
代表取締役社長 CEO
吉田 大成
株式会社エブリー
代表取締役
(モデレーター)
天野 徹
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
シニアコンサルタント
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最初の記事
【新】企業の「成長痛」と人材育成【K17-7C #1】
1つ前の記事
マネジメント経験を通じた“気づき”によってしか人は成長しない【K17-7C #3】
本編
天野 溝口さんのところはどのような形で育成や教育をやっていますか。
溝口 まず育成をお話する前に、前提としてどういう角度で成長を目指す会社なのか、によると思っています。
ある程度緩やかな角度での成長を目指すのであれば育成が機能すると思う一方で、急角度での成長を目指す場合は、90%は採用によるものだと思います。
我々の場合は、分かりやすいベンチャービジネスでスピードが求められる領域ですから急角度の成長を目指す会社です。我々が心がけているのは、往々にしてその役割を全うする上で、足りない力を仕組みや制度で補うことです。
仕組み・制度で足りない力を補う
溝口 例えば100の能力が必要な部署や業務といったものがあったとした時に、多くの場合は50、60或いは70くらいの能力しか持っていませんが、それをどうやって仕組みや制度で補うかという考え方をします。
大きな会社であれば人事制度をお持ちだと思いますが、人事制度が全くない企業では、マネジメントができるかどうかというのは、属人度が高いはずですよね。
伊藤さんや吉田さんはすごく優秀なマネージャーだと思いますが、部下の顔を見た時に皆さんは頭の中で「この顔色は大丈夫か、まずいか」ということを考えると思います。
それには膨大な経験値に伴う勘が働いているわけですよね。
直近の業務量がどれくらいで、どのプロジェクトにアサインされていて、場合によっては給与はいくらぐらい貰っていて、どんな評価をされていて、直属の部下やパートナーは誰なのか、そして家族構成や通勤時間、子どもは小さいのか等色んなものを複合的に見た上で部下の顔色を見て、「ちょっとやばそうだな、話を聞いてみようか」といったような判断をするわけです。
それを果たして「育成できるのか」ということだと思います。
さらに、現在は世の中が複雑になって、マネージャーの能力が、人心を掌握する・リーダーシップを発揮して引き連れていくというものだけでは通用しないということがあります。
マネジメント自体が非常に能力が高くないと成立しない。
例えば、事業部がミッションやビジョンを実現する上でテクノロジーの理解がないといけないとか、更にいわゆる時代の変化を見極めて、場合によっては法務や税務、会計等ファイナンスの知識を持ち、理解しなければ役割を全うできないとなると、ハードルが高いですよね。
ですから、そういった要素を全て一人の人が満たすという状態は非現実的だと思っています。
足りていないところをどうやって補うか、50の能力しかなくても残りの50を組織の制度や仕組みで埋めるということを考えていくことが非常に大切だと思って、今取り組んでいます。
天野 フォローの仕組みをどんどん作っていくという形ですか。
溝口 例えば、権限委譲は簡単に語られますが、権限委譲できるかどうかというのは相手の成熟度によって決まるはずです。
ですから100の業務能力に対して50の能力しか持っていない人に権限委譲すると達成率は50%になる可能性が高いので、その残りの50を埋めにいくマネジメントをしないといけないわけです。
ただ工数的に上司が介入できないということがあるので、その場合は責任委譲をするために人事制度や評価制度をおいています。
また、先程吉田さんから話があったOKR(Objective Key Result)を設定してちゃんと明文化し、「あなたのJob Descriptionはこうで、これをちゃんと全うしなければ評価しません、あるいは給与を下げます」ということになりますよね。
これらを仕組みとして設定しなければいけませんが、冒頭でもお話したようにここで採用の重要性が出てきます。
ベンチャー企業の問題は、これらの仕組みを仮に設定できたとしても、採用力が乏しければパフォーマンスが発揮出来ていない人をリプレイスできないということです。
急拡大を目指す場合、そのパフォーマンスに合わない人はリプレイスすることが組織全体のパフォーマンスを上げていく上では当然求められていきますが、そこができない場合が多い。
僕自身は組織として、特にベンチャービジネスにおいては一番は育成力よりも採用力が重要、そして仕組みを作ることが結果として育成にもなるといった考えを持っています。
天野 採用力を高めることで育成力も上がっていくのではないか、その上で人をどう採っていくか、そしてある一定の代謝はやむを得ずという考え方ですね。
先ほど言った、50%の能力の人が成長するということもありえますよね。
この辺のところの打ち手として何か取り組まれていますか。
溝口 制度を作るというのは、言葉を変えると、「あなたの役割はこれです」という共通言語を作ることだと思います。
そして人事評価は、定点で「あなたは今ここにいます」ということをきちんとフィードバックし、更に、「求められているレベルに到達するには、ここをクリアする必要がある」ということをフィードバックすることです。
ポテンシャルの高い人材であれば、そのフィードバックを受けてあと3ヶ月、半年頑張ると思いますが、逆にそこで自走せず、人から指示を受けなければ成長できないような人材の場合、それは残念ながら急拡大を目指す会社のマネジメントの役割は担えないと思っています。
ですからそこを正しく、そして厳しく、責任と権限をセットで設定してあげることが、伸びる人材にとっては育成に繋がると思っています。
天野 そこを明確にフィードバックすることが育成の原動力になっていく、という考えですね。
そういう意味では自律性や自ら育つ力がベンチャーの中ではすごく大事なんですかね。
溝口 (伊藤さんと吉田さんの)お二人は育成されている感じは絶対ないですよね(笑)
吉田 「育成してあげてるよ」という気はないですが。
短期的には”意味がない”ことも経験する機会を与える
吉田 機会をどれだけ与えるかということと、自分自身が成長していくのに何が足りてないかということを目の前にちゃんと提示してあげることが何よりも大事だと思っています。
これは組織の作り方や考え方、そして会社によって違うと思いますが、僕等がやっている動画メディアのビジネスは新しくできた領域なので、ネットでの動画メディアと更にデジタルで動画広告の経験者というのは業界内にそんなにいません。
そうなると、採用はもちろん大事ですが、下から引き上げていくということも重要で、その両方をやらなければいけません。
下から引き上げるにしても採用してくるにしても結局キャッチアップが必要ですが、新しい領域なので、例えばメディアの運営の仕方も知っていて広告の知識もあり、更に組織も作れてといったように求められるスキルセットがすごく多くなってしまっています。
“昭和時代”は1つの職種、営業なら営業スキルだけを極めていくような育成の仕方でしたが、今は周辺知識も持っていなければいけないし、専門スキルも1つだけではなく、複数持っていないといけないんですよね。
そうすると、短期的な事業成長もすごく大事ですが、長期的に考えた場合、その人にとって短期的には意味がないこともわざとやらせていかないといけない。
今100人ぐらいの組織ですがそれが200人になり、複数の事業や組織を見るとなった時に見れる人がいなくなってしまうので、意図的に”無理をやらせる”という感じにはなっていますね。
天野 今の状態を明確にした上で、深く広く経験してもらう事で、将来事業を担う人材を人材を育成するということですかね。
吉田 そうですね、求められるスキルが複数になりすぎてしまっているのが今の時代だと思っているので、あれもこれも知識つけてくださいというのは本当に難しいと思います。
このカンファレンスにいらっしゃるような、自分で会社を作ったような方は、小規模の時から管理部門も事業部もない中で全部やってきたので、必然と色々な知識がついていると思いますが、途中で入ってきた方はそうではないので、それをつける癖を付けていかないと厳しいと思っています。
溝口 それに関して、完全に同意です。
こういった場所で語られる組織論はかなり普遍的で、10年前、20年前と変わらないものだと思いますが、こういった変化のないものは、テクノロジーに置き換えやすいんですよね。
リクルートマネジメントソリューションズさんやリンクアンドモチベーションさんのサービス等もそうですが、今HRTechによって、今まで属人的だったものが明文化されていています。
一方で、例えば、私は昨日吉田さんがご登壇したマーケティングのセッションを聴いていましたが、やはり過去にマーケティングをしていた時と今とでは違います。
この局面の変化を捉えて柔軟に適応していくというところに関しては、なかなかテクノロジーに置き換えづらく、ある程度属人的にならざるを得ません。
変化に適応しなければいけないところにおいてはそれに適用できる人材を置き、一方でそういう人達が全て人事や組織について明るいわけではないので、そこをテクノロジーでカバーしていく、あるいは制度や仕組みでカバーしていくということが、特にインターネットの世界では非常に求められれるのではないかと思います。
天野 仕組みがありながらも、人でないと対応出来ない部分をどれだけ広げていくか、ということですか。
吉田 そうですね。このカリキュラムをやれば終わりですということはないということですよね。
伊藤 マネジメントを「変化への適応力」と考えると、それは学べるわけじゃないので経験するしかないということになりますよね。
c(続)
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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/城山 ゆかり
【編集部コメント】
フィードバックの機会を仕組みにしていくと、今度は「フィードバックをする力」が重要になってきそうですね。これも明文化されていく(もしくはされている)のだと思いますが(立花)
続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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