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ICCサミット FUKUOKA 2019の高評価セッション「組織のWell-beingとは何か?」を全9回シリーズでお届けします。(その1)では、石川善樹さんが社会科学の基本とともに、本セッションのテーマ「Well-being」を構成する2つの概念を解説します。恋人との楽しいデートは「最後」が肝心? ぜひご注目ください!
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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2020は、2020年2月17日〜20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。
本ッションは、ICCサミット FUKUOKA 2019 プラチナ・スポンサーのネオキャリア様にサポート頂きました。
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【登壇者情報】
2019年2月19-21日
ICCサミット FUKUOKA 2019
Session 6F
組織のWell-beingとは何か?
Supported by ネオキャリア
(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者
小林 正忠
楽天株式会社
Co-Founder and Chief Well-being Officer
柴田 紳
株式会社ネットプロテクションズ
代表取締役社長 CEO
羽田 幸広
株式会社LIFULL
執行役員 Chief People Officer
森山 和彦
株式会社CRAZY
代表取締役社長
(モデレーター)
中竹 竜二
(公財)日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター /
株式会社チームボックス 代表取締役
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▶「組織のWell-beingとは何か?」の配信済み記事一覧
本編
中竹 竜二さん(以下、中竹) 皆さんおはようございます、よろしくお願いいたします。
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中竹 竜二
(公財)日本ラグビーフットボール協会 コーチングディレクター /
株式会社チームボックス 代表取締役
1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇を果たす。2010年、日本ラグビー協会 「コーチのコーチ」、指導者を指導する立場であるコーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチも兼務。その他に、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックス、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapanを設立し代表を務める。著書に『新版 リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス)など多数。
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大盛況で満員御礼!盛り上がって嬉しいですね(笑)。
本セッションでは「組織のWell-being」について話していきますが、この「Well-being」とは言葉は、日本ではまだまだ浸透してない言葉です。
そこでまずは、アカデミアの世界にいらっしゃる石川さんにこの言葉について説明をしていただき、その後、議論を始めたいと思います。
それでは石川さん、よろしくお願いします。
石川善樹さんが解説「社会科学の基本とは何か?」
石川 善樹さん(以下、石川) よろしくお願いします。
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石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者
1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。「人がよりよく生きるとは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。 専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など。近著に「問い続ける力」(ちくま新書)など。
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Well-beingについてお話しする前に、皆さんと基本の考え方を共有したいと思います。
僕たち研究者は、「◯◯とは何か?」と問うことが多いです。
一方で、「グーグルでは…」「シリコンバレーでは…」というように、“では”で話す人がいます。
“では”というのは、良いものを右から左に持ってくる、という発想です。
それに対して“とは”で話す人は、外部で起こっている物事の情報をあまり収集せず、自分だけで「◯◯とは何か?」と考えるタイプです。
外部の情報を収集しないのは、それらに影響される可能性があるからです。
僕は人や社会・組織を対象とした社会科学分野の研究をしていますが、社会科学研究でまず行うことは、「現象の発見」です。
例えば、「ものすごく頭の良い人」とそうではない人、「糖尿病に罹った人」とそうではない人、「繁栄している社会」とそうではない社会、などを見つけて研究をします。
本セッションのテーマとなるWell-beingに関しては、例えばこちらの「Very Happy People」についての研究があります。
この研究が対象とするのは、ただHappyな人々ではなく、“Very Happy”な人々です。
僕が知る限り、これは最も短い論文タイトルです(笑)。
▶Diener E & Seligman ME:Very Happy People, Psychol Sci, 13:81-84, 2002
そして、研究者が現象を見つけた後に取り組むのは、その現象を説明するモデルを作ることです。
この「モデル」を別の言葉で言い換えると、「最小の情報で最大を説明したもの」となります。
中竹 そういう意味があるのですね、勉強になります。
石川 「最大」というのがポイントです。
社会科学は人や社会を相手にしているので、物理学などと違って全ての物事を説明することはできません。
しかし説明する要因が多すぎても困るので、最小の情報で最大を説明しようとするのです。
モデルができると、今度は「モデルに当てはまらない現象」を探します。
そうした例外を見つけて、さらにモデルに組み込みます。
このように、「現象」と「モデル」を常に行き来しているのです。
「モデル」はどのように記述されるか?
石川 ビジネスやスポーツの現場では、ある組織で起こったことを別の組織にそのまま適用できることは多くはありません。
そのため、私たちは「これは、うちの組織には当てはまらない」というように共通項よりも違いに着目してしまいがちです。
一方、研究者はなるべく共通項を見つけようとします。
組織は一つひとつ違うので、独自の対策や測定方法が必要なのでしょうが、それらを全て研究しているとキリがありません。
ですから、研究者としては「共通するモデルが何かあるだろう」という信念のもと研究を行うのです。
では、モデルをどのように記述するかというと、例えば「こういう組織っていいよね」と思われる像があったとします。
ここに書いている通り、健康で、生産性や創造性が高く、人間関係のよい組織だといいですよね。
こうした要素をたくさん集めたら、次にそれらに共通する概念を見つけます。
例えば、それはモチベーションやインセンティブかもしれません。
そして、これに対し個人、マネージャー、組織として何をするかという情報が加わって、モデルとなります。
ですから、ここで研究者が行うことは「“よい組織”を最も説明できる概念が何か」を探ることです。
言い換えると、その概念を提案した人が偉い。
では、どのような概念が「よい概念」なのか。
優れた概念は、測定・操作可能で、広範な影響力をもつ
石川 その特徴として、まずは測定可能であることが挙げられます。
測定可能でなければ、改善しようがないからです。
逆に言えば、改善しようとするならば測定せよ、ということですね。
2つ目は操作可能であること。
例えば、「性格が重要である」「人の考えが重要である」という概念が出来上がったとしても、性格は変えられないですし、人の考えを変えるのは非常に難しいです。
ですから、簡単に操作可能でなければ、意味がありません。
中竹 コントローラブルであり、コーチャブルであるということですね。
石川 仰る通りです。
そして3つ目が一番大事なのですが、広範囲な影響力を持つことですね。
健康だけに効果がある、生産性にだけ影響がある、だけでは意味がないのです。
色々な要素に影響する概念でなければいけないということです。
中竹 これだけでも、かなり勉強になりますね。
石川 以上が社会科学の基本です。
Well-beingを構成する2つの概念:「評価」と「体験」
石川 そして、Well-beingについて結論から言うと、Well-beingは次のスライドの右側に書いているような、色々なことに影響することが分かってきたのです。
このWell-beingは、次のスライドの中央に示した2つの概念で構成されます。
「評価」と「体験」です。
これだけ聞くと、はぁ……という感じかと思いますので、1つずつ説明させてください。
まず、心理学の分野では「体験」と「評価」は全く別物だとされています。
例えば、ある日デートをして、朝からずっと楽しかったとします。
でも最後の3分で大ゲンカをすると、体験としては一日すごく楽しかったはずなのに、そのデートの評価は最悪になります。
ユーザーエクスペリエンス(User Experience)とユーザーエヴァリュエーション(User Evaluation)が違う、ということですね。
このように「評価」は、最後の体験、つまり最後に何が起きたのかに影響されます。
最近よくあるeNPS(employee net promotor score)は、自分の職場を0点〜10点で「評価」するものです。
一方の「体験」に関していうと、組織心理学や組織行動学では、次のスライドに書かれた10項目を聞かれることになっています。
出典:『Assessing Well-Being: The Collected Works of Ed Diener』(Ed Diener Ed.), Springer, 2009
先ほど「よい概念の特徴は、操作可能であること」と説明しました。
「評価」というのは操作しようがありません、人が頭の中でどう考えるかということですから。その代わりに、比較的操作がしやすい「体験」をヒアリングします。
この10個の体験は、非常に念入りに抽出されています。
例えば、この中に「幸せですか?」というような問いは含まれていません。
中竹 それはなぜでしょうか?
石川 「幸せかどうか」は国際標準になり得ないからです。
幸せという感覚は、国によって閾値が違います。
例えばアメリカ人は、すぐに幸せだと感じます。
もしここに何人かアメリカ人が座っていたら、きっと誰かは“I’m happy to be here.”と表現するでしょう。
しかし日本人やドイツ人は、幸せという言葉をあまり使いません。
例えば中竹さんに「最近どう?」と聞いて、「いや~俺、幸せなんだよ」と言われると、ちょっとやばいことがあったのかなと思います。
(会場笑)
中竹 確かに使わないですね(笑)。
石川 ですから、文化的にあまり差異のない10項目が選ばれているのです。
Well-beingを高める「体験」をいかに設計するか?
石川 僕らは昨年、日本人のホワイトカラー1万人を対象にある調査をしたのですが、そこで、次の2つの体験が重要であるということが分かりました。
それは「敬意をもって接された」と「笑った」です。
出典:『Assessing Well-Being: The Collected Works of Ed Diener』(Ed Diener Ed.), Springer, 2009
他人から敬意をもって接されたかどうかと、雑談の中でよく笑う機会があったか、ですね。
加えて「よく眠れた」や「怒り」、また最近だと心理的安全性の重要さが謳われますが、「心配」も重要ではあります。
まとめると、日本の組織の場合は、eNPSの評価、笑うこと、敬意が大事です。
そしてコントロール可能な要因としては、評価については1日の終え方、その1日をどう終えるかのデザインをすることが重要です。
例えば結婚式では、最後に新婦から両親への手紙があるから、良い終わり方になりますよね(笑)。
「あー、疲れたー」と思いながら帰ってもらっては困るわけです。
笑うことについては、雑談をする機会がきちんとあるかどうか、敬意に関しては、信頼が大事です。
ちなみにここで言う、信頼と信用とは違います。
信用は、相手に対する理性的な判断です。
例えば、仕事ができる、準備がきちんとできるといった、能力に対する評価です。
一方で信頼というのは、相手との感情的な結びつき、人として大事にされている感覚が創り出します。
というわけで少し長くなりましたが、モデレーターの中竹さんにお戻しします。
中竹 ありがとうございました。この段階で、だいぶ整理されましたね。
(続)
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続きは 2.「私の仕事は、雑談をして、社員を幸せにすること」(楽天 Chief “Well-being” Officer 小林正忠さん) をご覧ください。
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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/戸田 秀成/大塚 幸
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