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ICC FUKUOKA 2023のセッション「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か? (シーズン9)」、全9回の⑧は、リモート参加の石川 善樹さんが登場。石川さんが人間を理解したい理由は、未来の人間に貢献したいからだと言います。「GDPが増えても途上国が繁栄できないのはなぜか」という問いから生まれた「人間開発指数」の鍵はWell-being。それにまつわる興味深いデータも紹介します。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは ノバセル です。
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【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 2F
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か? (シーズン9)
Supported by ノバセル
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▶「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か? (シーズン9)」の配信済み記事一覧
村上 (石川)善樹さんの出番がやってまいりました。
井上 また面白そうなのが出てきましたね。
未来への貢献の仕方は2つ
石川 人間を理解するこのシリーズですが、なぜ理解したいのかは、人それぞれ実は違うんじゃないかなと思います。
僕の場合は、貢献してなんぼなんじゃないかというところですね。
理屈として理解したいからだけではなくて、貢献したいからです。
未来にどう貢献するのかというときに、今、国際社会でコンセンサスが取れている貢献の仕方は2つしかありません。
GDP(国内総生産)による貢献か、今日の話である、HDI(Human Development Index、人間開発指数)による貢献です。
国際社会、特に国連などの文脈の中で重要な指標は、もうこの2つしかないのです。
生産者として資本主義の中でGDPに貢献するか、生産者でなく生活者として人をとらえて、HDIでいくのかという2つがあります。
GDPが増えても途上国が繁栄できないのはなぜか
石川 HDI、Human Development Indexを作ったのが、パキスタンのマブーブル・ハック先生です。
経済学者であり、パキスタンの財務省の大臣でもありました。
▶マブーブル・ハック (1934-1998)(Webcat Plus)
彼の根本の疑問は、なぜこれだけ経済的に発展しても、GDP上発展しても、途上国は繁栄できないのか?でした。
それは生活者の、人間のベーシックな開発を忘れているからだということで、GDPは要は収入の増加みたいな話ですが、Well-beingの観点から人間開発指数(HDI)を作りました。
▶人間開発とは(国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所)
ハック先生は、GDPだけじゃないよねというので具体的に指標を作り、しかもそれを国際的に認めさせたすごい人です。
未来への貢献の仕方、人間開発指数は超簡単で、この3つからなっています。
「所得」はもちろん、「健康」と「教育」です。
この3つがどういう関係にあるのかがすごく大事です。
「人口学(デモグラフィ)」という学問分野がありますが、そこで有名な「プレストン曲線の上方シフト」という現象が知られています。
これは横軸が「GDP」で、縦軸が「平均寿命」です。
各国のGDPと平均寿命をプロットすると、こういうカーブになるのですけれども、3本の線は年代が違うんですね。
一番下の赤い線は1970年代、真ん中が1990年代、一番上が2010年代というふうに、不思議なことにGDPと平均寿命をプロットすると、年が最近になるほどに上に上がっていきます。
なぜ上に上がるのかは、人口学の謎だったりしたんですね。
それをルッツ(ヴォルフガング・ ルッツ)先生という革命児がやってきて、横軸にGDPを取っているのは違うんじゃないの?という話になったのです。
横軸を平均教育年数として、教育年数と平均寿命の関係を各国プロットすると、年代によらずきれいな曲線になるのです。
北川 なるほど!
村上 ほう!
人間開発のベースは教育
石川 ここから何が分かったかと言うと、人間開発においては教育がベースにあるのだということです。
教育が平均寿命に影響を与えるし、教育と所得、GDPみたいなものは相互に関係し合っているのですが、いずれにしろベースは教育だということになったんですね。
結局、人間を理解する、人類に貢献するときに、では教育で何を教えるのか?
(井上)浄さんが言うような研究の面白さということなのか?
この疑問はいろいろな人がいろいろな意見を言うのですが。
井上 これは難しいね。
石川 僕はこの問いは実は教育においては時代によって変わり過ぎるから、あまり議論してもしょうがないんじゃないかと思っています。
教育で「何をインプットするのか」ではなく、教育の結果「どういう人間になったのか」がすごく大事です。
教育の結果、一人ひとりがWell-beingを実感できる、そういうものになっているのかが大事なんじゃないかということです。
Well-being国別ランキング、驚きの結果とは
石川 Well-beingの実感って、今どうやってグローバルで測定しているかというと、このスライドにあるもので、10段階で自分の生活を自己評価するのですね。
あくまでもその人の基準で、10点から0点。
2問あって、「今の生活は何点ですか?」と「5年後の生活は何点ですか?」という問いです。
「今の生活は何点ですか?」と自己評価してもらうと、フィンランドやデンマークなど北欧がすごく上に来るんですね。
「5年後の生活は何点だと思いますか?」と聞くと、ランキングが一変します。
井上 やばい! へえ!
石川 これは何を意味しているかというと、今の生活に満足するかどうかと、将来の生活に希望があるかは、ちょっと構造が違うということなんですよね。
アジアだと台湾、シンガポール、フィリピンみたいなところが上位に来ます。
将来の生活の評価だと、モンゴルがすごい上のほうに来ていますね。
村上 はあ。
石川 これがデータの力なんですね。
こういうデータを見ると、「モンゴルで何が起こっているんだろう?」と興味が出てくるじゃないですか。
井上 出てくる!
石川 データって、人々の興味関心をシフトできるんですよ。
GDPランキングで見るとアメリカや中国が気になるのですが、Well-beingランキングで見ると、まだまだ世界から学べることが多いなということが分かってきます。
中村 なるほど、面白い。
井上 モンゴル、すごい。
日本は将来に対する希望が無さ過ぎる国
石川 これは2006年から2020年まで、いろいろな指標について、日本のランキングを見たものです。
一番上の平均寿命や健康寿命は、日本がずっと1位や2位です。
北川 最強ですね。
石川 よく日本の幸福度として報道されるのが、「今の生活に対する評価」のデータなんですけれども、調査を開始した2006年時点では世界27位だったのが、順調に落ちてきて今は61位くらいになっています。
しかし日本が本当に残念なのは、将来の生活に対する希望なんです。
調査開始時点では70位だったのが、リーマンショックや東日本大震災などいろいろなことで落ちて今世界122位で、日本は将来に対する希望が無さ過ぎる国、”絶望の国ニッポン”です。
(一同笑)
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成