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ICC FUKUOKA 2023のセッション「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か? (シーズン9)」、全9回の②は、このセッションに今回初参加の五島列島なかむらただし社中村 直史さんが登場。有名企業のコピーライティングを手掛けている中村さんは「自分とは何か?」を考えないほうがいいといいます。そして紹介するお吸い物の写真の意味とは? ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは ノバセル です。
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【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 2F
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か? (シーズン9)
Supported by ノバセル
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▶「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か? (シーズン9)」の配信済み記事一覧
シーズン9の刺客、コピーライター中村 直史さんのお仕事
村上 毎回定番メンバーに、「刺客」と呼ばれる新しい血を入れて議論を盛り上げているのですが、中村さん、ようこそ!
北川・井上 ようこそ、よろしくお願いします。
中村 直史さん(以下、中村)よろしくお願いします。
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中村 直史
株式会社五島列島なかむらただし社
代表/クリエーティブディレクター
クリエーティブディレクター/コピーライター 筑波大学卒業。 カリフォルニア州立大学(CSULA)大学院修士課程修了。 2000年電通入社。コピーライターとして多数の広告コミュニケーションに携わる。 独立後、2019年に「五島列島なかむらただし社」設立。 近年の仕事に、RIZAP「結果にコミットする」シリーズ/エビオス錠「弱るもんか!」キャンペーン/ANA Avatarinブランディング/資生堂Finetodayローンチ/YAMAP「地球とつながるよろこび」/長崎県「長崎ハーモニー」など。 「企業や地域の価値を再発見し、みんなのものにする」ことにトライし続けています。
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いや、もうなんでここに呼ばれたのか本当に分からないのですけれど、なぜかここに(笑)。
北川 我々が話を聴きたいから、呼ばれたんですよ。
中村 よろしくお願いします、本当に。
コピーライターをやっています中村と言います。
五島列島なかむらただし社という会社をやっていて、長崎県の五島列島に住んで、そこでコピーライターの仕事をしています。
誰も僕のことを知らないと思うので、やってきた仕事をちらっとお見せしますと、ライザップの「結果にコミットする。」だったり…
北川 あっ、そうなんですか!
中村 最近の仕事でいうと、資生堂さんから独立したエフティ資生堂(※前身は資生堂ファイントイレタリー)に、ファイントゥデイという社名を考えました。
井上 ファイントゥデイ、いいですね。
中村 あとはヤマップさん。
北川 そうなんですね!
中村 ヤマップの「地球とつながるよろこび。」というパーパスを。
北川 伝説のアプリじゃないですか。
中村 こういう企業さんの言葉づくりというものをやるのが、一応僕の仕事です。
北川 すごい。「地球とつながるよろこび。」を。
中村 この「地球とつながるよろこび。」は、今日のテーマでもあるので、ちょっと出させていただきました。
▶編集注:中村さんの最近のお仕事は公式HPの「してきたこと(最近の仕事)」に掲載されています。
「自分って何か?」は考えないほうがいい
中村 先ほど「自己を理解する」というタイトルがあって、「自分って何か?」という問いだと思いますが、はたと、すぐ思ったのは、こういうことは考えないほうがいいというのが、僕の基本的な考え方です。
北川 面白い!
村上 なるほど、セッションが終わりそうです(笑)。
北川 (笑)。
井上 終了ですね。
4日ぐらい前に食べた、あのお吸い物が今の自分!?
中村 「人間を理解する」とか「自分って何か?」というのは、もうとにかく考えちゃだめだというのがまず僕の考え方なんですが、でもそれだと話が終わってしまうので、最近このことをよく考えていますというのを、ちょっと出します。
それで、これが自分です。
これが自分ですというか、「今の自分」ですと。
これは何かというと、4日ぐらい前の、僕の五島での食卓なんですよ。
北川 美味しそう。
村上 めちゃめちゃ美味しそうですね。
中村 美味しそうですよね。
これは、五島では打ちガキと言うのですが、小さい小粒の牡蠣とアオサという海藻が入ったお吸い物なんですよ。
井上 これは絶対美味しい。
北川 めっちゃ手間がかかってますよね?
中村 あっ、手間は全然かかってないです。
ただ入れて、ちょっとお塩とかお酒とかを入れて煮ただけのものなので。
▶長島郷土料理!地牡蠣とあおさの吸い物(cookpad)
村上 下はお盆ですか?
中村 これはテーブルです。義母のうちで食べていて、これは義母の趣味ですね。
村上 素敵な細工が。
井上 そこ?
(一同笑)
昔は自分と周りの環境の境はゆるやかだった
中村 これが自分、これも、と言うべきなのか。
なぜこれが自分かといいますと、養老 孟司先生が、これは農村ということかもしれませんが、「昔の人は、自分と自分の家の前にある田んぼとの間に明確な境界ってなかったはずですよ」と、しょっちゅう言うんです。
北川 へえ、面白い。
中村 つまりそこの田んぼでできた米を食べて、自分はできているわけじゃないですか。
それが今よりも、もっともっとダイレクトな形でものを食べ、その土地と自分がどうつながっているのかがもっとダイレクトだったときは、普通「自分」と言ったら「自分の個体=自分」ですけれども、その自分と周りの環境の境はもっとゆるやかで、多分無かったということを養老先生は常々言っていて、めっちゃ僕はそれをそうだなと思うんですよ。
それがさっきの牡蠣とアオサの、僕が食べたお吸い物の話になるんですけれども。
「春の確約」とリンクする自分
中村 それを食べたから、あれが自分ですという物理的な話だけではなくて、これが打ちガキの風景なんです。
田舎のおばちゃんがこうやって小さい岩に付いた小さい牡蠣の殻を一個一個剥いで、そこから小粒の牡蠣を採るのは、1月の終わりぐらいの毎年の風景なんですよ。
▶味濃厚「磯ガキ」収穫 春、海の恵み 長崎・新上五島(長崎新聞)
北川 これは手間がかかるなあ……
中村 この次にアオサをお見せします。
▶アオサ採り解禁 五島の海岸では摘み取りの人たちでにぎわう(NHK)
北川 ああ、これも拾っているんだ。
村上 いいですねえ。
中村 僕は生まれも育ちも五島列島で、これは子どものときから見続けてきた視界の中にあった風景なんです。
アオサも、1月の終わりぐらいからなんです。
これを僕は「春の確約」と勝手に呼んでいるのですが、なぜかというと、1月の終わりってまだ全然寒いじゃないですか。
寒くて全然春が来る気配は感じないじゃないですか。
北川 うん、まだ。
中村 なのに、海の景色だけは変わるんですよ。
北川 へえ。
中村 岩ノリ、アオサがいっぱい付いて、こういうふうに青くなるんですよ。
北川 なるほどね。
井上 1月にですか?
中村 はい。1月の終わりぐらいから。
一番最初に春の景色が見られるのは、この海の、海藻なんですよ。そして、それを採りに来る人たち。
潮がいっぱい引く大潮のときしか採れないので、大潮の1月の終わりから2月の終わりに、この風景を目にしたとき、あっ、今年も春はちゃんと来るんだと、それを勝手に「春の確約」と呼んでいます。
自分をなるべく拡張させておきたい理由
中村 さっき言った、実際に食べたものが自分だから自分だという物理的なこと以外に、この風景を仮に春のシンボルだと言ったとしたときに、そのシンボリックなものにも自分を一体として、その季節のつながりの中でリンクしている。
というのがあるから、自分としてはこの島の自然全体を含めて自分だと言える自分でいたいなというのが、僕の結構なテーマなんです。
北川 いやぁ面白い。
中村 「自分の個体=自分」じゃなくて。
北川 でも、「will」も入っているのですね?「こうありたい」という思いも入っている、と。
中村 そうなんです。
なぜかというと、やっぱり養老先生が言ったみたいに、自分が採ったものを自分で食べるという昔の人と違って、今はダイレクトじゃないですよね。
自分の土地の中から採れたものだけで生きているわけではなくて、スーパーで買ってきたものやどこで採れたか分からないものを食べるし、季節の変化も昔からするとやっぱり感じづらくなっているかもしれないしという中で生きているから、そこを感じづらいのをやっぱりもっと感じて、自分をなるべく拡張させておきたいというのが、僕のwillとして入っているんですね。
北川 それはどこから来ているんですか? なぜ、そうありたいんですか?
中村 多分、死にたくない。
北川 ああ……
井上 ああ!
中村 これは死なないじゃないですか。
北川 死なない。
中村 僕は死ぬけど。
村上 毎年ずっと来る。
中村 毎年ずっと来るじゃないですか。
その中にずっとずっとあるもんだという感覚のほうが、死にたくないというのと、怖くない、安心。
(言葉を探して)要は……
井上 1人じゃないとか?
中村 あっ、そうそうそうそう、そういう感じなんですよ、多分。
井上 ああ、なんか分かってきましたよ。
北川 面白い。
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成