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「IBM BlueHubの取り組み」【K16-8F】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!4回シリーズ(その4)は、日本IBM大山さんに、独自のエコシステム「IBM BlueHub」の特徴と、日本IBM自身が本プログラムを通じてどう変わっていきたいかについてお話し頂きました。是非御覧ください。
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スタートアップビジネスの「エコシステム」を構築し、日本の起業家を支援するプログラム「IBM BlueHub」は、ICCカンファレンス KYOTO 2016をプラチナ・スポンサーとしてサポート頂きました。ICCカンファレンス FUKUOKA 2018も引き続きご支援頂くこととなりました。「IBM BlueHub」の詳細はこちらからご覧ください。
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【登壇者情報】
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016 「ICC SUMMIT」
Session 8F
IBM BlueHubの取り組み
(出演者)
大山 健司
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBM BlueHub Lead 事業開発担当
(聞き手)
坂本 達夫
AppLovin Corporation
Director Sales, Japan
竹内麻衣(ICC運営メンバー)
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最初の記事
【新】日本発のオープン・イノベーションを推進する「IBM BlueHub」とは?【K16-8F #1】
1つ前の記事
「IBM BlueHub」インキュベーション・プログラムに集う注目のベンチャー企業【K16-8F #2】
本編
地道にオープン・イノベーションを進めていく
坂本 BlueHub自体が始まってからそれほど日が経っていないかもしれませんが、これまでに日本IBMがインキュベーション支援をした会社で、コンサルティングやアドバイス等によって成長し、ある程度IBM社にも還元してくれているというような成功事例はもう出てきていますか?
大山 まだこれからですね。
第1期の企業でも、ジーンクエスト社などはそれなりにメジャーになってきていますし、セフリ社などでも弊社のクラウドを使ってくれていますが、実績が出てくると、BlueHubの国内だけではなくグローバルでもプレゼンスが上がって、いろいろなことができるようになると思いますが、まだ少し時間がかかりそうです。
坂本 大企業の中でインパクトを出すというのは結構大変なことですし、時間軸といったところでも、どこまで投資してもらえるか、我慢してもらえるかを考慮しなければならないと思います。
大山 そうですね。
それができるまでに、後2、3年はかかるのではないでしょうか。
坂本 それくらいの時間軸で、変に焦ることなく地道にやっていこうというスタンスでしょうか?
大山 その通りです。
業界内の企業を横串にしたビジネス創造
大山 ちなみに先ほどオープンイノベーション・プログラムというのを展開しているとお伝えしました。
自動車やヘルスケア業界をターゲットにスタートさせますが、これもなかなか面白い感じになってきています。
やはりスタートアップ1社に対する支援、あるいは大企業1社だけに対する支援ですと、なかなか裾野が広がりません。
例えば自動車業界ですと、車載器や部品メーカー、地図メーカー、保険会社、通信会社など、車に関係する企業に入ってもらって、各社がデータなどのリソースを提供し、スタートアップ企業と一緒に、ビジネスを考えていくことになります。幅広い材料があれば、考案できる事業/サービスの領域も広がることが期待できます。
竹内 ハッカソンのような感じでしょうか?
大山 ハッカソンよりも実業に近いといいますか、事業化を目指したプログラムとしています。
スタートアップも9社が決まっており、総勢15社が、3ヶ月ほどの期間で様々なディスカッションを行い、ビジネスアイデアを外部に対して公表する予定です。
これは自動車の例ですが、ヘルスケア分野でも同時並行でプログラムが走っています。
竹内 個別企業毎のチームを形成して進めるのでしょうか、それとも混合ですか?
大山 イメージとしては各社が提供するデータを使って、何か新しいサービスを創り出すということです。
スタートアップがビジネスアイデアを出す役割として入るのですが、1対1でというよりは、1対NまたはN対Nの組合せとなることもあると思います。
坂本 なるほど、参加している企業に対するサービスというのもあり得るということを示しているのですね。
大山 そうですね。
日本IBMはビジネス創造の場を作る旗振り役
これは、例えば保険会社などは契約者の情報はなかなか出せないといったハードルがあると思いますが、サービスを活用する側として考えられます。
実際に今テレマティクス保険など、自動車の走行データを使って保険料を算出するということが実業として出てきていますが、それに似たようなイメージですね。
これがヘルスケアの場合ですと、製薬会社や通信、医療機器メーカーなどが入っています。
坂本 それを日本IBM社が旗振り役としてやっていくということですか?
大山 そうです。
真ん中、円の部分を産み出す場を我々が作り、提供します。
今までもこのようなコンソーシアムというのはたくさんあったと思います。
関連する企業が集まって、「何か一緒にやれたらいいですね、ではまたの機会に」というような。
あるいはスタートアップにピッチをさせて、「面白いですね、では何かあったら」ということで終わっているケースが多いと思うのですが、そうではなく実際に事業化を目指し、そこで我々のテクノロジーを活用してもらうということを目指しています。
大手企業がオープン・イノベーションに本気になってきた
坂本 今までもそのような話が個別であったにもかかわらず上手くいかなかったから、「うちではこういう形なら上手くいくのではないか」というような仮説があってこの形を取られていらっしゃるのだと思いますが、これまでのオープン・イノベーションは、なぜ上手くいかなかったと考えていらっしゃいますか?
大山 企業側が本気になっていなかったからでしょうね。
スタートアップ側にも、大企業と一緒にやるとなると、二の次にされるというか、どうせ本腰を入れてくれないだろうというような意識があり、進んでこなかったのだと思います。
しかし、ここ10年くらいで大分環境も変わってきて、こういうイベント自体もそうですし、いろいろな大手企業がアクセラレーター・プログラムなどを手掛けるようになってきました。
坂本 CVCを含め、いろいろ増えていますよね。
大山 ハッカソンなども、毎日のようにニュースになっています。
大手とスタートアップが対等に渡り合えるようになってきていると思います。
そういう動きをより加速化するために、我々のような会社が橋渡しをする、こういうことが非常に大事だと思っています。
坂本 環境は整っているけれど、何かしらの橋渡しがないと、会話がかみ合わないというか、目線が違うというか……。
大山 こういう場や機会はいろいろとあると思うのですが、実現する手段が欠けていたりすると思います。
弊社のプラットフォーム、つまりクラウドやコグニティブを使って、両者がじっくり協議したうえでそれらを活用して事業化する、そのような取り組みを進めていきたいと思っています。
坂本 更に、いつまでに何をやってね、次のワークショップまでにこれをやってきてね、というようにお尻を叩くというような役割も担うことになるのですね。
大山 そうです。その点については、私が元いたチームにコンサルタントがたくさんいますから、その辺りのファシリテーションでは、彼らをアサインすることもあります。
このようなオープン・イノベーションのための取り組みは、今後もスポーツ、トラベルなど、いろいろなテーマごとに同様のプログラムを立ち上げていきます。
新たなビジネスを実験する場がもっと必要
坂本 その中で、BlueHubとしての視点でもいいですし、より広く、日本という視点でのオープンイノベーションでもいいですが、こうすればより加速するのではないか、というような考えはありますか?
大山 この後のステージでは、今の参加メンバーだけでは達成できない場合があります。
例えば、企業とスタートアップで考えたアイデアを実証実験する段階になると、自治体や医療機関などが参加していると非常に有効です。
坂本 「○○特区」のように、例えばある地域だけは規制なしでドローンを飛ばしてもいいよ、というような実証実験でしょうか。
大山 そうですね。そういう場が必要になります。
実際に、ヘルスケアのプログラムではさいたま市や埼玉県横瀬町、三井記念病院といったところに入ってもらうことになりました。
坂本 なるほど。ある程度、この仕組みでプロトタイプができるかできないかというタイミングで、自治体を巻き込んでスタートできるように準備を整えておくということでしょうか。
大山 そうです。
坂本 それはスタートアップだけでは絶対できないですよね。
大山 できないですね。
またとない機会をこのプログラムの中で作っていきたいと思っています。運営側では、我々のパートナーであるIncubatorやVCから支援先/投資先を紹介いただきました。
インキュベーション・プログラムを一緒に推進しているサムライインキュベート社からも協力いただいています。
坂本 榊原さん(榊原健太郎氏、株式会社サムライインキュベート代表取締役CEO)が先ほど登壇されていましたね。
大山 このオープン・イノベーション・プログラムでも、当初榊原さんからもご意見をいただき、同社もいろいろなスタートアップにコネクションを持っているので、お互いの強みを発揮して、推進していけるようなプログラムを構築しています。
IBM自身が変わらなければいけない
坂本 そろそろまとめに入ろうと思います。大山さんがやっていらっしゃる取り組み、そして今後の展望についてこれまでお話を伺いましたが、大山さんご自身としてでも、BlueHubとしてでも結構ですが、今後こういうところをやっていきたい、変えていきたいというような、意気込みを聞かせてください。
大山 BlueHubプログラムを推進することによって、いろいろなメリットやインパクトがあると思っています。
我々のクライアント、そして我々がインキュベーション支援をするスタートアップももちろんですが、それだけではなく、社内でも我々自身、IBM自身も変わっていかなくてはならないという考えがあり、それを体現するようなプログラムにしたいと思っています。
実際にボランティアで本プログラムに関わりたいという人が社内でも非常に増えてきています。
若手が中心ですが、50代を超えた年齢層の社員からも、募集に関する問い合わせがあります。
IBM自身も変わらなければならないという意識で私はやっているつもりなのですが、それが徐々にではありますが浸透してきつつあるので、IBM社内のカンフル剤にもなり得ると思っています。
ゆくゆくは、先ほどもお伝えしたように、自治体、大学、病院など、企業やスタートアップ以外も巻き込んで、様々なプログラムを企画していきたいですね。
いろいろなところに変化を及ぼすような、そのようなモチベーションになるようなプログラムにしていきたいです。
坂本 なるほど。大山さんご自身のモチベーションというか、「野望」のようなものはありませんか?
大山 野望ですか。
坂本 「俺はこれで一旗揚げて、日本IBMの社長になるのだ」とか。分かりませんが(笑)。
大山 社長職にはあまり興味ありませんが、今いろいろなところで、「変化を受け入れてください」ということを言っています。
大手企業に対しても、スタートアップに対しても言っています。
IBM自身も変わらなくてはいけないと思いますし、IBMが変わる姿を見てみたい、自分が変えていきたいと思っています。
日本IBM本体だけで2万人近い社員がいるのですが、そのIBMを変えられるチャンスがあることは、非常に面白いと思っています。
私は中立な立場でやっているつもりです。
クライアントである大手企業のためでもあり、スタートアップのためでもあり、自治体のためでもあるというように、中立な立場でいます。
1社員ではありますが、スタートアップの皆さんにもいつも言っているのは、IBMをどんどん利用してくれということです。
インキュベーションで採択された各社にも、選ばれたからには何でも言ってきてくださいと、いうことを伝えています。
ニュートラルな立場で、いろいろな変化をいろいろなところにもたらすということを、この活動を通してやっていきたいですね。
坂本 このプログラムを通じて、大山さんご自身が会社から評価されてどうこうというよりも、純粋にプログラムを推進した結果、IBM自身も、それ以外のステークホルダーも含めて、いい方向に変わっていくのを見てみたいということですね。
大山 そうですね。これをカンフル剤にして、日本IBMだけでなくグローバルに様々な影響を及ぼすようなものにしたいですし、対社外でも、様々なな変化のためのきっかけにしたいと思っています。
坂本 なるほど。ありがとうございます。非常に面白かったです。
大山 ありがとうございます。
坂本 どうもありがとうございました。
大山 こちらこそ。
:::::::::::::::::対談終了後:::::::::::::::::::
大山 うちのような会社がこういう取り組みをするというのは、なかなか意外でしょう?
坂本 意外ですね〜。
(終)
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/鈴木 ファストアーベント 理恵
【編集部コメント】
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