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ICC FUKUOKA 2023のセッション「愛されるブランドが実践する、ロイヤル顧客を起点とした事業戦略とは?」、全5回の②は、一般的に売上の半数以上を占めるといわれる「ロイヤル顧客」について解説。コロナ禍中にもオンラインイベントで1万人を集めたヤッホーブルーイングの井手さんに、それがなぜ可能だったのかを聞きます。ヤッホーの方法に再現性はあるのか? スピーカーたちがその秘密に迫ります。ぜひご覧ください!
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット KYOTO 2023は、2023年9月4日〜 9月7日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。
本セッションのオフィシャルサポーターは コーラム です。
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【登壇者情報】
2023年2月13〜16日開催
ICC FUKUOKA 2023
Session 7C
愛されるブランドが実践する、ロイヤル顧客を起点とした事業戦略とは?
Supported by コーラム
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▶「愛されるブランドが実践する、ロイヤル顧客を起点とした事業戦略とは?」の配信済み記事一覧
ロイヤル顧客の重要性を物語る2つの法則
小父内 では、本題に入ってまいりましょう。
まず、「愛されるブランドとは」、目線を合わせるのがすごく大事だと思っています。
前提として、ロイヤル顧客の重要性が増しています。
極々当たり前のことを言っていますが、これは非常に重要だと思っています。
ビジネスの経験則である20:80の、「パレートの法則」は有名ですよね。
トップ20%の顧客による売上が、全体売上の80%を占めるというものです。
私は100社ほどのコミュニティ作りに管掌してきましたが、To C、To B問わず、ほとんどこの法則が当てはまりました。
ヤッホーブルーイングの場合、10%の顧客による売上が、全体売上の60%以上を占めるのですよね。
井手 そうです。データからそう推測しています。
小父内 カゴメでも、4%の顧客による売上が、全体売上の半分以上らしいです。
とにかく、ロイヤル顧客に集中することが企業にとって命題となっています。
また、「1:5の法則」と言われますが、既存顧客と新規顧客の獲得コストの比率は1:5という話も有名ですね。
リピーターは、コストが5分の1で済むということです。
一言で言うと、これは時代だと僕は考えています。
時代背景としては、競争が激化し、情報があふれているからこそ信憑性の高い情報や口コミが大事です。
日本は人口が減っていくので、お客様が限られます。
サブスクが台頭してきたので、お客様と長く付き合うことが必要ですし、コロナ禍によってオンラインでつながることが重要になりました。
つまり、言いたいのは、「限られた大切なお客様と長~くお付き合い」することです。
めちゃくちゃ大事で当たり前のことですが、これがますます重要になっています。
この共通認識で、データを使ったドリルダウン、それがどう売上に結びつくかなどについて、話していきたいと思います。
ではここから、ファンやロイヤル顧客に対する取り組みやエピソードについて、ご紹介いただきましょう。
井手さん、お話しいただけますか?
リアルのファンイベントで5,000人を動員
井手 はい、我々はビール屋なので、当然ビールを飲んでくれている方がいます。
ずっと前から、そういう方を「ファン」と呼んでいます。
この写真はコロナ禍になる前、ファンを呼んで開催した大型イベントのものです。
2018年の秋、お台場の公園を貸し切り、昼から20時頃までファンイベント「超宴」を行った時の、開会式の様子です。
▶【イベントレポート】よなよなエールの超宴2018~ビールとオトナの文化祭~2018.10.27(ヤッホーブルーイング)
写真の真ん中で乾杯をしているのが私ですね。
右にいるのは、小父内さんに取材を受け、記事にしてもらった(佐藤)潤です。(Part.1参照)
5,000人が日本中から集まりまして…。
中島 これは、どうやって集まったのですか?
井手 自社のSNS、インターネット通販などで呼びかけて集まった感じです。
日本中から集まりましたが、一番遠い方は海外からいらっしゃっていました。
これはすごく満足度が高かったのですが、お台場の公園だと5,000人しか入らなかったので、翌年は2日間貸し切って、1万人を呼ぶイベントを予定していました。
しかし、2019年10月に大型台風がちょうど直撃したので、両日とも中止になってしまいました。
それで「来年こそ!」と準備していたら、コロナ禍でできなくなってしまったので、この写真が最後の大型リアルファンイベントとなったのです。
こういうことを2010年から始め、ずっと続けていたら、だんだん大きくなっていきました。
40人くらいのファンを、東京にある、得意先のパブに集めて行ったのが最初です。
コロナ禍のオンラインファンイベントに1万人が参加
井手 40人が100人、500人、1,000人、4,000人、5,000人となり、1万人のイベントはできなくて、2020年にファンががっかりしているのを見て、何とかしなきゃと思い、コンテンツを作り行ったのが、「おうち超宴」です。
「宴」が小規模のファンイベント、「超宴」が大型のファンイベントだったのですが、初めて「おうち超宴」というものを2日間連続で行いました。
13時から17時くらいの半日のオンラインファンイベントを、全く同じコンテンツで、2日間かけて行いました。
ビールを飲みながら、ビール講座(「なるほど学び広場」)をしたり、音楽を聴いてもらったり…、飽きると思ったので、2チャンネルを同時に立ち上げました。
その2チャンネルを行き来できましたし、ファンによっては両画面を同時に見ている人がいるくらいで、2日間トータルの参加人数は1万人でした。
小父内 1万人!
井手 100人くらいのオンラインイベントはずっと行っていましたが、1万人のファンイベントは初めてでした。
皆さん、YouTubeのチャット欄にすごく書き込むのですが、量が多すぎて読めないくらいでした。
中島 1万人の人が、参加しようと思う根源的なモチベーションは何なのでしょうか?
井手 簡単に言うと、「楽しそう」「友達に誘われた」みたいな感じですね。
リアルイベントの場合もそうです。
ただビールを飲むだけではなく、ビールのことを詳しく知りたい人にはビール講座がありますし、音楽で癒されながらビールを飲む体験やクイズ大会など、テレビ番組のように、色々なコンテンツを提供しています。
これらのコンテンツはリアルでも行っていましたが、オンラインにアレンジしました。
満足度も非常に高かったです。
この写真の上の段、右から2番目に私も写っていますが、私はイベントでは、開会式と閉会式に出ただけのチョイ役でした。
オンラインで盛り上がるのか? 気持ちが伝わるのか?と思っていましたが、最後に色々なサプライズ映像が流れ、それがあまりにも素晴らしかったので、私、閉会式では号泣してしまいました(※)。
▶編集注:【5/30(土)開催】よなよなエールの“おうち”超宴 わいわい乾杯広場の04:00:00頃からスペシャルムービーが流れ、井手さんは何度もハンカチで涙を拭っていました。
それが画面に映っていたので、ファンの方から「てんちょ、泣いてる!」「てんちょ、頑張れ!」という、私への応援コメントがどんどん来て、余計に泣いてしまうという(笑) 。
(一同笑)
感覚で始めたイベントの効果が検証できた
中島 1万人も集まると、業績に好影響が出るのだろうなと直感的に思うのですが、40人や100人の時は、何のためにやっているんだろうという雰囲気にはならなかったのでしょうか?
井手 お台場で行った5,000人のイベントは、ものすごい赤字でした。
もう、言えないくらいの大赤字です。
イベントに来たお客様がどこで利益を出してくれるかは分からないのですが、ずっとイベントを続けているわけです。
スモールスタートで始めた当時、インターネット通販は楽天市場にしか出店していなかったので、イベントに来てくれた方はみんな、楽天市場のお客様でした。
2010年に初めて40名くらいのイベントを行った際、お客様は熱狂しており、北海道や大阪から、イベントのチケット代よりもはるかに高い飛行機代や宿泊代をかけて来てくれました。
それで私も感動し、「こんなに喜んでくれるんだ」と衝撃を受けました。
その後、データを追っていくと、インターネット通販の売上が上がっていたのです。
彼らは色々なところで口コミをしてくれますし、その後のイベントでも、前回のイベントがいかにすごかったかを…。
小父内 触れ回るわけですね。
井手 売上が上がって、口コミが増えて、途中まではそれらを追跡できていましたが、5,000人となると、インターネット通販以外のお客様もたくさんいるわけです。
スモールスタートでの実験があったので、きちんと全て把握してから意思決定するのでは遅いと思い、感覚でイベント開催を続けてきました。
しかし近年、顧客分析ができるようになり、このイベント開催が効果的だという検証もできたので、誰も何も言わなくなったのですが、途中、「こんなことを行って、本当に売上と利益につながるのか」という声はものすごく上がりました。
幸いにも、スモールスタートでの実績があり、私がトップだったので、やるんだと押し切っていました。
今はデータが取得できるようになり、良い状況になっています。
小父内 なるほど。
顧客の「熱狂度」を5段階で設定
榊 1つ聞かせてください。
お客様のアンケート内容が良いと聞きましたが、どんなコメントが書かれているのでしょうか?
井手 通常書いているのは、「ビールを飲んで、美味しかった」、「こういうシチュエーションで飲むよなよなエールは最高」などです。
ただ、それだけではなく、「今年一番幸せな時間だった」、「コロナ禍でこういう楽しみはなくなったのに、今日はなんて素敵な日なの」など、「幸せ、楽しい、今日の出来事が最高」という情緒的なコメントがものすごくあったのです。
また、「ビール講座では、ビールの知識が得られて、すごく楽しかった」と、各コンテンツへの声もありました。
ビールという飲み物の機能的な「美味しい」を超えて、今日の一日が、人生が幸せだという、人生に影響を与えたというようなコメントが多数あったのです。
後で詳しく話しますが、我々は「熱狂度」という指標で顧客を分けています。
榊 「熱狂度」ですか?
小父内 NPS(ネットプロモータースコア※)ではなくて、熱狂度ですよね。
▶編集注:NPSについては、「愛されるブランドを創る」の記事「ネット・プロモーター・スコア(NPS®)を活用して顧客ロイヤリティを定量化する」をご覧ください。
井手 あまりこれを言うと、ファンの方から、そんな見方をしているのかと言われそうですが、今日はそういうセッションなので……、今ご紹介したコメントは、5段階ある熱狂度の、最高レベルの方のものですね。
▶CMO Interview vol.4 前編株式会社ヤッホーブルーイング 佐藤 潤 氏(BUSINESS FORUM)
小父内 「熱狂度」というのは、NPSとは別の軸なのですよね?
井手 そうです。
NPSと「熱狂度」、両方を指標として追っています。
“てんちょ”がいなくてもイベントは可能なのか?
榊 売上も上がるので、このようなイベントを行うのが良いというのは分かりますが、僕らが真似しようと思っても、てんちょがいないとできないのではないかとか思ってしまいます。
小父内 参加するのは、てんちょが好きな人たちですよね。
榊 そうそう。僕らがこれをやりたいと思ったら、どうすればいいのでしょうか?
井手 今はデータが取れ、お客様を「熱狂度」で5段階に分けているので、イベント実施によって各レベルのお客様の売上がどれだけ上がるかや、「熱狂度」が高い人の売上が分かるようになっています。
あと、「熱狂度」のレベルが2番目の人のLTVは、最高レベルの人のLTVの半分以下です。
小父内 そんなに違うのですね。
井手 レベルが3番目の人のLTVも、2番目の人のLTVの半分以下ですし、4番目、5番目はさらに3分の1になります。
つまり、明らかに違うというデータが取れているので、確信を持ってイベントを行えています。
そんなことを行っている会社は、まだほとんどないと思いますので、やはりスモールスタートから、検証しながら始めるのが一番堅実ではないかと思います。
我々の場合、売上の追跡が可能なインターネット通販のお客様とは、SNSでもつながっていたので、口コミや投稿も見られ、発信してくれるのが分かりました。
中島 まずは小さく行った方がいいのかもしれませんね。
井手 そうだと思います。
いきなり5,000人を呼んで、大赤字のイベントをしたいと企画担当が言っても、それを承認するような部長はいないと思いますよ。
利益の回収はいつできるのかと言われても、「分かりません、でも顧客が熱狂しています!」としか言えないですよね。
小父内 僕らはコミュニティサービスを運営していますが、全く同じで、やはり5人、10人の規模から始めるのです。まずは小さく始めます。
ここまで大きくはないですが、やはりクライアントは、100~200人規模の自社イベントを行いたいと言いますが、それは「失敗するから」とまず止めます。
井手 その通りだと思います。
小父内 トップ20のお客様が対象になるかもしれませんが、まずは5人や10人から始めます。
僕が300万人のユーザーがいるEightのコミュニティを運営していた際、トップ20のお客様全員に会って、そこからコミュニティを一緒になって作りました。
熱狂度がすごかったです。
榊さん、データサイエンティストとしては、ヤッホーブルーイングのデータを調べたいのではないでしょうか?
榊 これ、すごく面白いですよね。
ぱっと見、井手さんはロジカルなことを行っている雰囲気がないですよね。
井手 定量的には測りづらいものを、めちゃくちゃ定量的に測っていますからね(笑)。
榊 そうなんですよ、意図的にクリエイトできているのですよね。
井手 最初はスモールスタートでの実績が裏付けとなりましたが、後は感覚ですよ。
小父内さんが言ったように、こんなに熱狂して長く支持してくれる人がいれば…、そこに懸けるしかないくらい、売れなかった時期も長かったですし。
ただ、私に依存してはいけないと思い、今、私はほとんど前に出ておらず、代替わりしています。
顧客志向など、我々のカルチャーを体現している個性豊かな、色々なスタッフがイベントに登場し、我々の会社の雰囲気を何となく伝えながら、私に依存せずに開催できることを、ここ数年で実証できています。
小父内 カルチャー、ブランドが浸透しているということですね。
取り組み続けるのがすごいです。
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美