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映像授業と学校支援でネパールの教育格差をなくす – 注目の社会起業家特集「e-Education」(2)【K16C-EDU #2】

発展途上国での教育支援を行う「e-Education」吉川さんのプレゼンテーションです。2回シリーズ(その2)は、e-Educationがバングラディシュやネパールで行う教育支援の取り組みと、その成果をお話し頂きました。2016月9月6日・7日に開催したICCカンファレンス KYOTO 2016「カタパルト」社会起業家特集 – Supported by READYFOR プレゼンテーションの書き起こし記事です。

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本記事で特集しております8分間のプレゼンテーションを行う「CATAPULT(カタパルト)」のプレゼンターを募集しております。「スタートアップ」「社会起業家」「IoT/ハードウエア」「リアルテック」の4カテゴリーで募集しております。ぜひ募集ページをご覧ください。

登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016 「ICC SUMMIT」
Session 8B
CATAPULT(カタパルト) - 社会起業家特集 -
Supported by READYFOR
 
(プレゼンター)
吉川 雄介
特定非営利活動法e-Education
海外事業統括
http://eedu.jp/
 
1985年生まれ。早稲田大学国際教養学部、米国Portland State Universityにて社会学を専攻。NPO法人e-Education海外事業統括。NPO法人Colorbath代表理事。新卒で㈱ベネッセコーポレーションに入社。学校事業に関わり、教員向け研修や生徒・保護者向け講演に加え、学校コンサルティング営業に従事。同時に、新しい働き方や学び方を創ることを目指し、社外の活動として途上国支援、スポーツ、キャリア教育などの複数のNPO、NGOの組織の立ち上げに関わり、ファシリテーターも務める。現在はネパールなど途上国の教育支援に従事し、学習機会に恵まれない子どもたちに映像教育を届け、教育格差を埋めるためにプロジェクトを展開。世界経済フォーラム(ダボス会議)Global Shapers Communityメンバー。

その1はこちらをご覧ください:世界で最も開発が難しい国ネパールで挑む教育支援 – 注目の社会起業家特集「e-Education」(1)【K16C-EDU #1】

e-Education 代表の三輪さん2016年2月17日の講演記事 「若者の力で、社会を変える 」社会起業家 e-Education 三輪 開人の挑戦 も合わせてご覧ください。創業からこれまでの活動がまとまっています。映像授業のDVDを活用したモデルに関して詳しく記載があります。


e-Educationの取り組み

吉川 私達は、たとえ農村部に生まれたとしても、学びたい生徒が、学べる環境、学んだ先に希望が持てる社会を創っていきたいと思い、活動を行っています。

現地では、バングラデシュで成功した教育支援モデル、映像教材を制作し、DVDにして学校に無料で提供するモデルを展開しています。

ネパールの農村での指導経験を持ち、かつ分かりやすい授業をしてくださる先生を探しだし、現地の言葉で授業をしてもらい、録画、編集して学校に提供します。

映像授業の制作にあたっては、カリキュラム設計や教材準備、撮影や編集などのプロセスにおいて、現地の先生方や教育専門家との協働が不可欠です。多くの方々とチームを組んで、映像授業を作っては改善するというプロセスを繰り返しています。

そして実際に映像授業を学校へ提供する時には、地域の管理委員会と学校と一緒に、何を目指して、何を改善し、どこをゴールに進めていくのかという目標設定を行います。

映像教材というツールを媒介としながらも、こういった直接のコミュニケーションが教育支援においては特に重要だと思っています。主体的に取り組んでもらえなければ、活動は継続しないと思います。

学校での活用も進んできていますが、何かひとつ行動すれば、課題が10個ぐらい出てくるという状況です。日々ひとつずつ課題に向き合い乗り越え、前に進んでいくしかありません。先生方との話し合いも定期的に行い、あくまで学校や先生が主体となって活動を行っています。

初めて映像授業を用いて学習する日のことでした。先生方が張り切って準備をしてくれ、このように壁に布を張ってホワイトボードを作ってもらい、プロジェクターを用意し、電源を差して、いざ映像を流そうと思うと、これが流れないのです。

地域住民も多数参加している中、プロジェクターが壊れていて使えませんでした。そのときの先生方のショックと困惑の表情は忘れられません。新しい学校へ行けば行くほど、こういった課題は山ほど出てきます。次の写真のように、1台のパソコンを使って授業を行うことも少なくありません。

これは、プロジェクターが壊れていたので、急遽私のパソコンを使って初めて授業を見せているときの写真です。結果として、このとき私は生徒の目を見て確信しました。

これほど小さい画面であるにもかかわらず、生徒たちはひとつでも多くのことを学ぼうと一生懸命勉強していました。これは今後も絶対に続けなくてはいけない、もっと彼らが勉強できる環境を作りたい、そう強く感じさせてくれる日になりました。

e-Educationの取り組みの成果

これまでの成果についてですが、e-Educationは6年前にバングラディシュで活動を始めました。

これはバングラデシュでの例になりますが、ある村で、日本でいう東京大学に相当するダッカ大学の合格者が過去40年間で1名しかいなかったところから、活動を開始して以降2014年までに40名以上の学生がダッカ大学に合格しました。

この結果が示していることは、彼らには意欲と能力があるにもかかわらず、そこへ向けた手段や機会がなかったということです。夢に向かって誰もが努力できる社会を作りたい、そう思っています。

ネパールではまず、生徒の学力把握をしたり日々の授業への出欠を記録したりするなど、基盤となるデータをとることに注力しました。各生徒のテスト結果を表にまとめ、どの生徒が何の教科でつまづいているかを見える化しました。

注:データはダミーのデータです。

これまでの1年間かけて様々なことをやってきた結果、前年まで28%だった合格率が74%に上昇しました。映像授業を担ってくれた先生をはじめ全員でこの成果を喜びました。

今後は、いかに多くの学校に広げていけるか、汎用性のある活用モデルを創出し、より多くの子どもたちが学べるようにしていく状態を作ることがこれからの課題となります。自分たちだけでできることは限られているので、他団体との連携についても協議をして展開しようとしています。

他団体との連携

これはMicrosoft Innovation Center Nepal社との写真です。現地で活動をしていますと、教育というフィールドで、パソコンを提供する団体や学校建設を行っているNGOなど、様々な支援組織との出逢いがあります。

彼らの中には、建物などのハードの支援はしているけれど、教育のソフトに関わる支援ができていないことに課題を感じ、連携して一緒に映像教材を届ける活動をさせてほしいという声をもらうことがあります。様々な人の力を結集させ、よりインパクトの大きい活動になるよう連携をしながら支援を継続していきます。

以上をまとめますと、私たちの活動は大きく次の4つのアクションに整理されます。

生徒にとって分かりやすい映像を作ることはもちろんのこと、学校への提供は他団体と連携することでインパクトを高めています。

そして、映像授業はあくまでツールであり、やはり大切なのは教師の存在です。モニタリングでの活動も含めて、より良い授業を実施できるように教師の育成を行っています。日本では当たり前に行われている教育活動を、いかに現地に合った形で浸透させられるかが大切だと思います。学力データの把握や苦手な生徒のケア、生徒へのフィードバックやモチベーティング等、日本の教育の良さを届けていきたいと思っています。

そして、これらの取り組みによってネパールの農村部からでも地域を刺させるリーダーを輩出していきたいと考えています。

最後になりますが、ネパールと日本をつなぐ架け橋になれるよう、今後も取り組んでいきたいと思います。

ネパールは、人も自然も文化も豊かで本当に素敵なところです。一度行ったら魅了されると思います。皆さんもぜひ一度、ネパールへお越しください!

以上です。ご清聴ありがとうございました。

(終)

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/鈴木 ファストアーベント 理恵


【編集部コメント】

本記事で特集しております8分間のプレゼンテーションを行う「CATAPULT(カタパルト)」のプレゼンターを募集しております。「スタートアップ」「社会起業家」「IoT/ハードウエア」「リアルテック」の4カテゴリーで募集しております。ぜひ募集ページをご覧ください。

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