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6. ロジカルアプローチでは突破できないから「狂う」

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ICC KYOTO 2025のセッション「地方創生を実現する新しい街づくりとは?(シーズン3)」、全7回の⑥は、ここまでのプレゼンを経て、スピーカーたちが深掘りしたいことを質問。地域ではなく1社のコンサルをする理由や、地域の覚悟を持ったリーダーの波及力や、地域の親切な人の重要性など、様々なトピックが議論されます。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に学び合い、交流します。次回ICCサミット FUKUOKA 2026は、2026年3月2日〜 3月5日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションのオフィシャルサポーターは EVeM です。


【登壇者情報】
2025年9月1〜4日開催
ICC KYOTO 2025
Session 7E 地方創生を実現する新しい街づくりとは?(シーズン3)
Supported by EVeM

(スピーカー)

岡住 修兵
稲とアガベ
代表取締役

石田 遼
NEWLOCAL
代表取締役

中村 直史
五島列島なかむらただし社
代表 / クリエーティブディレクター

中川 淳
PARADE
代表取締役社長

(モデレーター)

岩田 真吾
三星グループ
代表

各務 亮
電通
クリエイティブ プロジェクト ディレクター

『地方創生を実現する新しい街づくりとは?(シーズン3)』の配信済み記事一覧


各務 ありがとうございます。

時間も押してきましたが、今の皆さんのセンターピンやご意見に対して、自由に意見交換していただき、その後、会場の皆さんの声もお聞きしたいと思います。

岡住さん、石田さん、ぜひ。

数字目標はあっても日々楽しい

石田 (中村)直史さんに、もしかしたら誤解があるのかもしれないなと思ったのですが、僕らは数字を掲げて目標に対してもバンバンやっています。

まだ何も成していませんが、日々すごく楽しいのですよ。

彼(岡住さん)も多分そうで、命を燃やしているみたいな。

それが、すごくやりにくい状況だと思っていて、人は未来に希望がないと生きていけないと思っています。

希望のつくり方として、日々の暮らしというのもありますが、僕が日本を巡っていると、みんな口々に、「ここはもう将来がないから」と言い続けていました。

これでは暮らしていてハッピーなわけがないなという感じがして、その状況を変えるには結構な転換が必要だよなというのが背景としてあります。

ただ、そのプロセスを、成功したらハッピーになれるのではなく、その希望に向かって生きていることがとてもハッピーなのではないかということは思っています。

(中川)淳さんのポジショニングの話はそうだなと思っていて、先ほど言いそびれたのですが、僕の関わり方は色々な地域に外から関わって、かつ言い方はよくないですが地域を選べるという意味で、かなり客観的に地域を見ています。

地域リーダーの特性としては、外の目を持っている人が多いです。

1回東京に出ているとか、もともとプロスポーツ選手で世界中に行っていたとか、移住者だったりとか、ある種その地域が外からどう見えるのだろうかという視点を絶対にみんな持っているのです。

逆にちょっと引いた目がないと、リーダーとしても不足かなという感じがするので、それは、結構ポジショニング的な話だと思いました。

産地の希望となる、一番星企業を輝かせてきた

岩田 前に淳さんと話をした時に、地域で稼ぐには一番星が必要だみたいな話があったと思います。

一番星というのは、地域の経済を引っ張っていくようなプロダクトをつくっている会社で、それと覚悟を持ったリーダーは一緒なのでしょうか?

一番星の会社は自分の会社が光ることが最初のステップだと思いますが、覚悟を持って地域を変えるリーダーは、自分の会社だけではだめなのですよね?

もっと染み出すことを意識するのか、巻き込みを意識するのか、淳さんはどう感じますか?

中川 中川政七商店時代は、産地の一番星をつくると言ってやっていました。

そもそも工芸はピーク時と比較すると、産業規模が7分の1ぐらいです。

だから、もう希望がないのですよ。

そこで希望を持つために、誰かが成功すれば、「あいつでやれるなら俺もいけるかも」と思わせることが大切だと思ったので、組合の仕事とかは絶対やらずに1社コンサルにこだわって1社を輝かせてきました。

岩田 なるほど、淳さんが仕事を受ける時に、産地全体というぼやけた話ではなくて、1社のコンサルをしていたということですね。

中川 そうです。

ただ、企業の話と地域の話はやはり違って、地域を元気にするというのは、そもそも色々な人がいるし、楽しくという話が出ましたが、何をもって楽しいと感じるかも全然違うじゃないですか。

でも、会社であれば、こういうことを楽しいと思える人が入ってきているという状況は、ある程度つくれます。

そこが何よりの難しさだなとは思います。

地域リーダーが持つ覚悟とは

岩田 遼さん、一番星の話と覚悟を持ったリーダーは、ちょっと違いますか?

石田 スコープが広いだけに、地域のほうが難易度は高いだろうと思います。

(岡住)修兵君もそうだし、僕が出会ったクラフテッドの方、この会場にいる方々もそうですが、自分の事業としてやっていくことは、それ自体も難しいけれど、結構できている方が多いです。

ただ、自分たちはギリギリ食べていけるけれども、そもそも周りはバタバタと倒れていて、自分たちが生き残ったとて、周りに何もなかったら、従業員もハッピーなわけはないのです。

すごく分かりやすいのは、色々な人が素晴らしいと言って、男鹿まで足を運び、稲とアガベに来ます。

でも、ご飯を食べたり宿泊したりするところがないので、秋田市に泊まることになってしまうというのが嫌で、先ほどの取り組み(Part.2参照)をしています。

これを本当にやろうとしたら、自分の事業だけでは足りないと思うかどうか。

それを自分ごと化できるかみたいなところに、一つ男鹿でクラフトサケを造るぞというのとは違う覚悟があるのです。

そういうことを、覚悟と呼んでいます。

岩田 だからこそ、稲とアガベが好きだというファンもある程度増えて、自分の事業にもちゃんと戻ってくるのかなと思います。

自分の美味しい酒を発信したいだけの人の酒より、そこから発展したビジョンを持った岡住君の酒だからもっと好きみたいな循環がある気がします。

そのようなことは感じていますか?

岡住 それはバリバリに感じていますよね。

酒だけ造って良いものづくりをする、そこを極めていくことで、まちに来てくれる人を増やすことはもちろんできるかもしれないし、そこを否定するわけではないし、そこも一生懸命やっていきたいと思っていますが、やはりこの場に立たせてもらうということは、酒以外もやっているからなのですよね。

クラフテッドの皆さんはうちに来てくれていますが、酒だけだったら、こんなに皆さんが来てくださっていないと思います。

本当に色々なことをやっているからこそ来てくれるし、お酒を飲めない人も来てくれて、岡住君のところの宿に泊まりたいし、お金を落としたいと言ってくれます。

ある種、意図的にそこをつかまえにいっていて、だんだんつかまえられたかなという実感をここ1年で、特に感じていますね。

岩田 淳さんが、深く頷いてくれていましたが。

論理と、それでは解けない部分とで成立するのが大前提

中川 岡住さんが先ほどから「狂え」という話をされていて、狂うというのは誤解を生むなと思いながら、どう分解したらいいのかなと思ったのですが、明確な志、ビジョンがあって、それに対して尋常ならざるコミット、覚悟があるということが、「狂え」ということなのだろうなと思います。

結局一企業である自社だけを背負っているのではなく、地域というとんでもなく大きなものを勝手に背負ってやっているというところに、その「狂え」という言葉が刺さっているのだろうなと思いました。

それと、岩田さんがおっしゃるように、その姿を見てよりプロダクトが好きになるというのは、僕がずっと言っている「ライフスタンス」が問われる時代だという、まさにライフスタンスで稲とアガベを愛している人がいるということだから、そうしたほうが結果、色々な意味で上手くいくということでもあると思います。

3. 商品や見返りのないつながりを通して「ライフスタンス」を伝える中川政七商店

石田 一つ、いいですか。

「狂え」というのは、要は、割には合わないのです。

岩田 経済的には、ということでしょうか?

石田 経済的にはとか、あとはROIですね。

測れる尺度で言うと合わないのですが、ロジカルに問題解決できるものではないことを、みんな扱っている時には、ロジカルアプローチでは突破できないことは分かっています。

そうしたら、もう狂うしかないのですよ。

それは狂ったようなパッションをプロダクトに傾けて、めちゃめちゃその結果売れましたみたいな地平を切り開くしかないかなと思っているけれど、それは上手くいくかも分からないし、保証もないから、人に押し付けにくいなとも思っている感じです。

中川 今の話には言いたいことがあります。

日本のいわゆる大手企業、資本主義の合理性だけで動いている人たちは、論理性、合理性だけで動くけれど、僕はそんなことで上手くいくわけないよねと基本的に思っています。

論理があった上に、論理では説明できないこともある。もし論理で勝負が決まるのなら、パナソニックもソニーも、アップルに勝てたわけじゃないですか。

でも勝てなかったというのは、そこにクリエイティブな部分があるから。それを「狂え」と言ってしまうと、特殊な人しかできないことになってしまいますが。

(会場笑)

そもそも、論理とそれでは解けない部分があって成立しているよねという大前提を、みんな理解してほしいなと思うし、それが本来普通だと思うのです。

日本の大企業を十把一からげにするのは申し訳ないけれど、彼らがやっていることは本当に足りないなと思うし、分からないクリエイティブに対して、「論理的に説明してくださいよ」みたいに、すごく否定的にくるじゃないですか。

そういうことが、本当にだめだなと思います。

(会場笑)

お金への換算だけが尺度ではない

岩田 今、(中村)直史君がしっかりと最後の一刺しを準備中ではないかと思うので、まだ取っておきますね。

今の話は非常に面白くて、コテンラジオにも出演したことがある京都の実験寺院 寳幢寺の松波 龍源さんという僧侶がいらっしゃいます。

最澄と空海 ― 悟りを開いた男達の生涯【COTEN RADIO #132】(歴史を面白く学ぶコテンラジオ)

今回ICCで京都に来たので、アニマルスピリッツの朝倉(祐介)君が、「一緒に龍源さんのところに瞑想しにいかない?」と誘ってくれて、瞑想しに行った時に伺った話に結びつくなと思っています。

どんな話かと言うと、「日本の多くの人は無宗教ですと言うけれど、『マルクス教』に入信している人が多い」という話でした。

『資本論』の著者であるマルクスは、あらゆるものが商品として、資本という単一の基準で計測できると考えました。

これを現代日本人の多くはグローバルスタンダードであると捉えてしまっていて、一つの考え方にすぎない「色々な幸せがお金で換算できる」という「マルクス教」を信じこんでしまっている、という指摘です。

この話と先ほどまでの議論を組み合わせると、「割に合わない」というのは、お金に換算したら割に合わないかもしれないけれど、そうではない尺度があって、その尺度で見たら合っているからやっている部分もあるのではないかと思います。

今は「マルクス教」信者からすると狂っているけれど、「マルクス教」が前提として正しいのかあえて問うタイミングなのかもしれない。瞑想しに行った先での話と結びついてしまったので、この話をしたくなりました。

岡住 僕は、僕自身のことを狂っているなんて思っていません。

岩田 あっ、やはりそうなのですね。

岡住 これは、普通だと思っています。だって、地域を未来に残すと言っているのだから。

そのためにやるべきことを全部やっているだけなので、狂っているなんて僕自身は思っていません。

だけど、世間から見ると狂ったようなことをやらないと(いけないし)、本当の意味でこの地域を盛り上げていきたい、残していきたいとか、そんな思いがあるのだったら、やりましょうよという言葉に変えている感じです。

インフラ企業、地方銀行は街づくりの重要プレイヤー

岩田 あともう一つ、大企業を巻き込むという意味で、街づくりと言った時に、カルチャーやコンテンツを創っていく私たちのようなプレイヤー側も重要ではあるけれど、インフラ企業もすごく重要なプレイヤーだと思います。

エネルギー、電気、ガス、鉄道などの交通、そこが絡んだ瞬間、急激に動くお金は変わってきます。

街づくりセッションが面白くなったのは、ファイターズの小林(兼)さんが入ってくれた時(シーズン1)だと思います。

あの瞬間に、多くのICCにいる「マルクス教」信者たちが、「あれ?街づくりもお金が動いて面白いかもしれない」と多分思って、でも、ファイターズ小林さんからすると、大企業だけじゃなく、カルチャーやコンテンツを創る人たちと一緒じゃないと、街づくりなんてできないという補助線が出てきた。

今日、会場の最前列に、地銀というプレイヤーで、今、和歌山で狂ったような活動をしている仲間が来てくれています。

地銀も含めて、その辺りの人たちが入ってくると、ICCならではの街づくりセッションになっていくのではないかと思います。

総務省がやっている街づくりセッションだったら、カルチャー寄りの話、コンテンツ寄りの話、生き方系だけでいいのだけれど、僕たちは「マルクス教」とちゃんと結び付けた上で、次の提案もできたらいいのかなというのは、ずっと各務さんとも話しているので、ぜひ皆さんのご意見を伺いたいと思います。

各務 皆さんのQ&Aにいく前に、直史さんに質問してもいいですか?

岩田 そうそう、ためてありますよ。

各務 狂えというのと、同じ山なんだけど、直史さんは普通でいいじゃないかみたいな別のルートから登っていらっしゃるように見えます。

僕はすごく共感というか、その道もちゃんとつくってほしい、つくることを僕も一緒にやらせていただきたいということを、普段から感じています。

直史さんの中でも、普通でいいけれど、そろばんも大事というところに関して、何かありますか?

岡住さんにはなれなくても地域の親切な人にはなれる

中村 ずっとお話を聴いていて、誰の参考になるためにこの話があるのかというレイヤーがそれぞれ違うと思うのです。

遼さんが言う覚悟がある人たちを見つけて応援するということも全く否定しないし、岡住さんのような人がバンバンやることも全く否定しないし、重要だと思うのです。

ただ、僕が想定しているのは、多分地域にいる99%ぐらいの僕の周りにいる人です。

特別な才能がある人、スーパースターたちはここにいると思うのですが、どうしても僕は、そうではない人たち、一緒に住んでいる人たちのことを思い浮かべて、その人たちが何を参考にして、何を持ち帰れるのかということが気になってしまうのです。

その人たちが、「よし、自分も狂ってみるぞ!」と思うのだったら、そういう感化のされ方はありますから、それはそれでいいのです。

岡住さんのような頑張っている人が、その影響で単にプロダクトだけで注目を浴びるのではなく、プロダクトを通じて、その生き方や姿勢が広まっていること自体のほうが意味があると思っているから、そういう感化のされ方をするのは素晴らしいし、僕もいいなと思っています。

それでも僕がしつこく思うのは……、これは男鹿で聞いたことなのですが、縁もゆかりもなかった男鹿に岡住さんが来た理由の背景として、岡住さんが男鹿に来た時に親切に色々な人に会わせて、色々な場所を紹介してくれた一人の市役所職員の方がいたというのです。

【一挙公開】ICC男鹿コネクテッド「魅力あふれる地域を創るには」(全4回)

僕はそれを知って、岡住さんにはなれないけれど、親切な市役所職員にはなれるぞと思ったのです。

それだったら、僕の周りにいる人たちも持ち帰れるし、実際そういうことが持っているパワーというのは、結構侮れないと思っています。

親切で、いい人でいる、ご機嫌でいることのパワーは侮れないと思っているから、もしかしたらそういう意味では、センターピンみたいな話でいうと、僕の話はレイヤーがずれているかもしれないのですが、僕が言いたいのはそのようなことです。

各務 ありがとうございます。

(続)

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美

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